1 「愛名やまゆり園虐待事案に関する第三者委員会中間報告書」を受けての今後の対応について 社会福祉法人かながわ共同会(以下「共同会」という。)が設置した第三者委員会が、「愛名やまゆり園虐待事案に関する第三者委員会中間報告書」(以下「中間報告書」という。)を公表し、過去に行われていた虐待が疑われる事案が明らかにされるとともに、共同会及び県に対する改善提案がされたことから、対応状況について報告する。 (1) 経緯 令和5年11月 元職員による利用者の骨折事案が発生(同月、虐待認定)        共同会が県に改善計画(第1次)を提出     12月 別の職員による利用者の額をスプーンで叩く事案が発生(翌年2月、虐待認定) 令和6年1月 共同会が第三者委員会を設置     4月 県が共同会に対して行政処分(新規入所者の受入れ停止6か月間)と改善勧告を実施        共同会が県に改善計画(第2次)を提出     6月 元職員が、公判で「自分の部署では半数程度の職員が虐待に関わっている。」などと証言     9月 第三者委員会が共同会に中間報告書を提出(30日)        共同会が県に報告書を提出(30日)     10月 第三者委員会が県へ虐待疑い事案38件を情報提供(4日)(虐待疑い職員は9名、虐待行為を受けた利用者は11名)        県が関係自治体へ虐待通報(7・8日)        第三者委員会が記者会見を開き、中間報告書を公表(10日)        共同会・県が家族及び利用者代表に報告(19日)        愛名やまゆり園・県が利用者自治会で報告(30日) (2) 第三者委員会による中間報告書の要旨    第三者委員会がとりまとめた中間報告書の要旨は次のとおり。   ア 課題・問題点   (令和5年に発生した元職員による虐待行為の原因)    ・ 本人の専門的支援力のなさに加え、怒りの感情をコントロールできない気質などに起因して発生した。    ・ 一部の先輩職員ら(全員が異動済み)の虐待行為が横行し、元職員を含む一部職員が模倣させられる形で虐待行為に加担した。    ・ 管理監督する職員らは、支援の実態等を何ら把握せず漫然と問題を放置し、結果として防ぎえた本件行為を防ぐことができなかった。   (愛名やまゆり園における他の虐待行為の存在)    ・ 平成26、27年頃から令和4年度までの間に、一部職員らによる利用者に対する身体的、心理的並びに性的虐待を含む虐待行為が常態化していた。    ・ 過去の虐待行為の一部は、寮を管理監督する職員に対して報告されていたが、園として虐待行為に対する適切な対応はされていない。    ・ 法人幹部はそれらの事実について全く了知していなかった。   (愛名やまゆり園及び共同会の支援上並びに組織運営上の問題性)    ・ 支援方法は、勤務歴の長い先輩職員の手法や方針が優先されがちで、支援の方針決定や改善施策は園任せであった。    ・ 現場職員の欠員が恒常化している。    ・ 職員によれば、現場は、「綱渡りの支援」の状況が続いている。    ・ 園管理職も、問題が発生しても責任を取るべき者が存在しない。    ・ 職員には「上に言っても無駄」という認識が蔓延している。    ・ 法人幹部の専門性は乏しく、現場の実態や問題点を把握する仕組みはなく職員が訴える現場の問題は放置されたままとなる。    ・ 職場に不満を持つ退職者が発生して経験を有する職員は減り、さらなる欠員が増えるという悪循環が発生している。    ・ 共同会には、根本的な組織の機能不全が認められると言わざるを得ず、抜本的なガバナンスの改善・再構築が不可欠である。   (愛名やまゆり園の設置主体たる神奈川県の責任)    ・ 県は、愛名やまゆり園を設置する主体として責任は免れない。    ・ 愛名やまゆり園の個室化を達成せず放置している。    ・ 過去、県直営施設内で行われていた利用者への虐待、居室施錠、身体拘束等の事実に対して、その原因究明と抜本的な改善を自ら行ったとは言いがたく、県直営から指定管理に移行した際に引き継がれた現場での「不適切な支援」を放置した。    ・ 強度行動障害対策事業の総括をすることなく、事業を終了した。    ・ 県の無反省と責任回避の姿勢が現在の指定管理施設に悪影響を与えていないのかどうか、更なる検証が必要である。  イ 結語と改善提案 (ア) 結語 ・ 個々の利用者に対して適切な支援が実施できるか、疑義があり、法人内の意思疎通ができていないので、改善するのは容易ではない。 ・ 虐待事例に真摯に向き合って来なかった。事実関係は不明、事実誤認だと主張し、声をあげようとする職員に対しては懲戒処分の威嚇まで行い、法人全体の意思疎通をはぐくむ努力をしなかった。 ・ 法人全体に隠蔽体質が蔓延しているというべきである。 (イ) 改善提案    (現状の職員数に見合った利用者数にしていく)     ・ 新規入所・短期入所の停止     ・ 利用者の他施設への移動促進     ・ 一部寮の閉鎖による欠員対策    (大規模施設支援の限界を乗り越え、職員のやる気を喚起するため、利用者の地域移行を推進する)     ・ 将来的には、短期利用中心のセンター機能と、グループホームのバックアップ機関とする方向を志向すべき。    (法人の規模の縮小と法人運営の抜本的改革)     ・ 抜本的な対策として法人規模の縮小は視野に入れるべき。     ・ 人事制度の改革は専門機関の支援を借りてでも行うべき。     ・ 県は、職員や利用者及び家族の不安を解消するためにも、早急に地方独立行政法人化の具体的なシナリオを公表すべき。    (相部屋の解消)     ・ 4人部屋を早急に解消すべき。    (看護課との連携の改善)     ・ 外部医師の協力や調整が不可欠である。    (利用者も支援者も生きがいをもてる良い支援の工夫を)     ・ 虐待防止委員会等が機能していない。「良い支援の検討委員会」にする意識が必要である。    (研修の改革と法人全体の情報開示の必要性)     ・ 現場に精通した外部有識者による研修が必要である。その前提に、現場の実情の情報開示が必須。また、法人の状況を職員に伝える必要がある。 (ウ) まとめ    上記に例示した改善策を実現することは容易なことではない。    しかし、共同会が真に改革を企図し、全ての利用者を守り、また利用者のためにあろうとする職員達を守っていくという意思があるのであれば、実現に向けて努力しなければならない課題であると考える。 (3) 今後の対応    県では、虐待通報した38事案の調査を進めるとともに、第三者を含めた支援改善チームを庁内に立ち上げて、中間報告書で指摘された問題点を検証し、改善提案に対する改善策を検討する。 <別添参考資料> 参考資料 「社会福祉法人かながわ共同会愛名やまゆり園虐待事案に関する第三者委員会 中間報告書」