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更新日:2020年4月30日

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平成22年度環境と共生する都市づくりフォーラム「新しい環境共生技術を取り入れた未来のまちづくり」

平成22年度「環境と共生する都市づくりフォーラム」を開催しました。

環境と共生する都市づくりフォーラム

 

 

ツインシティ研究パートナー連絡会と神奈川県は、「新しい環境共生技術を取り入れた未来のまちづくり」をテーマに平成22年度「環境と共生する都市づくりフォーラム」を下記の通り開催しました。

日時 :平成23年2月3日(木曜日)午後2時00分から午後4時30分
場所 :神奈川県住宅供給公社ビル 2階 大会議室
主催 :ツインシティ研究パートナー連絡会、神奈川県
参加者:135名

1.あいさつ

加藤信次氏ツインシティ研究パートナー連絡会 幹事(株式会社福祉開発研究所 部長) 

加藤信次 氏

高村英二

神奈川県県土整備局環境共生都市部長 高村英二

 

 

 

 

2.講演(1)

テーマ:スマートシティ実現に向けた取組み金田武司氏

講演者:株式会社ユニバーサルエネルギー研究所

代表取締役社長 金田武司 氏

金田氏講演資料[PDFファイル/1.78MB]

<講演概要>

[脱石油を目指した米国の政策]

私自身は、まちづくりの専門家ではございませんが、エネルギー問題・環境問題を手掛けてきた立場から、まちづくりに対して、こういう付加価値を付けてみたらどうかという、一つのアイデアですけれどもご紹介させていただきます。いきなりきな臭い話から始まりますけれども、2001年に発生した同時多発テロ以降、中東に原油の輸入を頼っていた米国は、180度政策を転換しなければならなくなりました。脱石油というのが、米国の国策になった訳です。今年(平成23年)のオバマ大統領の一般教書演説でも、2035年までに電力の80パーセントをクリーンエネルギーにと言っています。その一つのツールとして、プラグインハイブリッド車や電気自動車が挙げられ、米国の自動車メーカーはガソリン車からそうした自動車へ移行せざるを得なかった訳です。

[日米のプラグインハイブリッド車の違い]

米国では、新しい政策を裏付けるために大きなバッテリーを積んだ自動車からは減税しますという施策を取りました。だから自動車メーカーはなるべく大きなバッテリーを積んだ自動車を開発して下さいと。日本の技術者は何を考えていたでしょうか。バッテリーは重いし、高いし、なるべく小さくした方がいいと考えていました。米国人は長距離走るので、車を走らせるためには大きなバッテリーが必要です。ここで特徴的なのがモーターだけが車軸を動かしているんです。エンジンも積んでいるけれども、モーターの発電機としてのみ使っている。日本のメーカーでは、モーターもエンジンも車軸を動かしているんです。

[エネルギーの地産地消]

米国では、送電網が古いので停電が頻繁に起こります。しかしながら送電網を再整備しようとすると莫大なコストがかかります。そうではなくて太陽光パネルとか、太陽熱利用とか、あるいは高効率のエネルギーシステムをエネルギーの需要家毎に整備していく方が、よっぽど経済効果が高いのではないかと。そんなことを米国政府は考えました。いわゆるエネルギーの地産地消という考え方です。

[電気自動車とまちづくり]

ここにある住宅があります。この住宅の屋根には太陽電池が載っていて、駐車場には電気自動車が止まっています。この住宅の主婦の方は、ある時考えました。「太陽電池で発電した電力は、電力会社に売った方が得かしら、それとも電気自動車に入れた方が得かしら?」 これは簡単に計算出来ます。現在、電力会社は1kwh当たり48円で買ってくれます。1kwhだと電気自動車は約10km走りますので、ガソリン代にすると140円位になります。電気自動車に入れる方が得だということになる訳です。これをまち全体に適用するとどうなるでしょうか。遠くには風車もある。風車が発電する電力は、出力が変動するので電力会社では高く買ってくれません。そうしたものを地域で使っていくような、モデルを作れる可能性がある。

[バッテリーと地域エネルギー]

