基本的には、普通の会社の企業会計と同じように複式簿記を使用します。企業会計では、貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書を作成しますが、NPO法人の会計では、計算書類(貸借対照表、活動計算書)及び財産目録を作成します。
計算書類等は、事業年度終了後3ケ月以内に、県に事業報告書等と一緒に提出します。また、事業報告書等(計算書類及び財産目録を含む)の備置き等閲覧や、貸借対照表の公告の義務も定められています。
NPO法人の会計基準については、2010年7月に制定された「NPO法人会計基準」を参照するとよいでしょう。ただ、制定後、「NPO法人会計基準」は何度か改正されていますが、制定後の会計基準は諸法令との整合性が取れていないため、ご注意が必要です。
とくに「2017年12月12日最終改正」の会計基準を使用すると、2017年12月12日最終改正を厳密に適用する必要が生じ、事業年度終了直前のクレジットカードによる寄付金の収入は、まだ入金されていなくても収益として計上する必要があるなど、実務上の不都合が生じる可能性があります。
計算書類の注記には、「2010年7月20日2011年11月20日一部改正」と記載して利用するか、ただ単純に、「NPO法人会計基準によっています。」とする方が無難でしょう。
また「NPO法人会計基準」では、ボランティアワークを評価して収益・費用に含める「ボランティア受入評価益」・「ボランティア受入評価費用」や、施設などを定価よりも安い費用で利用した場合に「施設等受入評価益」・「施設等受入評価費用」などの仕組みを取り入れていますが、これらの勘定科目は必ずしも使用する必要はないので、ご注意ください。
NPO法では、会計に関しては、以下の条文が存在します。
1)法第二十七条(会計の原則)特定非営利活動法人の会計は、この法律に定めるもののほか、次に掲げる原則に従って、行なわなければならない。
- 削除(平成15年4月1日以降)
- 会計簿は、正規の簿記の原則に従って正しく記帳すること。<正規の簿記の原則>
- 財産目録、貸借対照表及び収支計算書は、会計簿に基づいて収支及び財政状態に関する真実な内容を明りょうに表示したものとすること。<真実性・明瞭性の原則>
- 採用する会計処理の基準及び手続については、毎年(事業年度を設けている場合は、毎事業年度。)継続して適用し、みだりにこれを変更しないこと。<継続性の原則>
正規の簿記の原則は、原則として複式簿記による記帳を意味します。手書きの現金出納帳でも、その記録をもとに複式簿記で計算書類などを作成することは可能です。
真実性・明瞭制の原則は、現金の増減の都度、現金出納帳に記載します。そして、現金出納帳の現金残高を常に実際の現金残高と一致させます。原因不明で、現金出納帳と実際の現金残高が一致しない場合には、一時的に「現金過不足」としておき、現金出納帳の残高は、常に実際の現金残高と同じにします。また、誰にでも分かる会計報告を作ることも大切です。
継続性の原則は、たとえ会計担当者が交代しても、毎年同じ勘定科目を使い、毎年同じ会計処理を行うことを要請しています。もちろん、必要がある場合には、勘定科目を変更・追加することは可能ですが、その変更・追加は会計係の独断でおこなうのではなく、総会や理事会等の合議で決めましょう。
※早坂毅オンラインアドバイザー回答(税理士)
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