1枚目、表紙 権利擁護支援全国フォーラムin神奈川2025 優生保護法に関する権利擁護支援 2025年1月25日 弁護士関哉直人 2枚目 優生保護法と国賠訴訟 3枚目 優生保護法とは何か 1948年(昭和23年)にできた法律 「優生上の見地から不良な子孫の出生を防止する」ことを目的としていた 1996年(平成8年)に母体保護法に改正されている 4枚目 優生保護法による「被害者(数)」 厚生労働省の把握する統計によれば、優生保護法下での強制不妊手術は約2万5000人、人工妊娠中絶は約5万9000人、合計約8万4000人 本人が特定できる記録が残っている被害者はわずか 5枚目 優生保護法の提案理由 「現行の国民優生法(昭和15年法律第107号)は、戦時国策の一立法として人口増殖政策の基調に立ち、悪質な遺伝確実と認められる疾患の増加を防ぐためにのみ優生手術を認め、一般的には、いやしくも人口増殖の目的に反する手段は一切これを禁止してきたのであるが、現在においては、戦後の変ぼうした社会的環境を考慮して、国民素質の向上策について新しい発足をすることが必要である。 即ち、悪質な素質の遺伝による国民素質の低下を防止すべきは勿論であるが、更に進んで、母性の生命健康の保護という観点から、優生手術の対象範囲を拡張するとともに、あらたに、人工妊娠中絶についても必要な限度においてこれを認める必要がある。 これが、この法律案を提出する理由である。」 6枚目 優生保護法の提案理由 「第三の対策として考えられる事は、産児制限の問題である。然しこれは余程注意せぬと、子供の将来を考えるような比較的優秀の人びとが多く産児制限を行い、低格者や低能者等は育児問題に 関し全然思慮を巡らさず、徒らに本能のままに出産するために、かかる人々の子供は増加し、優秀者は反って出生を減じ、国民は数に於いては大なる変化が現れない場合でも、当然、其の素質の点に於いては優秀者が減少し、低能者が増加して民族の逆淘汰現象が現れて来る事は必至である。 …従って、これが抑制のために先天性遺伝病者の子孫の出生を防止する事が、国民の急速なる増加を防ぐ上から云っても、また民族の逆淘汰を防止する点から云っても必要であると思う。」 7枚目 優生保護法による「対象者」 遺伝性精神病(精神分裂病、そううつ病、てんかん) 遺伝性精神薄弱 顕著な遺伝性精神病質(顕著な性欲異常、顕著な犯罪傾向) 顕著な遺伝性身体疾患 強度な遺伝性奇形 遺伝によらない精神病及び精神薄弱 8枚目 強制的な方法も許されていた 右の場合に許される強制の方法は、手術の実施に際し必要な最小限度であるべきはいうまでもないことであるから、なるべく有形力の行使はつつしむべきであって、それぞれ具体的場合に応じ、 真に必要やむを得ない限度において身体の拘束、麻酔薬施用又は欺罔等の手段を用いることも許される場合があるものと解すべきである。 〔強制優生手術実施の手段について(昭和24年10月11日法務府法意一発第62号)〕 9枚目 国賠訴訟 2017年2月、日弁連が意見書を出す 2018年1月、仙台の佐藤さんが提訴 2018年5月、東京の北さん提訴 (その後、合計39名の原告が提訴、内6人が亡くなる) 2019年4月、一時金支給法成立 2019年5月、仙台地裁で初めての判決。除斥期間により敗訴 2022年2月、大阪高裁で初めての勝訴 2022年3月、北さんも勝訴。 その後、12勝9敗 2024年7月3日、最高裁判決 10枚目 最高裁大法廷判決(2024年7月3日) 11枚目 憲法13条違反 平成8年改正前の優生保護法1条の規定内容等に照らせば、本件規定の立法目的は、専ら、優生上の見地、すなわち、不良な遺伝形質を淘汰し優良な遺伝形質を保存することによって集団としての国民全体の遺伝的素質を向上させるという見地から、特定の障害等を有する者が不良であるという評価を前提に、その者又はその者と一定の親族関係を有する者に不妊手術を受けさせることによって、同じ疾病や障害を有する子孫が出生することを防止することにあると解される。