そこで、キーマンはやっぱりバッテリーですね。車にバッテリーがあったように、その地域で使えるバッテリーがあることが、その地域全体をハイブリッドにしてくれて、エネルギーの利用効率も相当アップするんです。車のバッテリーから必要な時に電気を取り出すということは、車の付加価値を高めることになります。地域とコミュニケーションして、地域或いは家とエネルギーを融通しあうことによって、その車の付加価値が上がるんですね。車に積んである電気というのは、今すぐ供給出来る電気である可能性が高いんです。今すぐ供給出来る電気の付加価値は絶大です。

[まちづくりとエネルギー]

まちづくりについて、緑を作りましたとか、道路を作りましたとかというハードウェアはもちろん大事だと思います。それと共にまちづくりのソフトウェアをどう考えるか、例えばセキュリティをどう考えるか、CO2排出削減をどう考えるかが重要だと思います。 せっかく新幹線がやってきて、リニアもやってきて、人々の移動の足が便利になって、そういうまちづくりをしたい時に、是非そのモビリティも考えて下さい。エネルギー機器単体ではなく、まちと一体になったときにエネルギー機器は生きるんですね。システム化のメリットです。当然エネルギーセキュリティーは上がります。例えば周りが大停電していても、ここだけは電気供給が途絶えませんという付加価値を付与することが出来ます。これからのまちづくりについて、是非皆さんでご検討頂きたいと考えております。

3.講演(2)

テーマ:柏の葉キャンパスシティにおける環境共生のまちづくり

河合淳也 氏

講演者:三井不動産株式会社 グループ長 河合淳也 氏

河合氏講演資料[PDFファイル/7.54MB]

 

<講演概要>

[キャンパスシティという名前の由来]

三井不動産の河合と申します。事例紹介という形で柏の葉キャンパス周辺のまちづくりをご紹介させて頂きます。先ほど金田先生の方から新たなまちづくりの視点ということで、ご指摘がありましたが、我々もハードの整備だけではなく、いかにその地域の取り組み、生活、暮らしが大切かという、ハードとソフトの融合ということを意識しながら進んでおります街づくりそのものがコミュニティでもあると考えております。こちらの柏の葉キャンパス駅、キャンパスという名前の付いている駅は日本でここだけらしいのですが、キャンパスという駅名がついた由来が、東京大学の柏キャンパスがあるということです。また、駅近くには千葉大学の環境・健康フィールド科学センターという、新領域の研究センターがございます。それから国立がんセンター、科学警察研究所などの機関もあり、この周辺一体を柏の葉キャンパスシティ、柏の葉キャンパスのまちづくりという形で称しております。

[都市と田園の共存]

この地域は、まだまだ緑環境が非常に豊かでございますので、この都市と田園の魅力をいかに共存させるかというような視点で取り組んでおります。周囲の自然環境ですが、こんぶくろ池公園、県立柏の葉公園、また隣の駅のすぐ脇には利根川の河川敷がありまして、水と緑がネットワークされたとても素晴らしい環境が保全されています。

[公民学連携のまちづくり]

もう一つ大きな特徴は、大学を中心とした公民学連携のまちづくりとして、地元行政の柏市、千葉県のみならずNPO団体、TX(つくばエクスプレス)、地元企業、東大、千葉大が、それぞれ組織的にパートナーシップを組んでいこうという取り組みをしております。駅前に柏の葉アーバンデザインセンター(UDCK)というスタジオを4年前に設けました。こちらが公民学連携のまちづくりの推進拠点という形になっております。学生の方がスタジオとして研究活動・ワークショップをしたり、市民の方が交流で使ったり、社会実験の場になったり、シンポジウムの場所になったりというような様々な形で活用されております。

[環境への取り組み]

