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更新日:2020年10月2日
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次の審議会等を下記のとおり開催した。
水源環境保全・再生かながわ県民会議 第27回施策調査専門委員会
(拡大専門委員会)
平成26年2月17日(月曜日)15時30分から18時00分
横浜市開港記念会館2階 9号室
田中 充【県民会議座長】、淺枝 隆【施策調査専門委員会副委員長】
足立 功、井上 貞子、金森 厳、久保 重明、坂井 マスミ、増田 清美
平成26年7月9日
水源環境保全課調整グループ、担当者名 高乘
電話番号 045-210-4352
(田中座長)
よろしくお願いいたします。本日の会議は変則的な形になりまして、施策調査専門委員会の主催ですが、県民会議の委員の皆さんにも多くご参加いただき、今日の主題であります水源環境保全・再生施策の総合評価のあり方について、あるいはその枠組みについて意見交換をさせていただく趣旨でございます。施策調査専門委員会からの出席が、大雪のこともありまして結果的に淺枝委員と私となりましたが、委員から6名の方にご参加いただき、8名で意見交換をさせていただきたいと思います。
来年度には第2期計画の3年目となりますが、第2期終了時の10年の節目には、20年計画の中間年にあたりまして、かなり本格的な評価を行い、場合によっては水源環境保全税を延長する、さらに施策の組み替えをしていくことも可能性としてはあり得るということです。
したがって、この間既に7年経過しているわけですが、施策の総合的な評価について、評価結果を県民に分かりやすい形で出していく。そして、県民の理解を得ながら、どういう方向でこの施策を進めたら良いかのコンセンサスを得ていくことが重要ではないかということです。そこで、県民会議全体で本来は議論すべきところですが、一先ずその前段として、この専門委員会で意見交換をさせていただく場を持とうということで、前回の県民会議で拡大版の施策調査専門委員会をやったらどうかということでご提案をして、皆様からご賛同をいただき、この日を持たせていただきました。
通常の県民会議は3月にございますが、大変議題が多く、報告事項もあり、結果的に十分な議論の時間が取れないということもありますので、別途、このような形で施策評価にテーマを絞って意見交換をさせていただくということです。18時までの長丁場になりますけれども、前半では資料説明を中心に、後半では意見交換をさせていただくということで、十分に時間を取っておりますので意見交換をさせていただきたいと思います。それでは早速資料の説明に入りたいと思いますが、まず、事務局から説明をお願いします。
(田中座長)
確認ですが、資料1-2の水源環境保全・再生の大綱と実行5か年計画が中段以下にあり、この関係について伺います。まず、20年間の「かながわ水源環境保全・再生施策大綱」が定められています。そして、実行5か年計画の第1期が平成19年度から23年度、それから第2期が24年度から始まっています。施策大綱の中で、計画を5年毎に区切って1期、2期、3期、4期とあるのですが、大綱の中に1期としてはここまで、2期としてはここまでやるというような、1期計画毎の目標量は定められているのでしょうか。それとも定性的なものでしょうか。
(水源環境保全課)
事業によっては、大綱の中に将来像を定めておりまして、その中で目標数値的なものを示している取組もありますが、12事業に関して20年間の計画目標数量をお示ししてはいません。
(淺枝委員)
資料1-1の最初のところに、施策の最終目標として「将来にわたる良質な水の安定的確保」とありますが、将来というのはいつ頃までとか、どの位とかいったものはないということですね。
(水源環境保全課)
そうです。
(坂井委員)
資料1-1の1②のところに指標の例がありまして、「森林が適正に手入れされている状態」と書かれています。「将来にわたる」という言葉が中に入るのであれば、20年が終わった段階で、将来にわたって森林が適正に手入れされる状態を維持していなければならないことになると思います。そうすると、そこに手入れをする人が手入れをし続けていてくれるかという問題が残ります。公助をいつまでもやり続けるわけにいきませんので、いずれ共助と自助に返さなければなりませんが、20年経った時点で共助と自助に返せる状態になっているかどうかが評価のポイントになっていないといけません。そうでないと量をこなしただけで、中身を見ていないで終わる事になると思います。