しか しながら、憲法13条は個人の尊厳と人格の尊重を宣言しているところ、本件規定の立法目的は、特定の障害等を有する者が不良であり、そのような者の出生を防止する必要があるとする点において、立法当時の社会状況をいかに勘案したとしても、正当とはいえないものであることが明らかであり、本件規定は、そのような立法目的の下で特定の個人に対して生殖能力の喪失という重大な犠牲を求め る点において、個人の尊厳と人格の尊重の精神に著しく反するものといわざるを得ない。 したがって、本件規定により不妊手術を行うことに正当な理由があるとは認められず、本件規定により不妊手術を受けることを強制することは、憲法13条に反し許されないというべきである。 12枚目 憲法14条1項違反 憲法14条1項は、法の下の平等を定めており、この規定が、事柄の性質に応じた合理的な根拠に基づくものでない限り、法的な差別的取扱いを禁 止する趣旨のものであると解すべきことは、当裁判所の判例とするところである。 しかるところ、本件規定は、@特定の障害等を有する者、A配偶者が特定の障害等を有する者及びB本人又は配偶者の4親等以内の血族関係にある者が特定の障害等を有する者を不妊手術の対象者と定めているが、 上記のとおり、本件規定により不妊手術を行うことに正当な理由があるとは認められないから、上記@からBまでの者を本件規定により行われる不妊手術の対象者と定めてそれ以外の者と区別することは、合理的な根拠に 基づかない差別的取扱いに当たるものといわざるを得ない。 13枚目 立法行為自体が違法 本件規定は、憲法13条及び14条1項に違反するものであったというべきである。そして、以上に述べたところからすれば、本件規定の内容は、国民に憲法上保障されている権利を違法に侵害するものであることが明白であったというべきであるから、本件規定に係る国会議員の立法行為は、国家賠償法1条1項の適用上、違法の評価を受けると解するのが相当である。 14枚目 手術から20年が経ったから権利消滅では著しく正義・公平の理念に反する 本件訴えが除斥期間の経過後に提起されたということの一事をもって、本件請求権が消滅したものとして上告人が第1審原告らに対する損害賠償責任を免れることは、著しく正義・公平の理念に反し、到底容認することができないというべきである。 15枚目 「20年で権利消滅」という主張に対し「信義則違反・権利濫用」と反論が可能 不法行為をめぐる法律関係の速やかな確定を意図する改正前民法724条の趣旨に照らせば、同条後段の規定は、不法行為によって発生した損害賠償請求権の除斥期間を定めたものであり、同請求権は、除斥期間の経過により法律上当然に消滅するものと解するのが相当である。 もっとも、このことから更に進んで、裁判所は当事者の主張がなくても除斥期間の経過により上記請求権が消滅したと判断すべきであり、除斥期間の主張が信義則違反又は権利濫用である旨の主張は主張自体失当であるという平成元年判決の示した法理を維持した場合には、不法行為をめぐる法律関係の速やかな確定という同条の上記趣旨を踏まえても、本件のような事案において、著しく正義・公平の理念に反し、到底容認することのできない結果をもたらすことになりかねない。 同条の上記趣旨に照らして除斥期間の主張が信義則違反又は権利濫用とされる場合は極めて限定されると解されるものの、そのような場合があることを否定することは相当でないというべきである。 そして、このような見地に立って検討すれば、裁判所が除斥期間の経過により上記請求権が消滅したと判断するには当事者の主張がなければならないと解すべきであり、上記請求権が除斥期間の経過により消滅したものとすることが著しく正義・公平の理念に反し、到底容認することができない場合には、裁判所は、除斥期間の主張が信義則に反し又は権利の濫用として許されないと判断することができると解するのが相当である。 