更新日:2024年5月29日

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平成16年度調査研究課題の概要

調査研究課題の概要です。

1特定研究

調査研究課題名 概要 行政政策上の効果

化学物質の地域リスク評価手法に関する研究

1.インベントリーの整理
PRTRデータの発生源構成を参考にしながら、発生源種類の再検討や排出係数の見直しを行い発生源インベントリを整理する。関連する統計情報や地図情報などは、対象化学物質以外の物質に対しても人間活動の基礎情報として活用できることからデータベース化・GIS化を行う。
2.大気に係る人の健康リスク評価
SPM中のECおよびPAHsの実測を行い、PAHs/ECを算出し、ECの排出係数を用いてモデル推計した環境予測濃度と組み合わせることによりPAHs環境予測濃度を求めるとともに、VOCの対象物質に関しても同様の計算を行う。次に、これらの環境予測濃度とユニットリスクから人の健康リスクの地域分布を求める。さらに、別途実施する沿道における対象物質の実測により、対象化学物質の減衰傾向を把握し、県内の沿道暴露人口を推計する。
3.河川に係る生態リスク評価
農薬を対象物質として、実測により求めた水田からの流出係数などを用いた濃度予測モデルにより推計したPEC(予測濃度)とPNEC(推定無影響濃度)の比をリスク評価値として評価を行う。
4.環境リスクの評価、検証および環境リスク管理の検討
環境リスク管理の面から見て、発生源ごとの寄与や将来の濃度予測に向けた検討を行う。

事業場、自動車、船舶及び航空機をはじめとするけ県内の発生源のデータベースを提供できる。
基準年の環境濃度マップ及び大気に係る地域リスクマップ、工場周辺或いは幹線道路沿道の暴露人口等の環境リスクを提供できる。
河川に係る流域リスクマップについて、目標年の環境濃度マップ作成及び環境リスク推計手法の手順書を提供できる。

2-1重点経常研究

研究課題名 概要 行政政策上の効果
ディーゼル車対策による環境中へのPM2.5及び有害化学物質排出削減効果の推定 1.ディーゼル車排出ガス中のPM2.5及び有害化学物質成分を把握する。
2.ディーゼル排気粒子を除去するためのPM減少装置(DPF及び酸化触媒)について、除去性能を調査する。
3.高濃度汚染の幹線道路沿道の自動車排ガス測定局でPM2.5及び有害化学物質の運行規制前後の環境実態調査を行い、環境濃度の変化を把握する。
4.ディーゼル車規制の実情を情報収集し、1、2、3のデータとの関連から、PM減少装置(DPF、酸化触媒)の装着やより低公害な車への買換えなどによるPM2.5及び有害化学物質の削減効果について推定する。
環境基準達成のためにディーゼル車対策の施策を行う上で、DPF装着やディーゼル代替低公害車普及の必要性に対する科学的な根拠を提供できる
環境リスクに対するディーゼル車寄与率を算出する際に不可欠な排ガス中に含まれる有害化学物質の排出係数を提供できる。
最終年では、平成15年のディーゼル車規制(より低公害車への買い換え、PM減少装置の装着など)の削減効果を推定する。また、県総量削減計画中の平成17年度(中間点検年度)における新長期規制を踏まえた予測を行い、平成22年度の目標年度に向けた提案を行う。
二段階化学的硝酸還元法及び高級アルコールを利用した生物的脱窒処理

1.化学的還元法
硝酸化合物を亜硝酸化合物に還元し、さらに亜硝酸化合物を窒素ガスに還元する2段階還元処理法について検討する。
還元条件、適用濃度、反応時間等について明らかにする。
2.生物的脱窒法
パルミチルアルコールを固形脱窒剤として、浮上式不織布接触材の組み合わせによる硝酸性窒素の生物的脱窒処理について検討する。
流入負荷量、共存物質の影響等について明らかにする。