(田中座長)
後半の意見交換の時に、今のようなご意見をいただきたいと思いますが、質的な評価をどうするのかというお話だと思います。まさにそのような話、森林の状態、整備の状態を確保することは大変重要ですので、後半で意見交換させてもらいたいと思います。ここでは主に確認、質問をいただければと思いますが、いかがでしょうか。
それでは私の質問を続けますと、施策大綱の20年があり、それから12の柱が決まっています。それを元に5か年計画を1期計画、2期計画と繋げてきています。数値目標は施策大綱の中には基本的になく、定性的な目標ということです。ただ、5か年計画のタイミングになると、それぞれに数値目標が定められて、どこをどこまでやるのかということが割としっかりとフィックスされて、実行計画になるという構成です。
そこで、第2期が終わった段階で折り返し地点になるわけですが、その段階で12の施策を13に増やすとか、大綱の微調整ではなく中程度の手術をすること、見直しをすることは可能かどうかということですが、その点は感触としていかがでしょうか。
(水源環境保全課)
手続的には、平成22年5月に「次期計画に関する意見書」を県民会議から出していただいておりますが、意見書の中で12事業のあり方を含めて、そのままで良いとか、あるいはここを少し見直すべきとか、そういったことを含めてご意見をいただくのが、まず県民会議と県とのやり取りとしてはあります。そうした県民会議のご意見ですとか、議会や市町村の意見を踏まえながら、また、事業の実施状況を評価しながら、12事業のままで良いのかどうかということも含めて、次の計画に向けて検討をしていくことになります。
(水源環境保全課)
大綱では12の事業を位置付けておらず、このような事業があるということを列記しています。実行5か年計画の方で、特別に対策をしなければならないのが12本あると定めていますので、5年の見直し毎に12事業が11になる、あるいは13になるということは可能性としてあります。
(田中座長)
県民会議の方で建議をして、最終的には議会で審議してもらう形になりますので、議会の承認が受けられればということになりますが、県が原案作成を行うにあたり、どのような意見を出すかというのが県民会議の役割になります。
(井上委員)
点検結果報告書の作成に関して、この報告書は県に提出されますが、県民にはどのような方法で情報提供をしているのでしょうか。
(水源環境保全課)
県のホームページには毎年の作成分を掲載して、どなたでもご覧いただけるようにしています。それから、例えば市民事業支援補助金を活用している市民団体宛てにもお送りしています。報告書の分量がかなり多いので、何らかの形で施策と関わりのある団体などにお送りしています。また、問い合わせがあればその都度お送りしています。
(田中座長)
よろしいでしょうか。それでは次の話に進みたいと思います。資料1-3と1-4については、私から説明いたします。
(田中座長)
全体的な枠組みは以上でございまして、今度はそれぞれの柱毎に内容の紹介をしていただきたいと思います。資料2の森林の保全・再生に係る施策評価について説明をお願いいたします。
(田中座長)
ありがとうございました。今のご説明の点で何かご質問はありますでしょうか。
(淺枝委員)
水量については、結果が徐々に出始めているのでしょうか。
(自然環境保全センター)
水量も測定結果としては出ています。
(自然環境保全センター)
水量ですけれども、2年半から3年位は測っていますので、最終的にはその解析をした中で結果が出て来ると思います。大洞沢では植生保護柵で囲っていますが、中の植生回復が十分ではありませんので、次の夏からどうなるかということになりますが、植生が回復をした時点で変わってくる可能性がありますので、そこは植生の状態と連動するかと思います。
(淺枝委員)
危惧されるのは、木は変わらなくて下草が増えた場合、蒸散量は確実に増えます。そうすると、総量で測ってしまいますと、ネガティブな影響になってしまう危惧があります。上手いストーリーを作っておく必要があると思います。
