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更新日:2024年10月21日

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環境活動の実践から~NPOの環境活動と安全対策事例~

環境学習,NPO,活動,安全

著者プロフィール

 濱辺謙吉 NPO法人神奈川県環境学習リーダー会 理事はまべさん写真

 生年月:1949年10月 
 出身地:東京都 
 現住所:茅ヶ崎市 
 職歴:建設材料の研究開発、製造、環境と安全衛生 
 趣味:サイクリング 
 NPO活動履歴:2013年神奈川県環境学習リーダー会入会、安全担当理事就任、ケナフで紙漉き、安全講習、河川環境体験教室、酸性雨のしくみ、水の浄化体験教室等担当

1 廃食用油とか性ソーダを使った石けん作り

 廃食用油をか性ソーダでけん化する手作り石けんの教室は、廃食用油による環境汚染防止対策の一環として、また油脂とアルカリの反応の体験、作製した石けんを実際に使用できる楽しさもあって人気があります。
 しかし、この一連の操作は強いアルカリ性のか性ソーダを使用するために多くの危険性を伴っています。これらの危険性について操作順に説明します。

1.1 か性ソーダの危険性

苛性ソーダと石けん か性ソーダは最も強いアルカリ性物質の一つです。皮膚や粘膜等のタンパク質を分解する性質があり、皮膚に付着した場合は完全に取り除かない限り、次第に深い部分まで達することがあります。眼に触れた場合は危険性が高く、失明に至ることがあります。
 固形のか性ソーダは白色半透明のフレーク状及びペレット状で販売されており、空気中の水分を吸収して徐々に溶ける潮解性があります。
 か性ソーダは政令により劇物に指定されており、十分な知識を持たずに取扱うことは避けなければなりません。劇物とは、体重が60キログラムの成人が3グラム以上、18グラム以下誤飲した場合に死に至るもの、或いは強い刺激性があるもので医薬品、医薬部外品以外のものとされています。
 か性ソーダ及びこれを含むものを扱う操作はゴム手袋、保護メガネ、前掛け、ゴム長靴、マスク等の保護具を必要に応じて正しく着用し、直接皮膚や粘膜に触れないようにしてください。目に入った場合は直ちに流水で15分以上洗眼し、早急に眼科医の診察を受けてください。
 固形物や水溶液等をこぼした場合は直ちに回収してください。水溶液は多量のボロ布に吸収させ、ポリ袋に入れて密封し、処理方法は最寄りの役所に問い合わせてください。ふき取った跡は多量の水で洗い流してください。
 強いアルカリ性の水溶液は酸で中和してから廃棄します。中和剤にはクエン酸の水溶液、中和の確認はpH試験紙を使用すると良いでしょう。

1.2 石けんの作製と危険性

 1) か性ソーダの計量

 か性ソーダの計量はポリ容器にこぼさないように量り取ってください。

 2) か性ソーダの溶解

 か性ソーダを溶解する方法は、か性ソーダに水を加える方法と、水にか性ソーダを加える方法が紹介されています。ここで作製する水溶液の濃度は一般に30%程度で非常に危険な高濃度水溶液です。
 か性ソーダに水を加えると直ちに発熱し、強いアルカリ性の刺激臭のある気体を発生します。また、かくはんせずに行った場合、激しく沸騰し、爆発的に噴き上げることがあります。これらの反応は量が多い程激しくなります。
 このため、か性ソーダは必ず水にかくはんしながら徐々に加え、先に加えたものが全て溶解した後、残りを徐々に加えて溶解します。この操作に使用する容器は堅牢なポリバケツ等を使用し、アルミニウム等の金属容器は水素ガスの発生を伴い溶解されますので使用しないでください。

 3) 廃食用油の添加と混合

 廃食用油はか性ソーダが全て溶解した後、かくはんしながら徐々に加えます。廃食用油を加えると、直ちにけん化反応が始まり穏やかに発熱します。
 一般に、茶色の廃食用油とか性ソーダ水溶液を混合すると、反応が進むにつれて白っぽくなり、粘度が増してきますので飛び散らぬよう、ゆっくりかくはんしてください。

