渉外知事会 平成18年度「基地対策に関する要望書」で求めた 重点要望に対する国からの説明(回答) ○防衛施設庁(防衛庁) 1 基地の整理、縮小及び早期返還の促進 当庁としては、従来から米軍の運用上の所要及び地元の御要望等を踏まえつつ、施設・ 区域の整理・統合・縮小に向け、鋭意努力してきているところである。 具体には、沖縄において、嘉手納弾薬庫の一部約58ヘクタールが本年10月末に返還 になっている。 また、SACO最終報告に基づく事案としては、7月末に読谷補助飛行場の一部約13 8ヘクタール及び瀬名波通信施設の一部61ヘクタールが返還されるなど、施設区域の返 還等に最大限努力している。 本土においても、上瀬谷通信施設等6施設・区域の返還等に関する方針が日米間で合意 され、昨年12月に、小柴貯油施設の陸地部分全域等が返還されたところであり、今後も、 施設・区域の返還に関しては、地元の御要望を踏まえ、米側に早期の返還を求めていく。 今般の在日米軍再編においては、在日米軍の抑止力の維持と地元負担の軽減の観点から 本年5月に取りまとめた「再編実施のための日米のロードマップ」に、普天間飛行場を含 む嘉手納飛行場等の施設や相模総合補給廠の一部等の返還が示されており、現在その実現 に向け努力しているところであり、今後とも引き続き、米軍の運用上の所要と地元の御要 望等を踏まえつつ、施設・区域の整理・統合・縮小に向け努力していく。 2 日米地協定の見直し @環境法令等国内法の遵守及び環境対策の徹底 在日米軍は、日米の関連法令のうち、より厳しい基準を選択するという基本的な考え方 のもとに作成した日本環境管理基準(JEGS)に従って環境保護及び安全への取組を実施し ており、政府としては、今後も在日米軍施設に関し、環境問題について日米合同委員会の 下に設けられている環境分科委員会等を通じて適切に対処することとしており、当庁とし てもかかる取組に十分協力していく。 また、航空機等の騒音に係る抜本的な対策を講ずることについては、今後とも、米側に 対し、機会あるごとに騒音の軽減等に努めるよう申し入れていく。 A事件・事故に係る安全対策等の確立 平素から米側に対し、隊員の教育や綱紀粛正の徹底等を図るとともにその防止について 実効ある処置を講じるよう様々なレベルから申入れを行うとともに、現地において事件・ 事故防止のための様々な方策が講じられるよう努めているところである。 万が一、事件・事故等が発生した際には、平成9年3月の日米合同委員会で合意された 「在日米軍に係る事件・事故発生時における通報手続」等に従い、関係地方公共団体等に 速やかに通報するとともに、米側に対し、原因究明・再発防止及び安全管理の徹底等につ いて、強く申入れを行っているところである。 B地元意向を尊重する制度の構築 地方公共団体の代表者の参加する特別委員会の設置については、日米合同委員会の所管 省庁である外務省に伝える。 また、関係地方公共団体等の代表者との協議会については、今後とも、必要に応じ、設 置・活用し、地方公共団体の意向を踏まえた基地行政に努力していく。 3 国による財政的措置等の新設・拡充 @基地交付金等の増額等 基地交付金等は総務省の所管であるが、防衛施設の安定的な使用の確保の観点から、適 切な機会をとらえ、総務省に伝えていく。 また、平成19年度予算については、本年7月21日に閣議了解された「平成19年度 予算の概算要求に当たっての基本的な方針」において、「平成19 年度予算は、「経済財 政運営と構造改革に関する基本方針2006」(平成18年7月7日閣議決定)で示された 今後5年間の新たな改革に向けた出発点となる重要な予算であり、これまでの財政健全化 の努力を今後とも継続していく。」としている。 当庁としては、事業の合理化・効率化を図り、具体的要望を障害の実態を踏まえ、障害 の防止、軽減及び緩和のため、必要な対策を今後も実施する考えであり、現在19年度予 算の確保に向けて、財政当局と厳しい折衝を行っている。 なお、財政健全化に向け、歳出削減の一つとして、基地周辺対策の抜本的見直しが決定 されるなど、例年以上に厳しい予算編成になると考えられるところであるが、地元の御要 望を踏まえつつ、所要額の確保に向け、最大限の努力をしていく。 A地域振興策の新設・拡充 基地の存在に起因する御負担については、従来より、障害の防止・軽減及び民生安定等、 様々な基地周辺対策等を実施してきているが、今般の米軍再編の実施により新たな負担を 伴う地方公共団体については、施設整備に限らず、ソフト事業にも使え、再編の進捗状況 に応じ支給される交付金を検討中である。 いずれにしても地元への御説明ができる段階になれば、御説明する。 B基地跡地の返還に係る支援 返還後の国有地の利用に関し、当庁が協力できることには限界があるが、今後とも皆様 方の御要望を関係機関に伝えるなど、当庁として行い得ることについては最大限努力して いく。 C駐留軍等労働者対策及び離職者対策の拡充・強化 駐留軍等労働者の労働条件等については、米側と調整しながら、逐次その改善を図って きている。