(自然環境保全センター)
水収支だけではなく直接流出ですとか、タイミングなども見ていまして、基本的には直接データを取っていますので、そうした解析もやっていきます。
(淺枝委員)
水量と言うのが良いのか、基底流出量と言うのが良いのか、時期を見計らって言い方を考えておく必要があると思います。
(足立委員)
丹沢大山での植被率の回復状況ですけれども、これだけの広いところを調べるのはかなり難しいと思いますが、具体的にはどのような方法でやられたのでしょうか。
(自然環境保全センター)
実際は各メッシュの中にモニタリング地点を置いていまして、そのモニタリング地点の植生状況を調べて、そこのメッシュの代表値として整理するような形で取ります。
(足立委員)
メッシュにはコドラートを作るのでしょうか。
(自然環境保全センター)
そうですね。地点を決めておいて、そこの植被率の変化を見ていき、そこをメッシュの代表として置いています。
(田中座長)
ありがとうございました。それではもう一つのご説明を伺いたいと思いますが、水関係の施策評価についてご説明をお願いいたします。
(田中座長)
ありがとうございました。あまり残り時間がありませんが、意見交換をさせていただきたいと思います。まず、総合評価ということで森林系と水系と2つの柱があって、良質な水の安定的確保ということで、水源環境保全・再生施策全体にわたる評価をしていきたいという話です。また、それぞれの部分で評価項目を追加したらどうかとのご提案もいただいたところです。今までのところでお気付きの点などありましたらご発言をお願いいたします。
(井上委員)
この間、山梨県に行った時にシカ対策の話が出たのですが、神奈川では昨年度からワイルドライフレンジャーが活躍されていますが、山梨県では広葉樹を植えて、その木の1本毎にネットを張って、シカに皮を食べられないように何かを被せてありました。神奈川県では、レンジャー以外にそうした取組をしているのでしょうか。
(自然環境保全センター)
神奈川県でも実際にやっているところはあります。植栽した木を守ろうとする時には、単独で木だけを巻いてシカに食べられないようなやり方をしますが、主流になっている混交林づくりでは、森林の中で面的に植生を生やそうとしています。また、基本的に今のところは植栽を行っていなくて、自然に生えてくるものでやろうとしていますので、1本1本の木を守るような手法というよりは、植生保護柵で面的に守って、そこに生えてくるもので森林を形成していこうというやり方をしています。植栽した木を守るにはそのようなやり方があるということで、神奈川でも全くないわけではありません。
(足立委員)
水源かん養の機能について、木の蒸散を測らないと収支をはっきりとつかみにくいと思いますが、その方法を何か考えているのでしょうか。
(自然環境保全センター)
対照流域法の試験流域では、一部では蒸散量を測定しているところもあります。ただ、バラつきが多くて測定が難しいこともありますので、今回神奈川県の方で進める整備というのは、地表面に草がなくて水がしみ込まなかったり、地表面を水が流れてしまうことが一番良くなくて、それを対策の一番のターゲットにしていますので、本来的には収支ということで蒸散も含めて、流出分も含めて把握するのが一番良いのですが、それも一部でやりながら、一番優先しているのは地面に水が入りやすいかどうかとか、土壌の表面を水が流れているものがしみ込んでくれるかとかに焦点を絞って詳しく測っていますので、それぞれの箇所でやっているのではなくて、一部の重点的なところでやっているという状況です。
(足立委員)
樹種別の材積を推定して、それから蒸散量を出すということで把握出来ないものでしょうか。
(自然環境保全センター)
測定して数値を出すことは出来ますが、とてもバラつきがあります。神奈川の森林は、流域全てがスギ、ヒノキであるといった均一な流域はなく、そういった意味で神奈川の森林はかなり多様でパッチ状になっています。その中で一般的にこの数字と出すのは難しくて、その位の粗い話ですと既に既存の調査結果があって、年間700から900ミリですとか、蒸散量は関東近辺ではこれ位とのデータがありますので、それよりももっと厳密に測るとなると、費用対効果ですとか、手間のかかり方とデータの精度の関係もありますので、沢山の箇所でそういったものを重点的に測ることは今のところしていなくて、最低限のところで測っているという状況です。
