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初期公開日:2024年1月10日更新日:2024年1月17日
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新たな総合計画(新かながわグランドデザイン(仮称))基本構想の素案
(注釈)ウェブアクセシビリティの向上のため、一部の記載をPDF版から修正しています。
新かながわグランドデザイン(仮称)素案 基本構想(PDF:3,280KB)
県では、県政運営の総合的・基本的指針を示す総合計画として、2012(平成24)年に「かながわグランドデザイン基本構想」を策定し、神奈川の人口が減少に転じていることが予測される2025(令和7)年を見据え、基本理念である「いのち輝くマグネット神奈川」の実現に向けて、超高齢社会や将来到来する人口減少社会をはじめとする様々な課題への対応を着実に進めてきました。
そうした中、今日では、神奈川においても明らかに人口減少局面に入り、超高齢社会や本格的な人口減少社会など予測していた社会が現実のものとして到来しています。さらに、世界中に大きな影響を及ぼした新型コロナウイルス感染症の感染拡大や国際情勢の不安定化など、予測し得なかった事態にも直面し、神奈川をとりまく社会環境は大きく変化しています。
今後、2040(令和22)年頃には団塊ジュニア世代が65歳以上の高齢者となり、神奈川の高齢者数と高齢化率はともにピークを迎え、さらには神奈川の総人口は900万人を下回り、これまで見据えてきた課題がより一層鮮明化していくことが予測されます。
未来の姿をつぶさに見通すことは難しくなっていますが、想定し得ない事態が生じた場合でも、その影響を最小限に抑えることが求められます。例えば、新型コロナウイルス感染症の感染拡大下では、経済的困窮や社会的孤立などに陥るリスクが急速に顕在化し、より深刻な課題として再認識されました。将来の不確実性が高まる中、これらのような社会に潜在する課題をあらかじめ浮き彫りにしていくことが重要です。そのためにも、できる限り将来の展望や課題を明らかにし、長期的なビジョンを県民と共有する必要があります。
こうしたことから、これまで掲げてきた「いのち輝くマグネット神奈川」の理念を継承し、2025(令和7)年よりもさらに先を見据えて「かながわグランドデザイン基本構想」を見直し、「新かながわグランドデザイン(仮称)基本構想」としてとりまとめました。
本計画は、神奈川県自治基本条例第20条に規定する「総合計画」として、県政運営の総合的・基本的指針を示すものです。
2040(令和22)年
「いのち輝くマグネット神奈川」を実現する
(1)誰もが安心してくらせるやさしい 神奈川
(2)誰もが自らの力を発揮して活躍できる神奈川
(3)変化に対応し 持続的に発展する神奈川
(1)将来に希望の持てる社会をつくります
(2)国内外から選ばれ 持続的に発展する都市をつくります
(3)地球規模の課題に対して役割を果たします
(4)誰もが自分らしく生きられる社会をつくります
(5)安全・安心で持続可能な社会をつくります
(6)多様な担い手との協働・連携を強化します
(7)市町村との協調・連携のもと 広域自治体の責任と役割を果たします
(1)子ども・若者・教育
(2)健康・福祉
(3)産業・労働
(4)環境・エネルギー
(5)共生・県民生活
(6)危機管理・くらしの安心
(7)県土・まちづくり
川崎・横浜地域圏
三浦半島地域圏
県央地域圏
湘南地域圏
県西地域圏
1 人口・世帯
2 社会・経済
3 自然・環境
1 くらしをとりまく問題
2 自然の脅威
神奈川は、約920万の人口を擁し、開港以来、世界に開かれた日本の窓として、時代を先導するとともに、力強い経済力を持って、我が国の発展を支えてきた地域です。
首都圏は、我が国の政治、経済、文化等の様々な活動の中心的役割を担うとともに、約4,500万人の人々が居住する生活の場となっており、我が国を牽引し、活力を創出する地域として発展してきました。
首都圏の中で自立性の高い都市拠点を有する神奈川は、業務、商業、居住など様々な機能を担っており、神奈川ならではの特色や強みを生かしながら、首都圏の活力創出において重要な役割を果たしてきました。
高度経済成長期において、京浜工業地帯をはじめとする県内工業の発展は、県民の所得と福祉の向上に大きく貢献する一方で、人口の過密化や環境汚染などの問題を引き起こしました。そうした中、神奈川は首都機能の一翼を担いながら、県民生活に大きな問題をもたらす急激な人口増加などに対応するため、人口の流入抑制や土地利用規制の強化など県土の適正利用の取組により、豊かな自然環境や生活環境の確保に努めてきました。
石油危機を契機として我が国が低成長期を迎えると、神奈川では重化学工業中心の産業構造から、頭脳型・高付加価値型への転換を進め、現在にもつながる産業基盤の基礎を築くなど、先駆けて時代の変化をとらえてきました。
また、環境問題が都市・生活型から地球温暖化など地球規模の問題にまで拡大する中で、地域からの地球環境保全への貢献を進めるとともに、一層複雑化・多様化する地域課題を解決するため、多様な主体による協働型社会づくりに取り組んできました。
そして、今日においては超高齢社会や人口減少社会を乗り越えるため、これまでの政策の蓄積を生かし、国家戦略特区をはじめとする特区制度などを活用した様々な先進的取組を展開しています。