 4) 成形

 型に流し込んで成形し、冷えて固化してから持ち帰りますが、この状態では未反応のか性ソーダが残っており、pH 11以上の強いアルカリ性ですので、素手で触ることは危険です。硬化が不十分で粘性があるものが皮膚等に付着した場合は流水で十分洗い流してください。

 5) 熟成

 未反応のか性ソーダが残っている間は石けんとして使用することはできませんが、約1ヶ月間熟成すると反応が進み、か性ソーダが中和されて使用できるようになります。

1.3 か性ソーダの保管

 保管中の思わぬ事故、例えば容器の転倒や腐食等により内容物が漏洩することがあるので家庭内に保管しないでください。やむを得ず保管する場合は内容物を表示して密閉し、子供が触れないように保管してください。

1.4 ペットボトルの利用

 一連の操作をペットボトルで行う方法が紹介されていますが、これらの操作は発熱を伴うため、ペットボトルの中で行うと内圧が上昇し、蓋を開けるときに噴き出す恐れがあります。また、ペットボトルに傷が付いていると破裂する恐れがあります。
 このように、ペットボトルを使用する操作は多くの危険を伴います。やむを得ず使用する場合は傷のない耐圧性の炭酸飲料用を使用し、振り交ぜや開栓は0.05 mm上の厚みのあるポリ袋の中で行ってください。蓋を開けると内容物が漏れ出し、ペットボトルの外側に付着していることがありますので、素手で触らないように注意してください。

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2. 酸性雨の生成実験

 自動車や工場、火力発電所等から化石燃料の燃焼に伴う排気ガスが放出され、多くの深刻な大気汚染をもたらしました。これらの排気ガスに含まれる二酸化硫黄や窒素酸化物は光化学反応等によって硫酸や硝酸を生成し、雨水に溶け込んで酸性化し、世界各地に多くの被害をもたらしました。
 雨が酸性化する様子を子供達が目で見て理解できる実験を以酸性雨の生成実験写真下のように行いました。

 ガラス容器の中に水蒸気を導入し、内面に結露させ水滴を作ります。この水滴にpH試験紙を貼り付けて中性であることを確認します。次に、ラップフィルム(ポリ塩化ビニリデン系)の小片を1枚のティッシュペーパーで包んで燃焼し、発生する気体をこの容器の中に導入します。すると直ちに水滴が酸性化し、pH試験紙が緑色から赤く変色して、酸性化している様子が視認できます。
 この実験で使用したラップフィルムの燃焼ガスは刺激臭があるため、会場の窓を開け放ち、通風を心掛けましたが、風量や風向きによっては刺激臭が感じられることがありましたので現在は中止しています。

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3. 線香を使って雲を作る実験

 ペットボトルの中に雲を作る実験は、ペットボトルに36℃程度の湯を入れ、核となる線香の煙を入れて蓋をします。ボトルを強く押すと内部は透明になりますが、手を放すと曇って雲が発生する様子を目で見て体感できます。
線香を使って雲を作る実験写真 水蒸気が飽和しているペットボトルを強く押して内部の圧力を高めると、断熱温度上昇によって温度が上がるために水蒸気の飽和度も上がって透明度が増します。手を放すと圧力が下がって温度が下降し、水蒸気の飽和度も下がるために水蒸気が核の周囲に凝集し、微小な水滴となって雲ができます。
 当初は子供達に着火した線香を渡し、ペットボトルの中に煙を入れさせていましたが、燃焼している線香の先端を指でつまんで火傷を負う事故が発生しました。
 火傷は人差し指の指先で、直径約1 mmの水疱ができました。直ちに患部を流水で冷やし、ガーゼ付きの絆創膏で保護しました。
 事故原因の一つは講座の前に着火した線香の燃焼部分は熱く、触れると火傷することを子供達に伝え、注意を周知していなかったことが挙げられました。
 最近では仏壇のロウソクや線香がLEDに変わってきており、燃焼する線香を知らない子供が増えているようです。
 現在、線香の煙をペットボトル内に入れる操作はスタッフが行っています。

