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更新日:2024年8月1日
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東京都出身の菅野さんは、専門学校を卒業後、都内でスタイリスト、舞台衣装制作に従事。2020年に愛甲郡愛川町へ移住し、衣装制作を手がけるほか、着物リメイク、竹細工などのワークショップを開催し、ライフワークとして農作業に力を注いでいる。
菅野さんの前職は、フリーランスのスタイリスト。専門学校を卒業後、22歳で独立し、30代後半まで都内で働いた。時間に追われながら、都会で働き続けることに限界を感じ始めた頃、ふと脳裏に浮かんだのが“畑仕事をしたいな”という思い。今のライフスタイルのままでは、仕事と農作業の両立が難しいと感じ、スタイリストから衣装制作へと徐々に仕事内容をシフトしていった。「それまで発注する側だった委託先から、私にできる仕事をいただけるようお願いし、少しずつ比重を変えていきました」
40歳で結婚したのを機に、神奈川県大和市へ転居。掛け持ちしていた仕事を制作一本に絞り、念願の農作業を始めた。最初は近所の畑を借りて野菜を栽培し、やがて稲作にもチャレンジするように。「田んぼを借りたのは愛川町。それが愛川との初めてのご縁です。もともと手仕事が好きなこともあって、自分で食べるものを自分で作ることが楽しく、自給自足生活を志向するようになるまで時間はかかりませんでした」
都心を離れ、自然を身近に感じられるようになったとはいえ、大和市は人口密度で横浜市を上回る都市。農村地域へ移住したいと夢見たが、当時は介護で利便性を優先しなければならなかった。大和市と綾瀬市で約3年暮らし、介護が終わったあと、友人がいた山梨県上野原市の西原地区へ転居し、本格的な“田舎暮らし”を体験する。隣接する相模原市の藤野地区は、多数のクリエイターが集まるアートの街だ。菅野さんも、多彩な分野のクリエイターから多くの刺激を得たという。「西原で活動を続けることも考えましたが、愛川町の田んぼに力を入れたいという気持ちが強かったため、愛川町へ転居することにしました」
現在は愛川町の古民家に暮らし、舞台衣装制作のほかに、着物リメイクや竹細工などのワークショップを運営し、自宅の敷地で小さなフェスやマルシェを開催することもある。そのほかにライフワークとして農業にいそしみ、多忙な日々を送っている。
菅野さんが実践する農業は、農薬・化学肥料不使用で不耕起、草や虫を敵としない「自然農」。綾瀬市の畑を介して知った農法だ。「当時は農業に関する知識が浅く、自然農と聞いても、それ何?という状態。詳しい人に教えてもらいながら学ぶうち、その魅力にどんどんハマっていきました。自然の営みを肌で感じながら野菜や米を栽培し、安全で味わい豊かな食材をいただけることに、得がたい充足感を覚えます」
菅野さんが管理する田んぼは、約720坪。その中には、「あいかわ準農家制度」を利用して借りているものもある。以前は機械を使って約3分の1の広さを管理していたのですが、途中から状況が変わり、広くなった田んぼのすべての工程を手作業で行わなければならなくなりました。一人で全部やるのは無理です(笑)。体験会を開いて仲間を募ったら、農業を学びたい方たちがおおぜい集まってくれました。体験会がきっかけで、その後も援農に来てくださる方がいて、大変助けられています」
労力不足解消のため、“耕さない農業”である「稲の多年草化」への挑戦も始めている。「一人農業を効率化するための挑戦、というつもりでしたが、話を聞きつけて賛同する仲間が多数集まってくれています。生物多様性の回復、環境負荷軽減に貢献するためにも、焦らずじっくりと取り組んでいきたいですね」
最近は、移住や農業を通して知り合った仲間から、イベントで着用する衣装の制作を頼まれることもあるという。着物リメイクや竹細工のワークショップも好評を得ている。綿栽培から始める生地作り、藍染めなど、挑戦したいことは山積みだ。「自給自足というのは“食”に限ったことではありません。衣食住、すべての分野で挑戦してみたいことが次々と生まれて、都会の時間感覚とはまた異なる忙しさに追われています」
愛川町で出会った仲間とは、ものづくりや自給自足、フードロス、環境問題など、関心の方向性が近く、会話を通して知識が養われていくのが楽しいと目を輝かせる。「愛川を拠点に、キャンピングカーで全国を旅するのが将来の夢。“何かを成し遂げたい”という野望は特にありません。仲間とともに真の豊かさを追求し続けていきたいです」
自然豊かで水がおいしい! 水道水自体がおいしいのですが、湧水スポットで汲む水のおいしさはまた格別です。中津川は透明度が高く、水域にはホタルの鑑賞スポットが複数あります。自宅の庭にホタルが飛んできたときは、うれしくて思わず写真を撮りました。
無農薬や自然農で野菜や果物を栽培する農園があり、安心安全で新鮮な食材がお手頃価格で手に入ります。おしゃれな古民家カフェで景色を眺めながら寛ぐのもおすすめ。カフェや老舗旅館に併設されるベントスペースなどでは、マルシェやお祭りなどのイベントがしばしば開催されています。工業団地があるため、愛川町の外国人比率は神奈川県随一! 珍しい輸入食材を扱う店や、異国情緒を味わえるレストランに足を運ぶのも楽しいですよ。
移住したいけれど勇気が出ない…という方には、私のように段階を踏んで少しずつ農村地域へ近づいていくのがおすすめです。仕事や家庭の状況に応じながら、無理なくライフスタイルを変えていくことができます。
東京都練馬区出身。衣・食・住の自給自足を目指すアトリエ「八百戸」代表。文化服装学院を卒業後、東京都内でスタイリストとして独立。30代後半までスタイリスト、舞台衣装の制作に従事し、神奈川県大和市、綾瀬市、山梨県上野原市への転居を経て、2020年、愛川町へ移住。
40代
独身
Iターン
このページの所管所属は政策局 自治振興部地域政策課です。