水源地域の森林は、これまで木材生産などの林業活動を通じて守り育てられてきました。
しかしながら近年、家庭燃料が薪から石油やガスに、家屋も木材中心から新建材等に変わるなど私たちの生活様式の変化や安価な外国産木材の輸入などのため、林業経営が難しくなり、手入れの行き届かない森林が増えてきました。
このままでは、木材生産機能はもとより、森林のもつ水源かん養等さまざまな公益的機能の低下が懸念されることから、神奈川県では、森林所有者等をはじめ県民・企業・団体の皆様のご理解とご協力を得ながら、水源地域の私有林の公的管理・支援を推進しております。
エリアの設定
平成9年4月1日から水源の森林づくりを進めるにあたり、事業を展開する地域を明確にするため、神奈川県治山計画区(昭和61年4月設定。以下「単位流域」という。)を単位として、次の基準1から3のいずれかに該当するものを水源の森林エリアとして設定しました。
その後、平成12年4月1日及び平成15年4月1日付けでエリアの見直しを行い、現在、水源の森林エリア内の森林面積は約60,900haとなっています。
(1)神奈川県水利用図に記載されている取水源の上流部に位置する単位流域。
(2)神奈川県森林機能別調査(平成元年3月)において、水源かん養機能評価ランク(5段階)が4以上の森林を有する単位流域。
(3)単位流域内の森林面積に対する保安林(森林法第25条第1号、第2号または第3号に係るもの)指定面積比率が、県平均(48%)以上の単位流域。
(4)水質汚濁、洪水、土砂流出等により、下流部に位置する他の市町に著しい影響を生ずるおそれのある単位流域。
設定したエリアは、県内362単位流域のうち相模原市ほか10市町村にまたがる192単位流域となっています。
エリア内の森林面積は約60,900haで、このうち私有林は約42,000haとなっています。
水源かん養機能など森林の持つ公益的機能を高めるために、手入れ不足の人工林では、枝打ち、間伐等の手入れを行い、健全な人工林、複層林、巨木林、混交林へ導いていきます。
スギ・ヒノキ等の人工林において、間伐などの手入れを行い、林内を明るくすることで、下草の導入をうながします。下草が生えると、その根の力や、雨が直接地表に当たらなくなることで、土壌の流出を防ぎます。
スギ・ヒノキ等の人工林で間伐などの手入れを行い、林内を明るくしたあと、樹間に植栽を行い、大きさの異なった上下2層の森林にします。上木を切っても下木が残るため、収穫時の裸地化を防ぎ、土壌の流出を防ぎます。
スギ・ヒノキ等の人工林において間伐などの手入れを行い、樹齢100年以上の大きな木を育てます。巨木林では、多様な草木が生え、様々な深さに張りめぐらされる根が、土壌の流出を防ぎます。
スギ・ヒノキ等の人工林で間伐などの手入れを行い、林内を明るくする事で、土地本来の広葉樹が生えてくる条件を整え、スギ・ヒノキと広葉樹が混生する森林にします。多様な樹種で構成されることにより、様々な深さに張りめぐらされる根が、土壌の流出を防ぎます。
シカの採食などにより、裸地化している広葉樹林で、土壌の保全、植生の保護などを行うことによって、土壌を安定させ、土地本来の様々な草木を生やします。多様な樹種で構成されることにより、様々な深さに張りめぐらされる根が、土壌の流出を防ぎます。
水源の森林づくりでは、森林所有者の皆様のご理解・ご協力をいただきながら6つの手法で私有林の公的管理・支援を行っています。
協力協約 |
森林所有者が行う森林整備の経費の一部を助成します。 |
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長期施業受委託 |
森林組合等が森林所有者から森林を預かって行う森林整備・管理の経費の全部または一部を助成します。 |
水源協定林 |
森林所有者との協定(借り上げなど)により、森林を整備します。 |
環境保全分収林 |
木材生産目的の分収契約を変更し、より公益的機能の高い森林を目指して整備します。 |
水源分収林 |
森林所有者との分収契約により、森林を整備します。 |
買取り |
貴重な森林や水源地域の保全上重要な森林を買い入れ、保全整備をします。 |