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更新日:2024年3月18日
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自然環境保全センターで実施している研究内容について紹介するページです。
近年、ICTなどの新技術の開発が著しく進展しており、森林・林業分野でも新技術を積極的に活用して森林管理等の効率化・省力化が期待されています。このような中で当センターでも森林モニタリングの省力化・高度化に向けて360度VRカメラの活用研究に取り組んでいます。
360度VRカメラは全方位カメラとも呼ばれ、魚眼レンズを二つ組み合わせて背面や後方、360度方向の臨場感あふれる動画や静止画を撮影できるカメラです(写真1)。また、本体内蔵機能やスマートフォン等と連動させてGPSにより位置情報を取得することで、通常のカメラでは複数枚撮影が必要な調査地の位置と周囲全体の森林環境を一度に記録できます。さらに、360度VR静止画像(以下、360度画像)はデジタル座標変換処理することで天頂180度画像や撮影地点足元の平面画像へと加工することも可能です。
(写真1)安価な360度VRカメラと森林内での撮影風景
そこで、このような360度VRカメラの機能や特性を活用して、森林内で撮影した360度画像(写真2)から森林状態を指標する森林環境情報を取得し効率的にアーカイブする3つのアプリケーション(以下、アプリ)の開発に取り組みました。
(写真2)360度VRカメラで撮影した丹沢山地内の
ブナ林における360度画像
1つ目は、360度画像から森林内の明るさの指標となる樹冠開空率を半自動で計測するアプリです。円筒正距法で記録されている360度画像の画素情報を天頂180度画像(天空画像)に座標変換し(写真3)、さらにこの画像の開空部分を、従来法と同様に画像の色情報に基づき空と枝葉に区分して二値化し開空率を自動計測・出力します。
(写真3)写真180度画像(360度画像の上半分)から
撮影地点上空の天空画像への変換例
2つ目が360度画像から足元付近の平面画像を切り出して林床の植生被覆率等を自動計測するアプリです。360度画像は円筒正距法で記録されており座標変換処理を行うことで任意位置の近似平面投影画像に切り出しできます。そこで、撮影した画像を撮影者の足元の平面画像に変換する座標変換処理手順を検討し、変換後の足元平面画像の色情報に基づいて緑被や土壌露出の面積を計測するアプリを作成しました(写真4)。このアプリは、被覆率計測の色情報パラメータの調整機能もあり、画像を連続的に処理して結果を出力することができます。
(写真4)360度画像から足元の緑被率を計測する処理のフロー
3つ目は、植生状態やシカの影響等の森林環境を現地でスマホなどに記録し同時に360度画像の撮影を行い、地点ごとに両方の情報を位置情報によりGIS(地理情報システム)と連動させ地図上でデータベース化するアプリで、森林環境情報とVR画像と一体的に保存・閲覧が可能です。上記二つのアプリと連携して開空率や地表付近の植被状態の計測も行うことができます。
当課が実施している各種のモニタリング調査で積極的に360度画像を撮影しアプリを活用しており、今後、3つのアプリを統合するなど使い勝手を改良していきたいと考えています。
また、最近ではカメラ画像に映り込んだ植物名をAI技術で種類を自動判定する技術も実用化されています。そこで、将来的にはこの技術により360度画像から撮影地点付近に生育する植物名を自動判定する機能を追加するなどして、より多くの情報を一枚の360度VRカメラ画像から取得・記録できるアプリへと発展させたいと考えています。
このページの所管所属は環境農政局 総務室です。