これと異なる趣旨をいう平成元年判決その他の当裁判所の判例は、いずれも変更すべきである。 16枚目 除斥期間に関する判例変更の図 平成元年最高裁判決 手術時から20年経過、権利は自動消滅(主張は不要) 信義則違反・権利濫用バツ 判例変更 今回の最高裁判決 手術時から20年経過、信義則違反・権利濫用、除斥期間経過の主張 17枚目 国が「20年で権利消滅」と主張するのは「信義則違反・権利濫用」で許されない 本件の事実関係の下において本件請求権が除斥期間の経過により消滅したものとすることは、著しく正義・公平の理念に反し、到底容認することができない。 したがって、第1審原告らの本件請求権の行使に対して上告人が除斥期間の主張をすることは、信義則に反し、権利の濫用として許されないというべきである。 18枚目 判決後の動き 19枚目 岸田総理との面会(2024年7月17日) 「旧優生保護法は憲法違反であり、同法を執行してきた立場として、その執行の在り方も含め、政府の責任は極めて重大なものがあり、心から申し訳なく思っており、政府を代表して謝罪申し上げます。 優生手術等は、個人の尊厳を蹂躙(じゅうりん)する、あってはならない人権侵害であり、皆様方が心身に受けられた多大な苦痛と、長い間の御苦労に思いを致しますと、その解決は先送りできない課題です。 …皆様方お一人お一人に、深く深く謝罪申し上げます。」 「さらに、全ての国民が疾病や障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重しながら共生する社会の実現に向けて、政府として、最大限の努力を尽くしてまいります。 違憲とされる国家の行為が約半世紀もの長きにわたって合憲とされてきたという重い事実を踏まえれば、二度と同じ過ちを繰り返さないための検証に加えて、優生思想及び障害者に対する偏見差別の根絶に向けた恒久的な対策が不可欠です。 国会においても様々な議論が行われていくものと承知しておりますが、政府として、国会とも相談しながら、御要求を踏まえた、より客観的な検証を実施すべく、その在り方を検討してまいります。 優生思想及び障害者に対する偏見差別の根絶に向けては、これまでの取組を点検し、教育・啓発等を含めて取組を強化するため、全府省庁による新たな体制を構築してまいりたいと思います。」 20枚目 障害者に対する偏見や差別のない共生社会の実現に向けた対策推進本部の設置(2024年7月26日) 1、旧優生保護法に係る令和6年7月3日の最高裁判所判決を受け、優生思想及び障害者に対する偏見や差別の根絶に向け、これまでの取組を点検し、教育・啓発等を含めた取組を強化するため、内閣に、障害者に対する偏見や差別のない共生社会の実現に向けた対策推進本部(以下「本部」という。)を設置する。 2、本部の構成員は、次のとおりとする。ただし、本部長は、必要があると認めるときは、関係者の出席を求めることができる。 本部長、内閣総理大臣 副本部長内閣官房長官、内閣府特命担当大臣(こども政策少子化対策若者活躍男女共同参画共生・共助) 本部員、他の全ての国務大臣 21枚目 継続訴訟の和解等のための合意書締結(2024年9月13日) 1、謝罪 国は、国家賠償法上の国の損害賠償責任を認めた最高裁令和6年7月3日大法廷判決を大変重く受け止め、旧優生保護法が立法当初から憲法違反であり、旧優生保護法を執行していた立場として、その執行の在り方を含め、政府の責任は極めて重大なものであることを自覚するとともに、特定の疾病や障害を有すること等を理由に、個人の尊厳を蹂躙(じゅうりん)する、優生手術等というあってはならない人権侵害を行い、原告の皆様をはじめとする被害者の方々の心身に長年にわたり多大な苦痛と苦難を与えてきたことを真摯に反省し、原告の皆様をはじめとする被害者の方々に対し、心より深く謝罪申し上げる。 