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更新日:2023年12月19日
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黒岩知事との“対話の広場”地域版 県西会場の実施結果のページです
“対話の広場”地域版は、知事が県内各会場で県民の皆さんと意見交換をする場です。
県西地域で様々な活動をされている方々の事例発表も交え、皆さんで地域の魅力を再発見し、明日のまちづくりについて話しあっていただきました。
テーマ | マグネット地域 地元農産物を生かした地域活性化をみんなで考えよう! |
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日時 | 平成24年10月14日(日曜日) 14時30分から16時30分 |
会場 | 県足柄上合同庁舎2階 大会議室 |
内容 |
1 知事のあいさつ |
2 地域の事例発表
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3 会場の皆さまとの意見交換(「マグネット地域」) |
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4 「神奈川県緊急財政対策案」・「神奈川州(仮称)構想案」に関する説明及び意見交換 | |
参加者数 | 178名 |
ようこそいらっしゃいました。神奈川県知事の黒岩祐治です。
「知事との“対話の広場”」は、大きく分けて3種類あります。
今日のように地域に出かけて行って、地域の課題について皆さんと語り合う「“対話の広場”地域版」。それから、県庁で随時開催し、その都度テーマを決めて議論する「“対話の広場”Live(ライブ)神奈川」。さらに、緊急の課題についての県の考えをお示しし、皆さんのご意見をお聞きする「知事との『対話の広場』」があります。
今日は、この地域をどうやって元気づけていくのかをテーマに、皆さんとお話をする「“対話の広場”地域版」です。ただ、今回は特別に後半部分で、喫緊の課題、緊急財政対策について、私からお話をさせていただきたいと思っています。緊急財政対策は、皆さんと共通の思いを持って進めなくては前に進まないと思っています。そこで、今日は、県がなぜこのようなことを考え、何をしようとしているのか、私の方からプレゼンテーションさせていただきたいと思います。
私は、「いのち輝くマグネット神奈川」を実現したいと、言ってきました。マグネットというのは磁石です。磁石のように引きつける力、つまり、行ってみたいとか、住んでみたいと思わせる、そういう魅力あふれる神奈川県にしたいということです。そのためには、それぞれの地域がマグネットの力を持つことが大事だと思っています。
この県西地域にも魅力的な所がたくさんあります。今日の午前中、「山北のお峯入り」を見せていただきました。150年もの歴史を持つ民俗芸能を一生懸命継承されている姿を見て、胸に迫ってくるものがありました。こういうのがマグネットの一つだと思います。「山北のお峯入り」といえば、世界中探しても山北町にしかないわけですから、それを見たいと思ってわざわざ来てもらう、そのような流れを作っていきたいということです。
お峯入りの後、開成町の「あしがり郷瀬戸屋敷」を見てまいりました。ここは、単に古民家を再現しただけではなく、一般開放していろいろな形で使えるようになっていて、おもしろいんですね。私も、何かの機会にここを使いたいと思いました。
このような地域に眠っている様々なマグネットの種を見つけ出し、みんなで力を合わせて本物のマグネットにしていくためのきっかけづくり、それが今日前半のテーマです。
昨年もこの地域で対話の広場を開催しましたが、その時は、お一人が金太郎プロジェクトについて、もうお一人は季節の花による地域活性化の取組みについて事例発表をしてくださいました。
今年の県西地域のサブテーマは、「地元農産物を生かした地域活性化をみんなで考えよう!」です。まずはお二人の方に事例発表をしていただき、その後、皆さんと意見交換していきたいと思っています。最後までよろしくお願いいたします。
私はFMおだわらという地域のコミュニティーFM局でパーソナリティーをしておりまして、週2回、夕方4時間の生放送を担当しています。
ある時、スタッフたちと番組の企画を練っている際に、何か特技とか資格はないかという話になりました。私は「日本茶アドバイザー」という資格を持っていたのです。これは「NPO法人日本茶インストラクター協会」が認定している資格で、お茶全般の知識や技術を習得し、消費者の方へのアドバイスやティーパーティーの案内役を行うことができる、初級の指導者資格です。FMおだわらに出演されるのは、大半が一般の市民の方で緊張していらっしゃるので、「お茶で気分をほぐしていただいて番組を進めましょう」ということになり、以来、毎回番組でお茶とお菓子をご紹介しています。
毎週のことですから、いろいろな地域のお茶やお菓子が登場しますが、足柄茶の時は(株)神奈川県農協茶業センターの方にお話を聞いて勉強した上でお出ししています。
FMおだわらで番組を担当する前は、フリーペーパーの記者、ラジオ番組の制作やケーブルテレビのキャスター、レポーターなど、地元の情報を扱う仕事を一貫してやってきました。その傍ら、横浜や東京でも仕事をする機会がありました。その際に、印象に残ったのは、横浜や東京の同僚たちが県西地域の情報をいっぱい持っているということでした。私の地元のパン屋さんのパンを買ってきて、と頼まれることもあり、何でそんなことを知っているのかなと不思議に思っていました。私もそうですが、地元の人というのは、地元のすごさを感じていないところもあるのかなと思います。
足柄茶についても、以前は、「金太郎印のお茶」くらいにとらえていました。地域で暮らしている人が、自分の住む地域のすごさに気付くには何が必要なんだろうと思いながら、日々情報を扱う仕事をしていました。
10年近く前になりますが、小田原市政策総合研究所の市民研究員として地域のことを研究する機会を頂きました。地域資源の掘り起こしを行い、いろいろなものがあることを知りました。でも、この時点ではまだ私の中で地域資源や、地域の情報、趣味で勉強している日本茶はバラバラなものとして存在していました。その後、日本茶アドバイザーの資格を取り、県の「足柄茶ブランド力強化支援事業」の一環で、呈茶(ていちゃ)などの活動に携わるようになり、足柄茶を軸に何かできるかもしれないと、漠然としたイメージを持つようになりました。