このように、課題先進県である神奈川は、時代の節目ごとにめざすべき将来の姿を考え、常に新たな時代を切り拓く姿勢を大切にしてきました。
世界に開かれ、首都圏を支えてきた神奈川は、常に新しい時代を切り拓いてきた進取の精神をはじめ、多様で優れた魅力を有しています。これらは自然や歴史・文化、そして神奈川に働き、学び、くらし、活動する人々によって培われてきたものです。
国際貿易港である横浜港、川崎港、横須賀港を擁し、羽田空港とも多摩川スカイブリッジなどで結ばれている神奈川は、アジア、そして世界に開かれた国際交流拠点としての役割を果たしています。
神奈川は首都圏の広域的な道路網や鉄道網をはじめ、都市間連携を円滑にする様々なネットワークが形成されており、県内における交流や首都圏、全国との交流も活発に行われています。さらに、首都圏と中部圏、関西圏を結ぶリニア中央新幹線が全線開通すると、人口7,000万人規模の広域経済圏が形成され、新駅が設置される神奈川のさらなる魅力やポテンシャルの向上につながることが期待されます。
美しいなぎさを持つ相模湾、みどり豊かな丹沢大山などのやまなみ、県民の貴重な水源であるやまなみ五湖など多彩な自然がくらしと調和しています。
歴史の舞台となった武家政権誕生の地・鎌倉、北条氏の城下町・小田原、近代日本開国の地・横浜など各地域で育まれた様々な伝統や文化は、まちへの誇りやにぎわいを生み出す源泉となっています。
全国第2位となる約920万の人口を擁する神奈川は、首都東京と隣接し利便性が高いだけでなく、我が国の発展を牽引する産業・研究機関等の集積を背景に、多様な人材の活動拠点となっています。
保健・医療・福祉や子どもの健全育成、社会教育などの様々な分野で、先駆性や専門性、行動力といった特性を持つNPOやボランティアなどによる多彩な活動が展開され、多くの県民が意欲を持って参加し、相互のネットワークの形成が進んでいます。
我が国の文明開化の発祥の地である神奈川は、これまでも、世界に開かれた窓として、世界と日本を結ぶ重要な役割を担い、様々な分野における交流を通じて、豊かな国際性を育んできました。現在、176の国と地域の外国籍県民約24万人が生活する国際性豊かな地域となっています。
神奈川の県内総生産は、35兆2,054億円(2019年度)で、デンマークの国内総生産に匹敵し、一国の経済に肩を並べる高い経済力を有しています。
京浜臨海部や県央・湘南地域などを中心に、自動車などの輸送用機械をはじめとする製造業の生産拠点が集積し、工業製造品出荷額等は、愛知県に次ぐ全国第2位となっています。また、学術・研究機関(民営)の数も全国第2位と、企業の研究機関や大学などが数多く立地しており、技術開発にかかわる高いポテンシャルを有しています。
神奈川をとりまく社会環境の変化を踏まえ、次のような視点を持って、2040(令和22)年の将来像に向けた政策の方向性を整理しました。
世界中に影響を与えた新型コロナウイルス感染症は、我が国では、海外から神奈川に寄港した大型客船内で多数の患者が発生したことで注目を集めました。グローバル化が進展した現代は、そうした新興感染症が感染拡大するリスクが高く、また国際情勢の影響を非常に受けやすい状況となっています。新型コロナウイルス感染症の感染拡大や国際情勢の不安定化などの危機に直面したことで、危機管理上の課題や海外依存の経済をめぐる課題、社会的孤立などくらしをとりまく課題が浮き彫りとなりました。
このように、予測が難しく先の見えない時代にあって、あらかじめ社会に潜在する課題を浮き彫りにし、想定し得ない事態が生じた際の影響を最小限に抑えていくことが求められています。
2008年に我が国が人口減少に転じて以降も、神奈川の総人口は一貫して増え続けてきましたが、2021年10月に統計開始以降初めて前年同月と比べて減少に転じてから同様の傾向が続いており、神奈川も明らかに人口減少局面に入りました。その主な要因は、出生者数の減少と高齢化に伴う死亡者数の増加です。今後、団塊ジュニア世代が65歳以上となる2040年頃に向けて、さらなる高齢化の進行が見込まれます。
このように、少子高齢化が進み、神奈川でも本格的な人口減少社会など予測していた社会が現実のものとして到来する中、くらしや経済活動を支えてきた社会のしくみや基盤の維持が困難となっていくため、子育て支援や人を呼び込む地域づくりなど人口減少を少しでも緩和するための取組とともに、将来の人口構造を踏まえた社会づくりが求められています。
産業の発展とともに、ヒト・モノ・カネ、そして情報の動きが速まる中、新型コロナウイルス感染症の感染拡大をきっかけとして、社会全体でデジタル化が加速しました。同時に価値観やライフスタイルの多様化も進み、空間のゆとりや豊かな自然の魅力が見直されるなど、神奈川にも様々な好機が訪れています。
また、近年、世界では異常気象が頻発し、我が国においても記録的な大雨が発生しており、2019年に発生した台風第15号及び第19号は県内各地に甚大な被害をもたらしました。こうした異常気象の要因として地球温暖化の影響が指摘される中、環境と経済が調和する持続可能な社会の実現が世界全体の課題となっています。
このように、デジタル化、グローバル化など時代が激しく変動し、脱炭素化への対応も迫られる中、将来を見据えた、まちの創造や社会のしくみの構築が求められています。
2040(令和22)年
「いのち輝くマグネット神奈川」を実現する
