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更新日:2020年12月4日
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1 アユ釣り五十の手習い(相模湾試験場 一色竜也)
2 趣が違う川(企画指導部 加藤健太)
「六十の手習い」という言葉がありますが、私の場合「五十の手習い」というか、50代半ばになって「アユの友釣り」を始めてみました。釣りといえば若いころは渓流釣りに親しみ、近くは丹沢、伊豆半島、南アルプス、果ては岩手県の岩泉にまで遠征したこともあります。しかし、ここ数年は脚にも眼(老眼)にも自信がなくなってきたため、すっかり釣行しなくなってしまいました。そんななか相模湾試験場に赴任してきて、職場の横を流れる早川を眺めているうちに、釣心が沸々と沸き起こり、里を流れる清流域で釣れるアユ釣りを始めてみようかと思うようになりました。実は20代ころ、渓流釣りの仲間からアユ友釣りを盛んに勧められ、友船、おとり缶などアユ釣りの道具を少しずつ揃えたことがありました。しかしあまりにアユ竿が高価なため手に入れることができず、揃えた道具も押し入れにしまい込んでしまいました。それから30年経過し、一念発起してしまい込んだ道具を引っ張り出し、竿は中古のものを手に入れてまずは始めてみることにしました。
アユ釣りを始めてみて驚いたのは、川にいるアユの数の多さです。今年は昨年の台風の影響もあって少なかったようですが、昨年などは橋の上から川を覗くと群れているアユを簡単に見つけることができました。アユは川の中の石についた藻を食べる植物食性のため、動物食性の渓流魚より食物ピラミッドの低い栄養段階に位置づけられます。動物性より豊富な植物性のエサに支えられるアユの食性が、川で多くのアユを育むことができるといえます。水産の技術者として、そんなことは常識として知っていたはずなのに、今更驚くとは。実感するとはこのことかと思い知らされました。
釣りといえば朝早いのが当たり前ですが、友釣りは日が昇って川の水温が上がった頃の方が良いようです。もし、他の釣り人がすでに釣っていても、釣り場が広いのであまりストレスになりませんし、むしろ他の釣り人や漁協の監視員の方との情報交換も楽しい一時です。また、アユは別名「香魚」といってスイカのような良い香りがします。魚釣りというと魚臭い、生臭いといった印象ですが、夏の暑い日に釣れたアユの爽やかな香りは、川の美しい風景やせせらぎと相まって、素晴らしい自然の恵みを感じさせます。釣れたアユを持ち帰って台所で捌いても、家族から生臭いと言われないのも良いですね(笑)。
子供のころから川釣りに随分親しんできましたが、アユ釣りだけは敷居が高くて未経験でした。50代半ばになって初めて挑戦したアユ釣りが新しい発見を与えてくれました。こうした喜びや驚きも都市と調和した本県の自然の豊かさ、魚を増やそうと努力する漁協の皆様のおかげと思っております。その環境に感謝をしつつ、来年の解禁が待ち遠しく思っております。
早川での鮎友釣り
友釣りで釣れたアユ
イワナやヤマメを狙ったフライフィッシングで各地の渓流に出向きます。しかし、10月以降は、本州のほとんどの河川で渓流魚は禁漁になるので、禁漁期の無い北海道へと遠征します。
北海道では平野部でもニジマスやアメマスが釣れるため、本州のように登山道を1時間近く歩いて川にアプローチすることはほとんどありません(ヒグマも怖いですし)。街中の幹線道路沿いを流れる河川でも、牧場の横を流れる水路のような川でも、たくさんのマス類が生息しているのです。本州ではウグイやオイカワが住んでいそうな流れでも40センチを超えるニジマスが釣れることがあります。
前置きが長くなりましたが、北海道で良く行く川では「梅花藻(ばいかも)」と呼ばれる水生植物を目にします。梅花藻は本州では滋賀の醒ヶ井や静岡の柿田川など、きれいな湧水の川に生え、時期になると白く小さな梅に似た花を咲かせ、それを見に観光客が訪れます。梅花藻が生える川で釣りができるのは、本州では富士の忍野や日光の湯川くらいでしょうか。
しかし、その川の梅花藻は生え方が尋常でなく、股下ぐらいの深さの川一面に足の踏み場もないような状態。実際には川の中に入って踏んだり掻き分けたりしながら遡行するわけですが、足に梅花藻が引っ掛かってなかなか進めない、なんてこともあります。こういう場所ではニンフやウェットなど沈めるフライは確実に使えませんので、ドライフライしか使いませんが、元気のいいニジマスがかかると梅花藻の中に潜ってしまい、糸が絡まって取り込みに四苦八苦することもあります。ただ、これだけの梅花藻が生えていれば生物にとっての隠れ家が多く、カゲロウやカワゲラといった水生昆虫が数多く生息でき、とても豊かな環境と言えます。
しばらく釣りあがると、大きな淵には60センチを超える巨大ニジマスや産卵のために遡上したサケの姿がちらほら見られます。本州にこんなところがあったら釣り人が殺到してたちまち荒れてしまうことでしょう。
普段訪れるイワナ、ヤマメの渓流とはかなり趣が違いますが、これからも年に1回は訪れたいと思います。
梅花藻が生える湧水の川
揺れる梅花藻
ホッチャレ(産卵後のサケの死骸)
企画研究部企画指導課
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