水質汚濁防止法の有害化学物質の適正な処理技術を開発することにより、排水処理の適切な発生源指導と汚染地下水の修復が可能となる。
最終処分場の廃止に向けた安定度判定に関する研究 1.浸出液について
浸出液の廃止基準項目の中から濃度の変化が大きい項目を中心として、豪雨に伴う短期的な濃度、負荷量の変化、季節変動を把握し、適切な測定時期を把握する。長期的な濃度の推移については、行政検査データを活用する。また、廃止基準項目以外の有機物の豪雨に伴う短期的な負荷量の変化と季節変動を調べる(なお、季節変動については3年間の変動をみる)。浸出液に含まれる有機物の中で代表的存在である廃プラスチック類由来のビスフェノールAについては負荷量に応じて、浸出液対策を講ずる必要があると考え、その判断材料の一項目として実態を把握する。
2.発生ガスについて
通気装置から発生するガス中のメタン、硫化水素等のモニタリングを行い、成分の季節変動、濃度推移を把握することにより、最終処分場の安定度を判断する材料に用いていく。また、通気装置のない最終処分場では、簡易なガス発生地点の探索法について検討する。
最終処分場の廃止に係る基準のより適切な運用が可能となる。
最終処分場のより適切な維持管理指導に役立つ。
技術検討会等への提案が行える。

