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更新日:2024年3月27日

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かにゃさんぽ(認定NPO法人なんとかなる)

横須賀市の「認定NPO法人なんとかなる」を取材した「かにゃさんぽ」の記事です。

コケてもコケてもなんとかなるという思いをもって活動中!

2024年2月16日 金曜日

かにゃお

今日は「認定NPO法人なんとかなる」事務局長の髙木さんのお話を聞きに、横須賀市の「なんとかなり荘」に来たにゃ。髙木さんこんにちは。廊下や階段、とっても綺麗にしてるにゃ!

髙木さん

ありがとう。そう言ってもらえると嬉しいです。いつもここに入居している子ども達や働くスタッフが心をこめてお掃除しています。スタッフは14人います。

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(スタッフさんたちの写真)※法人提供

かにゃお

「認定NPO法人なんとかなる」さんは、児童福祉法による自立援助ホーム「なんとかなり荘」と、法務省の更生自立支援策による自立準備ホーム「なんとかでき荘」2種類のホームを運営してますね!この2つのホームの活動が始まったいきさつを聞かせてにゃ。

髙木さん

2005年に鳶(とび)職だった岡本さん(現・共同代表)が児童養護施設出身の「若もの」を受け入れたことが出発点です。さまざまな事情から親や家族と一緒に暮らすことが出来ない子どもたちに「仕事・学び・住まい(なんとかなり荘やなんとかでき荘の前身の施設)」を提供して自立を支援する岡本さんの活動は、2008年からは少年院や刑務所を出る時に身元を引き受けてくれる人がいない若者も受け入れていきました。「ヨコスカのオカモト」という屋号みたいな感じの孤軍奮闘は10年続き、2016年に彼の考えに共感する人たちによって「特定非営利活動法人なんとかなる」が誕生しました。
その後、岡本さんと小学校で同窓だった前横須賀市長の吉田さんが共同代表として参画しました。お二人の誠実な人柄もあってか人脈が広がって活動も軌道に乗り、2018年に横須賀市第一号の自立援助ホームを立ち上げ、2022年に認定NPO法人に認定、同年に自立準備ホームとして認可されるようになりました。

かにゃお

たった1人の善意の行動から始まって、それがいろんな人々と結びついて活動が安定していったんだにゃ。それで、普段はどういう活動をしているの?

髙木さん

「なんとかなり荘」は原則15歳~20歳、「なんとかでき荘」は比較的若い年代の方々が対象で、普段は総称して「若もの」と呼んでいます。
まず、「なんとかなり荘」は児童福祉法による自立援助ホームですので、家庭内で虐待を受けたり、何らかの事情で児童養護施設にいられなくなったりした子どもたちの中から、児童相談所が入居を判断します。「なんとかでき荘」は法務省の諸機関が判断します。
それぞれの事情や背景によって入居先は異なりますが、どちらの施設でも「このホームを出て自立した生活をしていけるようになる」ということが目的なんです。
彼らはここで安心して生活し、働いて収入を得られるようになるために必要なことや一般的な社会常識を学びます。私達に出来るのは、その手助けをすることだと思っています。

かにゃお

手助けとは、具体的にどんなことをしているの?

髙木さん

何か特別なことをしているわけではなく、普通に暮らす応援をしているつもりです。
毎日、当たり前のように帰る家があり、あたたかいご飯があって、安心して眠れる場所がある・・・というような。衣食住が普通に出来て初めて、ちゃんとこれまでのこととかこれからのこととかを考えられるようになるんじゃないかと思うんですよ。
「なんとかでき荘」の「若もの」の過ちによって被害を受けた方々が最優先に大切にされることを大前提で話すけれど、ここに来る子どもたちの生い立ちを辿っていくと、今まで普通に暮らして来られなかった状況が見えてきます。だから、各人の「更生する気持ち」を喚起し実行させることを目的に、この子達に「どうしたい?」「どうしたらいい?」「こういう道があるんじゃない?」と考えるチャンスを提供したいと思うんです。

かにゃお

一度道を外れてしまったら終わりだよ、っていうんじゃなくて?

髙木さん

そうです!失敗してもやり直すことは出来るんじゃない?という想いをこめて、
「コケてもコケてもなんとかなる」というキャッチフレーズにしました!
ここに来る子どもは自己肯定感の低い子が多いです。まずは「私はここにいていいんだ」と思えるようになってくれたら・・・立ち上がろうと思う元気が出てくれば、“なんとかなる”かな・・・

かにゃお

この家、おばあちゃんのおうちみたいに居心地がいいにゃ。この空気の中で、きっと子ども達は安心できるようになっていくんだにゃ。そして元気になって、一日も早く自立してここを卒業していってもらいたいにゃ。

髙木さん

そうですね!・・・でもきっかけがないと、そんな簡単に変われないですよね。
ある子はこれまで一度もアルバイトをしたことがありませんでした。
でも、ここに来てからある仕事に就きました。仕事内容は単純な作業だったのですが、夕方になって、とっても嬉しそうに日当を貰って帰ってきました。
働いてお金を得た・・・自己肯定感が高まる最初の一歩になりました。

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 (スタッフと一緒に調理した時の写真)

かにゃお

お話を聞いていて希望が湧いてきたにゃ!
・・・でもやっぱり現実的に大変なことや問題点もあるんだよね?

髙木さん

はい、あります。「自立準備ホーム」として登録されているのは企業さんが多いようです。企業さんの場合は従業員さんの宿舎を兼ねられたりするんじゃないかなぁ。それと比べるといつ来るかわからない子どものためだけに、このような家・施設を維持していくことは金銭面でも労力の面でも大変だし、継続し続ける努力が必要です。
それに子ども達がこの先ちゃんと自立出来るように、責任を持って教育しなければなりません。特に、どちらのホームにくる子どもも、望ましい金銭感覚が身についていない子が多いんです。だから金銭教育が必要なんです。ところで、かにゃおはお小遣いをもらったら、すぐに全額を使ったりする?

