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更新日:2023年12月8日
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平成28年度黒岩知事との“対話の広場”地域版(県央会場)実施結果
黒岩知事との“対話の広場”地域版 (県央会場) |
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日時 |
平成28年11月9日(水曜日)18時30分から20時00分 |
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会場 |
えびな市民活動センター・ビナレッジ |
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テーマ |
人生100歳時代の設計図 |
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地域テーマ |
ロボット技術が支える人生100歳時代 - ロボットと共に歩む未来を目指して - |
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内容 |
1 知事のあいさつ 2 事例発表 【事例発表者】 松谷 孝征(まつたに たかゆき) 氏 (株式会社手塚プロダクション 代表取締役社長) 久野 孝稔(くの たかとし) 氏 (CYBERDYNE株式会社事業推進部 部長 湘南ロボケアセンター株式会社 代表取締役社長) 3 意見交換 4 知事によるまとめ |
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参加者数 |
160名 |
どうもこんばんは、神奈川県知事の黒岩祐治です。県民との“対話の広場”ということで、こういう形でずっと各地域を回っております。今年の統一テーマは「人生100歳時代の設計図」であります。そこに地域ごとにいろいろなサブタイトルをつけながら、議論しているところです。
まず、その話をする前に、私からちょっとお話ししたいことがありますので、お時間をいただきたいと思います。
この夏、7月26日に相模原で本当に悲しい悲惨な事件がありました。津久井やまゆり園での事件。障がい者はいなくなった方がいいんだ、といったとんでもない間違った考えによる独断的な犯行、これによって19人もの方が亡くなるという信じられない出来事がありました。そして、この事件を受けて、障がい者の皆さんが非常に不安に思っていらっしゃるという声が聞こえてまいりました。
しかし、神奈川県は、障がいに対するあらゆる差別を全部なくしていくということをずっとやってきております。ともに生きる社会をつくるということをずっと進めてきました。そんな中で、こんな事件によってこういった流れが後戻りすることは絶対に許せないと決意し、逆にこの悲しみを力に、バネにして、もっとこの精神を広めていこうということで、議会の皆さんともしっかり議論し、専門家の皆さんの話をお聞きし、当事者の声もお聞きしながら、文章をまとめました。それをご紹介したいと思います。
「ともに生きる社会かながわ憲章」というものであります。
この悲しみを力に、ともに生きる社会を実現します。
一 私たちは、あたたかい心をもって、すべての人のいのちを大切にします
一 私たちは、誰もがその人らしく暮らすことのできる地域社会を実現します
一 私たちは、障がい者の社会への参加を妨げるあらゆる壁、いかなる偏見や差別も排除します
一 私たちは、この憲章の実現に向けて、県民総ぐるみで取り組みます
こういったものでありまして、この精神をこれから神奈川県全域でしっかりと浸透させていく。そしてこれを神奈川から日本全国へ広めていきたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
ということで、今日のテーマに入りたいと思いますが、まずはこちらからご覧いただきましょう。これは神奈川県の人口の年齢別の分布なんですが、1970年にはきれいな人口ピラミッドでした。一番上のところが85歳以上ですけれども、1970年にはほとんどいらっしゃらなかったんですね。
ところが2050年になりますと、まったく逆の形になります。一番多いところが85歳以上ですよ。特に女性が多いですね。
今はちょうどこの途中の時期で、どんどん高齢化が進んでいるんです。この進み方が、神奈川県は日本の中でも早いんです。これが何を意味するかというと、1970年の社会システムのままだと、2050年にはすべて崩壊する。病院は機能できなくなりますね。高齢者になったら皆さんで病院に行きがちだとなれば、このグラフのようにたくさんの高齢者がいたときに、その多くが病院に行ったら、病院は崩壊しますよね。
だから、今のうちに社会のシステムを変えなければいけない。それがこちらです。キーワードは「未病」という言葉ですね。健康か病気か。真っ白な健康があって、真っ赤な病気が あるのか。実は世の中の仕組みはだいたいこういうふうにできているんです。病気のところをしっかり勉強するのが医学教育であり、医者というのはそこの専門家でありますね。
ところが、我々の実感からするとちょっと違いますね。実感からするとこちらですよ。未病。健康から病気までというのは、グラデーションでちょっとずつ変化してい くんだということ。赤と白の間で行ったり来たりする、 これが我々の実感ではないですか。
未病を改善するというのは、このグラデーションのどこにいても少しでも白い方に持ってこようということで、これが大事なんです。病気になってから治すのではなくて、未病の状態で、日常的に少しでも白い方に持ってくることによって、健康な年齢を長くし、病気にならなくすることが大事ということですね。
そのためには「食」、「運動」、「社会参加」、こういったものが実は大事なんです。病気になってしまってから医者に行って、薬をもらってなんとかするという現在のモデルから、日常的に「食」、「運動」、「社会参加」のあり方などを見ていくことよって健康な時代を長くして病気にならなくする。そうなれば皆さんハッピーになりますね。たくさんの高齢者がいても、みんなハッピーになりますよね。
この先にどんな社会があるかというと、もう「人生100歳時代」です。1963年には、100歳以上の人が全国で153人しかいなかったんです。それがどんと伸びまして、今は全国に65,000人くらいいます。さらに2050年になると、約70万人になると推計されているんです。70万人になった時は、割り算をすると、142人に1人が100歳以上ということになります。ちなみに私は、2050年に生きていたとしてもまだ96歳です。私が100歳にたどり着いてないのに、142人に1人が100歳以上ということであります。こんな時代がもう来るんですよね。
では、この時代になって、今の社会はこれに対応できるようになっているのか、ということが問題です。未病を改善して、みんながハッピーで、高齢化を乗り越えていくために、我々はこういう時代に対応できる社会をどんどんつくっていこうとしているんですよ。
100歳以上の人口が70万人になった時にどうするか。今の社会の設計図はどうなっているのかというと、若い時に勉強して、そして会社や役所に入っても、だいたい60歳で定年退職ですよね。今までのモデルというのは、60歳定年で、あとは老後ということ。老後と言っても、100歳まで元気で生きるなら、60歳の定年退職以降40年間もあるんですよね。そんなに長い時間をどうするかということです。自分の人生設計を考えておかなければいけないですよね。もう自分は年を取ったなんて、60歳ではとても言えないですよね。私自身も今62歳ですが、年を取ったなんていう感覚はまったくないです。同年代の皆さんもそうではないですか。
そうしたら、その100歳までの時間をどうやって元気に過ごすか、生きていくかということをみんなで考えていく。若い時から考えていくことが必要なんです。と同時に、行政としても、そういう皆さんをどうやって支えればいいのかということを考えていく必要があるだろうということですね。
ですから、今日は皆さんで、ご自分が100歳まで生きるんだということを想定しながら、議論に参加してください。今年は、人生100歳時代をみんなとともに議論しながら、考え始める年にしたいということで、このテーマでずっと各地域を回っているということであります。
今日は、この地域の非常に特徴的な部分をクローズアップしながら、議論を進めたいと思います。ここのエリアは「さがみロボット産業特区」になっているんです。そこで、ロボットと100歳時代という内容で話をしていきたいと思っております。
先ほど、「ROBOT TOWN SAGAMI 2028」のアニメーションを見ていただきました。あの中にも非常に大きなヒントがあります。その謎が、今日、明かされますから、楽しみにしていてください。“対話の広場”ですから、皆さんとの議論があってこそ進んでいきます。何を質問するか、何を発表するか、ぜひ考えておいてください。
それでは始めたいと思います。ありがとうございました。
はじめに、株式会社手塚プロダクション代表取締役社長の松谷孝征様をご紹介いたします。
松谷様は漫画家手塚治虫氏の担当編集者となったことが縁で、株式会社手塚プロダクションに入社し、長年、手塚氏のマネージャを務められました。現在は、同社代表取締役社長として手塚氏が終生訴えてきた「いのちの尊厳」を世界の子どもたちに伝えています。
それでは松谷様、よろしくお願いいたします。
ただ今、ご紹介がありました手塚プロダクションの松谷孝征といいます。今日はお招きいただきましてありがとうございます。