(淺枝委員)
雨量は測っているのでしょうか。
(自然環境保全センター)
雨量は測っていますので、それは一番の入ってくる元で全ての試験流域で押さえています。
(田中座長)
対照流域でそういった測定をしていますが、主な指標はかん養がどれだけされているかということですね。
(足立委員)
出ていく方に蒸散量が入ってしまいますので、差し引きしないといけないかなという点が気になりました。
(淺枝委員)
この辺りの降水量は1,800ミリぐらいでしょうか。
(自然環境保全センター)
降水量は、山の方はもう少し多くて3,000ミリ位ですね。
(淺枝委員)
3分の1位が蒸散量ということでしょうか。
(自然環境保全センター)
そうですね、ただ、バラつきが多いです。そうした数字ですので、数字そのもので評価するのは難しいです。そういった意味もあって比較をする形にしていますので、整備前と整備後でどれ位違うのかという変化率などを出す形になってくると思います。絶対量を全て出してその数値そのもので評価するというよりも、事業をした場合としない場合とで何倍違うのかですとか、そういった相対的な評価でやっていくこともしています。なかなか数字そのもので評価するのは難しいかと思います。
(自然環境保全センター)
施策の目的の中では、降った雨を全て使うというよりも、降ったものの中で、かん養機能というのは徐々に流れることによって、有効に長い期間使えるような状態を作っていくのが大事だということでやっていますので、地下にどれだけしみ込んで、長くダムに溜めておけるのかというところを一義的に見ていきたいということです。そこを見ることが出来れば、ある程度施策の目的も果たせるということです。
(増田委員)
資料1-3と1-4に関連しますが、先程座長からロードマップの状態・機能評価、経済評価、構造図の座長提案の2次的アウトカムになるわけですね。お話を伺っていて、左側の構造図よりも整理されたものが、専門性を持っていない県民でも分かりやすいのではないかと思いました。それと淺枝委員の話を聞く中で、「将来にわたる」というのが具体的でないので、例えば50年後、100年後を見据えてとか、将来というのが分からないので、具体性のある方が県民に伝わりやすいと思います。
(淺枝委員)
それはすごく重要なポイントです。今神奈川県民が飲んでいる水のレベルで考えるのか、50年後の神奈川県民が飲む水のレベルで考えるのかで違います。ここ20年から30年位で神奈川県民が飲んでいる水のレベルで考えると、先程お話しした有毒物質の方が圧倒的に危ないです。けれども50年後の神奈川県民が飲む水ということで考えると、もっとミネラル分の多い、豊かな森から出て来た水の方が圧倒的に良いわけです。目的のところに多少のずれがあって、それも全部考えているといった言い方をしておくと、県民の方にもいろいろな考えの方がいらっしゃるので良いかと思います。
(田中座長)
少し気になるのが、県企業庁や各市の水道局では、自分達は安全な水を供給しているとの大前提で取り組んでいるわけです。県や市の行政の立場からすれば、自分達は安全な水を供給しているということですので、あまり今の水が安全でないというのは行政の立場としては言いにくいと思います。より安全な水、よりおいしい水ということに対して、どれだけ努力していくかということだろうと思います。
それから増田委員からご発言の、将来にわたるというのはいつの時点を考えるのかとの点も、人によってイメージが異なりますし、今は良質でないのかということにもなりかねませんので、具体的な目標設定を持った方が良いというのはご指摘のとおりかと思います。
先程、坂井委員から施策評価の質の話がありましたが、もう一度ご意見をお願いします。
(坂井委員)
先程例に出しましたのは、森林が適切に整備されている状態が将来にわたって続くのかという担い手の問題ですが、河川に関することであれば、県民の自助努力でできることは非常に限られています。例えば家を建てたい時に下水道につなぐとか、浄化層を新しくするしかないのです。ただ、森林の場合には、そこに沢山の所有者がいて、林業が出来る場所と出来ない場所がありますし、やり方が分からない人もいますし、出来ない人もいます。そういったことを含めて、数値目標とか量的指標もありますけれども、それだけで問題は解決しません。そこに住んでいる人がちゃんとそこの手入れを続けてくれるかどうかという指標が必要なのです。
