水産業(沿岸域・内水面漁場環境等)への影響と適応策
神奈川県における沿岸漁業に関する気候変動の影響と適応策
気候変動の影響
気候変動による海水温の上昇は、漁獲対象種の分布域に変化を及ぼすことが想定されます。
神奈川県では現在、「磯焼け」による海藻や貝類等の定着性水産生物の変化が現れています。
将来も、同様の影響が予測されています。
影響に対処するための県による施策(適応策)
「磯焼け」の対策として、食害の原因となっているアイゴ等の暖海性魚類について、防除策を検討するとともに食用への活用を研究します。
現在県で取組んでいる具体的な事例
- 磯焼けの原因生物の駆除効果や生態等を調査
- 近年増加しつつある暖海性魚類(アイゴ等)の活用に向けた加工技術の開発と効率的な漁獲方法の検討
【参考】日本全国における気候変動による影響(概要)
出典:環境影響評価報告書(別ウィンドウで開きます)(2020年12月、環境省)
現在の状況
- 各地で南方系魚種数の増加や北方系の魚種数の減少
- 漁獲されるアワビが暖海性小型アワビに変化
- 水温や地温上昇がアサリの資源量や夏季の生残に影響
- 藻場の減少に伴い、イセエビやアワビの漁獲量が減少
- 高水温により、天然ワカメが不漁
- 秋季の高水温により養殖ノリの種付け開始時期の遅れ、年間収穫量減少
- 養殖ワカメの種苗を海に出す時期の遅れ、品質低下、植生魚類による養殖ワカメの食害
- 藻場の減少や構成種の変化(水温上昇や藻食性魚類等の摂食活動による影響)
- 有害有毒プランクトンの発生北限の北上、発生の早期化、シガテラ中毒発生地域の拡大
将来予測される影響
- 多くの漁獲対象種の分布域が北上
- 藻場を構成する藻類種や現存量が変化し、アワビなど磯根資源の漁獲量減少
- 水温上昇により、2100年にはアカモク(ホンダワラ属)が本州の広い範囲で消失
- 現状を上回る温暖化対策を取らない場合(RCP8.5)、高水温と食害の双方の影響により、2090年代にはカジメの生育が困難になる
- ワカメ養殖の芽出し時期の遅れ、漁期の短期化
- ノリ養殖の育苗開始時期の遅れ、摘採回数の減少、収量低下
- 海水温上昇に関係する赤潮発生による二枚貝等のへい死リスクの上昇