なぜ招かれたかといいますと、私個人は特にこちらと縁があるわけではないのですが、この「さがみロボット産業特区」のキャラクターに鉄腕アトムを使っていただいたということで、そういうご縁でまいりました。
先ほど、見ていらっしゃらない方もいるかもしれませんけれども、アニメーションで未来のお話をちょっとしました。ロボットは、いわゆる科学で出来上がってくるアトムみたいな形のものばかりでなく、健康器具になる場合もあるし、空中を飛ぶ車になる場合もあるし、様々だと思うんです。
実は、私は9月10日に足を骨折しまして、ようやくギプスと松葉杖がとれたんですね。私は現在、映像関係の団体に所属しておりまして、いろんなコンテンツのイベントが9月から10月、11月まで続いたんです。足が悪くて、9月10日以降、特にゲームのイベントなどはものすごい人だかりでいやだなと思っていたんです。あ、これはいいな、骨折なら絶対の理由になるから参加を断ればいいなと思っていたんです。もちろん、骨折した週は、夜に会って一杯飲むとかいうお話は全部お断りしたんですが、そんなことで、8時から9時くらいでさっと寝てしまうと、朝4時頃に目が覚めてしまうんですよね。朝、目が覚めると、その時期はパラリンピックをやっていたんです。ついついずっと見ていると、みんなものすごく頑張っているんですね。身体に障がいがあるにもかかわらず、必死になってみんな頑張っている。それで僕はものすごく勇気をもらいました。ギプスをはめて、よちよち歩きでどうしようもないんですけれど、あ、こんなことじゃだめだと。そこで勇気をもらったので、やっぱりイベントに欠席はできないなと思い、お台場だとか幕張だとか、とても大きな会場で、最初はしょうがないですよ、車椅子に乗っていると、「またなんか悪さしたんですか」とか言われてちょっと恥ずかしいんですけど。「そういうことやるから足を骨折したりするんですよ」とか言われまして。でも、そんなことでイベントに行ってとても親切にされたこともありますし、参加したことはとても良かったなと思っています。
今日はアトムの話です。手塚の考えたロボットですが、手塚治虫がアトムというロボットを考える前に、皆さんもご存知かもしれませんが、カレル・チャペックという人がロボットという言葉を一番最初に1920年代に作ったんですね。「R.U.R.」という戯曲で、日本でも翻訳されて舞台にもなったりしてますけれども、そこでロボットが出てきた。実はロボットという言葉ではないけれども、お年寄りだと分かると思うんですが、日本の漫画では阪本牙城さんの「タンク・タンクロー」とか、海野十三さんの人造人間だとかもありました。
だから、その当時ロボットという言葉よりも、人造人間とかいうふうに言われてましたけども、手塚はその辺のところから影響を受け、吸収し、昭和で言えば26年だから、1951年ですか、「鉄腕アトム」を連載し始めたんです。昭和26年ですと、僕がちょうど小学校1年生なんですね。「少年」という月刊誌でずっと連載していたものですから、小学校1年生から6年生まで、私はそれを読みましたが、6年間読んだ後はもう一切漫画は読まなかったです。普通みんな、だいたい小学校時代で漫画は卒業してしまったんですね。それ以後は、漫画なんか読んじゃだめだと言われて。だから、こんなふうに、行政が漫画を使ってくれるなんていうのはものすごいことです。今、手塚が生きていたら大喜びしたんじゃないかなと思うんです。
この話になると、ちょっとテーマから外れるかも分かりませんけれども、実は、手塚が亡くなったのが1989年です。その年か翌年くらいに、国立の美術館が手塚治虫展をやってくれたんです。そこの館長に、私が、「国立の美術館で、漫画の展覧会なんて大丈夫ですか? みんなに漫画なんてって文句を言われるんじゃないですか」と言ったんです。本当は、私のような立場の者が「漫画なんて」と言ってはいけないんですけどもね。その時、館長さんは「漫画展ではなく手塚治虫展だから開催するんです」と言われました。漫画ほど素晴らしい表現能力を持ったものはないと思っているし、子どもたちに何かを伝えようとしたら、漫画ほど素晴らしい媒体はない。アニメーションは動くから、余計に伝わりやすいかもしれませんけれども。
手塚は「鉄腕アトム」をずっと描いて、十数年経った1963年に「鉄腕アトム」がテレビシリーズになりました。テレビシリーズになって、知名度がどんと広がったんじゃないかなと思うんです。だから、今の人たちは、漫画はほとんど読んだことがないけれども、テレビシリーズはちょこっと見たことがある。1963年の後は1980年。実は1963年はカラーではなくモノクロのアトムだったんです。アトムのアニメは1980年に初めてカラーになった。
その時、手塚の言葉で面白かったのが、1963年に描いていた時は何でも自由に発想できたと言うんです。ビルの間に高速道路があったり、そこで飛んでいる個人の乗り物があったり、そんなことをいくらでも想像できたんだけれど、1980年になって50年後の世界を描く時には、すごく困った。もう、誰でも想像ができてしまうんだ。もう土台ができている。そんなわけで、これから50年後の未来を発想するのは非常に難しいよね、というような話をしたこともありました。それがとても印象に残っています。でも1980年代に想像できる素晴らしい未来が描かれていると思います。
一般の大人に聞くと、よく言われるのは、松谷さん、「鉄腕アトム」というのはすごいよね、1951年当時にあのような50年後の世界を描いて、今、それが現実になっているんだ。最近実際に出てきたドローンだとかがあったり、子どもが自分で運転する車が空中を飛んだりなんかしているのもだんだん現実になってきてるよな、と言ってびっくりする方、すごいなと言ってくれる人がいるんです。でも僕は、手塚がその1年前の1950年に描き始めた「ジャングル大帝」もすごいと思っています。終戦が1945年だから、そこから5年しか経っていない。それこそ、明日は何を食おうかというような、そこら中が焼け野原になって、もうどうしようもない状況なのに、そんな中で、手塚治虫は自然と人間は共生しなきゃいけない、動物と人間は仲良くしなければいけない、そんな発想をしてるんですよね。僕は、それがとても素晴らしいことだな、すごいなと思っているんです。そのように感じてくれる人はあまりいないようなんですけれども。
もう一つ、「鉄腕アトム」というと、みんな科学の素晴らしさというようなことを言うんだけれども、それでは語り尽くせないところがある。テレビシリーズですと、30分の中でみんなにとって面白く完結させなければいけないから、ロボット同士が戦ったり、そういう面白さを見せなくてはいけないんですけども、原作を全部読むと、いつでもアトムは悩んだり泣いたりしているんですよ。ロボットですから、泣いて涙が出たかどうか分かりませんけども、泣いたり悩んだりして、いつも人間とロボットの狭間で嘆き苦しんでいる。
それから、手塚治虫は生涯、どんな作品でもみんなそうなんですが、命の大切さを訴えている。命の大切さというのは、人間の命だけじゃない。動物だって、植物だって、みんな生きている。地球だって生きているんだということで、子どもたちに命の大切さを伝えようと思っていたんですね。だから、どうもテレビで育った人たちにはそれが伝わってないようなので、できればみんな本屋さんに行って、「鉄腕アトム」の本を買って読んでください。買うと我が社に10パーセントの印税が入りますので、よろしくお願いしたいんですけども(笑)。ということで、あの中では発達しすぎた科学というのが、もしかしたら人間にとって悪いものかもしれないという警鐘も鳴らしているんです。
ぜひその辺をこれからロボットとお友だちだと思うんで、パラリンピックを見てよく分かりましたけれども、次の久野先生がお話しになるのは、正にそのことで人間がすごく豊かになるための科学の発達だと思うんですが、ぜひ一生懸命科学を進歩させるのは良いけれども、人間にとってこれが幸か不幸かというようなことを常に意識しながら携わっていただきたいな、というふうに思います。
戦争のない平和な世界、そしてすべての生命の尊厳、それこそが手塚治虫のメッセージだと思いますので、よろしくどうぞ。
続いて、サイバーダイン株式会社事業推進部部長、湘南ロボケアセンター株式会社代表取締役社長の久野孝稔様をご紹介します。
久野様はサイバーダイン株式会社の事業推進部部長とその子会社である湘南ロボケアセンター株式会社の代表取締役社長を兼任されており、同センターにて脳卒中や交通事故などで手足が不自由になった方の動きを支援するロボットスーツHAL®を活用したフィットネス事業に取り組まれております。
それでは久野様、よろしくお願いいたします。
皆さん、こんばんは。このような機会を与えていただきまして、たいへんありがとうございます。
今日は実際にロボットを持ってまいりました。ということで、この2種類ですね。皆さん初めて見る方もいらっしゃると思いますが、ちょっと聞いてみましょうか。初めて見るという方はどれくらいいますか。
(多数が挙手)
今日は持ってきた甲斐がありました。ありがとうございます。
おまけに、私が今、装着しているロボットがありまして、これもロボットスーツHAL®腰タイプといいます。ですので、ちょっと上着が邪魔なんで、別のスーツを着ていると思っていただければと思います。このように装着するタイプのロボットを、私どもサイバーダイン株式会社は、ロボットスーツHAL®ということで商品化し、実際にこれを「さがみロボット産業特区」の藤沢市で使っております。
今日は、その事例紹介をメインにさせていただきながら、人生100歳時代をどのように迎えていけばいいのか。これは社会課題ですよね。知事がおっしゃった、未病改善という時代を、これからどのように日本社会が具体化して、より取り入れて、世界の模範的な社会構造にしていくか。これがたいへん重要なキーワードになってくるかと思います。
