更新日:2024年6月25日
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神奈川県労働委員会(会長 浜村彰)は、標記の事件について、申立人の不当労働行為救済申立ての一部を救済する命令を交付しました。
申立人 X(組合)
被申立人 Y(法人)
本件は、法人が、【1】組合員Aの定年後再雇用を拒否したことが労働組合法第7条第1号に、【2】団体交渉で、組合が提出した告発書に対して、誠実に対応しなかったことが同条第2号に、【3】団体交渉において組合の成立要件に言及したこと等が同条第2号及び第3号に、【4】組合に対し、組合ビラの内容に虚偽記載があるとして、組合の執行委員長に対する懲戒処分を示唆したこと(本件通知)並びに【5】職員以外の組合員が病院の敷地等に立ち入った場合には、組合に対して会議室の貸与を行わないとしたことに加えて、執行委員長に対する懲戒処分を示唆したことが同条第3号に該当する不当労働行為であるとして申立てのあった事件である。
(1) 主文
ア 法人は、組合に対し、団体交渉において組合が提出した本件告発書に関する調査について、その経過及び内容を示し説明しなければならない。
イ 法人は、組合員のうち法人に在籍している職員が1名であることを理由に、組合が申し入れた団体交渉を拒否してはならない。
ウ 法人は、本命令受領後、速やかに陳謝文を組合に交付しなければならない。
エ その余の申立てを棄却する。
(2) 争点及び判断の要旨
(争点1)
法人が、Aを定年後に再雇用しなかったことは、組合員であることを理由とする不利益取扱いに当たるか否か。
(判断の要旨)
組合が、Aの組合加入を明らかにする前に、法人は、Aの再雇用について方針を決定し、再雇用を見送ったものといえるから、組合員であることを理由とする不利益取扱いに当たらない。
(争点2)
団体交渉及びその後の経過における、法人の本件告発書に対する説明は、不誠実な交渉態度に当たるか否か。
(判断の要旨)
法人が、団体交渉で、本件告発書について調査し回答すると述べたにも関わらず回答しなかったことは、不誠実な交渉態度に当たる。
(争点3)
団体交渉において、法人が組合の成立要件について言及したことは、不誠実な交渉態度及び組合の運営に対する支配介入に当たるか否か。また、法人が組合員のうち法人に在籍している職員の人数を理由に団体交渉を打ち切ったことは、正当な理由のない団体交渉拒否に当たるか否か。
(判断の要旨)
組合が、労働組合として成立要件を満たしている旨を説明したにも関わらず、法人が、組合の人数にこだわり、組合の成立要件について言及したことは、組合の運営に対する支配介入に当たるが、法人の、その発言のみをもって、不誠実な交渉態度には当たらない。法人が組合員のうち法人に在籍している職員の人数が1名であることを理由として団体交渉を打ち切ったことに正当な理由は認められない。
(争点4)
法人が、組合に対し、本件ビラの内容について、本件通知をしたことは、組合の運営に対する支配介入に当たるか否か。
(判断の要旨)
組合による本件ビラの配布は、正当な組合活動に当たり、法人が、組合に対して、本件通知をしたことは、今後の組合活動を委縮させ、組合の弱体化に繋がるおそれのあるものであるから、組合の運営に対する支配介入に当たる。
(争点5)
法人が、職員以外の組合員が病院の敷地等に立ち入った場合には、組合に対して会議室の貸与を行わないとしたことに加えて、執行委員長に対する懲戒処分を示唆する警告書を送付したことは、組合の運営に対する支配介入に当たるか否か。
(判断の要旨)
法人には、本件警告書を組合に送付することにより、組合の弱体化ないし反組合的な結果を生じ、または生じるおそれがあることについて認識、認容があったと認められるから、組合の運営に対する支配介入に当たる。
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