22枚目 基本合意書締結(2024年9月30日) 1、全ての被害者に対する補償の実現 @相談窓口の整備、合理的配慮及び情報保障の徹底 A広報及び周知の徹底 B個別通知を含め、被害者に対し確実に補償を届けるための施策の検討及び実施等 2、恒久対策 @謝罪広告など優生保護法被害者の被害の回復に向けた施策の実施 A第三者機関による真相究明、再発防止のための調査 検証の実施 B教育、啓発等の偏見差別の根絶に向けた施策の推進 3、継続的 定期的な協議の場の設置 23枚目 補償法(2024年10月8日成立、2025年1月17日施行) 2025年1月17日施行。同時に、無料で弁護士のサポートを受けられる「サポート弁護士制度」もできました 1、補償金 (1)不妊手術(本人、遺族)1500万円 (2)配偶者(本人、遺族)500万円 2、一時金 (1)不妊手術(本人)320万円 (2)人工妊娠中絶(本人)200万円 3、あらたな検証体制 24枚目 障害者に対する偏見や差別のない共生社会の実現に向けた行動計画(2024年12月27日) 1、子育て等の希望する生活の実現に向けた支援の取組の推進 2、公務員の意識改革に向けた取組の強化 3、ユニバーサルデザイン2020 行動計画で提唱された「心のバリアフリー」の取組の強化 4、障害当事者からの意見を踏まえた今後に向けた更なる検討 25枚目 やらなければいけないこと 26枚目 @教育での差別解消 「上告人は、上記のとおり憲法13条及び14条1項に違反する本件規定に基づいて、昭和23年から平成8年までの約48年もの長期間にわたり、国家の政策として、正当な理由に基づかずに特定の障害等を有する者等を差別してこれらの者に重大な犠牲を求める施策を実施してきたものである。」 27枚目 @教育での差別解消 「国民優生とは、優生学にもとづいて国民の質の向上に努めることである」 「そのために、劣悪な遺伝素質をもっている人びとに対しては、できるかぎり受胎調節をすすめ、必要な場合は優生保護法により、受胎・出産を制限することができる。 また、国民優生思想の普及により、人びとがすすんで国民優生政策に協力し、劣悪な遺伝病を防ぐことがのぞましい」 「優生結婚とは、遺伝学的にみて素質の健全なものどうしの結婚をすすめ、精神分裂病・先天性聾などのような遺伝性疾患の素質が結婚によってあらわれるのを防ぐことである。」 〔昭和45年4月1日高等学校保健体育の教科書〕 28枚目 昭和46年「改訂版標準高等保健体育」より 家庭の社会的・経済的条件や生活環境、母体の健康状態によって、適当な家族数になるように出産計画を立てることを家族計画という。 しかし、計画通りに出産にいたらないいろいろな障害がある。 これが、死産・流産などである。 このうち、人工妊娠中絶は、異常妊娠や母体の健康に問題が生じた場合に行われるが、この手術は母体の健康をそこなうおそれがあったり、ときには生命を失うこともまれにある。 国民の健康度を高めるためには、優生結婚をし、悪い遺伝性疾患の出現を防ぐことと、出産時の障害による精神薄弱児などの疾病異常の出現を防ぐような配慮が必要である。 わが国では、1948年に優生保護法が制定され、悪質な遺伝性疾患に対して、優生手術や妊娠中絶を認めることになった。 しかし、国民ひとりひとりが真にわが国民の将来を考えるとき、消極的に悪い素質や遺伝病を出現させないような配慮にとどまらず、結婚に対して正しい認識をもち、優生的見地から国民の健康度向上に責任をもつような態度をもつことが望ましい。 29枚目 @教育での差別解消 旧優生保護法等の検証を踏まえた人権教育の教材を作成し、学校教育において活用を図るとともに、同教材を講演会等の人権啓発活動にも活用する。 また、今後の教育課程における取扱いについて検討する。 (障害者に対する偏見や差別のない共生社会の実現に向けた行動計画(2024年12月27日)より) 30枚目 @教育での差別解消 教育で奪われた尊厳を教育で取り戻す インクルーシブ教育の実現に向けて 31枚目 A子育てに関する支援 「なお、本件規定中の優生保護法3条1項1号から3号までの規定は、本人の同意を不妊手術実施の要件としている。 