そういう意味では、社会課題解決のためのロボット技術と考えていただければと思います。私どもは、ロボットを作りたくて、企業化しているわけではないんですね。社会の課題をいかに早く解決するか。
足腰が弱った方、もしくは障がいをお持ちでずっと車椅子で悩んでいる方だとか、皆さんやはり自分の足で歩きたいわけなんです。その課題、これまで不可能とされていたことを可能にするようなイノベーションという、そういった領域の開発活動になるんですけれども、世の中にないものを、日本がいち早く開発し、実用化して世界展開まで考える。これは産業にもなります。
ということで、さがみロボット産業特区は、目の前の課題を、具体的にロボット技術などを使いながら解決しつつ、社会をしっかりと作って、世界の模範となるような地域にしていく、そういったことを私どもは考えておりまして、立地しております。
早口で申し訳ありません。たくさんスライドがあって、できるだけ分かりやすい言葉で皆さまにお伝えしていきたいと思っています。よろしくお願いいたします。
湘南ロボケアセンターという施設を辻堂駅から徒歩4分の所に立地させていただいております。これは神奈川県と連携して、3年前に設置させていただきました。装着しているのが、ロボットスーツHAL®でございます。ロボケアセンターでは、このように、安全にトレーニングできるように、ロボットを使ったフィットネスという形のサービスを提供しております。日本で最大級のロボットスーツHAL®を活用した専門トレーニング施設になっています。トレーニング中、目の前にはなんと富士山が見えるということで、非常に脳が喜ぶ環境で、最先端のトレーニングをしていただこうというのがコンセプトでございます。非常に明るい場所ですので、お客様方皆さまに気に入っていただいております。
こちらの独特な風貌の先生は、山海嘉之(さんかいよしゆき)先生といいまして、筑波大学の大学院の現役の教授です。且つ、このロボットを作るサイバーダイン株式会社を創設した方なんですね。
科学や技術は人の役に立ってこそ意味があるということをモットーとしております。ですので、人類は科学について、何を選んで未来を作っていくかということが判断できる存在ですので、やはり科学は、どんどん膨張していくと、もしかしたら人や社会の役に立たないものになってしまう可能性もありますので、そこはちゃんと人がコントロールしていく必要があるということもおっしゃっています。
ロボットスーツHAL®を作る研究は、筑波大学の大学院で学ぶことができます。サイバニクスという新しい学問領域を作っております。サイバニクス技術は人が出す信号(生体電位信号)を感知し、それをデバイスにつなぎ、課題を解決するという技術が特徴的です。今、この会場に200名近くの方がいらっしゃいますけど、お一人お一人が情報をたくさんお持ちなんですね。これまでの社会は、非常にもったいないことに、情報を出しているにもかかわらず社会の中で活用されてこなかったんですが、なんとこれからは一人ひとりの情報を正確にとらえて、それを社会のために使える技術が浸透していきますので、当面、これはさがみロボット産業特区の非常に特徴的なものになってくると思います。インターネットのおかげで、皆さまが地球規模でつながっていくという、そういった非常に不思議な領域が現実になってきます。
ロボットスーツHAL®の開発には長い歴史があります。1991年から動作原理の開拓、ロボットがどのように動いているのかということの原理開拓から始まっています。単に装着してロボットが動いているものではございません。それを今からご説明したいと思います。
そのようにずっと開発が進んでくる間に、ロボットスーツHAL®にもいろんな形がございました。途中、全身型をつくってみたりとか、最終的に2015年にやっとこのロボットスーツHAL®が医療機器になりました。この意義は非常に大きくて、医療の中でしっかりと保険が下りて、皆さまが公平に安い費用で使えると。それも最先端技術ですから、なかなかこれまで実現してこなかった、例えば難治性の病気の方も、このような装置が医療機器化しますと、難病の進行を抑えることができる、そんなことが今、実現しております。
このように、医療機器にすることが元々、開発の目的の中にございました。しかしながら、医療機器開発というものは、非常に多くの制約がありまして、突破しないといけないことが多いわけです。非常に開発が難しいんです。ですが、これを突破しますと何が待っているかというと、横展開、水平展開なんですね。最先端技術を完成させた後は、いろんな分野にこの技術が使えるようになります。重作業支援型、それから形を変えますと、災害対応の人が装着するようなロボットになったりとかですね。人が介在する現場には必ず必要なキーテクノロジーとして、応用分野が広いわけです。
あとは、嬉しいことに、医療というのは世界共通でございますので、その治療効果についていったん認めていただきますと、各国の医療機器にもなるということで、医療産業は、これから日本が取り組むビジネスとしても非常に重要な産業分野だと言われております。
ロボットスーツHAL®の動作原理をここでご説明します。身体は、脳からの指令で動いています。お一人お一人、脳の指令で身体が動いております。いったん、この指令が何かしらの理由で弱くなってしまったり、途切れてしまうと、自分の意思の通りに身体が動きづらくなったり、動かなくなってしまうんです。ですが、ロボットスーツHAL®を装着しますと、わずかな信号でもロボットスーツHAL®がセンサーによって装着者の動作意思を感じ取りまして、装着者の脳が信号を発した時にロボットが動く、ということが実現できるんです。
そうなると、動けない人でも、ロボットスーツHAL®を装着すれば意思の通りに、思いどおりに動ける可能性が出てきたということでございます。この技術を実用化しますと、それまで歩けなかった方が、歩けるという体験がまずできて、その体験を継続的に行っていくことを通して、どんどん脳からの信号を強くしていくということができるようになります。
(動画を視聴)
これは初めて装着したときの様子ですね。歩けるのを見て、皆さんびっくりするわけです。あの方が歩けるんだ。使った方に「歩いたら楽だ」と言っていただきますと、この瞬間から、他の方もロボットを使ったトレーニングをやってみたいということになるんですね。
ロボットスーツHAL®は様々なタイプがございますが、私が今装着しているもの(HAL®腰タイプ)をいったん外してみます。今、装着していたのは、腰を守るための作業支援用、介護支援用ということで、介護士さんの腰痛をできるだけ減らそうという趣旨で開発されたものなんです。HAL®ということで、動作原理は一緒で、身体(この場合は腰)から信号を感知して動いております。私は既にセンサーを身に着けておりますので、敢えてロボットスーツHAL®を装着しないでロボットが動く様子を見ていただこうと思います。
デモンストレーションです。私の脳からの指令で、私の脚はこのように動いています。この時、センサーに信号が走って来ているわけですね。その信号をロボットに送ってみたいと思います。読み取れるように、今、スイッチを押しました。私が脚を伸ばそうとするとロボットも同じように脚を伸ばし、曲げるとロボットも曲がります。思いどおりといいますか、私と同じように動いてくれます。
ところが、身体が弱い方は、信号自体も弱いんです。敢えて信号を弱くしてデモンストレーションします。私の脚は実際には動かさずに指令を出します。脚を曲げる。ももを上げて、脚を伸ばす。
(HAL®がそのとおりに動く)
こんなことができるようになるんです。伸ばす、曲げる、伸ばす。音声認識ではございませんよ。ちゃんと脳から信号を送っているんです。こういう信号をとらえる技術が、サイバニクス技術の特徴です。
健康づくりという環境を自宅にいたままでも叶えてまいりますので、皆さまのより豊かな生活へ向けて、このロボット技術、センサー技術、アクチュエーター技術、いろんなものがございますが、これからそういったデータを活用する社会を作ってまいりますので、ロボット産業というのは非常に楽しみな領域だと思っております。
どうもありがとうございました。
面白かったでしょう。すごいですよね。
手塚治虫さんの「鉄腕アトム」の連載が始まったのは、昭和26年ですから、私が生まれる前なんですね。65年前のその話と、現在の最先端ロボットの技術がつながってるという、こんなお話であります。
今日は、皆さんのお手元にいろいろ資料がお配りしてありますけれども、なぜこのさがみロボット産業特区のキャラクターがアトムになったのか。本当は先に説明すれば良かったのですが、資料の中にROBOT TOWN SAGAMIのリーフレットがありますね。これの後ろの面を見てください。チカラその1、チカラその2と書いてありますね。鉄腕アトムというのは7つの力を持ってたんですね。「10万馬力」とか、「サーチライト&カメラ」とか、「聴力1000倍」とか、こういういろいろな能力を持っていたんですけれども、さがみロボット産業特区で、生活支援ロボットという人の命を支えるロボットを開発していこうと思った時に、実はこの7つのことを我々は目指しているのではないか、ということに気がついたんですね。
そこで、これなら鉄腕アトムが一番いいやと思って、手塚プロダクションに願いをして、ご快諾をいただいたんです。
先ほど、面白そうな絵が出てきましたね。先ほどの松谷さんのスライドを出してください。お話しにはならなかったんですけれども、松谷さん、これは手塚さんが描いた、「2001年ウサギ小屋」という絵ですよね。これについてご説明いただけますか。