その頃、「足柄茶コミュニケーター養成講座」という県の講座を受講し、課題で足柄茶を使ったイベントの企画を考えることになりました。小田原市の南町に「清閑亭(せいかんてい)」という施設があります。これは旧黒田長成侯爵の別邸だった所ですが、私が所属する「NPO法人小田原まちづくり応援団」が管理・運営を任されています。そこで、清閑亭を舞台に課題のイベント企画を考えてみました。すると、それまでバラバラに存在していた地域資源や地域の情報、お茶が一つにつながりだしたのです。
この侯爵はイギリスに非常にゆかりのある方でしたので、イングリッシュ・アフタヌンティーのような形で、地元の足柄茶をお出しできないかと思いました。地元のお菓子、お茶、水、器も地元の匠のものを使い、地元の文化が生かされた空間で、すてきな時間を過ごしていただく企画です。この企画は今も開催している「清閑亭ティーサロン」につながっていきました。
そこに身を置いて味わったり、触れたり、まさに五感で楽しむ場の中心になるのが足柄茶だったのです。足柄茶を軸にして、いろいろなアイデアが結び付けられることが分かってきました。足柄茶が、まさにマグネットだったわけです。これまで言葉を尽くして伝えようとしていた地元の良さが、言葉ではなく、一服のお茶で皆さんに伝わっていくことを、このティーサロンで発見しました。
このような場を増やしたいと思いましたが、それには仲間が必要です。そこで、呈茶スタッフを養成しようと思い付きました。お茶を軸に、この地域の素晴らしさを丸ごと案内できる人材が養成できたらと思いました。クオリティを維持するために、(株)神奈川県農協茶業センターに認定をしていただくというシステムを考えました。
この養成講座のカリキュラムを練っている2011年の5月、福島県の原発事故の影響と思われる放射性物質が足柄茶から検出されたというニュースが飛び込んできました。これは本当に、大変な衝撃を受けました。お茶農家や関係者の方のお気持ちを思えば、一消費者である私が、こんなに落ち込んでしまうのもどうかと思うところはあったのですが、何もできないもどかしさと、この先どうなるのかという不安を抱えて、養成講座もしばらく棚上げにした方がいいかという感じで、数か月過ごしていました。
しかし、今年の7月、以前から予定していた足柄茶の品評会茶を蓋付きの茶器で提供する機会がありました。使用する茶葉が事故以前の平成22年産だったということが唯一の救いでしたが、どのような反応をされるか、悲愴な覚悟でお客様に向き合いました。ところが、意外なことにお客様の反応が温かいのです。「頑張ってね」と励まされ、とてもありがたく、涙が出る思いでした。すごくピンチではあるけれども、これをチャンスに変えていきたい。それには人材が必要ということで、一時期はあきらめかけていた養成講座を、もう一度ちゃんと練り直そうということになりました。
そこで(株)神奈川県農協茶業センター、足柄上地域県政総合センター(現県西地域県政総合センター)地域農政推進課の担当とアイデアを出し合い、養成する人材は足柄茶の総合案内人という意味を込めて、「足柄茶コンシェルジュ」と命名することになりました。平成23年11月から養成を開始し、平成24年1月末に23名のコンシェルジュと、4名のコンシェルジュ・リーダーが誕生しました。
これまで「あしがらアートフェスティバル」などのイベントでの呈茶、松田山ハーブガーデンの講座でのコラボレーション、小・中学校の味わい教室での講師、デパートの物産展などの販売補助等、この数カ月間で50回近くの活動を重ねてきています。また、きちんと実力も身に付けていただくため、定期的に研修会も開いています。
さて、足柄茶コンシェルジュの活動がスタートしますと、そのマネジメントや人材養成をする組織が必要になってきます。ただ養成してマネジメントを続けていくだけでは、現状維持をしていくだけにすぎません。持続可能で発展していけるシステムを構築したいと立ち上げたのが、「足柄茶ラボ」になります。足柄茶コンシェルジュが中心になって、コンシェルジュ活動のマネジメントや資質の向上、人材の育成をはじめとして、呈茶活動を中心とした地域情報の発信や、生活シーンに合わせた足柄茶の提案、またイベントの企画や、商品やメニュー開発のコンサルティングなど、文字どおり足柄茶の研究所、ラボとして、足柄茶の様々な可能性を研究していく組織を目指しています。
ラボの研究員であり、自ら消費者でもあるコンシェルジュが、お客様と直接向き合うことで、消費者のニーズやし好性などを、製造・販売者である(株)神奈川県農協茶業センターにフィードバックすることができますし、茶農家と消費者の声の橋渡しの役割も担っていきたいと思っています。
また、今後の事業としては、「足柄茶カレッジ」を開講します。コンシェルジュほど本格的な活動はできないにしても、知識を深めたいというご要望を多くの方からいただきましたので、カルチャーに特化した講座を平成24年度中に開講する予定です。
そして、将来的にはコンシェルジュがプロデュースするスイーツなども開発したいのですが、まず第一弾ということで、足柄茶に合うスイーツをコンシェルジュが発掘・認定する事業を考えています。
将来的にはNPO法人か一般社団法人か、どのような形態がいいのか、これから研究したいと思いますが、活動を継続、発展させていける自立した組織を作り、コミュニティービジネスを目指していきたいと考えています。夢だけで食べていくのは難しいですが、関わる全ての人や組織が笑顔になれる展開を目指していきたいと思っています。
余談になりますが、ラジオの番組では、お茶に合うジャズの曲なんていうのも、茶業センターの方に選んでいただいて、ご紹介しています。
すぐには何も生まれないかもしれませんが、お茶のある空間をどうプロデュースしていくか、日々楽しみながら、実験と実践を重ねて、「マグネット足柄茶」を育てていきたいと思っています。
小田原柑橘倶楽部は、始めて2年ぐらいになります。活動の基本になっているのは、報徳仕法株式会社という会社です。これは、報徳二宮神社が最初に200万円を出資した会社です。