こうしたことはまた「他施策」と言われるかも知れません。しかし県は、森林荒廃の原因を外材が入ってきて木材価格が下がったという一つの原因で考えていると思いますが、そんなに単純ではありません。今の住宅供給の現状から言うと、安い外材が入って来なければ日本中の山が皆はげています。為替変動などの経済的なレートの影響も受けます。一面的に外材が安いからということだけが森林荒廃の理由ではありません。今1次産業は、1.5次化ということを考えないといけない時期に来ています。神奈川県の森林と林業は、2次産業から比べると大体20年遅れの感覚です。良いものを作って売り出せば必ず売れる、それが20年前のプロダクトアウトの考え方です。マーケットインは、作っても売れないからどうやったら売れるかを考える、市場を見てどういうものを作り上げるかということです。マーケットインはもちろん、プロダクトアウトするだけの技術力がなければ出来ない仕事ですから、当然そこには農商工連携とか、両方を見る視野が必要なのですけれども、神奈川県の森林・林業にはそういうことが20年くらい遅れています。一例で言うと、昔は農家にお嫁さんが来ないという話がありましたが、そこはお嫁さんが期待と思うような森林地域、あるいは水源地域づくりができているかどうかということがマーケットインです。もっと具体的に言えば、森林塾で女性が卒業したのだけれども、結局就職しなかったと聞いています。どうしたら定着するのかよく検討し、森林に女性がいることでよりマーケットインに近付くのだ、という視点を持つことが必要です。例えば住宅をリフォームする際、予算の200万円までを握っているのは女性、つまり奥様です。200万円までの買い物は奥様が決めるのです。ですから女性の視点がなければ、木材需要を掘り起こすことができない、森林に将来はないということになります。女性の方から、森林の世界では女性はトイレ一つだって大変なのですよとの話がありました。そういう森林塾への配慮は一例です。神奈川県の林業を1.5次産業化していくためには、森林地域の現状とか、県の事業に森林所有者はどう思っているか、各所有者さんがどうなっていくか、この地域は将来どうなっていくか、検証した結果のフィードバックがないと、私達は評価出来ないのです。モニターに行って、そこの林分だけを見るとか、工事箇所だけを見るとかということでは、モニターしたことにならないと私は思います。そこの地域でどのように解決策が図られたのか、それが最終的に、森林が適正に手入れされている状態を評価するための必要な情報です。その辺りについて、点検結果報告書を見ていても、まるで見えないと思います。
(田中座長)
私が聞いた範囲では論点が多岐にわたっていて、よく理解出来なかったのですが、要するに坂井委員は何をしたら良いとおっしゃりたいのでしょうか。
(坂井委員)
生態系の循環の中で、人が山の手入れをしなくなったとか、シカを人間が食べなくなったことが最終的に森林の荒廃を生んできたわけです。そこに為替変動とか、商売との連携の下手さとか、都会に皆働きに行ってしまったとか、問題は人間の社会の側に存在しますし、その理由も多様です。
例えば、森林塾はフルタイムで働くことを前提にしていますが、元々林業はフルタイムでやる職業ではありません。本気でフルタイムでやろうとすると、逆に市場が見えなくなりますし、フルタイムでやっている人は、その仕事がうまくいかなくなれば生活できなくなってしまいます。最終的に20年経った時に、森林の担い手の状態はどうであるかということは、重要な指標の一つだと思います。
(田中座長)
直接的には森林塾の話を例に出されましたが、お話を伺いますと意図されていることは、もう少し森林保全施策の外側にあると言うか、マクロの視点、例えば森林を取り巻く環境、就業環境であるとか、そうしたものを含めて対応していく必要あるのではないか。また、それを評価する指標が必要ではないかとの主張に聞こえたのですが、そういうことでよろしいですか。
(坂井委員)
森林再生課と水源環境保全課を思い浮かべていただくと分かりやすいと思いますが、二つの部署の間には境目があります。森林全体の中で、どこでどう分担の境目を付けるかということを明確にする必要があるということです。