しかし、同規定は、本件規定中のその余の規定と同様に、専ら優生上の見地から特定の個人に重大な犠牲を払わせようとするものであり、そのような規定により行われる不妊手術について本人に同意を求めるということ自体が、個人の尊厳と人格の尊重の精神に反し許されないのであって、これに応じてされた同意があることをもって当該不妊手術が強制にわたらないということはできない。 加えて、優生上の見地から行われる不妊手術を本人が自ら希望することは通常考えられないが、周囲からの圧力等によって本人がその真意に反して不妊手術に同意せざるを得ない事態も容易に想定されるところ、同法には本人の同意がその自由な意思に基づくものであることを担保する規定が置かれていなかったことにも鑑みれば、本件規定中の同法3条1項1号から3号までの規定により本人の同意を得て行われる不妊手術についても、これを受けさせることは、その実質において、不妊手術を受けることを強制するものであることに変わりはないというべきである。」 32枚目 A子育てに関する支援 北海道南部の江差町にあるグループホームが、20年以上前から、知的障害のある入居者が施設内で結婚や同居を望んだ際に不妊処置を提案し、これまでに8組16人が応じていたことが分かりました。 北海道などは調査を始め、事実関係の確認を進めることにしています。 不妊処置を提案していたのは、江差町にある社会福祉法人「あすなろ福祉会」が運営するグループホームです。 「あすなろ福祉会」によりますと、20年以上前から、知的障害のある入居者が施設内で結婚や同居を望んだ際、不妊処置を提案し、これまでに8組16人が応じたということです。 (2022年12月19日NHK) 33枚目 A子育てに関する支援 (北さんの総理面会でのコメント) 手術して67年間、本当につらかったです。判決が人生の折り返し地点になると思いましたが、判決を聞いた後も、まだ、心が晴れません。 国としてしっかり責任をとってほしいです。 国として責任を取るというのは、国として、この問題に向き合ってもらうことだと思います。 真剣に向き合って、この問題について考えてもらいたいです。 まだ声を上げていない人、無念の思いで逝きたくないという人も多いんじゃないかと思います。 その人たちにも謝って欲しいという思いもあります。 それと、北海道の江差町の件のような、子どもを産む産まないを自分で決められないようなことは起きてほしくないです。 二度と私たちと同じようにつらい思いをする人がなくなるような、法律を作ってもらいたいです。 34枚目 B被害者の声を補償につなげる 補償法はできた サポート弁護士制度もできた まずは都道府県の相談窓口につなげる →被害を受けた当事者はいないか 周囲の支援により権利回復につなげられないか 35枚目 C今の常識を疑う 「憲法13条は個人の尊厳と人格の尊重を宣言しているところ、本件規定の立法目的は、特定の障害等を有する者が不良であり、そのような者の出生を防止する必要があるとする点において、立法当時の社会状況をいかに勘案したとしても、正当とはいえないものであることが明らかであり、本件規定は、そのような立法目的の下で特定の個人に対して生殖能力の喪失という重大な犠牲を求める点において、個人の尊厳と人格の尊重の精神に著しく反するものといわざるを得ない。」 「法律は、国権の最高機関であって国の唯一の立法機関である国会が制定するものであるから、法律の規定は憲法に適合しているとの推測を強く国民に与える上、本件規定により行われる不妊手術の主たる対象者が特定の障害等を有する者でり、その多くが権利行使について種々の制約のある立場にあったと考えられることからすれば、本件規定が削除されていない時期において、本件規定に基づいて不妊手術が行われたことにより損害を受けた者に、本件規定が憲法の規定に違反すると主張して上告人に対する国家賠償法1条1項に基づく損害賠償請求権を行使することを期待するのは、極めて困難であったというべきである。」