2-2一般経常研究

研究課題名 概要 行政政策上の効果
水田とその周辺水域における水生動物の分布と利用形態 酒匂川水系鬼柳用水路周辺の水田とその周辺水域について調査を実施する。
1.水田とその周辺水域における水生動物の分布
水田とその周辺水域の水生動物の種類組成と分布状況を調査する。
2.水田とその周辺水域の間を行き来する水生動物調査
水田とその周辺水域の間を行き来する水生動物、主に魚類の種類組成、体長等を調べる。
3.水田に除草剤等農薬を散布した後の水生動物の分布と移動
水田に除草剤等農薬を散布した後に水生動物の分布を調べ、散布前の種類組成と比較検討を行う。また、散布後の種類組成の変動も調査する。
4.水生動物の休耕田利用調査
耕作田と休耕田と水生動物の種類組成の相違とその利用について調べる。
5.これらの結果から、水生動物が水田とその周辺水域をどのように利用し、それぞれの生活史を完結しているかを明らかにし、これらの水域が生物多様性の保全の上で重要であるかを検討する。
水田とその周辺水域の生態系保全を図るうえでの基礎的な資料を提供できる。
水田を含めた里地・里山の生物多様性保全を推進できる。
水域の生態系保全を目的とした流域管理のためのGISデータベース化に関する研究 1.非点源(農地)からの化学物質の排出特性の把握と濃度予測モデルの検証
PRTRにおいて非点源となる農地(田)で農薬の散布時期前後の水質調査を行い、水質濃度予測モデルに必要な排出特性の把握を試みるとともに、濃度予測モデルの検証のための河川水質調査を行う。
2.河川環境濃度の予測
濃度予測モデルを用い、PRTR情報、水量、1で把握した排出特性から河川環境濃度を予測する。
3.NPO参加による河川情報収集のための調査の実施
一般向けの調査手法(マニュアル等)を確立し、NPOによる水生生物分布、河川状態に関する調査を実施し、データベース構築のための河川情報収集を行う。
4.河川データベースの構築
国環研から提供されるシステムを用い、1~3により収集された河川情報を一元化したデータベース構築を行う。
水域における生態系保全を化学物質と河川構造物の両面から評価することができる。
生態影響評価にあたり流域全体を視覚的に表示し空間的に定量化したツールとして提供できる。
市民参加型の環境保全活動の推進に資する。
大気中二酸化炭素濃度と地域別排出量の把握 1.大気中二酸化炭素濃度の地域分布、経年変化の把握
大気中の二酸化炭素濃度は社会活動に伴う局地的攪乱要因が多いため傾向変動の把握に困難を伴うが、反面、排出抑制対策の実施、経済活動の消長に伴って生じる排出量の増減が速やかに濃度変化に反映されるという特徴を持つ。そこで、二酸化炭素観測データの性質の解析に基づき、大気中二酸化炭素濃度の地域分布、経年変化の把握を行う。
2.二酸化炭素排出量と大気中二酸化炭素濃度の照合
二酸化炭素排出量と大気中二酸化炭素濃度を照合し、両者の相関関係を検討する。
排出抑制対策の実施効果を検証するための手法を確立する。
市町村などの地球温暖化対策の取組に資する。
二酸化炭素濃度及び二酸化炭素排出量を県民・企業等へ提供することにより、啓発、環境学習効果が期待できる。
本研究の成果をもとに、今後、地球温暖化に対する施策効果を検証することができる。
汚染土壌中の特定有害物質等の計測技術の研究 平成16年度は、総水銀、カドミウム、鉛、砒素、6価クロム、ふっ素、ほう素、セレン及び全シアンのうち、15年度研究で未検討であった物質について土壌中の含有量の分析方法を検討する。その検討結果をふまえて、実際の汚染土壌事例に適用し、検証する。更に、PRTR法対象物質のうち、分析方法が確立されていない有害金属類について検討を行う。 「特定有害物質」等についての分析方法を検討・確立することによって、実際の土壌汚染事例に即時対応が可能となると共に、指定調査機関への有効な指導・助言が可能となる。更にPRTR法の適切な運用の一助となる。
複合交通騒音の評価指標に関する研究 1.社会調査
実際に生活を営んでいる人々の複合交通騒音に対する住民反応を把握するために、社会調査を実施する。調査場所は、神奈川県内で、道路交通騒音と航空機騒音の両方が主音源となっている地域とする。加えて、この複合交通騒音の心理構造をより明解なものとするために、道路交通騒音あるいは航空機騒音のどちらかが主音源(以下、「単一交通騒音」という。)となっている地域、主音源が存在しない地域においても社会調査を実施する。社会調査終了後に、住民への複合交通騒音の暴露量を推定するために、地区ごとに騒音測定を実施する
2.心理評価実験
居室空間を模擬した実験室(横浜国大建築実験棟の無響室)において、心理評価実験を実施する。音源としては、複合交通騒音、単一交通騒音を用いる。実験は、建物内で録音した交通騒音を被験者に暴露し、騒音に対する被験者の反応を測定する。
3.複合交通騒音の評価手法の提示
社会調査と実験室研究の結果から、複合交通騒音を対象として、1.心理構造の解明、2.評価モデル(評価指標)の決定、3.評価指標の基準値の設定を検討する。2.については、1.の検討結果や既往の研究・知見から提案されている7種類の評価モデルをベースとして、最適なモデルを提案する。3.については、個人差・地域差が基準値に及ぼす影響についても検討を行う。
現在、複合騒音が問題となっている場合には、個々の音源に対する規制基準や環境基準を判断の拠り所としているが、この方法では日常生活における複合騒音の影響を正しく判断できない。このような問題を解決する上での科学的根拠として活用できる。
個人差本研究では、航空機騒音と道路交通騒音に特化して研究を進めるが、本研究で得られる複合交通騒音に対する評価指標とその基準値は他の音源にも適用可能である。そのことにより日常生活において快適に生活するための複合騒音の目標値を設定することができる。
環境影響評価においても、複合騒音の評価が確立されていないために、それぞれの騒音を対象として予測・評価を行う事例も少なくない。本研究で提案する評価指標の基準値を目標値とすることにより、それぞれの騒音の発生許容値を設定することが可能となる。このことは、住民側の視点や要望に立脚した対策を講じることにつながる。
道路に面する地域の環境騒音の推計方法に関する研究 道路に面する地域の環境騒音の推計方法については、既にいくつかの推計式が提案されている。推計式は、主として、無響室を使用した音響模型実験の結果から導かれたものであり、道路からの距離帯別の平均的な推計値を与えるものである。一方、環境騒音の評価量として、物理的意味の明らかな等価騒音レベルが導入されたことから、本研究では、新たな試みとして、簡易測定により環境騒音を把握する手法、すなわち、簡易測定値から推計値を導く方法について検討する。簡易測定による方法は、測定値にその地域の固有の環境騒音の状況が反映されることから、より実態に近い推計値を与えるものと思われる。
1年目に、簡易測定方法の開発を行う。2年目に、その方法による測定値といくつかの推計式、例えば「騒音に係る環境基準の評価マニュアル」による推計値との相互比較を行い、測定方法の妥当性等について検証する。3年目に、簡易測定値から環境騒音を推計する手法、すなわち実測値から推計値への変換手法の開発を行う。なお、環境騒音を推計する場合、推計条件となる建物群立地密度や建物面積などをGISなどの電子データから入力する方法についてもあわせて検討する。
1年目の中間報告として、道路に面する地域(背後地)において騒音レベルを測定する場合、道路端との同時測定により、背後地における除外音の特定や騒音レベルの算定などが容易に行えることを確認した。
面的評価の推計手法が確立されることにより、騒音規制法に基づき、都道府県に実施が義務づけられている自動車騒音の常時監視が効率的に行える。
実効性のある環境騒音の面的評価が可能となる。
地域の環境騒音の実態を詳細に把握することが可能になり、防音壁の設置、低騒音舗装の施工あるいはバッファビルの誘致等の地域の状況に合った騒音対策を促す資料が得られる。
環境総合統計データベースの構築と効果的な提供手法の確立 1.OECD体系に基づく環境情報の種類及び所在確認
OECD体系に基づく環境情報について県レベル又は市町村レベルの情報の所在を確認する。
電子化の有無、インターネットでの公開の有無を調査し、データ収集を行う。
2.データベースの開発
必要に応じ、情報をデータベース化する。
既に、インターネットで公開されている情報にはリンクのためのデータベースを検討する。
3.体系化した目次の作成
体系化した目次を作成し、情報の取り出しを容易にする。
4.インターネット公開
環境基本計画や環境白書とリンクし、体系的な目次など、わかりやすい形で公開する。
5.他のデータとの連携
国や他県の同様のデータと連携し、相互比較を可能にする。
環境を評価する際の基礎情報を世界共通の体系で公開することで、県民と行政の評価の視点を一致することができる。
環境基本計画や環境白書で必要とされるデータが継続して一元管理でき、同じ視点で評価ができる。
国や他県との比較が容易となり、県の特徴が明らかになることで環境について理解しやすくなる。

