ツインシティ研究パートナー連絡会と神奈川県は、平成22年2月3日(水曜日)の午後2時から午後4時40分まで、神奈川県庁の本庁舎3階大会議場において、環境共生都市を実現する「技術」と「ライフスタイル」をテーマに、環境と共生する都市づくりフォーラムを開催しました。 当日は、200名以上の参加者がありました。 |
1 フォーラムの概要
テーマ 環境共生都市を実現する 「技術」と「ライフスタイル」 日時 平成22年2月3日(水曜日) 午後2時から午後4時40分まで 場所 神奈川県庁本庁舎3階大会議場 主催 ツインシティ研究パートナー連絡会 神奈川県 |
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あいさつ
株式会社計画技術研究所 代表取締役 須永和久氏 | 神奈川県 環境共生都市整備担当部長 池守典行 | ||
基調講演(50分)
テーマ:低炭素型都市計画のあり方 英国の取組みを通じて 講演者:千葉大学大学院 准教授 村木美貴氏 基調講演概要 はじめに (1) 中央政府の求める低炭素型都市づくりの方向性 (2) 大ロンドンの取組み (3) 基礎自治体の取組み (4) プランナーへの支援 (5) 低炭素都市づくりを支援するその他の取組み |
基調講演概要(PDF:0.2MB) |
パネルディスカッション(90分) コーディネーター:横浜国立大学大学院 教授 佐土原聡氏 パネリスト: 千葉大学大学院 准教授 村木美貴氏 NPO法人 かながわアジェンダ推進センター 中嶋義臣氏 株式会社 計画技術研究所 須永和久氏 株式会社 三菱地所設計 河合康之氏 神奈川県 環境共生都市整備担当課長 小林純一 |
パネルディスカッションでの事例発表の概要
(1)かながわエコ・エネルギータウン -KEYPROJECT- 発表者:株式会社 計画技術研究所 須永和久氏 発表資料(PDF:0.4MB) |
(2)環境共生都市の実現に向けた研究活動の紹介、導入技術 発表者:横浜国立大学大学院 教授 佐土原聡氏 発表資料(PDF:5.5MB) |
(3)環境と共生する都市を実現するための「ライフスタイル」について 発表者:NPO法人かながわアジェンダ推進センター 中嶋義臣氏 発表資料(PDF:0.1MB) |
(4)東京 大丸有地区の街づくり 発表者:株式会社 三菱地所設計 河合康之氏 発表資料(PDF:1.5MB) |
(5)ツインシティの整備 発表者:神奈川県 環境共生都市整備担当課長 小林純一 発表資料(PDF:1.3MB) |
パネルディスカッションの概要
(佐土原先生)コーディネーターを務めさせて頂きます。宜しくお願いします。先ほど村木先生のお話しを伺っていて、須永さんはどんな感想をお持ちでしょうか。
(須永氏)都市計画の制度で、低炭素型だとか環境共生の技術がうまく融合しているなというところが非常に感心しました。個別の技術という意味では日本はロンドンにそれほど劣ってなく、一部優っているものもあるかと思います。ただそれを都市計画とかですね、社会の中でどう使っていくかという視点が日本はまだ不十分だという感じがしました。
(佐土原先生)小林さんの方からも感想等頂ければと思います。
(小林担当課長)これから私共がまちづくりを進めようとしているツインシティは、先ほどのロンドンでの大規模開発に当たると思います。英国の取組みを伺いまして、将来的により魅力的なまちを作るのは、例えば低炭素の取組みが必要であると、こういうような取組みを行うことが魅力的なまちづくりを行うことの引き金になって行ければということを感じました。
(佐土原先生)私も同感な所があったのですけれども、日本で環境への取組みをやろうとすると、環境は環境で、まちの質の方は別の問題となってしまいがちですが、それをどういう風に超えていったらいいかというヒントを、ロンドンの取組みの中からも学びたいと思いました。村木先生、何かコメントがあればお聞かせ下さい。
(村木先生)イギリスの事例で明らかになるのが、どういうようにハードルを超えていくのかという課題に対して、都市計画だけで出来なかったら個別のセクションを超えてチームを作ってしまうということが一つあると思います。そういう形で助け合いの場がいろいろあるというのが、一つの正解なのかなと思います。
(佐土原先生)ツインシティが新しく開発されるということは、50年或いは100年の先を見通して、どういった環境と共生した都市づくりを行うかということが、私たちの世代の責任を持っている状況にあると。今日は少し長期的なことも含めて、この環境共生都市づくりをどう実現するかということについて、パネリストの方々にもお話しを伺っていきたいと思います。
議論のポイントをまずは技術的なことについて、これまでの取組み或いは今後の取組みの方向性ということについてお話しを伺って、その後でソフトな部分でライフスタイル的な視点でどうまちづくりに取り組むか、最後にそれらを合わせた都市づくりとしてどう実現していくか、そうした流れで議論を進めて行きたいと思います。「かながわエコ・エネルギータウン研究会」で長く技術的なことにも取り組まれてきた須永さんの方から、取組みについてご紹介を頂きたいと思います。