例えば、搬出促進に水源環境税が使われているけれども、搬出の促進だけしていれば、本当に森林が将来良くなるかというと保証はありません。水源環境税を使って搬出を促進するだけなら、それはただのプロダクトアウトであってマーケットインになっていません。出た先のこと、出口を考えないで、出すことだけとか、森林を整備することだけを見ていても森林は良くならない。ですから、森林再生課にどこでバトンタッチするのかということ、搬出と出口を車の両輪として見ていくことが森林本来の健全な姿を取り戻すことだと思います。森林再生課よりも水源環境保全課の財布の方が大きい現状では、両双方に遠慮があると思っています。だからこそその境目についてきちんと話し合った方が、お互いに気持ち良く仕事が出来るのではないかと思って申し上げているわけです。
(田中座長)
今の議題は施策評価で、私の扱う範囲のキャパシティを超えているのですが、坂井委員のおっしゃったことは、事業の組み立て方を、もう少し本質的なところから構造的に変えたらどうかとのご提案に聞こえました。
(坂井委員)
これは私が委員になった時から申し上げていますが、評価の流れ図の中に戻りの矢印がないということを最初から申し上げています。戻りの矢印をどう考えるかと言った時に、今言ったようなことが大事だと申し上げています。
(田中座長)
戻りの矢印の話ではないように私には聞こえました。施策評価の話をしているので、事業ではマーケットインですとか、県産材がきちんと販売されるようなことについても、この税が使われても良いのではないかとの指摘があるかと思います。森林塾については、例えば女性の就業環境を考えるような配慮があるとよろしいのではないかということがあったと思いますが、その話と施策評価の話とをどう結び付けたら良いのかが分かりませんでした。ご指摘の主張は分かるのですが、何をしたら良いのかということをおっしゃってくださいというのが、座長として、進行役として申し上げることです。
(坂井委員)
2年間ずっと意見を言う場がなかったので、今まとめて言いました。
(金森委員)
資料1-4について、今回、河川を入れていただいたことは非常に良いと思いました。森がきちんと整備されているところは、渓流の渓相が非常に良いです。年中雨が降って、石が白くて、雨が降る度に荒れる渓相よりも、森が健全ですと渓相が良いです。それを入れることが出来ないかと思いました。
それから、6番から9番の水の関係はこの通りで、2次的アウトカムできちんと評価をやらないといけないと思います。ただ、難しいと思ったのは、河川、ダム、地下水とバラバラでレベルも違うので、どうやってそれを最後に水質として評価するのかの部分で悩むところだと思います。そこで、先程説明のあったアユを使った評価の拡充は素晴らしいと思います。一つだけ思いましたのが、ヤマメ、イワナ、アユというのは人間によるかく乱があるのではないかと思います。たまたま調査した時に、釣り師がとってしまって魚がいなくなってしまうとかですね。群馬の方で、このようなことを目的にずっと禁漁にしている沢を決めている地域があって、4年に1回のオリンピックの時だけ釣っても良いという地域があります。それは水質を守って、定期的に調査をするということで、実際に例はあります。魚を使うのは良いと思いますが、禁漁にしてはどうかと思います。
最後に、先程、毒物が流れて魚が死んでしまったとの話がありましたが、私は水道局の依頼でよく浄水場に行きますが、実際に水道水を流す前には、金魚なりメダカなりで1日溜めて、それが大丈夫だったら水道局から流すことをしていますので、いきなり川の水を飲む人がいなければ、まず何も起きないとは思いますが、たしかにこれからは怖いのかなとも思います。例えば、使い終わった医療薬品のようなものが川に流れると、このようなことが起こるのかなと思います。そのようなことは水道局でも注意しています。
(田中座長)
最初の話にあった渓相とはどのようなものでしょうか。
(金森委員)
渓流の見た目の状態のことです。
(田中座長)
私なりに理解すると、水の事業に対する評価の指標をもう少し充実したらどうかということです。水質項目についても、BODに傾斜せずにもう少し幅広く見ていくこと。それから、生物指標のようなものをもう少し重視したらどうかということで、中流域のアユを一つの生物指標にするということです。