「いのち輝くマグネット神奈川」とは、県民が生きている喜びを実感し、生まれてよかった、長生きしてよかったと思えること、人やものを引きつけるマグネットの力を持ち、住んでみたい、何度も訪れてみたいと思う魅力にあふれているということです。
県民一人ひとりのいのちを輝かせるとともに、人やものを引きつける魅力を持った神奈川の実現をめざしていきます。
基本理念のもとに、2040(令和22)年を展望し、誰もが安心してくらし、また誰もが自らの力を発揮して活躍し、そして持続的に発展する神奈川の実現を、県民や企業、NPO、大学、団体、行政など多様な強みを持つ主体の力を結集して共にめざします。
社会に潜在する様々な課題を、多彩な人材が集まる神奈川ならではの支え合いによって克服することで、県民の抱える不安を解消し、「誰もが安心してくらせる やさしい神奈川」の実現をめざします。
誰もが元気で長生きでき、年齢や性別、障がいの状態、国籍などにかかわらず、誰もが自分らしく社会づくりにかかわることができる環境づくりを共に進め、「誰もが自らの力を発揮して活躍できる神奈川」の実現をめざします。
神奈川の多彩な魅力に共感する県民の気持ちを大切にしながら、まちのビジョンや政策を共に創り、人を引きつける、魅力あるまちづくりを共に進め、様々な変化にも神奈川全体が柔軟に対応できる「変化に対応し 持続的に発展する神奈川」の実現をめざします。
2040年に向けた政策の基本方向及び政策分野別の基本方向、地域づくりの基本方向を「政策の基本方向」としてとりまとめました。
基本目標の実現に向けて、神奈川をとりまく社会環境を踏まえ、県の政策がめざすべき方向性をまとめました。
人口減少が進行する中、人口・経済の密度が低下し、地域の活力や都市機能が失われていくことが懸念されます。他方で、新型コロナウイルス感染症の感染拡大をきっかけとして、豊かな自然環境や空間のゆとり、地域固有のコミュニティなどの魅力が見直されました。本格化する人口減少社会を乗り越えるためにも、そうした多様な魅力を生かした地域づくりが求められています。
そこで、それぞれの地域の特性を生かした様々な取組により、人の流れをつくることで、にぎわいを創出するとともに、多様な主体が地域に誇りを持って活躍し、豊かさを実感できるまちづくりをめざします。また、コミュニティの再生・活性化を支えるスマートモビリティ社会の実現に向けた取組など、都市づくりの観点から地域課題の解決をめざします。
少子高齢化の深刻化とともに、多数の現役世代で高齢者を支えてきた医療・介護サービスの持続可能性や、次世代の担い手である子ども・若者が抱える生きづらさや将来への不安など、様々な課題が顕在化しています。そうした中、将来にわたって子どもから高齢者まですべての世代の人たちが希望を持つことができる社会づくりが求められています。
そこで、若い世代が未来に希望を持ち、希望する人数の子どもを生み育てることができるよう、当事者である若い世代や子どもの目線を大切にしながら、経済的な負担や社会的な障壁の緩和をめざすとともに、神奈川の未来を担うすべての子どもたちが安心して快適に学び、自分らしく生きる力を高められる環境づくりをめざします。また、未病改善の取組によりいくつになっても元気に生き生きとくらせる社会をめざすとともに、医療・介護の将来の需要やテクノロジーなどの変化に対応し、誰もが住み慣れた地域で安心して生活し続けることができる持続可能な医療・介護の基盤の構築をめざします。
我が国では平均寿命が延び、本格的な人生100歳時代の到来が予想されます。定年退職後が「余生」と呼ばれた時代から超長寿の時代に向けて急速に社会が変遷し、価値観やライフスタイルの多様化が進む中、すべての世代の人たちが生涯にわたり生き生きとくらせる環境づくりが求められています。
そこで、誰もが文化芸術活動やスポーツに多様な形で親しみ、人々との交流を通じて心豊かにくらすことができるよう、様々な場や機会の創出をめざします。また、働き方やキャリア形成の多様化を後押しし、誰もが生涯の生活設計に多様な選択肢を持ち、生き生きと活躍できる社会づくりをめざします。
世界ではヒト・モノ・カネなどをめぐる国際競争が激化しています。工業製品等の貿易をはじめ世界との結びつきによって成長してきた我が国の経済は、激しさを増す国際競争や世界的な産業構造の転換期を乗り越え、持続的に発展していくための変化が必要となっています。そのためにも、長年続いてきたデフレマインドを転換し、経済や社会の好循環を実現することが求められています。
そこで、県内経済の成長を牽引することが期待される産業の集積や新たなビジネスの創造を促進するため、国内外から選ばれる魅力的なビジネス環境の構築をめざすとともに、経済発展の屋台骨である中小企業が稼ぐ力を高め、持続的に成長できる環境づくりをめざします。また、安全・安心な食料等を安定的に生産する持続可能な農林水産業の実現をめざします。
産業の発展とともに、ヒト・モノ・カネ、そして情報の動きが速まる中、新型コロナウイルス感染症の感染拡大をきっかけとして、社会全体でデジタル化が加速しました。くらしの様々な物理的・地理的な制約がなくなりつつある中、こうした機会をとらえ、従来の発想では解決できなかった様々な課題に対応することが求められています。
そこで、県民のくらしを豊かにする新しいライフスタイルなどを展望しながら、AIやロボットなど最先端のテクノロジーの開発・実用化による新たな価値の創造を後押しし、そうしたイノベーションにより、あらゆる分野の課題解決をめざします。また、誰もが安心してデジタル化の恩恵を受けることのできる社会の実現をめざします。