(須永氏)「かながわエコ・エネルギータウン」の研究について、簡単にご紹介させて頂きます。「かながわエコ・エネルギータウン研究会」とは、協働研究の企業グループが残りまして、ツインシティ或いは神奈川県の県央・湘南で、環境共生の実際のシステムを入れたまちづくりをやろうということで、研究を続けている研究会でございます。「かながわエコ・エネルギータウン」というのは、家庭用分散型エネルギーシステムの複合と共有のネットワーク化を図ろうというシステムでございます。
このような「かながわエコ・エネルギータウン」を県、県民、企業等の協働で実現していこうという体制を取っております。また「かながわエコ・エネルギータウン友の会」という、県、県民、企業が三者一体となって組織を作っており、このコーディネーターを佐土原先生にお願いしております。
(佐土原先生)村木先生の方で何かありましたらお願いします。
(村木先生)次の展開を考えるときに、一般住宅地の中にどうやってこういったシステムを入れていくのか、又は土地建物の所有者が替わった時にどうしていくのか、この辺何か次に検討されるべきことなのかもしれないということを思いました。
(佐土原先生)それでは私の方から、少し技術的な環境共生への取組みに向けて、私自身が取り組んでいることの紹介ですが、話させて頂きたいと思います。今日の話は低炭素やエネルギーが中心ですけれども、情報のいろいろな技術を使って、もう少しいろいろなことを見える化する、環境を見える化することで違った主体の方々が共同で取り組む、そういったことの道具としての情報技術の話と、低炭素と豊かな自然環境をどういう風に合わせて考えていくかというようなことについて、少しつながるお話しをしたいと思います。
ヨーロッパでは低炭素の取組み等で、住宅で断熱をして、断熱により1/3の負荷を減らして、高効率或いは再生可能エネルギーで、更にそれを半減していくということで、80%位のCO2削減というのが確実に、具体的に見える面がありますが、日本の場合には、どうやったら減らせるかという建物の対策も十分に無いというところがあります。日本独自の取組みをどう進めていくかということも非常に重要で、それがどうアジアで、国際的に展開していく鍵にもなると。これが自然界にも大きく影響していくと考えております。
それでは次のテーマはライフスタイルについてということで議論を進めさせて頂きたいと思います。中嶋さんの方から、「ライフスタイル」という面から環境共生都市でどういう取組みが考えられるか、それについてご紹介頂きたいと思います。
(中嶋氏)中嶋でございます。NPO或いは市民として地球環境問題にどう取り組んでいるかということを申し上げます。
環境と共生するにあたり、当センターとして特に低炭素型社会実現を目指しており、環境負荷を減少させるライフスタイルが求められております。
その様なことを踏まえて、3項目の普及啓発推進活動を行っております。一つは「住宅の長寿命化の推進」でございます。二つ目として「住宅のパッシブ手法の活用化、高性能化、高断熱化の推進」でございます。三つ目としては「高効率設備機器導入によるCO2削減化推進」でございます。
日本でも京都議定書の発効によりCO2排出量削減が迫られ、環境負荷の大きい都市的ライフスタイルが問われている。地方の経済活力をいかに維持し、都市の個性を生かし、有限な環境容量を前提に、経済、社会の発展パターンによって破壊され、荒廃した環境の修復や復元、そして広い意味での環境再生をめざす様々な地域再生の取組みによる共生都市が望まれると考えます。
(佐土原先生)河合さんの方で、大丸有地区での取組みについて紹介して頂きたいと思います。
(河合氏)実は大丸有地区は自動車利用について非常に少なくて、非常に公共交通が密度高く整備されておりますので、それなりに社会インフラが出来ているというのがあります。また現在は、電動アシスト自転車によるコミュニティサイクルの社会実験等が行われています。
(佐土原先生)それではライフスタイルについては、以上とさせて頂いて、「技術」と「ライフスタイル」を合わせて環境と共生する都市づくりということをテーマに話を進めたいと思います。河合さんから、大丸有地区の最近の取組みについて、スライドを使ってご説明頂きたいと思います。
(河合氏)大丸有地区のまちづくりについて、スライド使いましてご紹介させて頂きます。まず大丸有地区の開発と環境共生について、昨年竣工しました丸の内パークビルディングでの環境共生の取組みと、最後にエリアマネジメントの取組みについてご説明させて頂きます。
パークビルの環境共生について7項目くらいの取組みがされています。時間の関係から水に関係あるものをご紹介させて頂きます。一つ目がヒートアイランド対策です。二つ目は、水の循環施設ということで、中水を活用して水のリサイクルに取り組んでいます。最後にエリアマネジメントの取組みということで、総合的なまちづくりを推進する、環境共生の地区として対応するとか、ハードだけでは無くて管理・運営面でのソフト面でも対応するということで、エッコツェリア協会とエリアマネジメント協会というのが作られております。