説明と言うか、これについて文章があるので、一部読みます。
ぼくはいま、4年後に開かれる「科学技術博」の基本構想懇談会に参加している。当然、住まいの話題が出る。ひとりの委員が「日本はウサギ小屋なら、世界最高水準のウサギ小屋住宅を見せてやろう」と開き直っていう。また、老後の世話をしてくれる看護ロボットが、道具ではなく家族の一員として、ぼくたちと暮らすようになるだろう。鉄腕アトムの未来都市が、ガラクタにしか見えない街になってはまずいのだ。
ということで、この絵の中では、小さくて見えづらいでしょうけれど、バックに椰子の木みたいなものがあり、障子を開けると壁いっぱいにビデオスクリーンがあって、世界中の風景が見える。
それから、屋根はソーラーシステムになっていて、屋根が太陽の移動に合わせて動く。ここでは、仕事をしていて、それがすぐベッドにもなって。これは手塚自身のことを描いているようなものですが。後ろには介護ロボット、看護ロボットがいて、注射器を持っていたりとか。前には、なぜかししおどしがある。
このようにね、ロボットとともに生きるお家というのも意味されていますね。
そうですね。ウサギ小屋と言われても、世界に類を見ないウサギ小屋ができるんじゃないかと。2001年を目指して描いたんですけどね。
これは1982年に描かれたわけですから、今から34年前の手塚さんから見た未来、2001年ですから、今からすればもうずいぶん過去になりますけれども、こういう世界を描いていらしたというイメージですね。
それが今、どんどん現実のものになっている中で、今度は最先端技術のHAL®、これもすごいです。世界に冠たる技術。山海先生はきっとノーベル賞を取ると思いますけどね。脳からの信号を読み取って、歩けない人を歩かせることができるというのはすごいでしょう。
ちょっと種明かしをしましょうか。先ほど「ROBOT TOWN SAGAMI 2028」のアニメーションを見てもらったでしょう。もし見ていない方は、お家に帰って、神奈川県のホームページから見られますから、ぜひ見てください。今日の資料にもパンフレットが入れてありますからね。
一番最初の場面で主人公が交通事故に遭いますね。それで、その後に子どもが生まれるのに、自分はもう子どもに会えないのかと言いながら、ぱっとタイムスリップで2028年に飛んでいく。2028年というのは、2027年にはリニアモーターカーが開通予定ですから、たまたまその次の年に降り立ちます。
2028年に行ったら、自分の奥さんとか娘がいて、あ、これが自分の娘なんだ、とか思いながら家までついていく。でも、誰にも自分の体は見えないんです。それで家に入っていった時に、主が帰ってくる。誰が帰ってきたんだろうと思ったら、実は自分だったんですね。自分は死んだと思っていたのに、実は死んでいなかったということですけれど。
あの最後のシーンで男が装着していたのは、サイバーダインのHAL®ですよね。
かなり未来型のHAL®だと思いますけどね。見てくださった方が、ロボットスーツっぽいなと思っていただけたらありがたいんですけれども。あれは感動しますね。
感動するでしょう。
大丈夫だよって言ってくれて、感動しました。技術をやっていて良かったなと思いますね。
あれを今、本当に研究しているんですよね。
ええ、実は、種明かしをしますと、おそらく、アニメの設定では交通事故で完全脊髄損傷になってしまったんではないかなと私は思っていまして、そういった患者さんもロボットスーツHAL®で救えるかなという、正に世界初の研究が始まりました。
それは、体内の神経細胞をもう一度復元する再生・細胞医療というんですけれども、再生医療技術とロボットスーツHAL®の技術を組み合わせた新しい複合治療技術ということでしょうかね。これを実用化しようということで今、神奈川県で研究がスタートしております。
神奈川県は今、県全体が国家戦略特区になっております。そして、その最先端の技術を研究している。最先端の中でも一番最先端なのが、再生・細胞医療とこのロボットスーツHAL®をドッキングさせようという研究で、今、実際にやっているんです。
つまり、脊髄損傷で中枢神経にダメージを受けた人の、その神経細胞を再生技術で再生させて、そこが信号が通るように機能化させるためにロボットスーツHAL®を使う。脊髄損傷で寝たきりのままの人生にならないように、人の歩く機能を復元させるということ。それが実は、「ROBOT TOWN SAGAMI 2028」の一番最後の場面で出てきたんです。死んだのかと思いきや生きていたんだ、というところにつながってくるというのが種明かしですね。
この話はあまりしていないんです。今日は来てよかったですね、皆さん。しかも久野先生は研究開発を推進している当事者ですからね。すごい話でしょう。
ということが背景としてあり、ああいう形で、これから最先端の技術によって、たとえ機能が失われても頑張って生きられるようになる。そんな技術がどんどん追いかけてくるという状況も踏まえて、その最先端を生み出せるような神奈川、県央、さがみロボット産業特区ということで、ここで未来への議論をしたいと思う次第であります。
さあ、それではここからは皆さんとともに議論を進めてまいりますから、シナリオはありません。皆さんからの質問でもいいですし、意見でもいいですし、県への注文でもいいです。何でもけっこうですので、このテーマの中でお話しいただきたいと思います。
それではまいります。はい、どうぞ。
貴重なお話をありがとうございました。川崎市在住で、大学院に入り直して、情報学を勉強しております。
現在、まだ才能や意欲が抜群なのに、障がい、年齢、環境などが原因で研究開発に参加できずに、単純作業をされている例をたくさん見聞してきました。山海先生はプロジェクトマネジメントにも取り組んでおられますが、例えばスポーツのサポーターのように、上手く、ちょっと技術用語なんですけど、マグネティックカップリング、吸着して、ロボットも人も心優しい科学の子をたくさん育んでいけたらと思って、考えたり、動いたりしております。
理論的な研究とかでしたら、それほど予算もかからないし、商店を閉めたりした場所とかも、川崎の川っぷちにありますので、うまく活用していけないかということを考えておりますが、よろしくご配慮をお願いいたします。
研究をなさっているんですね。さがみロボット産業特区では、いろいろな実証実験ができるようになっておりまして、規制緩和なんていうこともここではずいぶん進んでいます。例えば電波法。電波を流しながらいろいろとロボットの実験をしようと思うと、電波法に引っかかるんですけれども、ここはそれが全部緩和される場になっておりますので、いろいろな実験ができるようになっています。
厚木市にある松蔭大学から来ました、コミュニケーション文化学部の3年生です。
今回、ロボット技術ということで、私はちょっとロボットは怖いという印象を持ってるんですね。それはやっぱりAI、人工知能が発達すると、ロボット自身が意思を持ってしまって、勝手に動いて何をするか分からないという印象があるからです。
だから、全部そういう考えでいくと否定的なことばかり考えちゃうので、ロボットは怖いという印象を一回排除して、人とロボットが未来で共生するためには、どういうふうになればいいのかなというのを、コミュニケーションの視点からちょっと考えてみました。
例えばなんですけど、アメリカから外国人が観光で来たときに、英語をしゃべれるロボットがガイドしたとします。そうすると外国人は、とても楽に快適に過ごせると思うんですけど、日本に来たのに、なんでロボットで英語でというふうになると思うんですね。楽しめたとしても、実際はちょっと物足りないという印象が残ると思います。
他にも、日本文化とか、伝統的な日本舞踊とか、茶道とか、そういったものを、もしロボットがすごくスムーズに動いて、すごく素晴らしいものをやったとしても、感動は与えられないと思うんですね、見ている私たちには。
そういうのを考えると、人と人がつながるということは、やっぱりロボットにはできないものであって、感情だったり、感動を与えられるのはロボットじゃなくて人ということが分かります。
逆に、災害の時とか、危険な場所に行って重い物を運んだりだとか、人の救助を行うことができるというのが、ロボットの持っている能力だと思うので、人とロボットが共生するためには、それぞれ長けている部分、さっき言ったように人だと、ホスピタリティであったり、感情、表情だったり、そういったことに長けていて、逆にロボットは、力だったり、完璧かつ繊細なものだったり、そういった部分が長けていると思うので、そういう部分を生かし合って、足りない部分を補い合っていくことが、これからの未来で人とロボットが共生できる方法なんじゃないかなと思いました。以上です。
素晴らしいですね。すごく本質的なところを突いていますよね。
松谷さん、そうですよね。今、ロボットが怖いという印象を持たれていた。それといかに共存するか。でも、手塚さんもそういうことは思っていたんですよね。
先ほどしゃべった「R.U.R.」という戯曲では、完全にロボットが人間を支配してしまうんですよ。最後に、ロボットはロボットの作り方を知らなかったもので、だんだんダメになっていくとか。そういうふうに、確かにロボットが人間を超えて、人間を滅ぼしていくというようなところは、あるかもしれないです。
ただ、「鉄腕アトム」なんかにもありますけどもね、ロボット同士、また人間とも厚い友情で結ばれるとかいうことも考えられるから、もしずっと進んでいくとすれば、ロボットを、きちんと勉強して良いものをちゃんと吸収して学べるようなロボットにしてあげれば良いんじゃないかと思います。
人間だってひどい人はいっぱいいますからね。アトムのような優しい心を持ったロボット、できるかな?