近年、人間活動に起因する地球温暖化により、異常気象、生態系への影響、食料生産や健康など、人間への影響が既に現れており、今後、温暖化が進むと、さらに深刻な影響が及ぶと予測されています。こうした状況に歯止めを掛けるため、世界全体で温室効果ガス排出量を削減していくことが必要であり、我が国においても「2050(令和32)年までの脱炭素社会の実現」が国全体の目標として掲げられました。また、国は、気候変動と密接に関わりのある生物多様性の損失についても、あわせて解決していく必要があるとしています。加えて、長らく「大量生産・大量消費・大量廃棄」が前提とされてきた社会は、資源の制約や海洋汚染などに直面しています。こうした環境問題がいのちやくらしに影響することをあらゆる主体が意識し、世界全体の課題として対応することが求められています。
そこで、脱炭素社会及び循環型社会の実現、生物多様性の保全に向けて、各主体が課題を「自分事化」し、それぞれの役割を踏まえて取組を進められるよう、県が取組を後押しするとともに、県自らも率先実行に取り組むことで、環境と経済が調和する持続可能な社会の実現に貢献します。
2015(平成27)年に国連サミットが全会一致で採択したSDGsの普及やサステナビリティを理念とするESG投資の拡大への期待が高まっています。我が国の企業も短期的な利益の追求だけでなく、持続可能な成長に向けた社会的価値を生み出すことへの意欲が高まっており、そうした変化を社会へ大きく波及させることで、ウェルビーイングを実感できる豊かな社会を形成していくことが求められています。
そこで、国際社会が共有する様々な課題について、県として果たすべき役割や使命を実行します。また、県民や企業、NPO、大学、団体、行政などが共に行動できるように、社会課題の共有や社会的投融資の促進などに取り組み、一人ひとりが豊かさを感じられる持続可能な社会の実現に貢献します。
新興感染症の脅威や不安定な国際情勢など神奈川をとりまく環境は不確実性が高まっています。新型コロナウイルス感染症の感染拡大による社会的・経済的影響がすべての県民に及ぶ中、特に社会的に弱い立場の方々のくらしにより大きな影響が及ぶことが浮き彫りとなりました。こうした想定し得ない事態が生じた場合でも、県民のくらしへの影響を最小限に抑えるための備えが求められています。
そこで、多様な担い手と連携し、声を上げることが難しい子ども・若者や、困窮に陥りやすいひとり親家庭、困難な問題を抱える女性、孤独・孤立に悩む方など、生きづらさやくらしにくさを抱える人たちへの支援の輪を広げることで、「見えない困窮」にも早期に対応し、誰もが生まれ育った環境に左右されず、自分らしく生きられる社会づくりをめざします。
人と人とが互いに理解し合い、互いの人権を尊重することが、価値観が多様化する現代社会を生きるうえで重要となっています。そうした中で、ジェンダー平等の実現など、性別(注釈)や国籍、障がいの状態などを理由とする偏見や差別・排除のない、誰もが多様な個性を発揮し、互いに尊重し合える社会の実現が求められています。
そこで、ともに生きる社会の実現をめざし、多様な個性を尊重することの重要性を広く浸透させるとともに、当事者目線に立って課題を共有しながら、地域や社会に潜在する様々な障壁を取り除き、希望する誰もが個性や可能性を生かして自分らしく社会参加し、お互いに支え合いながら活躍できる地域社会をつくります。
(注釈)「性別」には、男女に限らず、すべての性自認を含みます。
近年、首都直下地震や集中豪雨等の自然災害の発生、不安定な国際情勢を背景とする有事などの懸念に加え、新興感染症の感染拡大が将来にわたり何度も発生する可能性が指摘されています。そうした不確実性に耐え得る危機管理体制の構築とともに、日常的に起こり得るサイバー犯罪や特殊詐欺など社会環境の変化に伴う犯罪の発生等からいのちやくらしを守る基本的な安全・安心の確保が求められています。
そこで、県民一人ひとりに地域の災害リスクや避難時の行動、地域における助け合いについての理解の浸透を図るとともに、あらゆる災害に対応するための応急体制の強化や、被害に遭ったとしても早期に自立して生活再建できる災害に強い都市づくりをめざします。また、新興感染症の感染拡大に備え、平常時から市町村や関係団体等との連携体制の強化をめざします。さらに、犯罪や消費者トラブルに遭われた方に対する相談体制を強化するとともに、複雑・多様化する犯罪等にも対応し、地域も一体となった県民の安全・安心を守る体制づくりの一層の推進をめざします。
(都市基盤や情報ネットワークの強靭化)
神奈川をはじめ我が国においては、高度経済成長期を中心に整備されてきた都市基盤や建築物といった既存ストックの老朽化が進んでいます。また、災害に備えて、ヒトやモノ、情報の流れを支えるネットワークの整備・維持が重要となっています。限られた財源で、災害に備えた都市基盤の整備やインフラの健全性を保つための効率的な維持管理が求められています。
そこで、将来の人口構成や世帯構成を見据え、地域の実情に応じた市街地の再生や都市機能の集約化とともに、インフラの戦略的なメンテナンスによるトータルコストの中長期的な縮減・平準化をめざします。また、ヒト・モノ・情報をめぐる首都圏や国内他地域、国外とのネットワークの充実・強化を推進し、インフラの持続性と強靭化の両立をめざします。