活動を始めたきっかけは、小田原市片浦地区の農産物を使って何かできないかということでした。農協から依頼を受けたわけではありませんし、小田原市の「無尽蔵プロジェクト」から認定をいただいていますが、基本的には自発的に始めたものです。私は、まちが続くためには、人と物とお金が、地域で循環する仕組みを作ることが必要だと実感していますので、その志を持って活動しています。
神奈川県は、900万人ぐらいの人口かと思うのですが、小田原、南足柄、上郡、下郡で合わせても、たぶん35万人くらいだと思います。ですから、神奈川におけるこの地域の人口の比率は、非常に少ないのです。国際観光地の箱根があり、地域としては非常に恵まれていますが、それを生かし切れず中途半端な形になってしまっているとも思います。
観光というのは、その土地の光を見に来るから観光と言うという話を聞き、この土地にしかない光とは何だろうかと考え、「片浦みかんプロジェクト」を始めました。地域の農家から、「早生みかんは樹上で完熟させるので非常においしいのだが、日持ちしない」という話を聞き、「日持ちしなくても、樹上完熟で甘みがあっておいしいのなら、それを売りにできないか」と考え、商品化したのが「お歳暮みかん」です。みかんの次はレモンでした。「中身は問題ないが、形が悪くてなかなか売れないレモンを農家から買い上げることができないか」というお話を頂きました。そこで、スーパーマーケットで売ることはできないか、バーテンダー協会や洋菓子協会にアイデアはないか、各方面と話をしました。
まちをよくするためには、生業をきちんと成り立たせて、若者が都会から地元に戻ってくるようにならないといけないと思います。イベントも大事ですが、イベントを365日繰り返しても、まちはよくならないと思っています。
かつて二宮尊徳翁が北関東に行った際、小田原藩が用意したお金を一切断って、自分の土地と田畑を全部売って、それを元手に600カ村の再興に取り組みました。当時、村の人たちは博打をやったりして堕落していて、年貢の取り立ては厳しく、桝(ます)もいい加減で、という地に入って行って立て直しをしたのです。この話から現代でも学ぶことがあるかと思います。政治が悪いとか、役所が悪いとか、何でもかんでも人のせいとか、世の中のせい、そういうことが多いように思うのです。
また、尊徳翁は、非常に細かくマーケティング的なこともされました。再興のために、その土地の過去10年間ぐらいの年貢等を全部調べるのです。その他、桝(ます)の中に年貢米を入れる米粒が全部で何粒入っているか数えたとか、一本の稲穂にどのぐらい米の粒がつくのか数えたとか、そんなことをされたそうです。
現在、尊徳翁が生きていたら、学問よりも実践をしろとおっしゃると思います。そこで、とにかくやってみようと、サイダーを作ったり、お歳暮みかんをやったり、農援隊と名付けた活動を若手の農家さんとやっています。
これまでの2年の活動のうち、1年目は、片浦レモンサイダーを4万8000本ぐらい、お歳暮みかんは、5キロ入りを640箱ぐらい販売しました。販売価格にしますと1500万円ぐらいのお金がこのプロジェクトで生まれ、小売店には歩合として、農家さんには仕入値としてということで回っています。販売をした代理店さんにも2割バックしようという仕組みを作っています。
今年は、片浦レモンサイダーを24万本も作ってしまっています。今6割5分ぐらい販売が終わっていますけれども、正直ちょっと作り過ぎたかなというぐらいの量を作っています。サイダーのレモンは、農家さんから8トンか9トンぐらい仕入れています。秀、優、可という3ランクのうち、真ん中の優の値段で買っています。小売店には24パーセントぐらいの販売手数料で、その手前の問屋には通常どおりの歩率でお渡しして、商いが成立する。このようなやり方で循環を成立させています。
ちなみに、売り上げの12パーセントぐらいのお金がこの報徳仕法株式会社に残るという仕組みをつくっています。この会社は私だけでやっているのではなくて、30社ぐらいの方々にご協力をいただいていますが、人件費はゼロです。
今はサイダーを売っていますが、これが全部売れますと、その利益がまちに回り、またこの会社に戻り、出資金が少し増えて次の挑戦をする、そういうふうになったらいいと思ってやっていますが、今はその途中です。
最後に一つだけ宣伝をさせていただきますと、地元の農家さんと商工業者さんのマッチングの企画を立てています。片浦のレモン、温州みかん、小田原の梅を使って何か商品化しませんかと募集しています。「最近売上げも落ちてきたので、何か挑戦したい」というお店のお手伝いもしようと思っています。
うちは結婚式場もやっているので、デザインはスタッフである程度できます。片浦レモンサイダーのラベルは、私が山の上で撮った写真をもとにして、デザインをお願いしました。
私たち小田原柑橘倶楽部、報徳仕法株式会社は、資本金での援助はいたしません。あくまでも一緒に商品化を考える、それから販路を考える。財政的な部分は、信用金庫と税理士法人にチームに入っていただき、一緒に事業計画を作ります。相談をいただいて、最終的には事業化することを考えています。
商品化にあたっては、この地域にはたくさんの有名なプロのシェフがおられますので、そういう方のお力もお借りして新しい商品を作り、ご自分の商店だけではなくて、もう少し広い販路のところに一緒に乗せて差し上げる。個人の農家さんの農産物も、物が良ければ、一緒に売っていく。そういうことをやれたらいいなと、夢見てやっています。
どこかで機会がありましたら、応援していただければと思っています。
<知事発言>
今のお二人は、地元にこだわりながら、しっかりやっていらっしゃる。私が申し上げたマグネットと同じ思いでつながっていると、会場の皆さんも感じられたと思う。
まずは、皆さんからご質問を頂きたいと思います。私はこんなことをやっているというアピールでも構いません。。
<参加者発言1(南足柄市・男性)>
過去、このような会に参加して10回目になります。当初から司会はプロのアナウンサーでした。再三アンケートにも、県の職員でやればお金がかからないと書きました。今日は職員が司会をやっているので、素晴らしい進歩だと思う。
農業従事者の高齢化と人口の減少が進む中で、農産物の消費拡大のためにどのようなことができるか、知事の考えをお聞きしたい。
ここの地域県政総合センターは危険です。なぜかというと、私はいろいろな団体名で、ここに登録していますが、民間会社の警備員に個人情報を漏洩されました。そういう点や、災害時の連絡ノウハウがあるという点で、警備員は県職員のOB等の方がいいかと思います。