仮に、在日米軍基地の閉鎖等に伴い、多数の駐留軍等労働者が離職を余儀なく される場合には、駐留軍関係離職者等臨時措置法により対処する。 ○外務省 1 基地の整理、縮小及び早期返還の促進 日米地位協定第2条第3項において、「合衆国軍隊が使用する施設及び区域は、この協 定の目的のため必要でなくなつたときは、いつでも、日本国に返還しなければならない。 合衆国は、施設及び区域の必要性を前記の返還を目的としてたえず検討することに同意す る。」とされている。 遅れているとはいえ、かなりの施設・区域が返還されてきている。さらに在日米軍の再 編に関しては、本年5月に取りまとめが行われており、現在、その合意事項を速やかに実 施していくことに努力をしているところである。 こうした中で、随時、施設・区域の返還について、日米合同委員会等の枠組みを通じて 米側と協議をしている。 日米安保条約の円滑な運用と、基地を受け入れてもらっている自治体における実情、問 題等を踏まえながら、適切に対処していく。 2 日米地協定の見直し 日米地位協定の見直しについては、様々な自治体の方々から強い要望があり、地位協定 を巡ってときおり重要な問題が起きているが、政府としては、地位協定の改定に直接取り 組むよりは、運用の改善によって対応する方が合理的であると判断している。 実際に問題が生じた際には、これまでも合同委員会を通じて米側と協議を行い、地位協 定を変えることなく、運用の改善でかなりの問題に対処してきていると考えている。 二つ例を挙げると、まず、刑事裁判手続については、平成7年の刑事裁判手続に関する 日米合同委員会合意によって、凶悪犯罪を犯した米軍人等の身柄の起訴前の日本側への引 渡しに道を開いた。このような扱いが実現しているのは、米軍が駐留している国の中で、 日本だけである。 つぎに環境問題についても、平成12年9月の「2+2」において、「環境原則に関す る共同発表」が行われ、この中で、環境の保護のために、在日米軍は、環境に関する日本 の国内法上の基準と米国の国内法上の基準のうち、より厳格なものを選択するとの基本的 な考え方に従って対応することが確認されている。 @環境法令等国内法の遵守及び環境対策の徹底 駐留軍は接受国の法令を遵守する義務がある。これは米軍においても同じである。従っ て、米軍は環境法令を含む我が国の法令を遵守する義務を負っている。 また、米軍は施設・区域の使用にあたって公共の安全に考慮を払うことも日米地協定上 取り決められている。 在日米軍は、国防総省の基準に沿って、我が国の国内法に基づく基準と米国の国内法の 基準のうち、より厳しい基準を選択することになっている。 合同委員会の下に設置された環境分科委員会での協議を通じて、米軍が日本環境管理基 準を作成しており、この基準に基づいて米軍が行動するということになっている。 A事件・事故に係る安全対策等の確立 米側に対し、恒常的に綱紀粛正・再発防止の徹底の取組を求めている。 事件・事故の防止については、まずは米側の努力が必要であり、米側も、米軍なりの努 力をしてきている。例えば、若い兵士に対し、外出時間を制限する制度が沖縄では広範に 採用されているが、最近、三沢でも取り入れられたと聞いている。 また、事件・事故が起きたときの対応に遺漏なきを期するために、日本政府と米側の関 係者の間で事件・事故ワーキンググループをつくって、日ごろから連絡調整を行っている。 事件・事故が発生した場合の連絡については、別途、日米合同委員会合意があり、在日 米軍に関わる事件・事故発生時の通報手続があり、それにしたがって、迅速な通報が行わ れるという仕組みになっている。 B地元意向を尊重する制度の構築 日米合同委員会等の議論の中で地元の意見を反映させて欲しい、ということであるが、 制度上、日米合同委員会は政府間の組織であり、合同委員会に直接、自治体の方が参加す ることは難しい。 しかし政府としては、日米安保条約を円滑に運用していくためには、自治体の理解と協 力が必要だということは承知しており、折に触れ、様々な機会に自治体の方々と意見交換 等を通じて意思の疎通を図っていきたい。 3 国による財政的措置等の新設・拡充 外務省で直接予算を持っているわけではないが、予算を所掌している省庁に働きかけて 行きたい。 ○環境省 2 日米地協定の見直し @環境法令等国内法の遵守及び環境対策の徹底 在日米軍の環境対策についは、在日米軍は日米の関連法令のうちより厳しい基準を選択 するとの基本的考えの下で日本環境管理基準(JEGS)を作成し、これに基づく厳格な 環境管理行動を米側自らがとっていると承知している。 在日米軍に係る環境問題については、日米合同委員会の下に設置されている環境分科委 員会の枠組みを通じて、協議等行っている。今後とも何か問題がある場合には、関係省庁 連携しながら、在日米軍にかかる環境問題の解決に努めてまいりたい。 ○文部科学省 2 日米地協定の見直し A事件・事故に係る安全対策等の確立 平成14年4月に防災基本計画に「原子力艦の原子力災害」が追加されたことを受けて、 文部科学省では平成17年7月に「原子力艦放射能調査指針大綱」を改訂し、原子力艦に 係る緊急時環境放射線モニタリングを定めてきたところである。 また、地方公共団体が実施する原子力艦の防災訓練には、文部科学省の放射能調査班長 が毎回参加してきているところである。 今後とも、原子力艦に係る緊急時環境放射線モニタリングに関して、関係省庁、地方自 治体等と連携し、一層体制が確保されるよう努力していきたい。 ○国土交通省 2 日米地協定の見直し A事件・事故に係る安全対策等の確立 米軍による管制業務は、我が国と同様、国際民間航空条約に準拠しているものであり、 民間航空の安全な運航の確保について問題はないと考えているが、民間機運航の効率性の 向上を図り、今後予想される民間航空交通の増大に対処するため、日本側が一元的に管制 を行うことが適当であるとの観点から、今後も、軍民の運用実態を踏まえ、管制権の返還 が実現するよう引き続き要望していく。 ○総務省 3 国による財政的措置等の新設・拡充 @基地交付金等の増額等 基地交付金及び調整交付金については、厳しい財政状況の下ではあるが、基地交付金等 の対象資産価格に対する予算額が少ない状況を考慮し、平成元年度から3年ごと、固定資 産税評価替えの翌年度に合わせ、10億円の増額を図ったところであり、平成19年度は、 前回増額から3年目の年にあたる。 平成19年度の概算要求については、このような予算要求の経緯等にかんがみ、基地交 付金8億円、調整交付金2億円、併せて10億円の増額要求をしているところである。 平成19年度予算については、今後、要求額の満額確保に全力で努めてまいりたいと考 えている。 B基地跡地の返還に係る支援 米軍より返還された国有地については、基地交付金の法的要件を満たしていないため、 基地交付金の対象資産ではない。 また、米軍より返還された国有地以外に、基地交付金対象資産があることを理由として、 交付金額を減らさないこととなれば、すべて返還され、対象資産がなくなった市町村では、 当然に交付金が交付されないこととなり、そのバランス上、均衡を失するため、問題があ る。 ○内閣府 2 日米地協定の見直し A事件・事故に係る安全対策等の確立 原子力発電所等の原子力施設で災害が発生した場合には、災害対策基本法の特別法であ る原子力災害対策特別措置法が適用されるが、原子力艦で災害が発生した場合には同法は 適用されず、災害対策基本法が適用されることになる。このため平成14 年4 月に防災 基本計画を修正し、原子力艦の原子力災害発生時における関係省庁の役割を明確化してお り、関係地方公共団体の対応についても、地域防災計画に記載されているところである。 原子力艦の原子力災害発生時、国は、状況に応じ非常災害対策本部、現地対策本部を設置 するとともに、県との現地対策合同会議を開催するなど、国と地方公共団体の連携強化を 図ることとしている。内閣府としては、関係省庁、地方自治体等との連携を深め、本件に かかる防災対策に努めて行きたいと考えている。 また、地方公共団体が実施する原子力艦の防災訓練についても、可能な限り協力したい と考えている。 ○厚生労働省 3 国による財政的措置等の新設・拡充 C駐留軍等労働者対策及び離職者対策の拡充・強化 駐留軍関係離職者対策については、駐留軍関係離職者等臨時措置法に基づき関係省庁が 諸施策を講じているところであるが、厚生労働省としては、当該離職者に対して全額国の 負担により就職促進手当等の職業転換給付金を支給しながら、積極的な職業指導、職業紹 介及び職業訓練を実施するとともに、これらの者(45歳以上)を雇用する事業主に対し て特定求職者雇用開発助成金を支給するなどの援護措置を講じ、再就職の促進を図ってい る。 また、駐留軍法に基づき設置されている中央駐留軍関係離職者等対策協議会が決定した 「駐留軍関係離職者対策の大綱(昭和49年4月)」に基づき、関係省庁が各種の離職者対 策を実施することとされており、厚生労働省としては、@離職者の再就職に関する希望の 早期把握、Aケースワーク方式によるきめ細かい職業指導・職業紹介、B職業訓練等の充 実強化、などの施策を積極的に講じている。 今後とも、離職者が生じた場合には、関係省庁と連携しながら当該離職者の早期就職の 促進に万全を期してまいりたい。 なお、地方駐留軍関係離職者対策協議会については、各地域における現状を踏まえた対 策が可能となるよう、都道府県または市町村において、地域の関係行政機関相互の連絡調 整を図るために設置することが可能となっているものである。 既存の制度については、その必要性を十分に検討のうえ制度化されたものであるため、 現行制度を見直す予定はない。 この「渉外知事会平成18年度「基地対策に関する要望書」で求めた重点要望に 対する国からの説明(回答)」は、平成18年7月に行った渉外知事会の定例要望に 対する国からの説明を、渉外知事会事務局の責任においてまとめたものです。