更新日:2024年10月19日

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農業(果樹)への影響と適応策

神奈川県における果樹に対する気候変動の影響と適応策

気候変動の影響

 稲や野菜などの一年生作物に比べて、永年性作物である果樹は、気候に対する適応性の幅が狭く、気候変動に弱い作物とされています。
 神奈川県では現在、果実肥大期の高温・多雨によるカンキツでの浮皮、成熟期のリンゴでの着色不良や着色遅延などの、高温による生育障害が見られます。
 また、気温上昇により果樹の開花が早まることで、春の急な低温で花やつぼみなどが凍る霜害のリスクが増大します。
 将来も、同様の影響が予測されています。
 例えば、「温暖化影響評価・適応政策に関する総合的研究」(環境省環境研究総合推進費S-8(2010~2014年))によると、現状を上回る温暖化対策を取らない場合、温暖化の影響でウンシュウミカン栽培適地が減少する予測が示されています。

 

ウンシュウミカンの栽培適地の予測(厳しい温暖化対策を取った場合)ウンシュウミカンの栽培適地の予測(現状を上回る温暖化対策を取らない場合)
ウンシュウミカンの栽培適地の予測(2081年~2100年)
(条件:気候モデルMIROC※、排出シナリオRCP2.6、RCP8.5、基準期間1981~2000年、予測期間2081~2100年)

※気候モデルMIROC
 大気や海洋などの中で起こる現象を物理法則に従って定式化し、コンピュータによって擬似的な地球を再現しようとする計算プログラムを「気候モデル」といい、MIROCは、東京大学、国立研究開発法人国立環境研究所、国立研究開発法人海洋研究開発機構の共同により開発された気候モデルの一つ。

出典:気候変動適応情報プラットフォーム(2019年12月6日利用)

影響に対処するための県による施策(適応策)

 高温障害を軽減するため、技術試験を実施し、対策技術の確立を行うとともに、農家への技術支援を行います。

現在県で取組んでいる具体的な事例

  • ウンシュウミカンの貯蔵技術の開発と農家への技術支援を実施
  • ウンシュウミカン栽培農家に対して、秋の気温上昇が原因の浮皮対策として、植物調節剤の処理を指導。農業技術センターの試験研究においても浮皮対策技術試験を実施
  • リンゴの試験栽培においては、高温障害対策として散水を実施
  • ブドウの着色管理が不要である青系新品種の栽培方法について試験を実施
  • ブドウの着色促進のための夜間かん水を指導
  • ナシの生理障害に対応するため、果実表面温度の測定や袋かけによる効果試験を実施
 

【参考】日本全国における気候変動による影響(概要)

出典:気候変動影響評価報告書(別ウィンドウで開きます)(2020年12月、環境省)

現在の状況

  • 他の作物に先駆けて、温暖化の影響が顕在化
    • カンキツ:浮皮、生理落果
    • リンゴ:着色不良、日焼け
    • ニホンナシ:発芽不良
    • モモ:みつ症
    • ブドウ:着色不良
    • カキ:果実軟化 など

将来予測される影響

  • ウンシュウミカン:現状を上回る温暖化対策を取らない場合(RCP8.5シナリオ)、21世紀末に関東以西の太平洋側で栽培適地が内陸部に移動
  • タンカン:21世紀中ごろ以降、気温上昇に伴い、栽培適地が拡大
  • リンゴ:21世紀末に、東北地方や長野県などの主産地において、適地よりも高温になる
  • ブドウ・モモ・オウトウ:主産県で高温による生育障害発生
  • ニホンナシ:21世紀末に、沿岸域を中心として、低温要求量が高い品種の栽培が困難な地域拡大

 

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