(佐土原先生)小林さんの方からツインシティの整備についてお話しを頂きたいと思います。
(小林担当課長)神奈川県の県央・湘南都市圏では、豊かな自然を活かした環境と共生する都市圏の形成と、その核となるモデル都市のツインシティの整備を進めております。
県央・湘南都市圏の整備に当たりましては、東海道新幹線新駅とリニア中央新幹線新駅を誘致いたしまして、全国との交流連携の窓口となる南北のゲートを形成して、これを繋ぐさがみ縦貫道路の整備やJR相模線の複線化等により、都市間相互を連携し、質の高い生活や新しい産業を創造するなど、ネットワーク型都市圏を目指しております。この核となるのが環境共生都市ツインシティです。
環境共生都市を実現するために、本日フォーラムを一緒に開催して頂いておりますツインシティ研究パートナー連絡会、また企業・大学懇談会などいろいろなところから協力を得て、検討を重ねてきたところです。
(佐土原先生)それでは、今日の一連の流れを受けて皆様から一言お願いしたいと思います。
(須永氏)大丸有地区は着々と実践されているなと思い、羨ましいと感じました。それは大丸有地区の地権者の方々のパートナーシップ、民民協調がうまくいっているのではないかと。ツインシティを見ますと、公民のパートナーシップですとか、民民の協働というのも実現していくには重要と思われます。県の方でも頑張って頂きたいと思いますが、私共民間企業も頑張っていきたいと思いますし、県民の方が強く応援して頂ければ、実現に向かって進んでいくのかと思います。「かながわエコ・エネルギータウン」につきましては、今後いろいろな提案やシステムに改良を加えてですね、どこかで県や県民の方にお手伝い頂いて、実現を目指していきたいと思っております。
(河合氏)丸の内パークビルの計画については、設計者である三菱地所設計側も社員だけで50名以上のメンバーが参画して、推進する際には厳しい数値目標を達成するというのがあり、非常な軋轢がありました。この間反省会というのをやったのですが、最終的には参画して良かったなという話が多かったです。大丸有地区だけではなく、いろいろなところで協働の関係、プラットフォームを継続して、皆が喜んで来て頂けるまちづくりに関与して行ければ存外の喜びと思っております。
(中嶋氏)本年1月31日にコペンハーゲン合意に基づく55カ国が2020年までに努力目標を、条約事務局に提出をしました。最終的にCOPの方で会議をやったときに合意という形で開いたということが、非常に大きなことだと思います。約190カ国が参加をしているのですが、特に中国が参加するということが大変意味を持つということです。是非とも我々は、企業にしろ、市民にしろ、ライフスタイルの変革を進めてCO2削減の普及啓発を今後ますますしていかなくてはいけないと思っております。以上でございます。
(小林担当課長)ツインシティの環境共生の取組みはこれからスタートします。このまちづくりに向けて、皆様の協力や提案が重要であると考えておりますので、今後とも協力をお願いしたいと共に、ツインシティで新たなライフスタイルが出来るようなまちづくりを行いたいと思います。私共そういう形で出来るように努力して参りますので、宜しくお願いします。
(村木先生)技術大国日本だからこそ低炭素都市づくりの中で、どういったプラットフォームを作っていくことが出来るのか、そこには新しい都市づくりの中でどんなものを投入していけばいいのかというスクリーニングを行っていき、新しい都市を創るという意味での本当の産学官の連携、民間の方々が持っているたくさんの提案ですとか、我々大学の知識ですとか、現場の行政の方、これの連携をどうやって作っていくのか、実績が出来るプログラムをどう作っていくのか。それが大切なのではないかと思いました。
(佐土原先生)最後簡単に取りまとめをさせて頂きたいと思います。海外の先駆的な取組から学ぶということを進めながら、このツインシティの足下に置かれている自然環境、風土、そういったものを活かしてどう具体的に取り組んでいくか重要になってくると思います。それを進める上では、プラットフォームというか地域の様々な主体の力を結集して、エリアマネジメントをしていく主体、或いは計画をしていくような主体がしっかりと機能していかなければならない。
これから2050年頃を目指して形にしていく都市の姿の、低炭素と生物の多様性の保全を融合していくこれからの都市づくりの在り方というものに、まとめられるといいのではないかと考えます。
この議論はこれからまだまだ続くことだと思いますけれども、時間が短い中で皆さんに協力頂いて、非常に有意義な議論をさせて頂いたと思っています。この場をお借りして御礼を申し上げます。どうもありがとうございました。
会場風景
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