更新日:2024年10月16日

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料理を通じて特産物を知ってもらうのが私の役割

「地域おこし協力隊」として、2016年に清川村へ移住。任期を終えたあとも清川村で暮らし、2019年からはイタリア料理店のオーナーシェフとして食材の仕入れから調理、接客までを一人で手がける。地場産の新鮮な食材を使った料理やデザートに定評がある

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“カジュアルから本格派まで多様なレストラン勤務を経験

中学生の頃から料理が好きだった稲葉さんは、高校卒業後、イタリア料理とフランス料理を学べる専門学校へ進学した。卒業後は東京都内のレストランに勤務し、23歳のときに本場の味を求めてイタリアへ留学。約2年半、現地のレストランで修業を積み、本場の調理方法や食材などを学びながら見識を深めた。レストランで出される本格的な料理だけでなく、イタリアの家庭料理にじかに接することができたのも大きな収穫だったという。「現地で知り合った友達の家で家庭料理をごちそうになる機会が何度かありました。日本でも、和食料理店や割烹などで出される料理と、家庭料理には様々な違いがあります。技を尽くしたプロの料理はもちろんおいしいのですが、肩の凝らない“ほっとする味”を楽しめるのが家庭料理の魅力。それはイタリアも同様です。飾らない家庭の味に触れられたおかげで、イタリア料理に対するイマジネーションが何倍にも広がりました」

畑を探し求めて出会った清川村の「地域おこし協力隊」

帰国後、再び都内で働く間に、「自分で育てた野菜を使ってレストランを開きたい」という昔からの夢が大きく膨らんでいった。29歳のときに店を辞め、レストランなどに野菜を卸す千葉県の農家で農業に従事。当初から決めていた2年の期限が迫り、畑を持てる場所を探しているときに出会ったのが、清川村の「地域おこし協力隊」だ。
「地域おこし協力隊」に応募する前、畑探しは難航していた。「目的が農業への専従ではなく、レストラン経営だったことが、難航の要因になっていたのかもしれません」と当時を振り返る。畑を探していたのは2015年頃。農地の担い手を探す農家は少なくなかったが、貸し手と借り手のマッチングは今ほど進んでおらず、情報収集にも苦労した。「どこかへ移住して信頼関係を構築してからじゃないと難しいのかな」と考えるようになり、東京・有楽町の「ふるさと回帰支援センター」を訪問。「1カ月後に神奈川県の講習があることを知り、参加しました。講習会で配布された膨大な資料の中に見つけた“地域おこし協力隊”の募集チラシが、清川村との出会いです」

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念願だった“自分の店”を清川村で開業

10名の応募者から清川村初の「地域おこし協力隊」に採用され、2016年に移住。当時の村長から「隣の家の畑が空いているから使っていいよ」と言われ、畑はすぐに借りることができた。「地域おこし協力隊」の任期は3年。委嘱された業務内容は、「道の駅清川」内の店舗販売の企画支援や特産品の開発などが中心だった。特産物や生産者を紹介する“かわら版”を作成したり、NPO法人と協働して地元食材を使ったお菓子作りに挑戦したりと地域活性に奔走し、自分で栽培した野菜を道の駅で販売する体験もできた。
現在は、清川村煤ヶ谷のローカルイノベーション施設内にあるイタリア料理店「四季〜Quattro〜」のオーナーシェフを務める。施設の創設が決まったのは、「地域おこし協力隊」の活動を始めて2年半が経った頃。村の活性化を担う多機能拠点として、企業サテライトオフィスや特産物研究室などのほかに飲食店も整備されることになり、オーナー候補として名乗りを上げた。選定を経て、2019年4月にレストランをオープン。「“いつかは自分の店を”とおぼろげに抱いていた構想が、いきなり現実味のある選択肢として目の前に置かれ、最初は志願を迷う気持ちもありました。開店までの約1年は、まさに怒涛の日々。野菜の栽培を継続する余裕はなく、“地元で採れた野菜を使う”という方針に切り替えて準備を進めました」

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メニューの約8割に地場産食材を使用

「四季〜Quattro〜」では、野菜や果物、清川恵水ポークなどの地場産食材をメニューの約8割に使用する。イタリア料理にあまり使われない食材も積極的に取り入れ、清川村ならではのオリジナルイタリアンを追求している。旬の食材を使ったパスタやピザが看板メニューだが、清川茶や地場産のルバーブ、梅などを使用したジェラートも人気商品だ。
メニューの開発には、農家との連携が欠かせない。「地域おこし協力隊」の活動を通じて築いた人脈が、レストランを運営する上でも大きな支えとなっている。日本のそら豆とは品種が異なる“イタリアそら豆”や花付きのズッキーニなど、稲葉さんの要望で栽培・収穫を始めてもらったものも多い。花付きのズッキーニは非常に繊細で、新鮮さが命の食材。「都内では入手困難な花付きズッキーニの料理を提供できるのは、収穫後すぐに調理できる地場産ならではの特権」と笑顔を見せる。「農家さんから“これ使ってみない?”と、知らない野菜を教えていただくこともあります。オリジナルジェラートに使用するルバーブもその一例。清川村のルバーブは、鮮やかな赤い色でとても美しいんですよ。料理を通じて特産物を知っていただくのが私の役割と考え、提案は積極的に取り入れています。ゆくゆくはSNSなども活用しながら情報を発信し、地域活性に貢献していきたいですね。店を訪れるついでに、清川村や宮ヶ瀬などを周遊してくださる方が増えたらうれしいです」

質問コーナー

Q清川村の魅力は?

はじめて訪れたのは5月の晴天の日。抜けるような青空に新緑が映え、吹き抜けていく風がとても心地よかったことを覚えています。あのとき感じた清々しさこそが、清川村の最大の魅力!今もその思いは変わりません。春になると、山肌にぽつんぽつんと野生の桜が咲くなど、人の手が加えられていない自然の美しさ、原風景を満喫できる場所です。

Q趣味はありますか?

食に携わっているため、勉強も兼ねて“食べ歩き”が趣味のような感じにはなっています。…と言っても、最近は外食でパスタを食べることはほとんどなく、好きなのはラーメン!車で30分くらいの本厚木にお気に入りのラーメン屋さんがあります。

Q移住希望者へ伝えたいことは?

その土地に早く馴染むためには、自分から飛び込んでいく勇気が必要です。アンテナを立てて広報誌やポータルサイトなどを見ていれば、参加できそうな催しが必ず見つかります。私は“お祭りの龍づくりをしませんか?”というチラシを見て、「青龍祭」の準備を手伝わせてもらうなどしながら、少しずつ関係性を構築していきました。

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稲葉智美さん

イタリア料理店「四季〜Quattro〜」(清川村煤ヶ谷)のオーナーシェフ。神奈川県川崎市出身。調理師専門学校を卒業後、東京都内のイタリア料理店に就職。2年間のイタリア留学を含め、のべ8年のレストラン勤務を経て、千葉県の農家で農業に従事。2016年、「地域おこし協力隊」として清川村へ移住し、2019年にレストランを開業。

移住時の年代

30代

家族構成

単身

移住スタイル

Iターン

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