確かに、ロボットと人間がいかに共生していくのかというのは、非常に大事なテーマですよね。コミュニケーションという視点から、そういうことを想像され、研究されているというのは素晴らしい。これは、これからも、一番重要な点ですよね。
ありがとうございました。
座間市でちょっと消防団などもやっておりまして、その関係でドローンなどの話も出てきたので、思ったことを話せればと思います。
先日、1ヶ月ほど前ですか、ドコモさんとアマゾンさんが協力して、ドローンにスマホをそのまま搭載して遠隔操作で飛ばすと。こうすると何が良いかというと、要するにケータイの電波が届くところではフルオートでドローンを飛ばせるということが発表されました。
これは、神奈川県にとっては非常にいいことで、言い方は変なんですけど、長野県とかと違って、神奈川県の大概の面積はケータイの電波が届く範囲内だと思うんですよね、一部伊勢原の大山の山頂を除くとかすれば。とすると、災害の場所を確認するなどにおいて、すごく意義のあることだと思います。
その時に問題になってくるのは、先ほど知事がおっしゃられたのは、すごく意味があって、私としてもいろいろ感銘を受けたんですが、電波において、この先、県央はかなり優遇してくれると。ケータイの電波を使っているうちは、たぶんその心配もないんでしょうけれど、いろいろ実験をするときに役に立つでしょうと。
ただし、次には航空法が問題になってくると思うんですよね。ある意味、フルオートで飛ばして、巡回させて、着地して、自動充電させて、またフルオートで飛んでいくなどということが、近い未来に可能になるのではないか。そうすると、消防や警察がすごく助かるんではないか。1機何千万円かかるか知りませんけど、ヘリコプターの代わりに、1台10万円くらいのドローンで同じ働きができてくるのではないか、というようなことにちょっと個人的に頭を巡らしたんですが、その点について引っかかってくるであろう航空法について、知事がどのようなお考えを持ってるのか、お聞かせ願えればと思います。
先ほどの「ROBOT TOWN SAGAMI 2028」の映像の中に、ドローンが宅配で品物を運んでくるシーンがありましたよね。あれなんかも、本当に、今おっしゃったことが現実化しているという想定のもとで飛んでいるわけです。
航空法というのは確かに引っかかってくるんですよね。それだけではなくて、これからの、ああいったロボットがどんどん活用できる社会になってきたときには、やはり新たな法整備というものが同時に必要になってきます。今までは、そんなことは想定していなかったわけですから。だから、そういう法整備はいろいろなところでやっていかなければなりません。
例えば、今、現実問題となっているのは、自動運転走行システム、ロボット自動車ですね。藤沢の街の中で実際に、ロボットタクシーの実証実験をやったんです。運転手は一応座っていますが、いざという時のために乗っているだけで、手はハンドルから放している。藤沢であれをやって以来、毎日のように自動運転走行システムのニュースが出ていますよね。一番先にあんなことをやった場所は、実は神奈川県の藤沢だったんですよ。
それよりもっと前に、さがみ縦貫道路で、私が世界で初めて、日産の副会長と一緒に、高速道路で自動運転走行システムの車に乗りました。自動で前の車にずっとついて行って、自動で方向指示器を出して追い抜いて、また戻ってくる。自動運転区間では、運転手は手を放している。そんなこともできました。
これも普通なら道路交通法に引っかかりますよね。そういう技術ができて、特区だから特別に実験が許されたわけですけれども、それなら、これからはどうやって法整備していくのかといった問題が、今、急速に進んでいるというところですね。
無人のタクシーが走っていれば、人生100歳時代にすごく便利ですよね。スマホでピピッっと申し込めば、車が迎えに来てくれるんですよ。乗り込めば、自動で運んでくれて、ショッピングしてからまた乗り込めば、自動で戻ってくれる。これは、超高齢社会にとってはすごく大事ですけれども、無人の車が走っていてそれにひかれた場合に誰が責任を取るんだ、といったことがありますよね。今までには想定されていなかったことだから、そういう法整備、社会のシステムというのを新しく作っていかなければならないんです。
今朝、やはり世の中が変わるのは早いなと思ったんですが、新聞を見てびっくりしました。保険会社が、そういうときにぶつかった場合の保険を作るそうです。すごいですよね。時代が流れていくスピードはすごく早いんですね。
実は、ここのさがみロボット産業特区は、その最先端を行っているということであります。非常に重要なご指摘でありました。ありがとうございました。
海老名市に住んでおります。住んでるのは住んでますけども、ベッドタウンで、ずっと東京の中心とか、神戸の方で仕事をしてたんですけど、産業ロボットとか、それから通産省大プロ(※大型工業技術研究開発制度)のロボットの開発なんかにも携わってきましたんで、ロボットについてはいろいろと経験があるし、今の動きには関心があります。
実はそれと別に、人生100歳と言った時に、私自身はあともう30年もしない間に100歳になるんで、じゃあ100歳まで生きる時に、単に生きていいのかということ。何のために、あるいはどういうふうに生きるかということが、非常に大事になってくると思います。
今、知事が正に自動運転という話をおっしゃったんですけれども、私自身は自動運転にちょっと懐疑的で、やっぱり自動車を運転する楽しみというのは、もうこの年齢ですからあんまりいい加減なことはできないんですけど、アクセルをぐっと踏んで運転するとか、箱根の山道をくねくね登ったりとか、そういう楽しみが車を運転するのにはあるわけで、そんなに自動運転が良いんだったら電車にしなさいっていうようなことを言いたい。
それは別として、要するに残された100歳までの時間を、ロボットと共生しながら、どういうふうに豊かにするかという視点が、もうちょっと必要じゃないかなと。
それで、サイバーダインの研究も、私はずっとフォローしてますから、すごいことだと思うんですけども、おそらく脳の信号がある人だからあれができるんであって、脳の信号がない人はどうか。これは分かんないですけど、私の父は4年くらい認知症で寝たんですよね。そういうのを見てきますと、そういう人が何も感じない、本当は感じてるっていうお医者さんの話もあるんですけども、寝た状態で100歳まで生きるのが本当に良いのかどうかという問題提起。
私にも答えはないんですけども、少なくとも機械、さっき若い人が非常に良いことを言ったんですけども、やっぱり機械はあくまで人間の下に来るべきもんだろう。それから、人間の指令でない動作はしてもらったら困るということですから、さっき松谷さんがロボット同士が感情を交換するってことに関して、私は反対なんですけど。
要するに、ロボットは、あくまで人間の下で人間を助けるっていうもので、なおかつ人生100歳を豊かにするような方向で、これからも開発していただきたいなというように思ってます。そういうのがさっき久野さんがおっしゃった中にも入ってるんだと思うんですけども。
すいません、長くなって恐縮です。
ありがとうございます。とても良いご指摘だと思いますね。
確かに、今日は、ロボットの話だけを展開しようと思ってここに来ているのではないんです。あくまで人生100歳時代ということの中で、たまたまこの地域がさがみロボット産業特区になっているので、その視点から見ているんです。今、ご指摘のとおりで、科学の技術が進歩して、例えば脳さえ生きていれば、いくらでも何でもできるということで本当に良いのかという、すごく大事な問題ですよね。
生きていれば良いというものでもないでしょう。何のために生きているのかがとても大事。これは一番本質的なポイントなんですよね。
先ほど、「食」、「運動」の次に「社会参加」を入れていましたね。実は、これがすごく大事なんですね。あれを入れてくれたのは、辻哲夫さんという、元厚生労働省の事務次官だった人です。今は東大の特任教授で、千葉県柏市にもキャンパスがあるんですよね。そこで高齢者の皆さんについていろいろな研究をされたんです。
皆さんは、フレイルという言葉を聞いたことがありますか。フレイルというのは、だいたいご老人になってくると足腰が弱ってきますよね。その虚弱状態をフレイルと言うんですね。そうなると、外に出て行かなくなるんです。家にこもりっきりになる。そうすると人との接触がなくなって、その人の具合がぐんと悪くなってくるんです。だから、フレイルにならないようにしようということをずっとやっている。
そのために何が大事か。それが社会参加だという。まず、家から出るということが大事なんです。でも、家から出ても何もすることがなく、うろうろ散歩だけして帰ってきても寂しいものですね。社会参加というと、やはりどこかのコミュニティに入って人と触れ合ったりすることが必要です。