是非こういう整理をしていただきたいと思いますのは、資料1-4を見ていただくと、水源水質の維持・向上、これをモニタリングでやっていきましょうということでいくつか指標が設定されています。この指標が現状のままで良いのか。アユのようなものを追加する方が良いのか、それから物理化学的な指標に加えて、生物指標を含める。その項目が多岐にわたっているので、それを全体として総合的に見れるような、ダム湖、中流域、地下水を総合的に見れるような指標にどのようなものがあるのか。水質指標の総合化というか、統合化というか、そうした工夫が出来ないかというのが1点です。安全の確認ですとか状態の確認の面では、現場に近いところで項目を充実しなければいけないということは分かりますが、項目を増やせば増やすほど全体的にデータ量は多くなるので、それを全体として見れるような工夫も他方では必要ではないかということです。
それから水の側からは、生態系の評価をどう考えたら良いか。森の方は生態系の評価の組み立てがあって、植生から始まり、植生が回復することで動物、植物が回復するというステップを考えています。次元的に土壌動物、昆虫、鳥類、哺乳類と階層性を持っているのですが、水質の場合にも、生態系の健全化を評価するような指標体系を考えておく必要があるのではないかというのが2点目です。
(淺枝委員)
それは基本的には一緒の考え方です。一番下層に付着藻類があり、それに水生昆虫が来て、おそらく次に来るのは魚で、その三段階ぐらいです。水生昆虫の中でも、魚の中でもいくつか段階があります。ただ、あまり項目を増やし過ぎるときりがありませんので、基本的にはその辺りで良いと思います。
先程のダム湖で分かれてしまっているとのお話ですが、ダム湖のモニタリングは基本的に企業庁でやっています。そのデータを借りてきて、ここに入れ込むことは考えられます。もっと言えば、相模川の中は県土整備局でデータを持っていますので、そういうものを上手く借りてこの中に入れ込むことはあります。
そうすると何が出来るかと言うと、生物だけでなくて、川の中の石や砂が、生物が棲む上での基盤になるわけですから、そこは県土整備局が持っているデータがこの中に入ります。そうすると、県土整備局がやっているのは、相模湖の砂を下流に置くという置き砂ということで、止められた砂を下流に供給することをやっています。それがこの施策と上手く組み合わさるところが出て来ます。県全体の施策の中で、いろいろなものが今までは別々に説明され、別々に考えられていたのが、実は全部組み合わさっているという形が出来ます。それが少なくとも川の中では必要になってきているのではないかと思います。県土整備局がやった「森・川・海の連続性を考えるシンポジウム」で、聞いている方から何が出て来たかというと、まさにここでやっていることが、何故そちらの話の中に出て来ないのですかという質問が来ました。それは水源環境保全税の方でやっていて、たまたまここでは出さなかっただけですと答えました。県民の方は、どこの部署がやっているかは全然関係ありません。全体が分かって初めてなるほどと思うので、そこのところを活かした形の評価がこの中に入ってくると、より説得性のあるものになると思います。
(水産課)
来年度からアユを指標とした調査を実施させていただきますが、その件に関して補足説明をさせていただきます。例えば、ヤマメとかイワナ、アユは、それぞれ一つの指標種として定められております。ヤマメ、イワナについては上流域の清流域、非常に水質がきれいなところでは、こういった魚が棲んでいるということが一つの基準になっています。
中流域については、アユが一つの指標種になっています。皆さんご存知のように、アユについては毎年漁業協同組合が種苗を放流していますが、それよりもかなり多くの天然のアユも実際には遡上しています。単にいる、いないということでは環境基準を満たしていますが、例えばそういったものを禁漁するのも一つの手だと思いますが、かなり人間の手が入って来ることになります。逆にそれが水質浄化に寄与しているのではないかという考え方もあります。アユは特異的に、大きくなると藻類を食べる魚種でございます。そうすると、上流から流れて来る窒素やリンが藻類に固定されます。それは時間が経てば枯れて元に戻るわけですが、藻類をアユが食べることによってアユが大きくなります。そしてアユが釣られることによって川から窒素やリンを持ち出すことになりますので、そういった面での浄化機能もあるということです。また、多様な生物の棲む空間の創出条件が一つのキーワードとなっておりまして、河川管理をしている市町村が「もっとアユの多く棲む川を作りたい」、もしくは「アユが沢山産卵する場所を作りたい」、実際に相模川では石がなくなってしまって土丹が出ているような場所もございます。どういった整備をすれば良いのかということで、今後行うアユの調査を河川整備などにもフィードバックしていきたいと考えております。