人口減少と少子高齢化が進み、行政も含めて人材不足が懸念される一方で、社会課題は一層複雑化・多様化しています。こうしたことから、多様な主体がそれぞれの強みを生かした協働・連携を進めていくことが求められています。
そこで、社会課題の解決やサービスの担い手としてますます重要性が高まるNPOや企業、大学、団体等と、対等なパートナーとしてめざすべき方向性や問題意識を共有し、政策形成の早い段階から対話を重ねるなど、複雑化・多様化する様々な課題に共に向き合って協働・連携を推進することで、持続可能な神奈川を共に創り上げていきます。
超高齢社会や本格的な人口減少社会が到来する中、広域自治体である県は、市町村との役割分担のもと、県内全域で総合調整機能を発揮するとともに、市町村を補完する役割がますます求められています。特に、神奈川は、様々な規模の市町村が所在しているため、地域の実情を踏まえ、県全域での行政サービスを効率的・効果的に提供できるよう、今後も、県は市町村との柔軟な協調・連携のもと、広域自治体としての役割を果たしながら、持続可能な行政運営を実現していくことが求められています。
そこで、県は、多様化が進む行政サービスへのニーズを踏まえながら、国・県・市町村の役割分担について不断の見直しを図り、広域自治体として市町村との一層の連携や効果的な施策展開に取り組むことで、持続可能な行政サービスの実現をめざします。
神奈川と首都圏、全国をつなぐ交通ネットワークの充実などを見据えながら、人々の活動領域の変化に伴う広域的なニーズに応えることができるよう、県域を越えた連携・協力のもと、多様な広域行政課題に対応していくことが求められています。
そこで、47の都道府県で組織する全国知事会や、首都圏の都県及び指定都市で構成する九都県市首脳会議などを通じ、他の自治体と連携・協力した取組を一層進めることで、課題の解決をめざします。
「2040年に向けた政策の基本方向」を踏まえ、政策分野ごとに県が取り組む政策の基本方向をまとめました。
(注釈)一人ひとりの社会的・職業的自立に向け、必要な基盤となる能力や態度を育てることを通して、キャリア発達を促す教育。
(注釈)トルエンやキシレンなどの「特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律(PRTR法)」に基づく対象化学物質。
(注釈)緑地や良好な環境を保全するため、法律や条例により土地利用が制限された地域。
神奈川は、我が国の政治、経済、文化などの中枢的役割を担う首都圏にありながら、海、山、川、湖などの自然と歴史・文化に恵まれるなど、多彩な風土を持っています。
その中で、これまで神奈川は、業務機能やものづくりの面で首都機能の一翼を担うとともに、計画的な土地利用を図ることによって、良好な都市環境の保全に努めてきました。
一方で、人口減少や少子高齢化の加速等を背景として、低未利用地や空き家等の増加により、土地の管理水準や利用効率が低下し、県土の荒廃や地域社会の衰退を招く恐れが高まっています。さらに、自然災害の激甚化・頻発化、新興感染症の流行、産業構造の変化や国際化・情報化の進展、人々の価値観やライフスタイルの多様化など、社会環境は大きく変化しています。
こうした状況を踏まえ、人口減少社会における持続可能な社会の実現に向けて、県土の適正な利用と管理に取り組むとともに、市町村主体のまちづくりに配慮しながら、それぞれの地域の特性を生かした様々な取組により、個性や魅力にあふれた、活力ある地域づくりを推進します。そして、こうした地域の取組を他の地域政策圏に横展開することで、波及効果や相乗効果が生まれるよう、広域的なヒト・モノ・情報の交流・連携にも取り組みます。あわせて、自然災害に対する備えを一層強化します。
地域づくりに当たっては、水、みどり、自然の連続性や将来の交通基盤の整備状況、人々のライフスタイルの多様化や産業構造の変化を踏まえながら、地域の特性を生かすことが重要です。そこで、地域ごとの人口の動向や特性を踏まえ、個性や魅力にあふれた、活力ある地域づくりを進めるため、「川崎・横浜地域圏」、「三浦半島地域圏」、「県央地域圏」、「湘南地域圏」、「県西地域圏」の5つの地域政策圏を設定し、それぞれの地域政策圏のめざすべき方向性に向けて、様々な施策・事業を進めます。
また、施策・事業の推進に当たっては、隣接する地域政策圏との結びつきを踏まえ、地域間の連携について柔軟な対応を図っていきます。
(多摩川、鶴見川流域、多摩・三浦丘陵の一部を含んだ川崎・横浜の各市域)
川崎、横浜の各市域、及びその周辺地域 |
先端技術産業や数多くの研究機関が集積する川崎市域と、開港以来、海外から様々な文化を取り入れ新たな産業を生み出してきた横浜市域及びその周辺の地域からなる地域です。
世界と、神奈川そして日本の交流・結節地域として、都市に残された貴重な自然環境との調和を図りながら、これまでの文化や産業の集積を生かし、経済の活性化や国際交流・文化交流をさらに充実させるとともに、世界とつながる文化や産業を発信することで、にぎわいや活力があふれ、国際色豊かで魅力あふれる地域づくりをめざします。
(多摩・三浦丘陵の一部で構成される三浦半島の地域)
横須賀、鎌倉、逗子、三浦の各市域、葉山町域、及びその周辺地域 |
三方を海に囲まれ、変化に富んだ海岸線を有し、多摩丘陵から続く、まとまったみどりや豊かな歴史と伝統に恵まれた地域です。