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4. 屋外の環境体験教室、川遊びについて

川遊びと生き物調査写真 最も人気が高い環境体験教室の一つに川遊びを伴う教室があります。この教室では魚や水生昆虫等に直接触れ、採取できるので子供達は獲物を詳細に観察し、発見する喜びを知ります。
 湘南地域は多くの良質な河川に恵まれていますが、近年では市街地を流れる河川の水質が改善され、多くの魚や水生生物が生息する場所が彼方此方にあります。
 私達が開催する環境体験教室では、事前に現場調査を行い、当日は安全教育を行った後、保護者と共に川に入り、魚や水生生物を採取します。また、川の水の水質検査を行うこともあります。川から上がり、採取した魚等の名前や特徴を講師が説明します。相模川の下流域では伝統の芝漬け漁が紹介されており、驚くほど多様な魚が採取できることに驚きます。
 このように、屋外の環境体験教室は自然を楽しく学べる良い教室ですが、安全に行うためには詳細な現地調査が欠かせません。また、事前に上流域の降雨、ダムの放水等を調べ、急な増水が無いことを確認し、当日の気温や直射日光を予測し、熱中症の対策を検討しておくことが必要です。また、蚊、虻、蜂、蛇等有害な昆虫や生物の対策も検討が必要です。
 川に入る時はライフベストを着用することが基本ですが、主催者がライフベストを多量に用意することは難しい場合があります。そのような場合はレンタルを利用することも良いでしょう。

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5. 法的責任

 ボランティア活動に従事する人及び活動の主催者は、その活動により発生した事故に対して法的責任を負うことがあります。この責任は通常注意義務であり、危険を事前に予知し、回避することが可能であったにも関わらず、適切な対応を怠ったこと等が問題になっています。
 例えば屋外の教室では事前の調査に基づいて安全な場所を選定し、参加者に危険な箇所や行為を十分説明して周知徹底し、同行の保護者やボランティアの人達に適切な監視を依頼して事故を回避するよう努めること等が注意義務と考えられています。
 思わぬ事故に備えてボランティアの皆さんが怪我をした場合の傷害保険、参加者への賠償保険に加入することも必要でしょう。

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6. 読者へのメッセージ

 ボランティア活動を行う皆さんは、誰もが安全で楽しめるように工夫を凝らしていますので、事故の実績はとても少ないと思います。しかし、これまで大丈夫であっても、次はそうとは限りません。ここに示した事例を参考にして、安全で楽しい有意義な活動を続けて頂ければ幸いです。

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7. 参考資料

1)https://www.jsia.gr.jp/:日本ソーダ工業会「安全なか性ソーダの取扱い」
※トップページから「製品の取り扱い」を参照のこと。

2)https://www.jsia.gr.jp/:日本ソーダ工業会「安全データーシート(SDS)」
※トップページから「SDS」を参照のこと。

3)https://www.city.saitama.jp/:さいたま市「毒物劇物を取扱う皆様へ、安全管理ガイド」
※トップページからサイト内検索で「毒物劇物」を入力し、「毒物劇物を取扱う皆様へ」を参照のこと。

4)https://jsda.org/w/06_clage/4clean_202-4.html:日本石鹸洗剤工業会HP「せっけんメモシート(8)」

5)https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/1310-73-2.html:厚生労働省「職場の安全サイト」

6)https://pro.kao.com/jp/product-support/law/02/#/:花王プロフェッショナル・サービス「製品サポート 劇物とは?」

7)早野清治、津田和也他,「油脂と水酸化ナトリウムからの固形石けん作りの理科的な扱い方について」、北海道教育大学紀要(教育科学編)第64巻第1号、2013、163-171

