更新日:2024年6月25日

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神労委令和3年(不)第16号事件命令交付について

概要は次のとおりです。

神奈川県労働委員会(会長 浜村彰)は、標記の事件について、本日、申立人の不当労働行為救済申立ての一部を救済する命令を交付しましたので、お知らせします。

1 当事者

申立人 X(組合)
被申立人 Y(法人)

2 事件の概要

本件は、法人が組合と協議せずに、相互で確認していた平成21年8月21日付け「確認書」記載の労働協約の解約を通知したこと、掲示板Aを設置しないこと及び掲示板Bを利用させないこと並びに組合が、法人に対し、団体交渉を申し入れたところ、法人が、事務折衝の担当者を分会長C以外とするよう求めたことが、いずれも労働組合法(以下「労組法」という。)第7条第3号に該当する不当労働行為であるとして、救済申立てのあった事件である。

3 命令の概要

(1) 主文

ア 被申立人は、申立人と被申立人との平成21年8月21日付け「確認書」記載の労働協約の解約をなかったものとして取り扱わなければならない。

イ 被申立人は、本命令受領後、速やかに陳謝文を申立人に交付しなければならない。

ウ その余の申立てを棄却する。

(2) 争点及び判断の要旨

(争点1)

本件申立てが、労働委員会規則第33条第1項第7号に定める「申立人の所在が知れないとき」に該当するか否か。

(判断の要旨)

組合は、連絡先を当委員会へ申し出ており、実際に当該住所へ郵便物は届いていることから、当委員会と組合とが連絡を取ることは可能であり、労働委員会規則第33条第1項第7号に規定される「申立人の所在が知れないとき」には当たらない。

(争点2)

法人が、平成21年8月21日付け「確認書」を解約したことは、労組法第7条第3号に該当する支配介入に当たるか否か。

(判断の要旨)

平成21年8月21日付け「確認書」には、組合掲示板の使用等の便宜供与について記載されており、同書の内容で組合と法人との間で労働協約が締結されたものと解される(以下「本件協約」という。)。法人は、本件協約に基づく便宜供与について業務上の支障がなく、ただちに本件協約を解約すべき必要性及び緊急性といった合理的な理由がないにもかかわらず、組合といっさい労使協議を経ることなく、一方的に解約するに至っている。

したがって、法人が平成21年8月21日付け「確認書」を一方的に解約したことは、組合組織の弱体化の意図のもとに行われた労組法第7条第3号の支配介入に当たると解される。

(争点3)

法人が、掲示板Aを設置しないこと及び掲示板Bを利用させないことは、労組法第7条第3号に該当する支配介入に当たるか否か。

(判断の要旨)

ア 掲示板Aが設置されず、組合が掲示板を利用できないことについて

組合が掲示板Aを設置するよう要求したことに対し、法人は、本件協約に基づく便宜供与について実情に即した内容になるよう組合とリモート方式により協議したい旨述べている。

新型コロナウイルス感染症の感染状況や、法人が老人福祉施設を運営していること等を勘案すると、施設内での感染拡大を危惧した法人が、リモート方式での団体交渉を希望したことに一定の合理的な理由がある。対して、組合は、結審日までリモート方式の団体交渉に消極的であり、このことが、掲示板Aの設置問題が解決しなかった一因であることは否定できない。

したがって、掲示板Aが設置されず、組合が掲示板を利用できなかったことが、ただちに法人の組合の運営に対する支配介入によるものということはできない。

イ 法人が、掲示板Bを利用させないことについて

法人は、令和2年3月以降、掲示板Bが存在する施設を含めた全ての施設内への人流を制限している(以下「本件立入り制限」という。)。法人は老人福祉施設を運営しており、立入り制限がなされた時期の新型コロナウイルスの感染状況に鑑みると、一定の者の立入り制限をすることには相応の理由がある。

本件立入り制限を前提として、何らかの方法で組合が掲示板Bを使用する方法は考えられるから、本件立入り制限後の掲示板Bの利用方法については、新型コロナウイルスの感染拡大防止を踏まえ、労使間の協議や交渉によって、決定することが妥当である。

しかしながら前記アと同様に、リモート方式の団体交渉に消極的であった組合にも、掲示板Bの利用方法についての問題が解決しなかった一因があることは否定できない。

したがって、掲示板Bの利用に先立ってなされるべき協議や交渉が実現しておらず、法人により、掲示板Bを利用させない状態としたとまでは認められないことから、法人が組合に対して全面的に掲示板Bを利用させなかったことは組合の運営に対する支配介入には当たらない。

ウ まとめ

以上のとおり、組合の主張は認められず、掲示板Aを設置しないこと及び掲示板Bを利用させないことは、労組法第7条第3号に該当する組合の運営に対する支配介入には当たらない。

(争点4)

法人が、令和3年3月9日付け文書において、分会長C以外の者を事務折衝担当者として選任して欲しいと要望したことは、労組法第7条第3号に該当する支配介入に当たるか否か。

(判断の要旨)

本来、事務折衝においていかなる者を組合側の担当者とするかは、組合が自主的に決定すべき団結自治に関わる事柄であるから、使用者は原則としてそれに介入することは許されない。

しかし、本件のように団体交渉の円滑化を理由として使用者が事務折衝担当者について意見を述べることそのものが、直ちに組合の上記選択権を制限するとまではいえず、法人が令和3年3月9日付け文書において、分会長C以外の者を事務折衝担当者として選任してほしいと要望したことは、労組法第7条第3号に該当する支配介入には当たらない。

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