ただ、仕事をしていれば良いというものでもなくて、要するにもう仕事はしたくないという人もたくさんいるじゃないですか。それでもやはり何かの形で人と関わっているということがすごく大事。関わり方も、特に「人の役に立っている」という感覚がすごく大事なんですって。そういう感覚を持っていると元気になってくるということもあります。
だから、どうやって100歳時代を生きていくのかという話の中で、やはりいつまでも社会参加ができるような形の社会の仕組みを作っていきましょうという話も、ずっと同時にしているんですね。この話は、いろいろな形で展開するんですが、実は私も「百歳時代」という本を書いたんですね。「百歳時代」の中で、いろいろな事例を出しています。
今日はこういうロボットの話をしていますが、ついこの間も、生き方というテーマにしたこともありました。
ある人が、銀座和光という銀座のど真ん中にあるお店で、キャリアウーマンとしてずっとばりばり働いていました。この人が50歳を超えたところで、お母さんが認知症になって、そのケアをしたことがきっかけになって和光を辞めて、それから国際医療福祉大学大学院に通い始めたんです。私は知事になる前はそこの教授をやっていて、私のクラスに来ていた人なんですよ。そこで一生懸命に勉強を始めて、この間博士号を取ったんです。スウェーデンの福祉のあり方を、ずっと現場に行って取材して、勉強して、それを論文に書いて博士号を取って、今や社会福祉の専門家として、本を書いたりして大活躍ですよ。
今は60歳代で、私よりも年上ですからね。それでいて、以前とはまったく違った人生を歩んでいるということです。何がきっかけだったかと言うと、学び直しなんです。そういうことによって、また次の人生が開けてきたというお話もあります。
様々なことがありますが、やはり社会とどう関わっていくのかがすごく大事であって、その時に、本当に厳しい状況になった時の一つの究極の助けになるという意味で、ロボットというものが非常に重要な技術だという意味なんですよね。
ありがとうございました。
僕は、藤沢市に住んでいて、神奈川総合産業高等学校に通っています。ロボットに対しては、一般の人と同じくらい知識があまりない人間なんですけれども。それで、意見と想像上のものが混ざって、あまり確実性のないことを話させていただきます。その上で、プロや、いろいろなことを今までに考えてきた方々に質問したいです。
僕はロボットと聞くと、「鉄腕アトム」もそうなんですけど、いろいろな映画やアニメ、様々なものを思い浮べます。そうすると、それと同時に、とても進化した技術というものが劇場内で描かれているようにも見えます。
僕が見た中では、例えば、あまりにも技術が発展しすぎて、人がほとんど何もしなくても生活できてしまうという状況になってしまい、人類の運動能力がどんどん失われていくっていう、そういった世界が描かれた映画があったんです。
それを見た時、僕はとても疑問でいっぱいになりました。運動が楽しいっていう方もいるでしょうけれども、ただ生まれてきたその環境で、運動しなくてもよいという環境が存在した場合は、運動しなくても生きられて、運動した経験がないことによって運動することの楽しさを知らないといった、そんな世界が存在することがあり得る。技術の発展の仕方によっては、そんな世界があり得るのじゃないかなと僕は思いました。そして、それでは技術を持っている方々はどのような発展のさせ方をするのかな、といった疑問で僕はいっぱいになりました。
その上で質問させていただきたいんですけど、一体どうしたら人類が、元の人間的な活動を損わずにロボット技術を進歩させられるのか。それで、僕らは一体どういった知識や考え方を持って生きれば良いのかということを知りたいです。
今のご質問もたいへん良いポイントだと思います。要は、何のために人類は科学技術を開発し、活用していくのかという観点で考え、これから22世紀に向かって、どういうふうに新しい世紀を迎えるのかということを考えていく。
この先しばらくの間の社会の課題はもう見えているわけですね。知事が示されたように、人口構造が急激に変わるだとか、これまで人類が考えたこともない、想像したこともないような課題が待っているはずなんです。
それはまだ見えないかもしれないけれども、敢えて自分を未来のポイントに置いて、こういう社会にしておきたいなと考える。これはバックキャスト思考と言うんですけどね。50年後の未来はもうだいたい見えていて、想像もできています。白書でもこういう未来になるだろうと示されています。
そういった時に、そこにある課題に対して今から準備して、どう解決していきたいか、どの技術でこの課題を解決したいかということを想像するわけです。想像して、できることを見つけていくわけですね。そういう研究活動や社会の中におけるビジネス活動が当面続くんだろうなと思います。
何も考えずに、科学の進歩に従って人類がそのまま行くかというと、そうではないと思います。先ほどご覧になった映画は良い意味で相当極端な内容でして、人類に対する警鐘を鳴らしているストーリーだったと思います。でも、そういったところから想起して、あ、こういう社会は良いな、ここはいやだな、と考える。運動しないでやせ細っていくだけの人間なんていやじゃないですか。
先ほどご指摘があったように、私は、ロボティクスは人間をサポートするためのものである必要があると思います。人工知能も最近は世界を騒がせております。人工知能は、世界中が今、集中的に研究活動に投資しておりますけれども、まだガイドラインができておりません。ですから、私たちはしっかりとウォッチしておかないといけないです。
研究者が人工知能を使って、将来どうなるかわからないような研究活動をするとしたら、それは大いに疑問ですね。設計者、開発者が、「この後、世に送り出しますけれども、先々どうなるかは分かりません」というような商品は、あってはならないんじゃないかなと私どもは考えております。
ですので、そこはある一定のガイドラインを、世界が共通で持つべきだと思っておりまして、これは正にこれからの課題なんですね。その解は、まだ誰にも得られておりません。そこは人間である私たちが、どういう社会を切り拓きたいかという観点で、常にウォッチしておかなければいけないし、今日みたいなタウンミーティングで、知事に発言していかないといけないと思うんですね。
ありがとうございます。
確かに、技術がどんどん進んでくると、運動なんか要らなくなってくるのではないかと思うかもしれません。ちょっと前を振り返ってみると、例えば、昔は洗濯というのは、たらいで一生懸命もみ洗いしてやっていました。あれはすごい運動だったじゃないですか。昔はそうやっていたけれども、今は洗濯機に入れてスイッチを押すだけで、もうできてしまうじゃないですか。あの分の運動はしなくて済んでいますよね。お掃除だって、たいへんだった。今は、ルンバという機械があって、自動でやってくれるでしょう。その分も運動しなくて済むじゃないですか。
だったら運動しなくていいのか。先ほど見せたように、未病を改善するためには「食」、「運動」、「社会参加」といったものが大事なんですよ。あれはテクノロジーの話ではないですよね。人間の生き方の話。
栄養さえ足りていればいいんでしょという話なら、栄養剤だけ飲んでいれば、それで大丈夫かもしれないですよね。でも、それで生きているということで良いんでしょうか。食は大事だと。食べるということは、命の基本でしょう。だから、栄養剤をどんどん飲んでいれば済む話ではなく、やはり敢えて歯で一生懸命噛んで食べることが大事だ。運動も、日常的に敢えてやるということが必要ですし、社会と関わっていくということも大事。そういうことによって未病の状態を良くすることになるので皆さんでやってください、という話を今しているんです。
実は、神奈川県は今、子どもの時から未病対策と言って進めているんです。我々はもともと、中高年齢層を対象に、未病の改善が大切だという話を考えていたんです。ところがある時、子どもたちは大丈夫なのか、とはっと気づきました。調べてみたら、神奈川県の子どもたちの中には、基礎的運動能力がすごく低い子がたくさんいるんですって。
整形外科の先生から、しゃがむことができない子どもがたくさんいると聞いて、僕もびっくりしました。しゃがもうとすると、後ろに転んでしまうんですって。それくらい基礎的運動能力がない子どももいる。
食生活というのが乱れた子どももいますよね。朝ご飯は食べないし、変な組み合わせで食べるし、食べる時間も不規則だという食生活の子どもがいますよね。
社会参加は大丈夫かと考えたら、一人で部屋にこもってスマホか何かをいじっているだけみたいな。
子どもの時から、「食」、「運動」、「社会参加」の3つの要素がなくなっている。この子どもたちが大きくなったらどうなるんだろう、という問題も出てきていますから、子どものうちから未病の改善をやっていきましょうということで、今、キャンペーンをやっているところなんですね。
そういったものもいろいろあって、技術を技術として活用することと、人間が自分の命を輝かせるためにはどうしたら良いのかということは、ちょっと重なるところもあるし、重ならないところもあるということだと思いますけどね。
