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更新日:2023年12月26日
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科学技術関連コラム・バックナンバー(小林委員)
掲載日:2020年10月
このたび、新たに、科学技術にかかわるコラムを神奈川県科学技術会議の委員の皆様にご執筆いただくことにしました。
コラムは随時更新予定です。第5回目は、委員の小林英津子先生です。
人は生きている間、必ずけがや病気になる。そして、たいていの人はできるだけ元のように元気になりたいものである。したがって、「人類の歴史においても、治療という行為はその時代で利用しうる最高の知識や技術を用いて行われてきた」、と恩師の授業で聞いたのが今でも強く印象に残っている。実際に、外科手術用のマスタースレーブ型ロボットが現在使われているが、他の分野でこのような精緻に駆動可能なロボットが日常的に使われている例はないかもしれない。一方で、いまだに神の手と呼ばれる医師がしばしば登場するように、治療という行為に関しては、まだまだわからないことばかりである。
本年3月まで私が所属していた東京女子医科大学先端工学外科研究室では、手術中の患者生体情報を取得・統合し、表示・記録する「スマート治療室」という手術室システムを開発し、昨年より臨床で運用している。これは、普段外科医が頭の中で統合している、患者の生体情報、解剖学的知識、手術の進行具合と意思決定を統合記録し表示するシステムであり、術後にその工程を解析することが可能である。そして、将来的には、患者の予後(術後の状態)を最善な状態へ導くために、外科医の意思決定を支援することを目指している。これも近年のIoTを駆使した最先端技術である。神の手の仕組みも解明され、これまで困難であった治療が、どこででもできるようになる日もそう遠くないかもしれない。
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