<知事発言>
今日のテーマに合ったご質問をお願いします。まず、お二人の発表に対して、もう少し詳しく聞きたいことはありますか。
<参加者発言2(平塚市・男性)>
お二人の話の中で、農業経営は、持続性が大事という話がありました。今、大学3年生で、自分の周りに農業に携わる人は非常に少なく、話題に上ることも少ないです。そういった中で、どのように若い層にアピールをしているのか、また、青年部の方との協力の話もあったので、そのあたりのお考えを伺います。
<知事発言>
若い人にどうやってアピールしていくのかという、とてもいい質問ですね。お二人の活動で、何か工夫していることはありますか。
<事例発表者発言(石崎氏)>
若い方にお茶を飲むかと聞くと、家に急須がないという方が結構います。食事のときはペットボトルのお茶を飲んでいるそうです。それも確かに手軽だけれど、急須でリーフのお茶を入れてみませんか、という提案をしていきたいです。
また、お茶を入れる習慣を子どもの頃から身につけてもらいたいと思い、小中学校、高校等で「味わい教室」を実施し、足柄茶のおいしい入れ方を教えています。お茶を身近に感じる環境づくりを進められればと思っています。
<事例発表者発言(草山氏)>
若い方には、例えばこの地域の田んぼから見る富士山がきれいだとか、都会にはない良さを伝えることも大事だと思います。
今、個人か、家族か、御夫婦でという個人農家が非常に多い気がします。栽培から販売までチームでやれば、いろいろな交流も生まれ、楽しく生きることにもつながるとも思います。
持続のためには収入が大事です。収入は、簡単に言えば「単価×数量」なので、今は単価を上げることをやっています。最近は6次産業化と言うようですが、加工して何か付加価値をつけて売るというプログラムをつくることが必要だと思います。
耕作放棄地の開墾を、小田原市農政課の協力を頂いて、みんなでやっていく予定です。大変でも、みんなでやる楽しさ、それが生きがいにもなるということを訴えかけていくころですね。
<知事発言>
若い人が農業って面白そうだ、やってみようという気になるような、農業への期待感を作ることがすごく大事だと思います。若者が新しい農業の姿を見れば、新たな魅力に気付いてやってみたくなるかもしれないし、また、宮司さんがやっているのを見て、自分にもできそうだと思うかもしれない。そういうことが新たな魅力づくりにつながると思います。
足柄のお茶も、生産者農家になりたいと思うときに、石崎さんのような活動があれば、違うのではないでしょうか。足柄茶コンシェルジュでお茶を作っている方はおられますか。
<事例発表者発言(石崎氏)>
今、コンシェルジュで、作っている方はいないかもしれないが、何年後かにはそういう人も出るかもしれない。日本茶インストラクターの中には、自分で作っている方が何名かおられます。
<参加者発言3(小田原市・男性)>
最近、「人・農地プラン(地域農業マスタープラン)作成事業」を農林水産省も県も積極的に勧めているが、地元ではなかなかうまく回っていきません。
農業者が高齢化し、親戚や身内もいなくなると耕作できなくなり、農地が森林や山になってしまう。一方、新規就農者は、最初の6か月間は収入がないが、「人・農地プラン」で、地元がその体制をつくれれば、その部分のお金が出るようになっている。何かうまくいく方法があるかお尋ねします。
<知事発言>
難しい質問ですね。県職員で誰か答えられますか。
<県西地域県政総合センター農政部長発言>
「人・農地プラン」というのは、まず地域の皆様が話し合って、合意形成をしていただくということが大前提になっています。農地をどのように誰が管理していくのか、これをはっきりさせ、新規就農者を受け入れるという仕組みです。
そのプランを作るためには、まず地域の合意形成が必要になりますが、これが大変難しい。新しい方を地域の中に受け入れるということ自体、かなり抵抗があるようです。それを乗り越えるのが最も大きなハードルだと思いますので、まず地域の中で話し合いを始めていただく。それ以外にこのハードルを乗り越える道はないと考えております。
<参加者発言4(中井町・男性)>
県西地域を活性化させるためには、農地を含めた土地利用を何とかしないと、耕作放棄地や荒れ地が増える一方です。鳥獣被害も出ていて、農家だけではどうにもなりません。
お二人の取組みは、都会の人たちの目をこちらに向けてもらう取組みであったり、消費者に農産物を利用してもらう道筋をつける取組みであったりして良いと思います。こういった今までの農業者以外の方が農業に取り組める仕組みを作っていかないと、県西地域全体が大変なことになります。これらの取組みをもっと大きくしていただきたいと思います。
また、知事には、県東部の都市住民の関心がこちらへ向いてもらえるように、西のマグネット力などをもっとアピールしていただきたい。どうしても人口の多い方に政策が傾きがちだと感じている。
<参加者発言5(小田原市・男性)>
「萌え(もえ)カルチャー」を意識して、コスプレを軸としたイベントを企画しています。映画「ヱヴァンゲリヲン」の全国ロードショーに先駆け、舞台になっている箱根で、第1回を開催する予定です。
その他、年に1回、箱根でアニメ、コスプレの聖地のサミットのようなものをやりたいと思っています。フランスでは2000年から、日本文化を紹介するイベント「ジャパンエキスポ」を開催しています。10年前には、日本のアニメやコスプレ文化は浸透していなかったが、今は20万人が集まるようなイベントになっています。日本にもアニメの聖地がたくさんあるので、そういうイベントを箱根でやりたいと思っています。
<知事発言>
今日のテーマとはちょっと違いましたが、これも一つのマグネットですね。
<参加者発言6(小田原市・男性)>
8人の仲間と、14年前から農産物の直売所を開いています。
小田原市の橘地区は、全国的に有名なタマネギの産地です。JAの「たまねぎオーナー制度」では、一般市民がオーナーになり、タマネギ作りや各種イベントへの参加等を行っています。
その一方、周辺のミカン減反跡地は、住宅地造成などの開発が頓挫し、イノシシや鹿が出没し、竹やぶ化が進むなど、非常に荒れています。しかし、相模湾が一望できる風光明媚なところなので、観光資源として生かしていきたい。皆さんの知恵も借りて、いいものを作っていきたいと思っています。