環境への取り組みの中で、最近特に話題となっておりますのは、CO2見える化システムでございます。将来の面的なスマートシティのことを念頭におきまして、2番街の住戸においては全世帯標準で電気、水道、ガスが情報掲示板の中で表示され、日々の使用料がどういう形になっているかということが各世帯で分かるようになっています。また「柏の葉街エコ推進協議会」という協議会を行政と共に作りまして、エコクラブの皆さんと一緒にそれぞれどういう形でエコに対して取り組むべきか、コミュニティ活動も併せてやっていくというような取り組みもしています。それから交通関係では、オンデマンドバスの実証実験をはじめとして、セグウェイ、ベロタクシー、乗り捨て自由のスマートサイクルなどの実証実験に取り組んでいます。

[健康への取り組み]

千葉大学では、健康のテーマでシックハウスに関する実証について、実際に戸建て住宅を建てながら進められています。東京大学では、高齢社会総合研究機構という、いわゆるジェロントロジー(老年学)について高齢者の視点で理想的な暮らしはどうあるべきかということで研究機構を立ち上げております。がん患者・家族総合支援センターは、全国4カ所での実証モデルプロジェクトとしてがんセンターさんが地域に積極的に展開する、がんに関するよろず相談を受けております。

[交流の取り組み]

新住民の方々が続々と入居されますので私どもでも、まちのクラブ活動を立ち上げて、現在20のクラブ活動がいろいろな形で進んでいます。そんな中から「はっぱっぱ体操」という健康体操や、子供たちのピノキオプロジェクト、マルシェ・コロール、かしはなプロジェクトなどの活動が進んでおります。

[創造の取り組み]

企業の取り組みですが、東京電力さんが公衆電源プロジェクトということで、屋外のコンセントなど個人認証が出来て、自由に使える実証拠点が幾つかあります。 またフューチャーデザインセンターという一つの実業サイドのシンクタンクを立ち上げて、最高顧問に元東京大学総長である小宮山先生になって頂きました。このフューチャーデザインセンターの一つの重要課題として、スマートグリッドへの取り組みのためのスマートシティ企画会社を立ち上げました。現在はこのような状況ですけれども、将来に向かって更にまちづくりを加速して生きたいと思っております。またこれからいろいろな形で皆様のお知恵を拝借したいと思いますので、今後ともよろしくお願いします。

4.パネルディスカッション

テーマ:新しい環境共生技術を取り入れた未来のまちづくり

コーディネーター:横浜国立大学大学院 教授 佐土原聡 氏

パネリスト:株式会社ユニバーサルエネルギー研究所 代表取締役社長 金田武司 氏
三井不動産株式会社 グループ長 河合淳也 氏 

佐土原聡氏パネルディスカッション風景

[二つの講演の感想]

(佐土原)今日、金田先生、河合先生にいろいろとお話を頂きました。少し私の方から感想を述べさせて頂きたいと思います。金田先生の方からは、特に車に付随しているバッテリーが持つ価値というものを改めて再認識しました。バッテリーに注目して話を伺うということは初めてだったものですから、いろんな意味で触発されることがあり、これらの技術が進んで、スマートグリッド、スマートシティというものが実現していくんだということを感じました。また河合先生からのお話は、柏の葉キャンパスのまちづくりは本当にたくさんのことに取り組んでいて、しかもそれが同時に動いているんだということを改めて感じました。それからまちづくりの新しい価値を生み出すために、環境だけではなく、歴史、文化、健康といったいろんな面から質の高さを作っているということも感じました。

[技術の導入・まちづくりでの課題について]

(佐土原)それではディスカッションの一つ目として、お二人の方々が取り組まれている技術の導入、或いはまちづくりでの課題について、お話頂きたいと思います。

(金田)今から6年ほど前に、青森県八戸市において新エネルギーだけで、小中学校、市役所の電気を100%賄ってみようと試みました。そしたら課題だらけでした。下水処理場の消化ガスを貸してもらって、それで発電しようと考えました。そしたら下水処理場というのは、5カ年計画にのってこういうスケジュールでやっているんだから、そんなところで発電に使ってもらっては困ると。いろんな課題がありますが、モデル的にこの地域ではこうやったら解決できるんではないかという、課題解決のショウルーム、或いはモデルルームみたいなものを是非ともやられるといいと思います。