貴重なみどりと三方に広がる海、豊かな歴史的文化遺産、全国有数の露地野菜産地、美しい景観など、三浦半島が持つ地域資源を保全しながら、これと調和・共生した都市的環境の形成により、経済と環境の好循環を生み出すことで、うるおいを持って快適にくらすことができ、首都圏や海外からも多くの人々をひきつける魅力と活力にあふれる地域づくりをめざします。
(丹沢大山のやまなみや相模湖、津久井湖、宮ヶ瀬湖などの湖、相模川の上中流域を一体としてとらえた地域)
相模原、厚木、大和、海老名、座間、綾瀬の各市域、愛川、清川の各町村域、及びその周辺地域 |
丹沢や相模川を中心とした森林・川・湖などの自然と活気ある都市とがバランスよく存在する地域です。
豊かな自然を保全し、これを活用した地域の魅力づくりと活性化を進めるとともに、広域的な交通結節機能を踏まえた生活環境や産業基盤の整備を図り、自然と都市、産業、文化が調和し、うるおいと活力にあふれた地域づくりをめざします。
(湘南海岸から丹沢に至る、相模川下流や境川、引地川、金目川の流域を一体として捉えた地域)
平塚、藤沢、茅ヶ崎、秦野、伊勢原の各市域、寒川、大磯、二宮の各町域、及びその周辺地域 |
湘南のなぎさや相模川、丹沢のやまなみなどの自然資源や相模湾沿岸に広がる旧別荘などの歴史・文化資源に恵まれた地域です。
湘南のなぎさや丹沢大山のやまなみなどの豊かな自然環境や、湘南地域で育まれた貴重な地域資源の保全や活用を図るとともに、交通ネットワークの整備とあわせた都市機能の向上や、環境と共生したまちづくりを進め、人々をひきつけ、持続可能な活力にあふれた地域づくりをめざします。
(丹沢、箱根、酒匂川流域を一体としてとらえた地域)
小田原、南足柄の各市域、中井、大井、松田、山北、開成、箱根、真鶴、湯河原の各町域、及びその周辺 |
富士・箱根・伊豆に連なる豊かな自然を背景に、山・川・海・湖・温泉、歴史や文化などの多彩な地域資源に恵まれた地域です。
豊かな自然、歴史・文化などの地域資源を生かし、未病の戦略的エリアとしての魅力を向上させるとともに、地域の特色を生かした様々な生産活動が営まれ、職・住・遊が一体となって豊かなくらしを実感できる、活力と魅力あふれる地域づくりをめざします。
「基本構想」については、「実施計画」の改定時など、状況の変化に応じて総合的に点検を行うこととします。
土地利用や水資源の動向県土のあり方を検討する際に考慮する必要がある土地利用や水資源の状況は、次のとおりです。 土地利用の傾向県内の土地利用状況(面積)は、森林が約4割と最も多く、続いて住宅地や工業用地等の宅地が約3割を占めており、農地は1割弱となっています。 土地利用の推移を見ると、農林業的及び自然的な土地利用については、森林は近年横ばいとなっているものの、農地は都市化の進展等により減少傾向となっています。一方、都市的な土地利用については、住宅地や道路は都市基盤の整備、社会経済活動の拡大等により増加傾向となっており、工業用地は2012年頃までは工場の移転等により減少していますが、その後は横ばいとなっています。 人口減少社会における土地利用の課題 我が国は本格的な人口減少社会を迎えており、神奈川も2021(令和3)年10月に統計開始以降初めて前年同月と比べて減少に転じてから同様の傾向が続いており、神奈川も明らかに人口減少局面に入りました。また、少子化や高齢化も急速に進んでおり、人口の地域的な偏在も生じています。 これらを背景として、市街地においては、所有者不明土地や空き家等の増加により、土地の利用効率の低下が懸念されるだけでなく、人口密度の低下により、土地の管理水準が低下するほか、行政、医療・介護、福祉、商業等の都市機能の維持が困難となる恐れがあります。また、農業の担い手減少や高齢化により、農地の管理水準の低下や荒廃農地の増加も懸念されます。 これらの課題は既に顕在化しはじめており、必要な対策を講じなければ、今後、一層状況が悪化し、県土の荒廃だけでなく、地域社会の衰退を招く恐れがあります。 こうした状況を踏まえ、人口減少社会においては、市町村主体のまちづくりに配慮しながら、地域活性化につながる土地利用の効率化や最適化を図るとともに、持続可能で自然と共生した県土の適正な利用と管理に取り組んでいく必要があります。 水資源の安定的な確保と効率的な利用県内の上水道用水の需要量(1日最大取水量)は、近年、横ばいで推移していますが、今後、県内人口の減少等に伴い、減少傾向になると考えられます。 2023(令和5)年4月現在、上水道事業者(注釈)が保有している水源量は、日量約567万立方メートルとなっており、これは上水道用水の需要量の傾向を踏まえると、県民が安心して生活し、企業も安定した事業活動ができる状態に水資源が確保されているといえます。 今後も将来にわたり、県民に良質な水が供給できるよう、水源の環境を守るとともに、水道事業者間の多様な広域連携等を図ることにより、水資源の安定的な確保や効率的な利用が求められています。 (注釈)県及び県内17市町が上水道事業者として、一般家庭や企業等に水を供給している。 |
人と人とが互いに理解し合い、互いの人権を尊重することは、価値観が多様化する現代社会を生きるうえで重要となっています。
そうした中、2016年7月に起きた県立障害者支援施設での事件を契機に、県は2016年に「ともに生きる社会かながわ憲章」を、2023年に「神奈川県当事者目線の障害福祉推進条例~ともに生きる社会を目指して~」を施行しました。2022年の県民ニーズ調査によると「いじめや差別がなく、人権が尊重されていること」を重要であると思う人の割合は84.9%となっており、県民の問題意識が高いことが伺えます。