8)天木桂子、池田揚子、佐々木美千代、「食用油脂を利用した手作り石けんの洗浄性能(第1報)」岩手大学教育学部研究年報第51巻第2号(1992.2)75~84

9)http://www.petbottle-rec.gr.jp/more/kind.html:PETボトルリサイクル推進協議会「PETボトルの種類、もっと詳しく知る。」 

10)https://www.acap.asia/acidrain/:アジア大気汚染研究センター(acap.asia)「酸性雨」

11)http://geo-shibetsu.sakura.ne.jp/jikken/sanseiu.pdf:士別の地質「酸性雨発生モデル実験」

12)高橋佑樹、寺門修、平澤政廣「PVDCの熱分解により生成する有害気体成分の金属酸化物添加による生成抑制の可能性」、プラスチック化学リサイクル研究会討論会予稿集(プラスチック化学リサイクル研究会討論会研究講演発表要旨集)、9th、54-55、2006

13)https://www2.nhk.or.jp/school/movie/clip.cgi?das_id=D0005401260_00000&p=box:NHK for school「雲を作る実験―中学」

14)https://www.ktr.mlit.go.jp/keihin/keihin00694.html:国土交通省京浜河川事務所「河川水難事故防止!川で安全に楽しく遊ぶために」

15)https://www.green.or.jp/library/for-safe/:公益社団法人国土緑化推進機構「子どもたちと森のステキな出会いのために 森林体験学習活動を安全に行うためのQ&A」

16)https://www.green.or.jp/library/for-safe/:公益社団法人国土緑化推進機構「森林体験学習・森づくり作業、安全管理チェックシート」

17)削除

18)https://www.kawa-asobi.net/kanto-area/20180310_5878:一般社団法人Clear Water Project(クリアウォータープロジェクト)「川遊びマップ」

19)https://www.kasen.or.jp/mizube/tabid156.html:公益財団法人河川財団「子どもの水辺サポートセンター」

20)https://www.kasen.or.jp/kasen/tabid43.html:公益財団法人河川財団

21)https://greenfield.style/article/577/:Greenfield.od「川で気をつけたい虫と対策についてポイントまとめ」

22)https://www.river.go.jp/portal/#80:国土交通省「川の防災情報」

23)http://www.river.or.jp/:一般財団法人河川情報センター

24)http://www.city.sendai.jp/sekatsuese/kurashi/anzen/ese/sumai/gaichu/yagai.html :仙台市HP「野外活動では虫に注意、ハチ」

25)http://www.rinsaibou.or.jp/:林業・木材製造業労働災害防止協会「蜂に注意」
※トップページから「労働安全衛生対策」を参照のこと。

26)http://www.rinsaibou.or.jp/:林業・木材製造業労働災害防止協会「蜂刺され災害を防ごう!」
※トップページから「労働安全衛生対策」より「リーフレット」を参照のこと。

27)https://www.wbgt.env.go.jp/:環境省「熱中症予防情報サイト」

28)https://warp.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/12312039/www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000121431_coronanettyuu.html:厚生労働省「新しい生活様式における熱中症予防行動のポイント」

29)https://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-10901000-Kenkoukyoku-Soumuka/0000205703.pdf:厚労省リーフレット「熱中症予防のために」

30)ライフジャケットのレンタル、レンタルショップ「ジャストタイム」

31)スーパーレンタルショップ「ダーリング」

32)有住淑子、「ボランティア活動と法的責任」、2005予防時報221号、14頁

33)https://www.fukushihoken.co.jp/fukushi/front/council/volunteer_events.html:社会福祉協議会 ふくしの保険「ボランティア行事用保険」

34)損保ジャパン「行事(レクリエーション)参加中に被る傷害事故を補償する商品のご案内」

35)https://hoken-kyokasho.com/recreation-insurance:法人損害保険の教科書「レクリエーション保険とは?押さえておきたい補償内容のポイント」

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