<知事発言>
みんながその気になって、これをマグネットにしていこうじゃないかと議論していく中で、この地域の何を守っていくのかというのが見えてくると思います。
<参加者発言7(小田原市・男性)>
「湘南ゴールドをマグネットにしよう」という知事の発言を新聞記事で見て、すごく良い提案だと思いました。私は旅先でストラップや磁石等のお土産を買うので、湘南ゴールドの磁石の土産品が発売されると思ったのですが、よくよく読んでみると、マグネットはマグネットでも、磁石ではないマグネットでした。
自分の勘違いだったのだが、農産物は、収穫の季節が限定されるので、一年を通しての周知が難しいと思います。知事がマグネットにしたいと思っているいろいろな農産物等をマグネットやストラップなどにして、販売すれば、まだまだ知られていない湘南ゴールドなどを広めるきっかけの一つになると思います。
<知事発言>
確かに、ノベルティグッズみたいなものがあってもいいですね。
県議会で、湘南ゴールドのマグネット力を高めるにはどうすればいいかと聞かれました。私は、ブランド力を増す方法は、出し惜しみだと言いました。湘南ゴールドは、まだそんなにたくさん生産できない。それならば、あまり外に売りに出さずに、地元に閉じ込めておいた方が、むしろいいのではないかと。湘南ゴールドのためにわざわざ小田原に行きたいという、そういうのがマグネットの力になるのではないかというような話をしました。
<参加者発言8(吉田島総合高等学校・女子生徒2人)>
昨年、足柄茶は原子力発電所事故の影響で、販売中止となりましたが、今年は新鮮なお茶が楽しめます。
お茶には計り知れないほどの効能があるので、私たちは紙芝居で表現してみました。知事はこのようなPR活動をどう思われますか。
<知事発言>
せっかくなので、その紙芝居をここでやってみてください。
吉田島総合高等学校生徒による紙芝居実演
(主人公がお茶を飲んでスリムになり、徒競走で一番になるというストーリー)
<知事発言>
すばらしい。本当に足柄茶が飲みたくなりました。
こういうのが大事です。高校生がやってくれるというのはうれしいですね。
<参加者発言9(吉田島総合高等学校・男子生徒3人)>
私たち吉田島総合高等学校の野菜部では、栽培する農家が減って途絶えてしまったタマネギの「湘南レッド」と、キュウリの「相模半白」、そして最近神奈川県で新しく品種登録されたナスの「サラダ紫」という野菜の普及活動を行っています。
普及活動としては、料理のレシピを近くの直売所に掲示させてもらっていますが、学生では限界があるので、大々的にアピールしてほしいと思っています。
今日持ってきたパンは、パン種に足柄茶の粉を混ぜて、練り込んで作ったものです。後で食べていただきたい。
<知事発言>
石崎さん、足柄茶のパンはご存知でしたか。高校生たちと一緒にやれば、相乗効果になりますね。ラベルは、草山さんがお上手なので、作ってもらうとか。
開成町の府川町長、こういう頼もしい開成町の高校生についてどう思われますか。
<参加者発言10(開成町長)>
こういうところで、高校生が一生懸命に自分たちのPRをしてもらえるということが本当にうれしいです。
開成町は、幼稚園や小学校、中学校も、吉田島総合高等学校にお世話になっています。これからもぜひ、そういうものを持って町長室に来てください。
<知事発言>
開成町も県も一緒になって、そういうものをどんどんアピールして応援しましょう。
このように高校生が来てくれるのはうれしいです。若い人がどうやったら入ってくるかと悩むよりも、若者たちに、みんなで協力するから頑張れと、そういう感じがでてくると、非常に大きなパワーになると思います。
<参加者発言11(小田原市・男性)>
足柄茶を作っていますが、昨年の原発事故で、私の畑から780ベクレルの放射能が検出されました。300キロも離れた地域なのにとぼうぜんとしたが、県の農業技術課の皆さんや足柄上地区農業技術センターの皆さんのおかげで、どうやら1年間で50ベクレルぐらいまで下がった。今年は新茶がたくさんできて足柄茶を売ることができました。
その件について、知事が陣頭指揮に立って販売に協力してくれたことをお礼申し上げます。また、コンシェルジュの皆さんも力を尽してくださいました。
ただ、1年間の全ての放射能審査に合格したのに、また来年も審査を受けるのかと思うと、これは農家としては苦しいです。というのは、審査に2週間かかり、解除のための時間もかかったため、今年の新茶販売は5月下旬になり、価格の面で痛手を受けたからです。農家も大変な減収になり、これが来年も続くとすると、高齢化する農家では、やめていく可能性があります。それを止めるためにも、来年はモニタリングテストや国の検査を行わないように働きかけてください。
<知事発言>
この問題は非常に悩ましい問題です。農家の皆さんの気持ちはまさにそのとおりだと思います。
ただ、あの原発事故以来、消費者の放射能に対する恐怖感は強いものがあって、全部調べてほしいという要望もある。一方、農家の皆さんの気持ちにやはり応えなければいけないという面もある。
そのあたりをどう調整していくかが、大きな課題だと思います。1年後、今と流れが変わってきているかもしれないので様子を見ていきたいと思います。
先ほどの事例発表にあったように、ピンチをチャンスに変えるという動きが出ているから、この勢いで足柄茶を広めていきたいという、大きな希望をもっています。
今、ご指摘されたことを頭に入れて、来年また向き合っていきたいと思います。
<参加者発言12(松田町・男性)>
ちょっと話がずれるかもしれないが、この県西地域は神奈川県の全体の中で森林が多い所です。この特徴を生かし、森林の間伐材をうまく引き出して、それをエネルギーに変えることができると思います。
知事も再生可能エネルギーには非常に関心をお持ちだが、県西地域にバイオマス発電機を設置するというのはいかがでしょう。
<知事発言>
川崎にバイオマス発電所があります。木材をチップにして使うのは、大きな可能性があると思うが、発電所をここに造るのがいいのかどうかについては、議論が必要かもしれません。ただ、バイオマス発電が、再生可能エネルギーの大きな柱の一つであることは間違いないと思います。
<参加者発言13(小田原市・男性)>