(河合)一つ一つのルールを特区的に変えられないかみたいな総論的なことはありますが、実際にやろうとするとどうしても超えられない規制が多数あります。そういう時に市民の方と一緒にやっていると、どなたかが助け船を出してくれるところもあります。やっぱり誰のために実証をやるのかというのが、エリア毎、地域毎にコンセンサスを得られないと、なかなか続かないというのを痛感しています。

(佐土原)柏の葉キャンパスについて、少し伺いたいのですが、あれだけたくさんのプロジェクトが動いていて、どういうマネジメント体制になっているのか、教えて頂きたいと思います。

(河合)公民学連携の拠点となっている柏の葉アーバンデザインセンター(UDCK)は、緩やかな連携組織になっていて、まだ組織体をしっかり立ち上げていません。大学の先生を中心にプロジェクトが立ち上がったり、私どもから作らせて頂いたり、NPOの方々から立ち上がったりと、テーマ毎に主催者が違います。アーバンデザインセンターというプラットフォームを利用しながらプロジェクト化していくというスタイルでやっています。

[ツインシティへの導入について]

(佐土原)次の論点に行きたいと思いますが、ツインシティについて、未来の環境共生都市としてどんな夢を描いていったらいいのか、或いは具体的にどんなことを取り入れていったらいいのか、ご教示頂けるとありがたいのですが。

(金田)例えば今はぴんとこないかもしれませんが、「ここのまちはエネルギーコストが安いんだよね」みたいな新しい価値があるとか、エネルギー的に自立していてエネルギーセキュリティーがしっかりしている。そういう特徴を出していくことは、これからのまちづくりの中でとっても大事になってくると、私は考えます。

(河合)柏の葉に結構アジアの見学者の方々がいらっしゃいますが、鉄道の駅周辺でもまちづくりがされているということは、あまり事例では無いようです。また相模川を中心に街がそれぞれ展開されていることが、自然とまちがつながった形で地域のポテンシャル、エリアの特性は引き出せると思います。

[フォーラムの感想とまとめ]

(佐土原)それでは、お二人からこれからどんなふうに取り組んで行かれるか、或いはこのフォーラムのまとめを含めてコメントを頂きたいと思います。

(金田)まとめになるかどうか分かりませんが、ツインシティの取り組みが比較的真っ白なキャンバスに、自由な発想で絵が描けるエリアであり、新幹線だとかリニアという新しい付加価値がやってきた時にどう受け止めるのか、新しい取り組みが出来る地域なのかなと思いました。エネルギー技術とか、環境技術とか、様々な都市づくりの技術が一つのショウルームとして世界に情報発信できるような、発信拠点になっていければいいなと思いました。

(河合)スマートシティとか、スマートグリッドについていろいろと語られていますが、作り手側の意識からするとすごいものになるぞというのは語られていますが、日本社会で生活者として見ると、皆さんそれなりに満足されていて、エコのために自分の生活が昔に戻らなければいけないとか、お金がかかるんだったらいやだよという意識があります。そういう視点で、環境の取り組みと同時に生活者の視点でいくとどうなるだろうという議論が非常に重要になると思います。

(佐土原)有り難うございました。これからのツインシティについての、いろんな方向性のご教示を頂いたと思います。最後に、私の方で簡単にまとめさせて頂きたいと思います。技術的にいえば、電力のスマート化ということも、或いは再生可能エネルギーを使っていくということも、技術の進展に従って、出来るだけ最新のものを取り入れ、ここで実証していきながら情報発信につなげていくことで、技術の発信拠点というか、産業の拠点というようなことにつながっていくと思います。 また、そういった技術に加えて、どういう仕組みでそれを実現していくかというのは非常に大きな課題で、今後さらにたくさんの方々に入ってもらい、将来につながるまちづくりの価値を高めていく、関係者をどう巻き込んでやっていくかということが、もう一つの重要な課題だと思います。 そういう意味で、環境共生のモデル都市づくりをたくさんの方々の知恵を結集して、ここに実現していけることを期待して、今日のフォーラムは終わりにさせて頂きたいと思います。どうもご清聴有り難うございました。

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