県立障害者支援施設等における虐待事案への対応状況について 社会福祉法人かながわ共同会が指定管理者である「愛名やまゆり園」及び社会福祉法人同愛会が運営する事業所における 虐待事案の対応状況について報告する。 (1) 愛名やまゆり園における虐待事案の対応状況 ア 事案の概要 (ア) 令和5年11月に発生した事案の概要 ・ 令和5年11月2日、生活支援員(30代男性)が利用者(20代男性)に対して蹴る、叩く、足をかけて転倒させるといった暴力行為で骨折させた。 ・ 11月10日、支給決定自治体から、身体的虐待にあたると認定され、改善指導が行われ、園は、改善計画書を提出した。 ・ 当該職員は事案発生当日に逮捕され、その後、起訴されている。 (イ) 園と県本庁による点検で発覚した事案 園と県本庁で、他に不適切な支援がないか見守りカメラにより点検した結果、利用者を骨折させた元職員による次の3つの事案を確認した。この3事案について、支給決定自治体と警察に直ちに通報した。その後、支給決定自治体から虐待認定が行われた。また、横浜地方検察庁はこれら3事案を追加で起訴した。 a 令和5年5月19日、トイレから廊下に出た利用者を押さえ込み、トイレに連れ込んだ。 b 令和5年6月26日、床に座っていた利用者を足等で身体を強く押した。また、利用者の身体を足で強く押し続けた。さらに、利用者の臀部を蹴った。 c 令和5年10月28日、立ち上がる利用者をソファーに押し付けるなどした。さらに、居室に戻ろうとした利用者の顎を叩き、その反動でドア枠に右目尻をぶつけ、裂傷を負わせた。 (ウ) 令和5年12月に発生した事案の概要 ・ 令和5年12月16日の昼食時、職員(30代男性。上記とは別職員。)が居室内で食事介助を行っていた際に、利用者(50代男性)の食事摂取が進まないことに苛立ち、威嚇のためにスプーンを振り上げ、振り下ろしたところ、利用者の額に当たり負傷・出血した。 ・ 園は当該職員から報告を受け、ヒアリング調査で事実を確認し、同日、支給決定自治体に、障害者虐待防止法に基づき通報した。 ・ また、当該職員へのヒアリングを進める中で、他利用者のタンスから衣類を出して着ようとした利用者(40代男性)に対し、厳しい命令口調で制止したことを申し出たため、12月27日に支給決定自治体に障害者虐待防止法に基づき、追加で通報した。 ・ 支給決定自治体は、前者については身体的虐待及び心理的虐待、後者については心理的虐待にあたるとそれぞれ判断し、令和6年2月2日に、同園に再発防止策の提出を求めた。 (エ) 公判で証言のあった虐待が疑われる事案 ・ (ア)及び(イ)の事案に係る6月10日の公判で、被告人の元職員が、「自分の部署では半数程度の職員が虐待に関わっている。」などと証言したことを受け、新たに虐待が疑われる事案がないか、公判翌日から園職員へのヒアリング等の調査を実施している。 イ 対応状況 (ア) 県 ・ 障害者総合支援法に基づく監査を実施した結果として、4月2日付で、新規入所者の受け入れを6か月間(令和6年4月3日から同年10月2日)停止することを内容とした行政処分を行った。 ・ また、指定管理基本協定に基づく随時モニタリングを実施した結果として、4月4日付で、虐待が疑われる事案等への対応の徹底、風通しの良い職場づくり、身体拘束ゼロ、利用者の目線に立った取組といった視点で抜本的な見直しをするよう改善勧告を行った。 (イ) 法人・園 ・ 県による行政処分及び改善勧告を踏まえて、改善計画(第2次)を提出した。 ・ この計画では、「形骸化・硬直化した法人運営・管理指導の改善」「虐待が疑われる事案等への対応の徹底」といった柱ごとに、課題を洗い出し、具体的な改善事項を位置づけ、取り組んでいる。 ・ 法人は、第三者委員会を設置し、当該委員により、職員へのヒアリング等が行われており、8月後半を目途に、調査状況が法人に報告される見込みである。 (2) 社会福祉法人同愛会が運営する事業所における虐待事案の対応状況 ア 事案の概要 令和4年11月に横浜市内の事業所で職員に他害行為を行った利用者を制止のために職員が首あたりを圧迫するなどの行為と、令和5年8月に同市内の別の事業所の職員が、利用者に複数回膝蹴りなどの暴力を振るった行為が、横浜市から身体的虐待等と認定された。 イ 対応状況 (ア) 第三者によるアンケート調査委員会の状況 ・ 調査委員会は、現在までに8回開催され、法人職員向けのアンケート結果(約1,150件)の検証、分析が続けられている。 ・ 夏頃を目途に、同法人に提言が行われる見込みである。 (イ) 再発防止に向けた新たな取組の状況 ・ 法人は、今年4月から支援力向上推進室を設置し、同室に勤務する職員が、各事業所を巡回し、ケース検討に加わりながら、支援力の向上に取り組んでいる。