(田中座長)
水源環境保全・再生施策は、川の内部まで入り込み、河川整備まで投資の対象にしていくのかどうかということがあります。6番事業の今日のご提案は、河川整備の指針を作るということですが、県が管理する河川はそういう形で評価をすることは可能でしょう。その時には、県土整備局なり河川を管理する部署がそれをやっていく、それを要請していくことで良質な水の安定的確保につながっていく話だと思います。同時に、一級河川ということになると国の管理になりますので、水源環境保全・再生施策が、河川の内部のところまで投資の対象にするかどうか、そのことについて可能性があるかどうか。事務局の考えはいかがですか。
(水源環境保全課)
県管理河川なり、国管理の河川に対して、水源環境保全税を投入する考えは持っていません。それは既存事業という整理であって、既存事業でも生態系に配慮した河川整備を行っているという認識です。あくまでも市町村管理河川が対象です。
(淺枝委員)
現に水源環境保全税でやっている市町村の事業はもちろん対象になります。私が申し上げたのは、その効果を把握するデータとして、他事業のデータをもっと活用してはどうかということです。県の事業の中で、他の部署でやっているデータがあるわけでして、それを評価に使ったらどうかということです。
(田中座長)
既存データの活用は以前から行っていますので全く問題ないと思います。河川整備のあり方に関する指針の提案が、6番事業の関係で出てきました。6番事業でやるのは全体から見れば僅かな部分ですが、より大事なのは整備指針に基づいて各事業部局がやってもらいたいということです。6番事業は、ある種のモデルとしてやっているものと理解しています。その意味では、むしろ指針を作って提示する時に、どういったコミュニケーションと言いますか、どれだけ浸透力を持たせるかという点があります。6番事業の区域だけを評価するのも悪くはありませんが、本当は河川全体での効果が期待されるのだとすれば、評価の仕方を持っていなければならない。6番事業の関連で提案されるのであれば、そうしたことも認識しておく必要があるというのが私からのコメントです。
それからもう一つは、生態系と水質について、6番事業だけでなく、6番事業以降10番事業までの中でどういった指標を置くのか、どういう体系的整理をするのか、そこが水施策の総合評価として求められていると思います。6番事業のことだけではないと思いますので、全体的な評価の仕方をもう一度工夫すると良いと思います。
(自然環境保全センター)
先程の坂井委員からのコメントに関して、4番事業の間伐材の搬出促進について、ここではアウトプットの搬出量のみを示しています。ただ、この税ではない別の施策で、県の森林再生課は別の財源を使って、木材の生産、流通に関してこの5年間、あるいは税の始まった当初から現在まで、かなりそれまでとは違った取組をしてきています。ですから、評価を受ける時にそうしたものも施策大綱には載っている事業ですので、情報提供をしないと県民の方は判断出来ないのではないか。山から木が出て行った後、その木はどうなったのかということまで含めてストーリーとしてお見せする必要があるのではないかとの趣旨ではないかと思います。
(田中座長)
ここまで議論を進めてきまして、もう少し確認したかった点などもあると思いますが、予定の時間となりました。本日は皆様からのご説明や意見交換の時間も設けて開催をしましたが、これで拡大版の施策調査専門委員会を終了させていただきます。機会があれば来年度に入ってからもう一回か二回になるか分かりませんが、総合評価のあり方について確認をしていきたいと思います。皆様どうもありがとうございました。
【会議終了】
資料1-1 水源環境保全・再生かながわ県民会議のこれまでの施策評価の取組について
資料1-2 水源環境保全税(個人県民税の超過課税)導入の経緯と第2期計画の対応
このページの所管所属は環境農政局 緑政部水源環境保全課です。