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更新日:2023年12月11日
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不透過型砂防堰堤の整備事例
【管内の砂防事業の始まり(国直轄事業)】 大正12年9月の関東大震災により丹沢山系は至るところで崩壊し、その崩壊面積は丹沢山の面積の約20%、約6,000haにのぼるといわれています。その後の降雨や地震により荒廃が拡大し、下流域に被害を及ぼす危険性が増大したことから、早急な土石流対策が必要となりました。そのため、国は大正14年から酒匂川水系で、国直轄事業として震災復旧砂防工事を始めました。 管内では、大正14年に世附川の支川寺の沢で堰堤を施工したのが、砂防事業の始まりといわれています。 その翌年から、玄倉川、棚沢、菩提沢等で砂防工事に着手しています。
【国庫補助事業による県施工砂防工事の始まり】 県も、昭和2年から震災復旧のため、国庫補助事業による砂防工事を開始しました。管内では、昭和3年に酒匂川水系の中津川において、第1号堰堤から第3号堰堤までの工事に着手しました。 上の写真が、中津川で県が施工した第1号堰堤の「稲郷堰堤」です。 また、管内では、昭和7年には酒匂川の上流域だけでなく、下流域の尺里川や皆瀬川でも県施工砂防工事を始めています。
【農村匡救事業としての砂防事業】 昭和7年、国は著しく疲弊していた農山村を救済するため、農村匡救事業を起こしました。砂防事業も、この農民救済に適する事業として、急激に事業の拡大が図られました。 管内では、ウナイ沢、源五郎沢、皆瀬川、尺里川、ワリ沢等で堰堤、床固を施工しました。
【県単独事業による県施工砂防工事の始まり】 県は、昭和14年から県単独費による砂防工事を始めました。管内では、昭和16年に尺里川等で砂防施設(床固)に着手しています。 また、昭和17年には、中井町と小田原市の境を流れる中村川水系の椿河原川で砂防堰堤の工事に着手しています。この地域はレキ層が厚く堆積しているため、砂利採取が行われていますが、早くから土砂災害対策のため砂防工事が進められました。
【昭和23年 アイオン台風の災害復旧】 昭和23年9月16日に襲来したアイオン台風は、県西部に甚大な被害をもたらし、酒匂川、狩川、内川筋は大きな被害を受けました。 狩川の支川上総川、唐沢川等では土石流が発生し、狩川等の橋りょうが流出しました。 県は、その年の昭和23年から災害復旧工事に着手しました。 被災前までは、狩川、内川筋では砂防施設を施工していませんでしたが、この災害復旧砂防事業が、狩川、内川筋の砂防事業の始まりとなりました。 (上の写真はアイオン台風災害の災害復旧砂防事業により施工)
【昭和47年 山北災害の災害復旧】 昭和47年7月11日から12日にかけた前線による豪雨により、県西部や丹沢山で災害が発生しました。山北町中川の箒沢地区を中心に、酒匂川上流域で土石流による災害が発生しました。 県は山北災害が発生した昭和47年から災害復旧砂防事業による復旧工事に着手しました。 災害復旧砂防事業や緊急砂防事業により、板小屋沢、唐沢、小塚沢、小吹沢、棚沢、溝沢、向沢で堰堤の施工を行うなど、山北町中川地域について砂防施設の整備を重点的に行いました。 (上の写真は山北災害の災害復旧砂防事業により施工)
【昭和47年 山北災害の災害復旧】 (上の写真は山北災害の緊急砂防事業により施工)
【砂防事業の進捗と新工法の採用】 砂防技術の発達とともに、高度な施工技術や高品質の材料が開発され、堰堤にも新工法を採用するようになりました。 【アーチ式砂防堰堤】 砂防堰堤の大部分は、堰堤の自重によって外力に抵抗させようと設計していますが、アーチ式はアーチ作用により外力を両側面の岩盤で支え抵抗するように設計している円弧状の堰堤です。重力式に比べ経済的な断面が得られますが、設計・施工が難しいうえ、両岸が岩盤で急斜面となっているダムサイトが必要となります。 昭和35年には、皆瀬川の花屋敷堰堤(アーチ式堰堤)が完成しました。
【アーチ式砂防堰堤】 昭和45年には、玄倉川の青崩堰堤(アーチ式堰堤)が完成しました。
【弾性解析法で設計した半重力式砂防堰堤】 両岸および渓床に固定された「梁」とみなして弾性解析法で設計した半重力式の堰堤です。主にダムサイトが狭い場合などに採用しました。
【ケーソン基礎を採用した砂防堰堤】 上流の既設堰堤の基礎部が底抜けしたため、災害復旧事業で既設堰堤の下流側に新たに堰堤を新設し、基礎部の対策としてケーソン基礎を採用しました。
【中空中詰重力式砂防堰堤】 堰堤本体の中詰に、現地で発生した土砂とセメントを調合して中詰材料として利用し、堰堤重量の軽減を図りました。当時、日本初の取り組みでした。
【透過型砂防堰堤(コンクリートスリット型)】 近年になると生態系への配慮、山地から河川、海岸までの安定した土砂の供給などを考え、主に透過型堰堤が採用されるようになりました。 透過型堰堤には、コンクリートスリット型や鋼製スリット型などのタイプがあります。 コンクリートスリット型は、従来の不透過型堰堤の中央部に、幅1mから2m程度の細長い形状の開口部(スリット)を設けたものです。
写真・資料「松田土木事務所100年の歩み(平成11年3月)」より抜粋ほか
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