さがみロボット産業特区ということで、神奈川県の一部をこういう特区化して、今のような活動をしていますが、この特区を神奈川県全域に広げるような考えはあるんですか。
ありがとうございます。
さがみロボット産業特区、確かにこのエリアは、特別に実証実験がしやすくなっているんですね。通常はいろいろな規制がありますが、その規制が緩和できる。
ここからは製品化。ロボットの技術開発でも、いろいろあるんですね。実験室で積み重ねる研究もあるけれども、ここでやろうとしてるのは製品化、早くそれを商品にしていこうというところなんです。そのための実証実験が必要だということで、ここの特区でやっているんですね。だから、今後はここから製品がどんどん出ていきます。
その形はここでやっていても良いと思うんですけれども、もう既に神奈川県全域にそのコンセプトは広がりつつあります。久野さんのところのサイバーダインは、元々つくば市にあるんですよ。つくばからわざわざ湘南に出てきてくれたんです。それはさがみロボット産業特区があるからなんです。そして、未病というコンセプトに共感してくれたんですね。
今度、サイバーダインが神奈川の川崎市に来ますからね。これから工事が始まっていきます。これから、すごい拠点ができるんですよ。これは、国家戦略特区、京浜臨海部ライフイノベーション国際戦略総合特区を利用しています。
今、神奈川県には、神奈川県全体の国家戦略特区を含めて、特区が三つあるんです。だからいろいろな企業が神奈川に来ているということもあります。今は、こうやって実験的に製品化するというのは、ここを中心にやっていますが、この理念はどんどん神奈川全体に広がって、ここでモデルを作って、世界に発信して行こうという流れができ上がりつつあるということです。
高校生で、相模原市に在住しております。
ただ今、先ほどの方から、運動能力の低下という問題が挙げられました。例えば昔であったら、私たち学生は放課後に野球をしたり、サッカーをしたりなど運動して遊ぶという場面が多かったと思いますが、今の時代、ゲームとかパソコン、スマホとかいったものに夢中で、なかなか運動する機会がない。例えば、私なんかは部活に入っていないので、学校の体育の授業くらいしか運動をする機会がなくて、運動能力の低下というのも非常に問題かと思うんですが、運動以外にも、勉強能力というか、学習能力の低下ということもあるかと思います。
例えば、今、パソコンやスマホで漢字が予測変換されるので、書き取りの練習をしなくても漢字が分かってしまう。もう既にそういう時代だと私は考えておりまして、よく学校の先生なんかは、予測変換ばっかり使っていると漢字が書けないぞ、なんておっしゃる方が多いですが。
実際に、直筆で字を書く機会は、今後もっと減っていくんじゃないかなと考えております。実際に字が書けなくても社会で生きていける時代が来てしまうんではないかな、と考えているんですが、それに関してはどう思いますか。
まったくそのとおりでしょうね。
本当にパソコンばかり使っていて、私なんかも人のことは言えないけれども、だんだん漢字が書けなくなってきましたね。あれ、どんな字だったかな。それで、パソコンやスマホで漢字を出してみて、ああ、こんな字だったかと思い出したりする。
でも、逆もありますよね。僕はこうやっていつもペンを持っていて、このペンは開けると筆になっているんです。筆ペンの万年筆みたいなものです。こういう時代だからこそ、筆で文字を書くと、けっこう喜んでもらえるんですね。手紙なんてもう、パソコンで打っていくらでも出せるのですが、敢えて筆で書いてみると、逆にすごく値打ちがあるということ。そういうことに気づくと、逆に面白かったりすることもあります。
だから、この場合も、技術は技術としてあるけれども、では人間とは何なのかというところ。そこが今日の大きなテーマになっている、人間とロボットとが共生していくという話ですからね。ロボットの技術がどんどん進んで、人間なんて要らないじゃないか、何でも全部ロボットがやってくれるじゃないかとなった時、では人間とは何なのか。
人間は何をするのかを、やはり考えるということ。人間が必要なくなるわけがないと思いますね。そういうことを日頃から考えていくということ、実践していくということが大事なのではないかと思う次第ですね。
直接というより、裏方さん的な内容になるかも分かんないんですけど、製造とか製造技術、その辺の経験からちょっとお話なんですけど。
最近ちょっとね、また思い出したんですけど、大手メーカーさんの電話機を買った時に、昔と比較してもたない。1年きりもたない。えっ、なんでって。それから、この前買ったテレビも3年きりもたない。
昔、私が20代の時はメイドインジャパンが全盛。途中から韓国での生産の現場に行って指導した。その時も、日本の企業で作って、自分の工場で作ったものとの品質の差は何十倍もあったと思う。韓国から撤退して、今度は中国で作ったと。深セン(※中国の都市)で作った時も、製造技術としては、日本の技術に追いつかない。
今、ステレオ関係を買うと、変な言い方ですけど、日本の大手メーカーの製品を買っても、メイドインシンガポール、メイドインチャイナと書いてある。その中でも一番良いのはシンガポールだと思っているとか、そういう選び方に変わっている。
つい最近、うちの機械が故障したために、思い出したわけです。
私は、ますます多種少量生産になる中で生産体制を確立するために重要なのは、ロボット技術についてもやはり結局は人の技術であると思う。よく考えてみますと、日本の方の遺伝子っていうのは素晴らしくて、教えて熟知すると、隙がない。私が50人のグループ制の製造ラインを見ていた時も、あるグループでミスがあっても別のグループの方が見つけて止めてくれるわけです。ミスのまま最後まで行かない。そういうシステムを教えるとしっかりした体制になるから、ミスが0パーセントということも発生するわけですよ。
ものすごいなと思い出してるわけですけど、それが今現在、大手メーカーさんが作る製品は100%のメイドインジャパンじゃなくて、当然コスト削減を求めて経営的な問題で、海外依存になってるわけです。そして、よく見ると品質管理的ないろんな問題が出てるわけですよ。
私も最後は、ケータイも含めてやって、営業技術もやったりして、最後はクリーンルームだといったときも、ロボットを使っていても、つくづく人間の力を感じたわけです。やっぱりそこが安定するまでは、人の力が大事。
だから、今までの経験から見ますと、人を教育していかにレベルアップさせ、また日程を計画して、それから製造技術を上げながら開発した人たちに提供して、アイデアを現場から出して技術レベルを向上させる。これからはそういう時代になってくると思われますので、やっぱりTQC(統合的品質管理)を基本とした技術レベルを安易に捨てて、安かろう方に移すのではなくて、安全を考えるとますますね、日本の技術国内生産100パーセントにしろとは言わないけれど、そういうことを頭に入れながら、これからの体制も、そういうことを重要視しながらつくっていって、提供していってもらいたいなというようなことを、ちょっと言いたかったんです。
ありがとうございます。
そもそもなぜこのエリアをさがみロボット産業特区にしようと手を挙げたかというと、さがみ縦貫道路が通るこのエリアにはいろいろ中小企業があって、キラリと光る技術を持ったところがたくさんあるわけなんです。自動車部品の製造などが多いんですけれども、それではこれを何か新しい産業に転化できないかな、と考えた。それとともに、ここにはいろいろな研究所があり、研究員もたくさんいるんですね。さらにJAXAというものもありますから。こういったパワーを何か新しい産業にできないかと考えて、それでロボット産業ということで手を挙げたんです。その結果、今、どんどん製品化が実現しているところなんですね。
ですが、すごく技術が発達して、人間がやらなくてもロボットがきれいにやってくれるかもしれないけれども、やはり職人の匠の技みたいな部分は、どう頑張ってもロボットには追い抜けないようなところがあるだろうと。そういうところで、うまく人とロボットの力を積み重ねていったら、すごい製品ができる。日本の戦後の力というのはそこだったですよね。
日本人は一生懸命に真面目にやるから、例えばライン製造であっても、みんな手を抜かずにやるから完成度がすごく高い。というので、日本の今までのメイドインジャパンはずっと最高ブランドだったわけです。
ところが今おっしゃったように、メイドインジャパンだと思ってよく見たら、本当に作っているのは海外だったという話は実際に多いんですよね。そう言いながらも、私がこの間ベトナムに行った時に、びっくりしたことがありました。
今、ベトナムと神奈川県は非常にいい関係になっています。この間も史上最大のベトナムフェスタというのを、県庁とその前の大通りをベトナム一色にして開催したんです。
中小企業で海外に展開したいなということで、ベトナムに行きたい企業がたくさんあるんですね。そういう企業に対して、県は行くためのサポートをしましょうということで、ベトナムで民間企業が整備・運営している貸工場を活用して、そこに行きたい企業は、ワンストップで支援するような形にした。