3行政依頼研究

研究課題名 概要 行政政策上の効果
未規制発生源からのダイオキシン類の発生実態 1.ダイオキシン類が発生している作業工程で使用されている物質から、発生メカニズムを推定する。実験方法は、金属片及びフラックスを燃焼ボートに入れ、電気炉中で加熱する事によりダイオキシン類が生成するか確認をする。
2.ダイオキシン類の発生抑制方法と環境への排出量の低減方法を検討する。金属の種類や、フラックスの組成によってダイオキシン類の生成量がどのように変化するのか検討する。これによりダイオキシンの生成を抑制するための指針を明らかにする。
ダイオキシン類特別措置法の特定施設として追加するよう国へ働きかけることにより、同様の作業工程からのダイオキシン類の排出を抑制し、環境リスクの低減が図れる。

4共同研究

研究課題名 概要 行政政策上の効果
不法投棄廃棄物等に含まれる化学物質の包括的計測手法の開発に関する研究 研究は大きく2つのグループに分かれており、即応フェーズのグループでは現場である程度の状況把握が出来るような廃棄物中化学物質の簡易分析法開発を行う。ミニカラムなど迅速な前処理のための器材開発や既存分析法の整理統合を行う。
当所で担当するのは廃棄物中化学物質精密分析手法の開発(精密フェーズ)である。廃棄物が埋め立てられていると、浸出水中に廃棄物に起因する化学物質が溶けだしてくることが考えられ、浸出水中の化学物質を検出することにより廃棄物組成についての情報が得られる。浸出水中の化学物質は親水性で難揮発性のものが主流になると考えられるため、分析機器にはLC/MSを用いる。14年度にはプラスティック系廃棄物の指標となる臭素系難燃化剤の分析法を開発した。ゴム系廃棄物の指標となる老化防止剤についても同様に開発中である。その他、プライオリティの高い物質を100種程度リストアップし、廃棄物中に含まれている場合の検出条件をまとめる。未知の廃棄物を粉砕して水に浸積し、溶け出してくる化学物質中に問題のある物質があるかどうかを見極められることが一つの目標である。
不法投棄廃棄物によって環境が汚染された場合に、汚染物質を特定して実態把握、原状回復作業を容易にし、行政が事業者責任の追及や原状回復に投じる人的、経済的負担の削減が期待できる。

