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更新日:2024年6月11日
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就職を機に上京し、東京で3年、小田原で6年働いたのち、2022年に生まれ故郷の真鶴町へUターンした松木一平さん。カフェ「ペペコーヒー」を開業して店を経営するのと並行し、真鶴町初の「地域おこし協力隊員」として地域活性化に取り組む。
生まれも育ちも真鶴町。「小さい頃から料理をするのが好きだった」という松木さんが高校卒業後に進んだのは、「食」の道だった。調理師専門学校で知識と技術を学び、京都で300年続く京懐石料理の店へ就職。新宿の店舗へ配属されたのを機に、都心へ転居し、都会暮らしを経験した。松木さんが持つ調理師免許や食品技術管理専門士、バリスタ、利き酒師などの資格は、調理師として働きながら取得したものだ。3年間、調理師として修行を積んだあと、小田原のカフェへ転職。「いつかはレストランのオーナーに、という夢がありました。自分の店を持つためには、料理を作れるだけではダメ。店舗経営のスキルを養いたいと思い、キャリアチェンジしました」。6年に及ぶ勤務期間中、マネージャーを4年間務め、スタッフのマネジメントや育成、店舗運営などのスキルを身につけた。
延べ9年に及ぶ東京、小田原暮らしを経て、真鶴町へUターンしたのは2022年。「地元で小さなレストランを開きたい」という長年の夢を叶えるためだけでなく、シャッター商店街の様相を呈する地元の街を危惧する気持ちが、帰郷を急がせた面もあった。「真鶴を離れている間も、シャッターを降ろしたままの店は増え続けていく一方。…このままだと、真鶴町がなくなってしまうのでは?と、年々危機感を強めていました」
コーヒーに関する知識と技術を生かし、まずはカフェを開業しようと準備を進める一方、できれば並行して従事できる仕事がほしいとインターネットで情報収集を続けた。ある日、目に飛び込んだのが、全国約300自治体に向けて地方創生事業を展開する企業の「真鶴町コミュニティマネージャー募集」の求人。「こんな仕事があるのか、と胸が高鳴りました。地域活性化に貢献したい──漠然と抱いていた想いに道筋が示された気がして、すぐに応募しました」
現在、松木さんは、カフェ店主としての顔、真鶴町初の「地域おこし協力隊員」としての顔、二つをバランスよく融合させながら、地域に根ざした様々な活動を行っている。「地域おこし協力隊員」の任務である雇用の創出、サテライトオフィスや個人事業主の誘致などは、在籍企業の事業と直結する位置づけだ。カフェを訪れるお客様と交わす日常会話や雑談から、本質を突く地域課題が見えてくることも少なくない。リラックスした雰囲気の中でしか得られない貴重なゼロ次情報は、課題抽出・課題解決の重要なヒントとなる。「自分の店をもちたいという幼い頃からの夢と、故郷の活性化に貢献したいという大人になってからの夢。両方を同時に追求できる“理想の働き方”を構築できました」
真鶴町は、漁業と石材業で栄えてきた街だ。港を中心にすり鉢状に広がる低層の家々、民家と民家の間を縫うように続く「背戸道」(路地)、風雨にさらされ味わいを増した石積みの擁壁。映画の舞台になりそうなノスタルジックな雰囲気漂う街並みは、1993年に制定された独自のまちづくり条例「美の基準」によって守られてきたものだ。「古き良き日本の港町の景観、趣のある石造りの建築物など、真鶴にしかない風情、美しさが息づいています。スクラップ&ビルドではなく、守り抜いてきた遺構や原風景を生かした街おこしを目指したいですね」
近年、町の人口減少を緩和する明るい兆しが表れ始めている。真鶴の景観に惹かれて転入する移住者の存在だ。居心地の良いレストランやカフェ、アートギャラリーなども増えてきた。古くから真鶴町に暮らし、往年のにぎわいを知っている人たちの記憶や想い、そして移住者の新しい視点や発想力。両者の融合点を探っていけば、地域創生の最適解にたどり着けるのではないかと、松木さんは考えている。「私自身も、一度離れてみたからこそ、真鶴ならではの魅力、PRすべき点がわかるようになりました。最近は、地元住民と移住者がともに地域活性化に取り組む動きが生まれています。この気運が盛り上がれば、存続が危ぶまれる伝統行事や祭りなども維持再生していけそう、と期待しています」
かつて“真鶴銀座”と呼ばれた西宿中通りと、駅から港へ続くおおみち通りの閉じたシャッターを、10年後までに全店開けること──それが、松木さんの目標だ。座右の銘に掲げる言葉は、二宮尊徳の「積小為大」だという。「二宮尊徳は、600もの村々の財政立て直しや復興指導を成し遂げた農政家です。“小を積めば、則ち大と為る”の構えで一つひとつ成果を積み重ね、街ににぎわいを取り戻したいですね。将来的には、真鶴から海外に向けて“ローカルジャパン”を発信していきたいと考えています」
真鶴岬の海上に見られる岩礁「三ツ石」は、初日の出の際に渋滞ができる名勝です。真鶴半島の先端にある「神奈川県立真鶴半島自然公園」もおすすめ! 地元で「お林」と呼ばれる原生林が広がっており、森林浴を満喫できます。
真鶴には今、次々と新しいコミュニティが生まれています。飲食店やショップで情報収集し、移住者が集まる場所、古くからの先住者が集まる場所、クリエイター、ママ友など、様々なコミュニティを巡ってみると、会話を通じて真鶴の魅力を深掘りできますよ!
私自身の経験をもとに言うなら、“手に職があったこと”は大きな安心感につながったと思います。やりたいこと、実現したいライフスタイルを追求するための基盤として、収入源の確保は大切。収入の柱があれば、何事にも気持ちの余裕をもって取り組めます。
神奈川県足柄下郡真鶴町生まれ。就職を機に上京し、京懐石料理店で調理の腕を磨き、その後は小田原のカフェへ転職。計9年の勤務を経て、真鶴町へUターン。カフェを経営しながら、真鶴町の「地域おこし協力隊員」として地域活性化に取り組む。
20代
独身
Uターン
このページの所管所属は政策局 自治振興部地域政策課です。