県内外国人数は、2012年度に161,155人(県民の56人に1人)でしたが、2022年度には239,301人(県民の39人に1人)となり、10年間で大きく増加しました。出身地の国・地域数は176と多様化が進んでおり、ベトナムが年々増加し、中国に次いで2番目となっています。また、県内の外国人労働者数は、令和5年6月に在留資格「特定技能2号」の対象分野を拡大する閣議決定がされたことなどから、今後、一層増加することが予想されます。
近年、結婚・出産後も仕事をする女性は増加していますが、男性よりも非正規雇用に転じることが多く、女性就業者の正規雇用の比率が25~34歳をピークに低下していく、いわゆるL字カーブが課題となっています。性別にかかわらず、育児や介護があっても仕事と家庭を両立しやすい環境づくりが求められており、長時間労働の是正や、テレワークの導入をはじめとする多様で柔軟な働き方の実現が重要となっています。
また、2022年の全国の男性の育児休業取得率は、17.13%で上昇傾向にありますが、女性の育児休業取得率の80.2%と比較すると依然として低い水準となっています。
近年、デジタル社会の実現に向けた取組が急速に進んでいます。5G通信の普及拡大は、大量のデータの高速処理などを可能とし、ドローンや自動運転、画像解析、AI等をはじめ、様々な技術の活用を加速させることが期待されます。
また、ブロックチェーン等の技術を活用してデータを分散管理するWeb3や、仮想空間でコミュニケーションをはじめ様々な活動・体験ができるメタバースは、新たな経済的・社会的価値の創出や、個人の活動領域の拡張など、社会に大きな変革をもたらす可能性があるとされています。
我が国の貿易額は、今後も高い経済成長が見込まれるアジアとの輸出入額が米国やEUを大きく上回っています。2021年にはアジアとの輸出入額が過去最高の約83兆円となるなど、経済的な強い結びつきがあります。神奈川においても、三大港(横浜港、川崎港、横須賀港)の輸出入額は、対アジアが大きな割合を占めています。
全国の訪日外国人旅行者数は、2020年以降、コロナ禍の影響により落ち込みましたが、それまで、ビザ要件の戦略的緩和や訪日外国人旅行者向け消費税免税制度の拡充、航空・鉄道・港湾等の交通ネットワークの充実などを背景に増加を続けてきました。今後、人口減少により国内の観光需要の先細りも懸念される中、インバウンド消費の拡大に期待が寄せられています。
1980年代から2000年代にかけて、市場や効率性を重視した「新自由主義」と呼ばれる考え方が台頭し、企業のグローバル化が進展する中、世界経済が大きく成長する一方で、経済的格差の拡大や過度な海外依存による経済安全保障リスクの増大などの弊害が生じたことが指摘されています。
そうした市場原理から生じる弊害を乗り越えるため、国は官民が連携して「成長」と「分配」の好循環の実現をめざす「新しい資本主義」を掲げ(注釈)、賃金引上げをはじめとする「人への分配と投資」や、「科学技術・イノベーションへの重点的投資」などの方向性を示しました。
(注釈)「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画~人・技術・スタートアップへの投資の実現~」(2022(令和4)年6月7日)
近年、世界では急速に加速するデジタル化やサステナビリティなどへの対応の重要性が増しており、産業構造の大きな転換が見込まれています。そうした中、我が国の製造業の事業所数は長期的に減少傾向となっており、神奈川においても2016年から2020年までに495事業所の減少となりました。
神奈川の労働力人口は、女性の労働力人口の増加等により増加傾向が続いてきましたが、2020年以降は横ばいとなっています。15~64歳人口が長期的に減少していくことが見込まれる中、産業における労働力不足の深刻化が懸念されています。
県内では新東名高速道路等の開通が予定されており、県内の交通利便性はさらに向上していくものとみられます。
また、現在整備が進められているリニア中央新幹線が開業すれば、県内にも新駅が設置される予定です。開業すれば東京・名古屋間が40分、東京・大阪間が67分で結ばれ、東京、名古屋、大阪の三大都市圏が一体化します。域内のGDP約320兆円、人口約7,000万人の、世界を先導する巨大経済圏が形成されることが期待されています。
脱炭素社会の実現やエネルギー安全保障の観点から、エネルギー問題を本質的に解決する新たな技術の実用化が期待されています。
近年、屋根だけではなく壁にも設置できるペロブスカイト等の次世代型太陽電池や、火力発電においてCO2排出量を削減できる水素・アンモニアの混焼、都市ガスの脱炭素化に資するメタネーション等、エネルギーにかかわる様々な新技術の研究開発が進められています。
世界では2050年のカーボンニュートラルをめざす動きが活発化しています。我が国でも地球温暖化対策推進法に「2050年までの脱炭素社会の実現」が明記されました。
県内における温室効果ガスの排出量は、2013年度までは増加傾向にありましたが、2014年度からは減少傾向となっています。
神奈川の森林面積をみると1993年度は97,347ヘクタールであったのに対し、2023年度には94,024ヘクタールとなり、30年間で3,323ヘクタール減少しました。
2022年の生物多様性条約COP15では、2030年までに陸と海の30%以上を健全な生態系として効果的に保全しようとする目標が合意されました。