5産学公地域共同研究等

研究課題名 概要 行政政策上の効果
建設発生木材のリサイクルに関する研究
ー建設発生木材のリサイクルに向けた安全性管理手法の確立ー
文献検索や薬剤処理木材の実態調査等により、使用量が多く、毒性が高いCCA(クロム、銅、ヒ素)薬剤、クレオソート、クロロピリホス等の塩素系防虫剤を研究対象物質とした。これらの物質の使用木材を建築発生木材処理現場で抽出するために目視や嗅覚の感応試験やジフェニルカルバジドを用いた発色試験を行い、抽出できることを確認する。抽出した木材の分析結果とこれら木材の重量等から建設発生木材全体に混入するCCA等の含有量を算出する。建設発生木材を破砕したリサイクルチップについても含有量を求める。さらに、リサイクル製品の含有状況調査を行う。リサイクル製品によってリサイクル工程が異なるため、原料のチップに含まれるCCA等は製品になったときに変化する。リサイクル工程でのロス分は、環境への流出も考えられるため、行方を把握しておく必要がある。そのために、リサイクル原料チップに含まれるCCA等のリサイクル工程、製品化に至る挙動を把握する。
CCA等の人への暴露、摂取量は、リサイクル原料チップが歩道舗装材のように直接人と触れる場合、家畜の敷きわらのように家畜から間接的に人に取り込まれる場合、パーチクルボードのように直接人とは触れない場合や紙のように原型を留めないまでに加工されて人と触れる場合など異なる。リサイクル製品毎にCCAやクレオソート等の安全性評価を行い、建設発生木材を適切に処理し、安全なリサイクル製品を作成するための安全性管理手法を確立する。
建設発生木材のリサイクルに向けた安全性管理手法が確立できることにより、以下の効果が期待できる。
リサイクルの安全性管理により、リサイクル製品が新開発され、建設発生木材のリサイクル率が向上するため、リサイクルシステムに組み込まれやすくなる。
リサイクル工程における、有害化学物質の環境への負荷低減に貢献できる。
リサイクル製品の化学的安全性が確保できる。

6重点基礎研究

研究課題名 概要 行政政策上の効果
非イオン界面活性剤の水環境中分解過程における内分泌かく乱作用特性に関する研究 近年、化学物質の人や生物に与える影響の一つとして内分泌攪乱作用が懸念されており、環境庁による平成10年の「環境ホルモン戦略計画SPEED'98」策定以降、国等では環境実態調査の実施等、さまざまな対策が推進されてきた。県が平成14年度までに実施した調査では、国のリスク評価により魚類に対する内分泌攪乱作用が確認されたノニルフェノールが、その最大無作用濃度を超えて検出されており、水生生物への影響が懸念される。
一方、平成14年度より完全施行された化学物質排出把握管理促進法(PRTR法)に基づく第一回目の集計結果によると、神奈川県内のノニルフェノールの環境への排出は0.1トン/年であるが、ノニルフェノールを原料として製造される非イオン界面活性剤のポリ(オキシエチレン)ノニルフェニルエーテルは、業務用の洗浄剤や農薬の分散剤等として多岐に使用され、環境中への排出は28トン/年(全国の1.3%)と集計されているほか、下水処理場へ流入し処理されている量は123トン/年と推計されている。この物質の環境検出濃度は、県内河川におけては低く、環境中または下水処理により多くは分解していることが考えられるが、その分解生成物の種類や、それが水生生物に対する影響は不明である。
本研究では、河川水にポリ(オキシエチレン)ノニルフェニルエーテルを添加して自然環境を模した分解モデル実験を行い、分解中間物を含むこの実験水を検水としてバイオアッセイ試験を実施し、水環境中での分解過程における内分泌かく乱作用特性を評価することを目的とする。併せて、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ノニルフェノール等の濃度測定を機器分析にて行い、内分泌攪乱作用が既知の物質の寄与を確認し、未知の化学物質による内分泌攪乱特性を推定する。
本研究では、生態影響の一つである内分泌攪乱作用をエンドポイントとして、ELISA法という簡易な手法を利用することにより、環境中での分解生成物も含めた環境評価手法を確立することが期待できる。
ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルやその環境中での分解生成物をLC/MSで測定することにより従来のガスクロマトグラフ質量分析計では得られなかった新たな知見が得られる。
本研究において構築された、試験生物の安定供給や試験設備の構築といった生態影響評価試験のための体制は、今後、本センターにおいて、OECD等で規格化された生態影響評価試験の実施に幅広く活用することができ、今後、急性毒性や慢性毒性等も含めた河川の総合的なリスク評価研究の基礎となる。
丹沢山地の環境オゾンがブナ苗に及ぼす影響 近年、日本各地で樹木の衰退が報告され、神奈川県においても、大山のモミ林や丹沢のブナ林の衰退が顕著となっている。丹沢のブナ林の衰退については、気象の変化、樹木の老齢化、土壌の酸性化、病害虫、シカの食害、大気汚染の影響など様々な要因が挙げられているが、原因を特定するには至っていない。
環境科学センターでは、特に大気汚染に注目し、丹沢山地におけるオゾンや酸性霧の実態把握等を行い、オゾンや硫黄酸化物、窒素酸化物などの大気汚染物質が首都圏から移流していることや、丹沢山地におけるオゾンは樹木への影響が考えられる40ppbを遙かに超える高濃度が出現していること、酸性霧により樹木から金属イオンが溶出することなどを明らかにしてきた(重点基礎研究等)。
さらに、丹沢山地のブナ林衰退に対する大気汚染の影響を確認するため、平成13年度にブナ林衰退地に近接する場所にオープントップチャンバーを設置し、平成14~15年度に大気汚染物質(主にオゾン)がブナの生長に及ぼす影響を目視で観察した。その結果、オゾンの影響でブナ苗の黄葉・落葉が早まっていること明らかとなった。黄葉、落葉が早まれば、ブナの生育に影響が出ることが考えられる。
そこで、本研究では、オゾンがブナ苗に及ぼす影響をより詳細に検討し、オゾンがブナ苗生育に及ぼす影響をより早く、簡便に評価できる指標を得ることを目的とする。
また、前年に引き続き、目視観察を行い、生長量の測定を行う。
丹沢におけるオゾンのクリティカルレベルを決定することにより、オゾンの原因物質である窒素酸化物や炭化水素の規制の根拠資料とすることができる。
また、公共交通の利用促進など、県民のライフスタイル変換への啓発資料とすることができる。
渋滞交差点における自動車からのNOx・PMの排出及び削減に関する研究

