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更新日:2024年12月10日

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雇用事例:障がい種別 知的障がい              株式会社一の湯

   

企業紹介

住所:神奈川県足柄下郡箱根町塔ノ沢90
事業内容:宿泊業
常用雇用労働者数※:134人(令和4年6月1日時点)


※ 常用雇用労働者数とは、1週間の所定労働時間が30時間以上の方の数と1週間の所定労働時間が20時間以上30時間未満の方の数を0.5倍した数を合算した数をいいます。(いずれも1年を超えて雇用される見込みがあることまたは1年を超えて雇用されていることが必要です。)

 

企業への質問

Q1 障がい者雇用に取り組むようになった「きっかけ」はどのようなことですか。

A1 当旅館は歴史的には老舗ですが、これに甘んずることなく働き方改革に取り組んできました。「働き方」については、旅館では、女将は女将の仕事しかない、フロントはフロントの仕事だけ、というのではなく、一人のスタッフがフロントに立つ、清掃もする、設備の管理もする、レストランのサービスも行うといったマルチタスクを行うことです。少ない人数でもきちんと運営できるようにしていく。その結果、生産性を上げながら、お客様へのサービス還元につなげています。
その一環として、弊社では、2019年12月より、障がい者雇用を「able(エイブル)雇用」と命名して積極的に取り組んできました。弊社の基本理念の一つに「人のため」というのがあり、これには一の湯に関わる全ての人に幸せになって欲しいという思いが込められています。
つまり、ステークホルダーと呼ばれるすべての人たちが幸せになって欲しいという思い、人材を生かせる会社でありたいというポジティブな意味合いと同様、障がい者雇用という堅い言葉ではなく、あれもできるしこれもできるエイブル雇用というとらえ方で、もっと活躍してもらおうという、社長の運営意思を従業員の皆さんにアナウンスし、取り組み始めました。

 

Q2 仕事の創り出しはどのようにしましたか。

A2 スタッフの皆さんは、マルチタスクで様々な業務を行っていますが、どうしてもピーク時間帯に人手が不足する部分に仕事が生まれます。そこを障がい者の方に担っていただくというイメージで仕事を創り出しています。
ただし、障がい者の業務は、マルチでいろいろやっていただくというよりは、その人の能力とか適性に応じて、専門的な仕事をしている方が多いです。例えば、清掃に特化してやっていただく、手先が器用、丁寧という方には食材の盛り付けに特化してやっていただく。というような形で、その人それぞれの強みや適性があるので、その丁寧さとか、確実性といった特徴を活かして、活躍していただいています。
つまり、障がい者雇用における配慮というより、障がい者の方の得意な部分、例えば、一つの作業を根気よくしっかり続けられる部分や精緻さは強みだと思っています。それがストレスなくできれば、その強みを活かした仕事についていただくことができます。
このようにして効率化した業務量部分が余裕を持った丁寧な接客に繋がっていくことになり、その結果お客様の満足度が上がる。障がい者が顧客満足度を上げるのは、直接ではなくともそういうつながり(連鎖)によって成立しているのです。

 

Q3 支援機関と連携してよかったことはありますか。

A3 採用担当という立場でしたので、障がい者雇用について一通りの研さんをしましたが、一番理解が深まったのは、Aさんが利用している小田原市内の就労移行支援事業所の担当者様との出会い(と学び)でした。
就労移行支援事業所は、ハローワークの面接会に参加したときに紹介いただいたのですが、Aさんの職場見学、しごとの体験時、就労移行支援事業所の職員の方が同席され、アドバイス・サポートを受けることができ、障がいに対する理解を深めることができました。
初めての障がい者雇用というタイミングで、弊社とご本人、共に緊張しないように、慣れ親しんだ支援者が常に横にいてくれたのは、とても助かりました。
Aさんは、最初に当館に来られたときは挨拶も緊張されていてできなかったのですが、支援者の方が付き添っていただいたおかげで入り口を乗り越えられたのかな。と思っています。支援機関の方の役割は、ものすごく大切だと実感しました。

 

Q4 仕事の習熟に対する工夫がありましたか。

A4 一の湯では、一人の従業員がマルチタスクをするに当たって、クオリティ確保のために、紙媒体であった業務マニュアルの電子化を約半年かけて進めてきました。この電子マニュアルには、例えばトイレットペーパーの三角折りの畳み方も画像でわかりやすく示しており、動画も含まれているため、いつでも自由に再生して自己研さんできる仕組みです。このマニュアル化に当たっては、現場の従業員に、どこがポイントか、詳細に確認し、外してはいけない部分、ポイントをうまくまとめたものとなっています。
障がい者雇用に当たっても、現場で実際に作業に入っていただいて、このマニュアルで予習、復習を繰り返すことができ、仕事を着実に覚えていくことができました。これが障がい者雇用にとっても非常に役立ったと認識しています。
障がい者雇用を進めるに当たって、課題となることが、業務の見直しとマニュアル化ですが、一の湯では、すでに障がい者を受け入れる前から準備が整っていたということです。
このおかげで、障がい者の方も飲み込みが早く、正確な業務に結びついた、と感じます。障がい者の方が「きちんと教えてもらえていない」とか、「聞きたいけど怖くて聞けない」というのが一番のストレスになると思うのですが、できるだけ、このような電子マニュアルなどを活用することによって、ストレス要素を初めからクリアにできた。と思います。

 

企業からのメッセージ

役に立っていることの実感が原動力に

(左から 組織開発部長 今泉正行さん、業務システム部長兼広報担当 大野正樹さん 広報担当 原田美咲さん)

 

Aさんの仕事内容は、弊社が運営する「箱根路開雲」(足柄下郡箱根町湯本)内のトイレ掃除と寮の掃除ですが、電子マニュアルで学習し、現場で手順を丁寧に説明、先輩従業員からの声かけにより、しっかり仕事を覚え、丁寧な作業をしています。
恥ずかしがり屋なので、口数は少ないですが、それでも、すぐに周囲に打ち解け、休憩時間は同僚の従業員の皆さんとの談笑が増え、今ではすっかり職場に馴染むことができています。
自分が清掃した場所をお客様が使い、喜ばれること、これがAさんのモチベーションアップの原動力となっています。いずれは、お客様に近いところで仕事をしていきたいという希望に繋がっており、仕事の質を向上させる好循環になっています。
職場としても、何か気になることや心配なことがあれば、ご家族と直接連絡を取って情報共有することもあります。ご家族からも心配していただいており、それはなかなかいい関係ができています。これも長く仕事が続けられている要素です。

一の湯

 

本人からのメッセージ

やりたい仕事に就くこと。遅刻しないこと。頑張って長く続けること。
わからないときはすぐに聞くこと。

(Aさん)

働きたかった老舗旅館に就職し、旅館のトイレと寮の清掃をしています。仕事のマニュアルや手順書を詳しく書いていただき、同僚の皆さんからも声をかけてもらっています。上司の皆さんからは「きれいにしてもらって感謝しています。」と言われすごくうれしかったです。「また頑張ろう」と思いました。
時間内に作業を終えるよう気を付けており、お客様からきれいになったと言ってもらえるよう頑張っています。今後は、お風呂や客室の清掃をしたいです。これから就職する人へは、「やりたい仕事に就くこと。遅刻をしないこと。頑張って長く続けること。わからないときはすぐに聞くこと。」が大切と伝えたいです。

一の湯本人

このページの所管所属は 障害者雇用促進センターです。