かにゃお

すぐに全額は使わないで、将来欲しいものがあるときまで貯金したりするかな。

髙木さん

そうだよね。普通ならばお小遣いをもらったら、それをどうやって使ったり貯めたりするか考えてお金の使い方を学んでいきます。でも、彼等はお小遣いをもらってどうやりくりするかを考えた経験が少ないので、貯金することが難しい。
ちょっとお金が手元にあると気前よく友達にラーメンを奢ってしまったり、贅沢な配達の食事を頼んじゃったり。そして手元にお金がなくなると、後は水と納豆だけで生活するような金銭感覚です。

かにゃお

すぐに使いきってしまうと生活が難しくなってしまうよね・・・

髙木さん

ネグレクト(養育放棄)の被害にあった子どもなどは、食べ物が出たら今食べないと今度いつ食べられるかわからないというような感覚が本能的に身についてしまっているように見えます。さまざまな障害をかかえている場合もあります。そんな子ども達もいずれはここを出て、社会に出なければなりません。見た目はもう充分に大人な彼らに対して、世間の目が常に好意的であるとは限りません。このまま金銭感覚も弱いままでは失敗を繰り返してしまいます。
助けてくれる人がいないって思ってしまったら、子ども達は闇の中に陥ってしまいます。

かにゃお

それは困るよね。じゃあ、どんなふうに金銭教育の問題に取り組んでいるの?

髙木さん

まずは安全で安心できる普通の暮らしを用意することですよね。辛抱強く見守って、彼等の成長を待って段階を踏んで前に進みます。そして、退所の目途が立った頃から具体的な金銭教育を始めます。
実は、2023年に『家庭を頼れない若者が自立できる社会へ!金銭教育と貯蓄推奨プログラム指導』というクラウドファンディングに挑戦しました。
そのプログラムは、このホームを退所した後に一人暮らしができるぐらいの生活費を自分で計算して貯める「金銭基礎教育プログラム」と、ここを出た後も自立して人生設計が出来るようになるための「貯蓄奨励プログラム」とで構成されています。

かにゃお

えっ、お金のことを勉強するプログラム?それはその子達にとって難しくはないの?

髙木さん

うん、大丈夫。実際の人生をシミュレーションしながら、日々の現実的な話が出来るところまでモチベーションをあげていくんですよ。
例えば、シミュレーションではアバターを登場させて10年後を想像させます。30歳、その子はどんな子なの?どんな風に暮らしているの?旅行するの?結婚するの?その時必要なお金は?・・・と、一緒に話し合う時間も楽しんで考えてもらうんです。
そうすると、じゃあまずここを出ていかなきゃいけないね、そのためには引越し費用を貯めなくちゃね、ってなるでしょう?
そして次に、退所が近づいた子どもに、「プログラムを受けた後に自分で働いて貯めたお金」に相応の資金を援助するというルールを伝えます。例えば、「10万円貯められたらそれと同額の資金を援助する用意があるよ」と。
そうして、がんばって働いて目標を達成するという経験をしてもらいます。するとその子はその成功体験によって「俺もまんざら捨てたもんじゃない」と思って、前よりも少し自信が持てるようになりますよね。

かにゃお

なるほど!こんな計画的なプログラムを考えるのは、とっても大変だったよね。

髙木さん

過去のことは変えられないから、私達はね、彼等の「これからのこと」を変えたいの!!

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(金銭教育や就職相談を行う)

かにゃお

髙木さん達の熱い想い、胸にしみるにゃ。
きっと、そのためには他にももっと気をつけていることがあるんだよね?

髙木さん

はい。彼等は16歳を過ぎた思春期の最終段階にあり、いわば「もう大人」です。手をかけ・声をかけという直接的な働きかけの次にある関わり方が大切だと思うのです。スタッフには「こちらからの多くの言葉は控えましょう」と言っています。スタッフが意識する声掛けは「おはよう」「いってらっしゃい」「おかえり」「おやすみ」だけ。子どもの方から話してきた時はたくさんおしゃべりを楽しみます。
子どもに成果を求めるような気持ちになっている時はついつい焦って多くの言葉を掛けてしまいがちです。でも、そこをぐっとこらえて「見守る」に徹することが、この仕事の基本だと思います。
それから、就労先や進学先を見つけるのを手伝うのは手がかかるけれど大事な仕事です。
必要な知識を身に着けて、情報の引出しをたくさん持たなければなりませんし、これは子ども達と一緒に過ごす日常的な生活の仕事とは全く別の性質の仕事なんです。

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(林業や足場作り、農業などの職業体験)

かにゃお

最後に、今後の目標はありますか?教えてほしいにゃ。

髙木さん

大きく分けて3つあります。
まずは、より多くの子どもを受け入れることが出来るよう施設を整備したいということ。
次に就職先や進学先など、社会と子ども達との接点をもっと増やしたいです。そのためには私達が企業や大学ともっと関わらないといけないです。
もうひとつは、私達が支援する子ども達よりも下の世代の子どもを支援する人達の話を聞いてみたいと思っています。私達が支援する子どもは育ってきた環境に課題があることが多いと私たちは考えているので、幼児期や児童期の子どもやその家庭を支援する人たちと関わっていきたいです。

かにゃお

じゃあ、子どもを支援する他の団体と交流するためにもぜひ県が行うNPO・企業・大学等の多様な主体の出会い場である「企業・NPO・大学パートナーシップミーティング」に来てにゃ!

髙木さん

そうですね!行きます、また会おうね、かにゃお。今日は来てくれてありがとう!

 

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