ベトナムに行った時に、現地に進出した神奈川県内企業の視察に行ったんですよ。そこでは飛行機のドアを作っています。そこで話を聞いてびっくりしたのですが、作業はずっとつながっている製造ラインで行われています。ベトナムの若い人たちがそこで働いている。ベトナムの人たちは、みんなものすごく真面目なんです。製造ラインでは、失敗する率というのがあるんですね。ずっと回って来て、ああこれは間違っているという数の割合なんですが、驚いたことに、その失敗率が全員日本人の製造ラインよりも、全員ベトナム人の製造ラインの方が低いんですって。
というくらいにレベルが上がって来ているということがあるので、アジアの国のメイドインだからと言って侮れない時代。逆に日本は大丈夫か、という状況になってきているということも、今、お話を聞きながらちょっと感じました。
ちょっと質問ということで、松谷さんにおうかがいしたいところがあります。
今日の事例発表をおうかがいしたところ、ロボットですとか科学技術をどういうふうに使っていくのかについては、最終的には人間の想像力が必要なのかなと私は感じたんです。
今、仕事として教員をやっているので、そういった想像力をどういうふうにつけていくのかといったところが、お話を聞いてすごく関心があったところなんですが。
例えば、手塚先生をそばで見ていて、未来を予見するような想像力を身につけるというのは、どんなふうな場面があったのか。具体的な場面など教えていただければと思いました。
一つには、手塚治虫のところに若い漫画家志望の人がいっぱい来ました。その時に、皆さんもご存知の藤子不二雄両先生だとか、石ノ森章太郎先生だとか、赤塚不二夫先生とか、そういう人たちが来た時に、手塚治虫は、「あなた方、漫画家になるんだったら、漫画で勉強しなさんな。良い小説をたくさん読みなさい。良い映画をたくさん観なさい。良い絵画をよく鑑賞しなさい。良い音楽をたくさん聴きなさい」と言っていました。要するに、あらゆる分野を一生懸命に勉強したら良いんじゃないかと言っていましたね。それが結局は良い物語を作るもとになる。だから、あらゆる面で、基本的な知識というのは最低限必要なんじゃないかな。
それから「ガラスの地球を救え」という本にありますが、手塚の講演では、「先生はよく次から次にいろんなアイデアが出るものですね」という質問がありました。僕が客観的に見ていても、手塚は本当にすさまじい頭脳を持っているな、というのはよく分かりました。例えば、分厚い医学書をばっばとめくりながら、ほとんど全部活字の本なのに、ものすごい勢いで情報が目から入ってきちゃうんですね。それで医学会総会のときに基調講演をすると、まともな講演ができてしまう。
そういう飛び抜けた能力は持っていたと思うんだけれども、でも、それも基本的には幼い頃からいろんな鍛え方をしていたんじゃないか。小さい頃から、いろんな本を読んだり、映画を見たりしたのが基礎になっている。
手塚が「次から次によくアイディアが出ますね」と質問された時に答えたのが、「ifの発想、もしもの発想」ということ。「もしも、僕が、私が、宇宙からのまなざしを持ったなら、想像の力は光速を超えて何千、何万光年の彼方の遙かな星々にまで瞬時に到達できるでしょう。その想像の力こそ、人類での最高に輝かしいエネルギーです。」
とにかく想像するということですね。それは想像できる先生が特殊なのでは、と言われたら、「いや、そんなことないよ、みんなもしょっちゅうやってるよ。ちょっと曇っていれば、みんな傘を持って出かけるでしょう。それは、もしかしたら雨が降るかもしれない、と思っているからだ。そういうことと一緒です」と、そのくらい簡単にお話をしていました。
基本的なことは、自分の世界のことだけじゃなくて、他のこともいっぱい吸収しておくこと。そうすると、いろいろな発想がしやすいんじゃないかなと思います。
ありがとうございます。
手塚治虫さんは、お医者さんだったんですよね。だから、命というのに対するこだわりがすごくあって、鉄腕アトムをさがみロボット産業特区のキャラクターにしようと思った時に、「いのち輝くマグネット神奈川」とすごくつながっているなと感じましたね。
先ほどHAL®という素晴らしいロボットを見せていただいて、とても感動しました。正にあれは、ロボットが人を支えている形だなと本当に感心しました。
最初に拝見させていただいた、「ROBOT TOWN SAGAMI 2028」の動画に出てきたのを見て、こんな未来が来たらいいなととても純粋に見ていたのですが、出てきたロビタというロボットがもし本当にこの先たくさん増えたら、働く人間のニーズがとても減ってきて、本当の意味での人間とロボットの共生というものがとても難しくなるのではないか、と純粋に思ったのですが、どうお考えになりますか。
そうですね、今、ロボットとかロボティクス、私たちは完全に形になっていない技術のことをロボティクスと言い、形になっているものはある種のロボットという言葉で敢えて分けたりしてるんですけども、最先端技術みたいなものは、やっぱり必要だからこそ活用されるわけですよね。必要のないところには、あんまり高度な技術って歓迎されないです。コストがかかってしまって。
現時点で、そういったロボット、例えば、お掃除するロボットが欲しいとかいうニーズというのは、やっぱり人が足りなくなってきている現場から出てくるんですね。ご質問、ご意見のところにもありましたけども、人がやると辛いとか、危険だとか、そういったところからまずロボットみたいなのが入ってくるのかなと思いますし、人の代わりになってしまって、本来、人がやらなければならないようなことをロボットにやらせるという発想で開発するのは、すごく間違った話だなと私どもは思っています。要は、望まれない開発というものはやる必要がないんですね。
なので、私たちは、開発プロセスのところで、現場のニーズ、それから将来を見据えて、将来から見てという発想で、この技術は開発するべきなのかきっちりと見定めた上で、今、スタートしています。やっぱり間違いが起きるという可能性はあるわけですので、そこは常に見ておかないといけないですし、市場のご意見をいただきながら開発を推進する、これが開発マインドの基本的なファンダメンタルなところだと思います。
先ほどものづくりのご指摘がありましたけども、私どものロボットスーツHAL®は、100パーセントと言っていいほどメイドインジャパンでございます。輸入しているのはねじくらいですね。ねじくらいですから、99パーセントくらいメイドインジャパンかなと思っておりまして、これからもこれにこだわっていきたいと思っています。
やっぱりものづくりの精神というのは、日本は、世界に比べてすごく強い。これは日本が長けているところですので、しっかりとそこは基盤を持って、日本の将来を支える人材に皆さんになっていただければと思いますし、我々と一緒に未来を切り拓きませんか、というのが私どものメッセージでございます。
ありがとうございました。
これは非常に重要な指摘だと思うんですよね。AIとかが出てきて、ロボットが発展する。実は、何年か経ったら、今人間がやっている仕事の半分くらいは、ロボットがやってくれるんじゃないかというレポートがあるんですよね。
人間は何をすればいいのか。人間の仕事がなくなってしまって、みんなロボットがやってくれて、快適かもしれないけれども、身体は元気で100歳まで何をすればいいんだ。実は、人類が今までに直面したことのない課題が来ているわけですね。
だから、そういうことを想像しながら、それでは人間とは何なのか、生きているとはどういうことなのか、命とは何なのかといったところを、やはり原点に立ち帰って考えるということが必要ではないかと思うんです。
それをやっていかないと、気がついたら人間がロボットの奴隷みたいになってしまうかも。ロボットが、AIが知能が高くて。この間、将棋でも人間が負けましたよね。AIがもうすぐ東大の入学試験に通るかもしれないとも言われていますからね。ぼーっとしていたら、みんなロボットに支配されてしまうかもしれない。
そんな時代が本当に来るかもしれないという中で、やはり「食」、「運動」、「社会参加」みたいなことを心掛けながら、未病を改善することを自分自身でやって、そして元気で楽しい人生を自分でつくっていくということ。それをみんなでやっていく必要があるんじゃないのかな、ということでありましてね。
何だかあっという間に時間が過ぎてしまいましたね。高校生の皆さんもたくさん発言してくださって、非常に盛り上がった会であったと思います。
これをきっかけに、また考えていただくということが本当に大事でありまして、これをもとに、県の政策としても様々な形で反映していきたいと思いますので、今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
本日は誠にありがとうございました。
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