更新日:2024年1月11日

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研究内容の紹介(農業技術センター)

農業技術センターで実施している研究内容について紹介するページです。

堆肥化等による未利用有機質資源の農業利用
~牛ふん堆肥を混合した新規混合堆肥複合肥料の開発~

農業技術センター 三浦半島地区事務所 研究課 課長 竹本 稔

顔写真

研究を始めた経緯

 生産現場では、労力面の負担から土づくりに必要な堆肥の施用量が減少しており、地力の低下が懸念されています。
 従来の肥料取締法では、堆肥と化学肥料を混合した肥料製品は製造できませんでしたが、2012年に混合堆肥複合肥料の公定規格が設定され、2019年12月の肥料取締法の改正(※名称は「肥料の品質の確保等に関する法律」に変更)により、堆肥と化学肥料や土壌改良資材を混合した肥料製品をより柔軟に生産、流通できるようになりました。
 このような、堆肥と化学肥料等を混合した肥料は、土づくりと肥効の両面の効果とともに、堆肥の肥料成分を活用した低コスト肥料の供給が期待できます。
 堆肥を混合した肥料は、豚ぷん堆肥を混合した製品は流通していましたが、土づくりに適した牛ふん堆肥を混合した製品は造粒作業が難しいため生産されていませんでした。
 今回、神奈川県農業技術センターでは、朝日アグリア株式会社と連携して、製品開発に取り組み、牛ふん堆肥を混合した混合堆肥複合肥料銘柄(エコレット236、以下「開発肥料」と記載)を開発しました(図1)。

開発肥料の概要図

図1 開発肥料の概要

研究の内容

 開発肥料の窒素、リン酸の肥料効果について、ポット栽培試験を行い、検討しました。
 コマツナを用いて窒素分の肥料効果を検討したところ、対照とした同成分量の化学肥料(硫安)と同等の生育が認められました。また、チンゲンサイでリン酸の肥料効果を検討したところ、対照とした同成分量の化学肥料(過リン酸石灰及び重焼リン)と同等以上の生育が認められました(図2)。
 さらに、試験ほ場での連用栽培試験(レタス、スイートコーン、ダイコン)を行い、開発肥料の各種作物での施用効果を評価しました。その結果、各作物とも、化学肥料施用区と比較して同等以上の生育を示しました。

ポットでの栽培試験の写真

図2 ポットでの栽培試験


 次に、肥料の埋設試験(図3)で分解特性を評価しました。開発肥料など各サンプル(同窒素量)をほ場の土壌と混合し、ガラス繊維ろ紙に充てんしたものを防根シートに封入し、土中に埋設しました。その後、1、3、6、12、18か月後に取り出し、乾燥、粉砕後、残存炭素量を測定しました。その結果、540日後(18か月後)の炭素残存率は、開発肥料で対照とした有機化成肥料に比べて、高い残存率を示しました(図4)。

埋設風景の写真

図3 埋設風景

有機残存率のグラフ

図4 有機物残存率のグラフ


 近年、運搬や散布作業など労力面の負担から、堆肥の施用量は減少傾向にあるため、堆肥利用の推進には、堆肥と化学肥料等を同時に施用できる混合堆肥複合肥料の活用が有用な手法になると考えられます(図5)。また、現在、化学肥料価格が高騰していることから、家畜ふん堆肥などの国内肥料資源を活用するための有効な手段にもなると考えられます。
 開発した混合堆肥複合肥料(エコレット236)は、2021年6月から流通・販売され、全農かながわ、三浦市農協、JAさがみ、JA湘南など県内の農協を通じて、2022年10月までに約60t(2998袋)が販売されており、今後の流通拡大が期待されます。

課題と改善策の説明図

図5 課題と改善策

今後の展開

 2019年12月の法律改正で、より柔軟に化学肥料と堆肥や土壌改良資材などを混合して肥料製品が生産できるようになったことから、今後、使用者のニーズに即した様々な肥料製品が生産されることが期待されます。
 農業技術センターでは、これまでにオカラ、コーヒー粕、生ごみなどの各種の未利用有機質資源の堆肥化、農業利用に取り組んでおり、これらの成果は、神奈川県発行の「未利用資源たい肥化マニュアル」※として取りまとめています。
 また、SDGsには、廃棄物の発生防止、削減、リサイクルおよび再利用(リユース)により、廃棄物の排出量を大幅に削減することが示されています。このため、今後も堆肥化等により各種の未利用有機質資源の農業利用について研究開発を進めることが必要です。

https://www.pref.kanagawa.jp/docs/vw7/cnt/f7397/index.html

研究職員のプロフィール(研究歴、受賞歴等)

  • 研究歴 
    土壌肥料関係技術開発:延べ26年
  • 受賞歴
    1997年12月:知事表彰(団体)
     「有機性廃棄物の農業利用に関する研究開発」資源リサイクル研究チーム
    2007年8月:日本土壌肥料学会 奨励賞受賞
     「都市系生ごみの農業利用に関する研究」

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