ホーム > くらし・安全・環境 > 人権と協働 > NPO・ボランティア > 第3回「決算期の会計のツボ」
更新日:2024年5月1日
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NPO法人の会計について解説しています。
NPO法人が所轄庁に提出する書類のうち、活動計算書・貸借対照表・財産目録は日々の会計記帳に基づいて作成します。
1年間の記帳が終わったら、勘定科目ごとの金額を集計する作業を行います。複式簿記の場合はすでに勘定科目ごとに振り分けられた帳簿(=総勘定元帳)があるので、それぞれ金額を合計するだけです。
企業会計の場合、ここで"決算整理"が必要であり、棚卸や減価償却、未収・前払などの会計処理を行います。NPO法人会計基準も発生主義を採用しているので同じように"決算整理"を行うことになります。
期中現金主義で記帳している団体は、決算整理のなかで特に“期末洗替”を重点的に行う必要があります。会計処理における洗替とは、決算時において貸借対照表の各科目の残高を会計上適正な金額に更新処理することをいいます。減価償却や棚卸のほか、未収入金や前受金、未払費用や前払費用などを正しく計上し、適正な損益計算を行うようにしてください。
仕訳例:売掛金
前期末残高の減少処理 | 売上高 ××× /売掛金 ××× |
当期末残高の計上仕訳 | 売掛金 ××× /売上高 ××× |
:未払費用(給与)
前期末残高の減少処理 | 未払費用 ××× / 給与手当 ××× |
当期末残高の計上仕訳 | 給与手当 ××× / 未払費用 ××× |
複式簿記の場合、総勘定元帳を集計することによって活動計算書(企業会計の場合は損益計算書)と貸借対照表が同時に作成されます。貸借対照表の数字に明細を加えれば財産目録も完成します。
NPO法人会計基準では“発生主義”がポイントになるということは何度も述べてきましたが、その他の特徴は以下のとおりです。
※現物寄付やボランティアなどNPOに特有な事象を会計に取り込んだ。
※費用を事業費と管理費に区分し、さらに各区分の中で人件費とその他経費に区分する。
※財務諸表の補足説明として“注記”することができる。
これら全てを盛り込もうとすると大変な重圧になりますが、事業費と管理費に区分することは重要で手間も比較的少ないと思いますので、直ちに実行する方がいいと思います。
注記については以下が標準項目です。該当するものがなければ“該当なし”と記載すれば問題ありませんが、NPO法人会計基準を採用している場合は“重要な会計方針”の中でその旨記載することになります。
特徴的なのは(4)現物寄付の受入、(5)ボランティアの受入 だと思いますが、強制ではありませんので無理に計上する必要はありません。ただし、(6)使途が制約された寄付等の内訳は、基金を持っている団体や助成金の前受金がある団体にとっては良い説明材料になると思います。
(1)重要な会計方針
資産の評価基準及び評価方法、固定資産の減価償却方法、引当金の計上基準、施設の提供等の物的サービスを受けた場合の会計処理方法、ボランティアによる役務の提供を受けた場合の会計処理の取扱い等、財務諸表の作成に関する重要な会計方針
(2)重要な会計方針を変更したときは、その旨、変更の理由及び当該変更による影響額
(3)事業費の内訳又は事業別損益の状況を注記する場合には、その内容
(4)施設の提供等の物的サービスを受けたことを財務諸表に記載する場合には、受入れたサービスも明細及び計算方法
(5)ボランティアとして、活動に必要な役務の提供を受けたことを財務諸表に記載する場合には、受入れたボランティアの明細及び計算方法
(6)使途等が制約された寄付等の内訳
(7)借入金の増減の内訳
(8)役員及びその近親者との取引の内訳
(9)役員及びその近親者との取引の内容
(10)その他NPO法人の資産、負債及び正味財産の状態並びに正味財産の増減の状況を明らかにするために必要な事項
法人税法上の収益事業を行っている場合は、活動計算書を損益計算書に読み替えて決算書類とし、勘定科目内訳書及び法人税申告書を作成します。
ただし、ほとんどの場合は活動計算書=収益事業の損益計算書にはならないので、税務申告用に“収益事業の損益計算書”と“収益事業以外の損益計算書”を作成することになります。(税務署へは両方提出します)。
正規の簿記の原則に従って作成された帳簿であれば、日々の帳簿を2つ作成する必要はありません(むしろ二重帳簿になるので作成してはいけません)。「単一性の原則」により基礎となる帳簿は同じものを使わなければなりません。どのように組み替えたかの経緯を説明できる資料を作成しておけばよいのです。
(注)この回答は2013年10月3日時点のものです。
プロフィール:税理士、行政書士
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