本県では依然として自動車排出ガス測定局(自排局)の窒素酸化物(NOx)及び粒子状物質(PM)の環境基準達成率が低いことから、平成22年の全地点での環境基準達成に向けて昨年7月に「神奈川県自動車排出窒素酸化物及び自動車排出粒子状物質総量削減計画」が立てられた。
現在NOx・PM法の車種規制並びに本県の生活環境保全条例に基づくディーゼル自動車の運行規制が行われており、自動車排出ガスの大気汚染への寄与は減少するものと考えられる。
しかし、自動車が集中する地域、特に大規模幹線道路の渋滞交差点付近では局地的にNOx・PM等の汚染が著しく、平成22年までの環境基準達成が難しいことが懸念されている。これらの地域では上記の単体規制や運行規制に加えて実情に応じた汚染対策が必要と考えられる。
このため、常にアイドリングや加減速を繰り返す交差点での自動車の走行状態の把握と、その走行状態に基づくNOx・PMの排出状況の推計を行う必要がある。
現在のNOx・PM排出量の推計は国の公定走行モードである10・15モードをベースとした排出係数を用いており、交通過密地域の実情を反映した推計方法とはなっていない。このことから、交通の実情を反映した交差点特有の走行モードを用いてNOx・PMの排出係数を算出し、得られた排出係数を用いて排出量の推計を行う必要がある。
また、自動車排出ガス対策のひとつとして、当所で提案したアイドリング・ストップの導入が考えられるので、交差点の走行モードを用いてアイドリング・ストップの実施による排出削減効果の把握を行う必要がある。
そこで本研究では、交通が過密な交差点の走行モード(交差点走行モード)を作成し、交差点走行モードと公定走行モードによるNOx・PMの排出係数の算出・比較を行うこと及び交差点走行モードにおいてアイドリング・ストップを実施した場合の排出削減効果の把握を行う。

本研究で得られた排出比を基に、汚染地域の走行台数及び既に公表されている車種ごとの公定走行モードの排出係数を用いて交差点の排出量を推定する手法を確立する。
また、将来的には交差点の走行状況に応じた汚染対策案の具体策(自動車の単体規制のみで可能か、或いは信号改良等交通流対策が必要か等)の導入に役立てることができる。

7政策課題研究

研究課題名 概要 行政政策上の効果
有機性廃棄物の水素発酵技術の開発に関する研究 非燃料型で環境に優しい利用価値の高い燃料電池により発電する方法が注目されている。
燃料電池は水素と酸素とを反応させるときに電気エネルギーを発生する。現段階の水素発酵技術は、水素生成菌の発酵条件に関する基礎的知見などが不足し、まだ開発期にある。本研究では、実用化にふさわしい新規の水素生成菌種の検索・最適発酵条件など研究し、有機性廃棄物の減量化の可能性についての検討も進める。
有機性廃棄物のリサイクルに役立つ技術
非化石燃料型の環境に優しい燃料電池に利用でき、エネルギー対策としても有効

 

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