更新日:2024年6月25日
ここから本文です。
神奈川県労働委員会(会長 浜村彰)は、標記の事件について、申立人の不当労働行為救済申立てを棄却する命令を交付しました。
申立人 X(組合)
被申立人 個人A
同 Y1(会社1)
同 Y2(会社2)
本件は、組合が、組合員Bの労働条件及び労災問題等を議題とする団体交渉を申し入れたところ、「C」との屋号を用いて解体工事業等を営むAが誠実に団体交渉を行わなかったことが労働組合法第7条第2号に、同人がBに直接連絡をしたことが同条第3号に、会社1及び会社2が、組合の団体交渉申入れを拒否したことが同条第2号に該当する不当労働行為であるとして、救済申立てのあった事件である。
その後、組合は、本件申立てに係る調査期日において、会社2が、「乱暴な不当労働行為救済の申し立て」、「直ちに労災認定をすることが出来ない何らかの疑義が存在する」等の主張が記載された準備書面を提出したことが、労組法第7条第3号に該当する不当労働行為であるとして、申立事実及び請求する救済内容を追加している。
(1) 主文
本件申立てを棄却する。
(2) 争点及び判断の要旨
(争点1)
令和2年7月24日に発生したBの労災問題等を議題とする令和3年9月13日団体交渉において、Aが組合に対し、請負契約書といった関係資料を提出しなかったこと及び労働保険番号を教えなかったことは、不誠実な団体交渉に当たるか否か。
(判断の要旨)
Aは、組合がどのような理由で、どの事業者との間の請負契約書の開示を求めているのか明らかとなっていなかったから、団体交渉当日に請負契約書を用意できなかったのは無理からぬことであるし、後日開示する旨を組合に伝えている。また、Bが労災に遭った解体工事に係る元請事業者の労働保険番号について、組合は団体交渉の開始に至るまで一切開示を要求しておらず、Aは、団体交渉当日に、後日開示する旨を述べている。
以上のことからすると、Aが団体交渉の席上において、請負契約書等の関係資料を提出しなかったこと及び元請事業者の労働保険番号を教えられなかったことをもって、不誠実な団体交渉には当たらない。
(争点2)
令和3年9月21日から同月28日までに、AがBに対し、令和2年7月24日に発生したBの労災について、療養補償給付手続の書面を送付したこと及び同書面に必要事項を記入して送り返すようにと電話で連絡したことは、組合の運営に対する支配介入に当たるか否か。
(判断の要旨)
療養補償給付の申請は、組合が要求したものであり、Aが組合の要求に応じて書類をBに送付し、必要事項を記入して送り返すようにと電話で連絡したとしても、組合の関与を排除して交渉しようとしたものとはいえない。したがって、組合の運営に対する支配介入には当たらない。
(争点3)
組合からの、Bの労災問題等を議題とする令和3年10月7日付け団体交渉申入れに対し、会社1及び会社2が同月13日付け書面を送付したことは、正当な理由のない団体交渉拒否に当たるか否か。
(判断の要旨)
回答書面には、組合が提示した団体交渉の候補日では都合がつかず、日程調整をしてほしい旨が記載されており、団体交渉に応じることが前提となる記載があるから、3か月以上先という、いささか長いともいえる期間の後の日を提示したとしても、会社1及び会社2が団体交渉を拒否したとはいえない。したがって、会社1及び会社2の対応は正当な理由のない団体交渉拒否には当たらない。
(争点4)
会社2が、令和4年4月26日の調査期日において、当委員会に対して本件準備書面を提出したことは、組合の運営に対する支配介入に当たるか否か。
(判断の要旨)
本件準備書面に記載された内容は、会社2が、組合の主張に対して、自己の主張を展開したものであって、組合の運営に対する支配介入には当たらない。
このページの所管所属は労働委員会事務局 です。