更新日:2024年6月25日

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神労委令和2年(不)第21号事件命令交付について

神奈川県労働委員会(会長 浜村彰)は、標記の事件について、申立人の不当労働行為救済申立ての一部を救済する命令を交付しました。

 

1 当事者

申立人 X(組合)
被申立人 Y(会社)

2 事件の概要

本件は、組合が組合員Aの離職等に係る労働問題について団体交渉を申し入れたところ、会社が、【1】団体交渉に応じなかったこと、また、【2】団体交渉の議題に係る文書回答を求めたにもかかわらず、具体的な文書回答をしなかったことが労働組合法(以下「労組法」という。)第7条第2号に、【3】Aに対し、離職後の賃金相当額を一方的に支払うなど直接交渉を行ったことが労組法第7条第3号に該当する不当労働行為であるとして、救済申立て(以下「本件申立て」という。)のあった事件である。

3 命令の概要

⑴ 主文

ア 会社は、組合が組合員の雇用に関する交渉を求めているにもかかわらず、組合への連絡や組合との交渉を一切することなく、当該組合員に対し、一方的に賃金相当額を支給するなどして組合の運営に対する支配介入を行ってはならない。

イ 会社は、本命令受領後、速やかに陳謝文を組合に手交しなければならない。

⑵ 本件の主な争点及び判断の要旨

(争点1)

組合の令和2年8月13日付け団体交渉申入れに対する会社の対応は、労組法第7条第2号に該当する不当労働行為に当たるか否か。

(判断の要旨)

ア 会社は、組合の団体交渉申入れに対し、新型コロナウイルスの影響で都合がつかず、都合がつき次第改めて連絡する旨を文書で回答しているが、当時、会社の所在する愛知県が新型コロナウイルスの感染状況を踏まえて首都圏への移動自粛を要請していたことからすれば、会社が直ちに団体交渉に応じられないことについて一定の理由はある。また、組合が会社の回答文書を受けた後、団体交渉開催に向けた連絡を会社にした事実は認められない。さらに、会社は、実際に本件申立て後に団体交渉を申し入れていることから、団体交渉に応じる姿勢を示している。

したがって、回答文書のみをもって、会社が正当な理由なく団体交渉を拒否していたとはいえない。

イ 組合と会社との間で、団体交渉の議題等に係る事前の文書回答に関する取り決めがあった事実は認められないことから、団体交渉前に、会社が組合の要求どおりに文書回答をすべき義務を負う根拠はない。

したがって、団体交渉の議題について、事前に文書回答をしない会社の対応が不誠実であったとはいえない。

(争点2)

会社が、Aに対し、令和元年12月から令和2年4月までの賃金相当額を支払ったことは、労組法第7条第3号に該当する不当労働行為に当たるか否か。

(判断の要旨)

Aが離職してから8か月以上経過した後に、会社は、組合に対して何ら連絡をすることなく、一方的にAに賃金相当額を支払っている。団体交渉申入書が会社に到達してから9日後という近接した時期に賃金相当額が支払われていることなどからすれば、会社には、Aの雇用問題を解決するに当たり、組合の関与を忌避する意図があったことが推認され、会社の同支払は、一方的な金銭支払により同人の離職問題を解決しようとしたものにほかならない。

したがって、Aに対し賃金相当額を支払った会社の対応は、組合を無視ないし軽視した行為であり、労組法第7条第3号の支配介入に当たる。

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