足柄茶の生産者で、地元小学生のお茶摘み体験を受け入れています。昨年は摘んだお茶が駄目になってしまったが、今年は4月1日の八十八夜に子どもたちと無事お茶摘みができました。来年もやりたいので、また石崎さんに御協力をお願いします。
<参加者発言14(山北高等学校・男子生徒)>
地域活性化ということでお話ししたい。自分はカヌー部に入っており、山北町のカヌーマラソンなどに参加したりしていますが、カヌーを通して、山北町をもっとアピールしてほしいです。
<知事発言>
神奈川県では、「水のさと かながわ」を打ち出しています。関東地方の水不足が話題になった時も、神奈川県だけは水不足を免れました。神奈川は水が豊かなところですね。
だから、水を神奈川の一つのブランドとして、アピールしていこうと思っています。山北のカヌーというのは、まさに「水のさと かながわ」にぴったりなので、どんどんアピールしていきたいと思います。
さて、せっかく南足柄市の加藤市長がお見えなので、ここまでの議論を聞かれた感想を、一言お願いします。
<参加者発言15(南足柄市長)>
先ほど事例発表者の草山さんからご提案のあった6次産業化ですが、財政再建のため、また地域経済の活性化のためには、よく企業誘致をするという話がありますが、それはなかなか難しい。
それならばどうするか。地域に根ざした産業誘致を自らしていく。それが6次産業化です。1次産業を中心にして、2次産業、3次産業を起こし、6次産業へ向けていく、そのことには全くもって大賛成で、私たちも3年4年かけて、実現していきたいと思っているので、先ほどの話は大変参考になりました。
お二人のお話の中に、地域活性化のための様々なヒントがあったと思います。足柄茶のピンチを逆にチャンスに変えていく、足柄茶を新たなブランド力にしていこうと、地元で盛り上がってきている。そうしたら地元高校生たちも、そういう思いに共感して活動している。これはすごく大事な動きだと思います。
私は、神奈川県の高校生のパワーはただ者じゃないなと思っています。先日、県立中央農業高校の生徒がファミリーマートと組んで作ったスイーツを試食しましたが、これがびっくりするほどおいしい。スイーツそのものもそうですし、パッケージも、とても高校生が作ったと思えない。抹茶とクリが入った秋らしいスイーツは、作ったのは女子生徒ですが、甘くなく、苦みの利いた大人の味でした。これを作ったなんてただ者じゃないとびっくりしました。そういうパワーがあります。そういうコラボレーションをやっていると、次の世代につながるということもありますし、若い人の発想によって、大きな広がりを見せるということもあります。
きょうご紹介したのは、この地域にあるマグネットの一つの種ですね。地元の皆さんが、地元のことを知って、それを大事に育てていこう。そこから本当のマグネットが出てくると思っています。
事例発表をしてくださったお二人には、さらにマグネット力を発信するために、先頭に立って頑張っていただきたいと思います。どうもありがとうございました。。
私は神奈川県知事になって1年半になりますが、平成24年度予算という1年間の予算を、初めて編成いたしました。そのプロセスで、驚くことがたくさんありましたが、何よりも神奈川県の財政状況について、将来、どうなるのかなと、目の前が真っ暗になるぐらいの危機感を覚えました。ですから、まず、私が持っている危機感を皆さんにも共有していただきたいと思っています。その上で、皆さんといろいろな議論をしていきたいと思います。今日はその第一歩として、神奈川県の財政状況について、皆さんと危機感を共有するということで、お話をしたいと思います。
神奈川県の財政を考える上で重要なのは、今後、県の年齢別人口がどのように変化していくのかということです。将来のことを考えると目の前が真っ暗になると言ったのは、このことに大きく関わっています。
県の年齢別人口の推移を見てみますと、1970(昭和45)年は、子どもがたくさんいて、20歳代が一番多く、年齢が上がるにつれて少なくなっていくというように、グラフにすれば、いわばピラミッドの形になっていました。2010(平成22)年になると、ピラミッドが崩れてきて、2050(平成62)年には、まさに逆ピラミッドの形になっていくということです。1970(昭和45)年には、85歳以上の人はほんのちょっとしかいなかったんですね。それが2050(平成62)年にはこんなにたくさんになっています。神奈川県は、全国に比べて高齢化の進み方が圧倒的に速いんです。だから、全国で起きる問題が、神奈川でより顕著に表れてきます。
高齢化が進む中で、介護・措置・医療関係費が、既にどんどん増えています。平成17年度は1,392億円だったものが、平成24年度には2,634億円。わずか7年間で約2倍になっています。今後の年齢別人口の変化を考えますと、医療や介護にかかるお金はさらに増えていくことになります。
次に、義務的経費と歳入総額を表示したグラフの平成15年度から平成24年度のところを見てみましょう。平成24年度から先は後でお見せいたします。義務的経費のうち、青い部分が人件費、水色の部分が介護・措置・医療関係のお金です。赤い部分が借金を返すためのお金です。介護・措置・医療関係費というのは7年間で約2倍になっていますが、人件費等は、一生懸命抑えています。
さあ、肝心の県税収入です。平成15年度からは伸びていました。この勢いで伸びれば何とかなるかなという期待もあったんですが、平成20年に、いわゆるリーマンショックが起きました。その後、県税収入は下がったままです。したがって、歳出に対する県税収入の額が、以前ほどゆとりがなくなっています。
神奈川県は今まで行政改革には熱心に取り組んできました。これまでの県知事たちが、頑張って取り組まれたんですね。
神奈川県の職員定数の推移を見て、びっくりしました。県庁の知事部局の職員数は、平成9年度は1万3,551人でしたが、15年後の平成24年度には7,629人になっています。5,922人減らしています。警察官と教員は少し増えていますね。しかし、知事部局、いわゆる県庁の職員は、6,000人も減らしてきたということです。
県の職員定数の削減とともに、出先機関の見直しも行いました。平成9年度には、県庁の出先機関は279機関ありましたが、平成24年度には132機関、つまり半分に減らしたということなんです。
