(18ページ) 3 障がい者  障がいのある人は、日常生活や社会生活を営むうえで、様々なバリアに直面しています。建物の入り口に段差や階段があるなどの目に見える物理的なバリアのみならず、障がい者への差別や偏見などの目に見えないバリアも、障がい者の活動や社会参画を制限する社会的障壁になっています。  こうした社会的障壁を取り除き、障がいを理由とする差別の解消の一層の推進を図るため、令和3年(2021年)6月には、事業者による合理的な配慮の提供の義務化などを内容として、「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」が改正されています。  本県においては、平成28年(2016年)7月、県立の障害者支援施設である津久井やまゆり園で大変痛ましい事件が発生しました。この事件により、改めて、障がい者への差別や偏見の解消に向けた取組みの重要性が認識されることとなりました。  そこで、県では、「ともに生きる社会かながわ憲章」の理念を実現するため、障がい者を取り巻く社会的障壁の排除や障がい者の生活を支えるサービスの充実とともに、障がいに対する理解促進に取り組みます。  また、障がい者本人を中心に、本人の望みや願いを第一に考え、本人の可能性を最大限に引き出す「当事者目線の障がい福祉」の実現をめざします。 (1)主な取組みの方向 【人権尊重の社会づくりに向けた環境整備】 ア ともに生きる社会を支える人づくり  ともに生きる社会の実現に向けて、個々の障がい特性等に配慮し、障がい者に寄り添った支援を提供できる福祉、保健、医療分野の人材の確保と育成などに取り組みます。 イ 社会参加への環境づくり  障がい者の活動を制約する社会的障壁を取り除く「社会モデル」の実現のため、障がい者に配慮したまちづくり、障がい特性に応じた意思疎通支援、防災・防犯対策等の推進、行政機関等における配慮の充実等により、ハード、ソフト両面にわたるバリアフリー化に取り組みます。 ウ 障がい者の地域生活を支える福祉・医療サービスの充実  誰もが住み慣れた地域で安心して暮らすことができるよう、在宅サービスの充実や、重度障がい者も受入れが可能なグループホーム等の整備を図ります。また、医療的ケア児(※)等に対する支援体制や精神障がいにも対応した地域包括ケアシステムの構築に向けた、福祉、医療、教育等の各分野の連携促進に努めます。 ※ 日常生活及び社会生活を営むため、恒常的に人工呼吸器による呼吸管理、喀痰吸引その他の医療行為(医療的ケア)を受けることが不可欠である児童のこと。 (19ページ) エ 意思決定支援の推進と地域生活移行の支援  県は、津久井やまゆり園を再生する中で、どんなに重い障がいがあっても当事者本人には必ず意思があるという前提に立ち、自ら意思を決定することに困難を抱える障がい者の意思決定を支援しています。  障害者の権利に関する条約にも掲げられている、障がい者の自己決定を尊重するため、この意思決定支援の考え方を、県内の障害福祉サービス事業所等に普及させていきます。  また、意思決定を進める中で、地域生活移行の希望が示された場合は、安心して地域生活を過ごすことができるよう、相談体制の構築を図るとともに、専門的支援や社会資源の整備に取り組みます。 【教育・啓発等の推進】 オ 「ともに生きる社会かながわ憲章」の普及啓発の推進  津久井やまゆり園事件のような事件が繰り返されないよう、ともに生きる社会の実現をめざし、憲章の普及啓発に取り組むとともに、障がい及び障がい者に対する県民の理解を促進し、障がいを理由とする差別の解消に取り組みます。 カ インクルーシブ教育の推進  支援教育の理念のもと、共生社会の実現に向けて、すべての子どもができるだけ同じ場でともに学びともに育つための環境づくりをめざして、小・中学校から高校まで、連続性のある取組みとなるよう、インクルーシブ教育を推進します。 【当事者支援等の推進】 キ 障がい者の権利擁護の推進  障がい者等の自己決定が尊重され、障がい者が自らの考えと判断により、地域社会の中で主体的に生き、自己実現を図ることができるよう、障がい者虐待防止の取組みや、障がい者差別に関する相談窓口の設置、成年後見制度の利用促進等により、障がい者の権利擁護を進めます。 ク 発達障がい児者に対する総合的な支援  自閉症等の発達障がいを有する障がい児者に対する総合的な支援を行うため、「発達障害支援センター」等において、総合的な相談・支援を実施します。 ケ 雇用・就業、経済的自立の支援  働くことは自立した生活を支える基本のひとつでもあり、一人ひとりの可能性を伸ばすことや生きがいにもつながる活動であることから、障がい者が抱えている困難にも留意しつつ、障がい者がライフステージに応じて、その人らしい働き方を選択できるよう、福祉的就労とともに、一般就労への支援の充実に取り組みます。 (20ページ) コ 文化芸術・スポーツにおける取組みの推進  障がい者の自立と社会参加の促進のため、文化芸術活動やスポーツ等を通じて、障がい者が地域社会における様々な活動に参加するための環境の整備や必要な支援を行います。 (2)主な関係法令 社会福祉法 障害者基本法 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律 身体障害者福祉法 知的障害者福祉法、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律 障害者の雇用の促進等に関する法律 障害者虐待の防止、障害者の養護者に対する支援等に関する法律 障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律 医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律 障害者による文化芸術活動の推進に関する法律 県みんなのバリアフリー街づくり条例  (3)県の主な関係審議会等 県障害者施策審議会 県児童福祉審議会 県社会福祉審議会 県精神保健福祉審議会 県障害者自立支援協議会 県バリアフリー街づくり推進県民会議