近年我が国でも、里地里山の管理の担い手が不足し、資源が十分に活用されないことなどから、国内の生物多様性の損失が懸念されています。そうした中、国は、2023年に「生物多様性国家戦略2023-2030」を策定し、「『2050年までに、生物多様性が評価され、保全され、回復され、賢明に利用され、生態系サービスが維持され、健全な地球が維持され、全ての人々にとって不可欠な利益がもたらされる』自然と共生する社会」を実現することをビジョンとして掲げました。
我が国の廃プラスチックの総排出量は、2021年に824万トンとなっており、そのうち717万トン(87%)は有効利用されていますが、107万トン(13%)は有効利用されることなく埋立等されています。
また、海洋プラスチックごみは、海洋環境の悪化や海岸機能の低下などに影響を及ぼすことが懸念されており、2015年のG7エルマウ・サミット以降、世界全体の課題として共有されています。2019年のG20大阪サミットでは「2050年までに海洋プラスチックごみによる追加的汚染をゼロにまで削減する」という目標が共有され、2023年のG7気候・エネルギー・環境相会合ではこの目標が2040年に前倒しされています。
新型コロナウイルス感染症の感染拡大や、ロシアによるウクライナ侵攻等の影響により、2021年以降は、原油価格が大きく上昇するとともに、日常生活に必要な電気・ガス等のエネルギーや食料品等の価格上昇が続きました。また、米中貿易摩擦や、各国の保護主義的な措置といった地政学的リスクも懸念されるなど、グローバル化の進展を背景に世界全体で不確実性が高まっています。
2020年3月、世界保健機関(WHO)によりパンデミック(世界的大流行)が宣言された新型コロナウイルス感染症の感染拡大は、医療提供体制の逼迫のみならず、学校の臨時休業や外出の自粛、飲食店等に対する営業時間短縮の要請等により、人の往来や企業活動の制約等にもつながり、医療や福祉、教育等多方面に影響が及びました。
2023年4月までに世界で感染が確認された人は7億6,367万人、死亡者数は691万人となりました。グローバル化が進展した現代では、パンデミックは将来にわたり何度も発生する可能性が指摘されており、その度に、特に社会的に弱い立場の方々のくらしに大きな影響が及ぶことが懸念されます。
犯罪の認知件数は、2013年以降減少傾向で推移していましたが、高齢者が被害に遭いやすい特殊詐欺の発生が高止まりしているほか、先端技術を悪用した犯罪が年々増加傾向にあるなど、サイバー空間における脅威も深刻化しており、社会情勢の変化に対応する対策が求められています。
また、交通事故は、発生件数、死者数ともに減少傾向にありますが、死者に占める高齢者の割合が高くなっています。
県内の自殺者数は、2009年以降減少傾向が続いていましたが、2020年には1,402人と若干増加し、2021年は1,369人となりました。これは、交通事故死者数の約9.6倍となります。2021年の自殺に至る主な原因・動機は、多いものから順に「健康問題」、「家庭問題」、「経済・生活問題」となっています。
我が国の「子どもの貧困率」は2021年に11.5%となっており、およそ9人に1人が貧困状態にあるとされています。特に、子どもがいる現役世代のうち、ひとり親世帯の貧困率が高い傾向となっています。
県内の公立学校のいじめの認知件数の推移は、2013年度に国がいじめの認知に関する考え方を詳細に示し、各学校が積極的に認知するようになったことも影響したことから、増加傾向となっています。近年は、インターネットやスマートフォンの普及等に伴い、第三者による把握が困難な、SNSを利用した「ネットいじめ」が発生するなど、いじめの事案の複雑化・潜在化が指摘されています。
また、ヤングケアラーやひきこもり、児童虐待など子どもの健全な育成に影響する家庭内の潜在的な問題への対応が求められています。
国の調査によると、日本の若者の悩みや心配ごとは、多いものから順に「お金のこと」、「自分の将来のこと」、「就職のこと」となっています。勉強や、家族、友達といった身近なことよりも、お金や自分の将来のことで悩んでおり、他国の若者と比べて、自分の将来について明るい希望を持っている人が少ない状況となっています。
2022年12月における生活保護を受給している人の割合は、全国で1.62%、神奈川で1.66%となっています。そのうち約半数は65歳以上の高齢者になっています。世帯類型別の被保護世帯数でも高齢化の進行などを背景に、「高齢者世帯」が増加傾向にあります。
近年、世界では異常気象が頻発し、我が国においても記録的な大雨が次々と発生しており、その要因として地球温暖化等による影響が指摘されています。台風についても、海水温が高くなるほど勢力がより強くなると考えられており、2019年に発生した台風第15号及び第19号は、県内各地に甚大な被害をもたらしました。
神奈川は、人口密度の高い都市部においても、起伏のある地形が多く、過去10年間(2013年~2022年)の土砂災害発生件数は全国で3番目の多さとなっています。
神奈川周辺では、首都直下地震、相模トラフ沿いの海溝型地震、南海トラフ地震等の大規模地震が想定されています。今後30年以内に発生する確率は、首都直下地震では70%、南海トラフ地震では70~80%とされています。
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