そんな中でも、悩ましい問題があります。1兆7,730億円の予算全体の中で、教職員の給与が、28.8パーセント、約3割を占めているんです。ただ、ここにはちょっと構造的な問題があるんです。というのは、教職員人件費5,098億円の中身を見ますと、横浜市、川崎市、相模原市の政令市の小中学校の先生の給与も県が払っているのです。その額は、教職員人件費全体の43.2パーセントにあたります。県立ではない政令市の学校の教職員給与を、なぜ県が払うのか。人事の権限は無いんです。実は、これは法律で決まっているんです。国に対して改善してもらうように一生懸命言ってますが、こういった構造的な問題があるんですね。
教職員人件費や介護・措置・医療関係のお金なんかも含めて、義務的経費といいます。義務的経費というのは、我々が頑張っても何しても、支出せざるを得ないお金。これが予算全体の81.2パーセントを占めているんです。県民の皆さんのご要望にお応えしたいと思っても、政策的に使えるお金っていうのは全体のわずか18.8パーセント、2割もないという状況なんですね。
先ほど、借金を返すお金がどんどん増えていると言いました。借金にも、実は様々な問題があるんです。下のグラフの黄色い部分は減っていますね。これは、いわゆる県債といって、県が単独で借金している分です。県は、その借金を減らそうと努力しています。今、県の抱える借金は3兆5,355億円。予算の倍です。そして、この黄色い部分(県債)の上の赤い部分が臨時財政対策債です。臨時財政対策債とは要するに何なのかというと、地方交付税って皆さん聞いたことありますね。国が地方に対して、公平になるように配分するお金です。地方交付税はお金でくれるのが当たり前ですよね。ところが、国も財政が厳しいからといって、本来はお金でくれるはずの地方交付税を臨時財政対策債という借金でくれるんです。
平成24年度でいいますと地方交付税は840億円です。その3倍の2,430億円が、地方交付税の代わりに背負わされている借金なんです。だから、県がいくら頑張って借金を減らしても、借金はどんどん増えていくという、こういう構造的な問題があるんですね。皆さんが悪いわけでも県が悪いわけでもありません。こういう構造的な問題があるんです。我々は国に対して、地方交付税を本来の姿に戻せということを強く訴えているというところであります。
そういう状況の中で、平成25、26年度の財政収支の見通しはといいますと、厳しいですね。平成25年度の財源不足は700億円、平成26年度は900億円、つまり、2年間で1,600億円の財源不足が生じるということが、見込まれています。
平成24年度以降の義務的経費の見通しを、20年先まで見てみましょう。平成45年度まで見た場合、義務的経費を、なるべく抑えようとしても、介護・措置・医療関係のお金は、やっぱり増えていきます。そして、借金をどんどん背負わされますから、借金を返すお金は増えていきます。平成26、27年ごろ、県税収入が少し増えるだろうなと見ているのは、この頃、消費税が上がるからです。その先はどうなるのか。不透明ですけれども、このままの状態でいけば、歳入総額と義務的経費総額が平成32年度にクロスします。つまり、今後10年以内に義務的経費が歳入総額を上回っていくというのが見えている、まさに危機的な状況にあるということなんです。だから、今ならまだ間に合う、何とかしようと打ち出したのが、神奈川県緊急財政対策です。
神奈川県緊急財政対策を提案するに当たっては、6名の専門家からなる外部有識者調査会神奈川県緊急財政対策本部調査会、いわゆる神奈川臨調に、意見をまとめてもらいました。座長は、元総務大臣で、岩手県知事を務められた、増田寛也さん。そして、メンバーには、内閣官房副長官として長年歴代の総理に仕えてこられた石原信雄さん、地方行政のプロ中のプロですね。こういう人たちに入ってもらって、非常に短期間でありましたけれども、神奈川県の財政をどうすればいいか、知恵を頂きました。神奈川臨調の提言は、3年以内に県有施設原則全廃。そして、すべての補助金は全額凍結し、全部見直せというものでした。
神奈川臨調という名称についてですが、かつて中曽根行革において、土光臨調というのがありましたね。土光敏夫さんがボスになって、非常に厳しい提言をされました。そのときは長い時間をかけて、いろいろなことを細かく調べた上で提言をされたのですが、今回の神奈川臨調というのは、時間がない、スピード感を持ってやろうということで提言していただきました。ですから、一つ一つの施設や補助金について、全部精査したというわけではないんです。神奈川臨調には、原則論を言っていただいた。あとは県で考えてくれと言われたわけです。
神奈川臨調の提言を受けて、県が出したのが、この緊急財政対策です。
例えば、県有施設についての神奈川臨調の提言は、3年以内に全廃しろということでしたが、県は、全廃というのはどうなのかなと考えました。そして、全廃ということをベースにして見直しを行いました。県有施設の中には、廃止できるものもあるだろうし、機能の統合ということもあるだろうと。統合して空いた建物を売るということもあるかもしれない。ただ、必要なものは必要ですからね。ということで、県有施設を全面的に見直し、施設ごとに廃止、移譲、民間活力の導入などを検討しましょうという、大きな方針を打ち出しました。
それから、補助金、負担金の見直し。神奈川臨調から頂いたのは、全部の補助金を全額凍結ということでした。全部凍結した上で、本当に必要なのか、別の知恵を出せないのか、全部見直しましょうということです。必要性や内容の妥当性を検証し、廃止、削減等の見直し等を検討しました。本日資料(「神奈川県緊急財政対策」)を用意いたしました。すべての神奈川の県有施設と補助金について、検討の方向性を載せました。今まで補助金をもらっていた人は、廃止や減額となったら、冗談じゃないと言うに決まっているわけですね。でも、何とかしなければいけないという中で、ご理解を頂くために、きちっと議論をしていきましょうということなんです。
それとともに、県民の皆様に痛みをお願いしなくてはいけないときには、県職員も我が身を切ることも必要だと考えています。これまでも職員数を減らしてきましたが、もっとやらなくてはということで、職員数、給与の削減等によって、人件費総額をさらに圧縮しようとしているところであります。
財政対策に関して、県でやることは徹底的にやっていきます。ただし、さっき申し上げたように、臨時財政対策債と政令市の教職員の給与のことは、国がやってくれなくてはどうしようもないわけです。この問題は、国に対してこれからも強く求めてまいります。
本県独自の取組みとしても、県債の管理目標を設定して、これまで以上に県の借金を一生懸命減らしていきます。
それともう一つ、教育について。教育というのは、次の世代を育てる大変重要な仕事ですから、財政を圧迫しているからといって、簡単に教育費を削るわけにはいきませんよね。財政と教育のあり方は一体のものとして考えていかなくてはならない。そこで、教育だけは別途、神奈川の教育臨調というものをつくって、今検討をしている最中であります。これも皆さんとともに議論していきたいと思っています。
今後高齢化が進み、介護・措置・医療関係の費用がどんどん増えていきます。その対策として私が言っているのは、未病対策、未病を治すということなんです。病気を治すのは西洋医学、未病を治すのは東洋医学の考え方です。未病というのは、病気になる直前の状態で、そこから治していく。それはどうやって治すのか。医食同源というのは、食には薬と同じくらいの効能があるということですが、医食同源だけではなくて、私が言っている医食農同源は、農業のあり方も含めて考えていきましょうということです。県では、医食農同源を、県内で展開していこうと思っています。だから、第1部のサブテーマの地元農産物を生かした地域活性化についても、医食農同源を含めて考えていきたい。薬ではなく、食の力による未病対策を実践し、健康寿命を長くしていきたい。それによって医療費が抑えられるわけです。
今後の財政を考える上で大事なのは、県税収入を伸ばすことです。県税収入が伸びていけば、様々な問題が解決します。県有施設や補助金の見直しと同時に、経済のエンジンを回していく、これが私の最大の使命だと思っているんです。
たとえば、京浜臨海部ではライフイノベーション国際戦略総合特区が指定されました。今、日本の医療関係のお金の流れは、輸入が圧倒的に多く、1兆6,000億円になっています。これを逆転したいんです。そのためにライフイノベーション、これをやっていきたいと思っています。
さらに、さがみロボット産業特区を申請いたしました。さがみ縦貫道路の完成で県の南北がつながります。皆さんは、圏央道がつながるから、チャンスだと言っています。しかし、私は、下手したらピンチだと言っている。道路がつながったら、本社や工場は、土地の安い埼玉の方にどんどん出ていく。みんな吸い取られていくこともあり得ます。つながることをチャンスに変えなくてはだめだ。そこで、県央地域にどんなものをつくるかといったときに、県央にはものづくりの中小企業の集積等があります。JAXAもあります。そういったものを活用しながら、ロボット、特に生活支援ロボットをどんどん作って、世界に発信していくようなエリアにしたいと考えております。
それとやっぱり観光ですよね。第4の観光の核を作りたいですし、県内のあちこちの商店街を巡っていくという、商店街観光ツアーをやろうと言っています。それぞれの商店街が違う魅力を持っていれば、巡っていく値打ちがあります。そのような商店街を作っていってくださいと言っています。これは商店街再生と観光をドッキングさせて、この難局を乗り越えていこうという知恵であります。あらゆる手立てを使って、経済のエンジンを回していきたいというふうに思っています。
それとともに、今、地方自治のあり方というのが大きな課題になっています。大阪の橋下市長が、大阪都構想だと言っている。大阪府は府と市の問題が取りざたされています。神奈川県にも巨大な政令市が3市もあるので、県との関係を聞かれますが、私は大阪の問題と神奈川の問題は全然別ですと言っています。別だと改めて思ったのは、橋下さんが大阪市長に当選したときの記者会見ですね。大阪府と大阪市の百年戦争は今日で終わりましたと言ったんですよ。私は神奈川県知事になって、政令市と百年戦争なんて全くしてないです。非常にいい関係です。もっとよくしていこうということで、同じ方向を向いていると、私は思っています。
では、神奈川というのは、どうしていくべきなのか、これまでも積み重ねた議論がありました。道州制を目指していこうという議論もありました。また、横浜市の独立というような話も出ています。仮に、横浜市が独立するといったとき、神奈川はどうするんだという問題も出てまいります。そこで、これまで積み重ねた議論を踏まえながら、県の考えをまとめました。
道州制の単位として、まずは神奈川で一つの州を考えています。神奈川県は人口900万人もいるんですね。人口はスウェーデン、経済規模はデンマークと同じなんです。神奈川県は一つの国みたいな単位なんです。道州制には、首都圏連合とか、山梨と静岡と組んでとかいろいろな考え方があるでしょうけれど、それは先の話。まずは神奈川を一つの州にしていこうと考えています。
国がすべて決めるのではなく、国から権限をもらって、神奈川のことは神奈川で決めるようにしていきたいんです。そして、神奈川の医療はこんな形だぞ、神奈川の教育はこんな形だぞと見せていく。それを見て神奈川州に入りたいと言ってきたら、入れるような形にしていきたい。
神奈川全体の大きな改革を進めるに当たっては、基本的には、神奈川をこうしたいという皆さんの思いを持ち寄り、合意の下に行っていきたいと考えております。対話の広場は、今後もやっていきますから、皆さんどんどん意見を出してください。皆さんと一緒に、この財政危機を乗り越えて、ピンチをチャンスに変えて、すばらしい神奈川をつくっていきたいと考えています。
本来ならば、緊急財政対策については皆さんとしっかり議論をしなくてはいけないんですが、今日は取りあえず、議論のスタートとして、危機意識を共有していただきたいという思いでお話をいたしました。これから議論がスタートします。
今日、皆さんと議論できなかったのは申し訳ないのですけれども、ご意見等がありましたら、お手元にお配りしているご意見・ご質問用紙にご記入下さい。また、県のホームページにもいろいろな形でご意見をお寄せいただければ、それを元にして、皆さんとともに議論を進めていきたいと思っています。
今日は長い時間お付き合いいただきまして、ありがとうございました。今日お話をしてみて、皆さんも何か新たな発見があったのではないかと思います。
地域が元気になるところから、すべての物語が始まる、私はそう確信をしております。ご静聴、ありがとうございました。
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