第2回「障害者支援施設における利用者目線の支援推進検討部会」の重要ポイントの要約(この文章にあるページ数は議事録より) 文責:部会長小川 1.ヒアリングのあり方について合意した内容 ・対象を幹部職員、支援職員にとどめず、利用者を含めて行う。(p.4) ・利用者への”ヒアリング”については、各施設と調整の上、適切な条件のもとで行う。(p.6) ・質問事項は一致した事項を各部会員が認識した上で行う。県事務局職員は、記録を取る等の業務を行うため同席する。(p.5) ・検証に必要な資料については保全を事務局から各施設に伝えてあり、また、県は関連書類に基づき記録をしている。(p.7) ・ヒアリングの割り当てについては、事務局にて調整していくが、人数や立場を考慮し、妥当性のある割り当てを行う。とりわけ虐待事例が報告されている施設については適正、公平、中立にもとづいた割り当てを行う。(p.5-9) 2.「利用者目線の支援とは」(社会福祉法人北摂杉の子会・松上利男理事長)の報告よりキーとなる項目 (松上氏のお話に対して、部会員は共感、同意していたので、本部会が神奈川県における今後の福祉サービスの方策を検討する段階で、取り上げる事項が多く含まれている。) ・「強度行動障害」という表現 →「行動的課題」のある利用者と表現へ (p.9-10) ・法人・事業所の支援の目的 =「社会の中で、生き生きと暮らせる」支援(p.10) ・意味のある支援とは =(松上理事長が)かつて施設長に就任した際、「朝の施設長あいさつ」をやめ、本人の一人ひとりのコミュニケーションの理解のレベルに合わせて、できるだけ本人がわかるように、1日の役割などを伝えていく取(と)り組(く)みを行(おこな)った。 →その日の見通しを持ち、何をするのかわかる。(p.10) →24時間365日切れ目のない、途切れのない支援をする。(p.12) ・施設とは =・施設内で完結しやすい・外部の目が入りにくい・施設のやり方、ルールが強調されやすい・利用者中心の支援が薄らいでしまう・家庭的な雰囲気はあるが虐待というのは身近な環境で起きる。(p.12) ・コンサルテーションの重要性 (p.12) 〇問題、課題というのは、アセスメントが弱い場合 〇一人ひとりの障がい特性、強みをちゃんとアセスメントする(本人と環境との関係) ・「氷山モデル」(p.12-13) =行動的な問題ばかり着目して、その行動の背景にある要因が見えない。海中にあるものを見ていくことが必要。海水という環境を見る。 ・「グループホーム」(p.13) 〇少人数の暮らしは、刺激の少ない環境なので、行動的な課題がある人たちには適している。 〇施設という環境は、行動障がいを非常に誘発しやすい(非常に刺激が多い環境だから)。 〇新しいグループホームは、一人暮らしの環境を作っている。職員も変化している。 ●半面、パートの世話人さんが支援しているということで対応の統一が難しいところがあるが、利点としてはいろいろな外部のサービスを使うことができる。医療と連携した支援が受けられるのが良さ。 ・意思決定支援とは (p.14) = 重要。基本は権利擁護。わかりやすい情報を受ける権利、自己決定や自己選択を受ける権利。 〇コミュニケーション、表現、自分から相手に伝えることができないことでストレスになって、行動的な課題が誘発されることが多い。意思決定支援に力を入れている。 〇選択決定できる環境が必要。様々な経験の支援が必要。コミュニケーションの支援、特に表現性コミュニケーションの支援を行っている。 〇ライフイベントが少ないので、一人ひとりのライフイベントを作ることも重要な支援課題。 ・スケジュール (p.15) 本人を監視するためではなく、手がかりに使い、選択できるものをどんどんと入れていく。休憩時間や何をして過ごすかも自分で選ぶ=それが意思決定支援 ・松上理事長のまとめの言葉 (p.15) 「(映像を見ながら)彼は、20年間施設にいて、そういうコミュニケーションの支援を私たちは提供しないから、夏の暑い時、お茶を飲みたかったとおもうんですよ。このときは言えないですよ、暑い時、のどが渇いても。そういう環境に私たちが強いていた。私たちの支援はなんだったのだろう、申し訳ない。やっぱり彼が、ちゃんと自分で表現し相手に伝える、そのことを真剣になって支援していくということ、それをすることが大事。反省の上に立って、そういう支援を今後も続けていきたいと思っています。」 ・コンサルテーションの有効性 ・エビデンス・ベースの支援の重要性(絶えまぬ支援の振り返り) ・組織としての明確な理念、明確なミッションが重要 <補足> (松上理事長が準備されていましたが、時間の関係で触れられなかった「組織的アプローチの重要性」よりキーワードの抽出をしました。) ・公器としての社会福祉法人の使命と役割(抜粋) 〇制度に向き合うのではなくニーズに向き合う 〇地域社会で支援を必要としている人々に対する支援サービスの提供を行う 〇地域社会において必要とされている人材(財)を確保し、育成する ・組織の価値を生み出すのは現場にある(遠藤功著「現場力を鍛える」から) 〇どんなにすばらしい組織としての「理念」「使命」「ビジョン」があっても、それを実現するのは現場力にある 〇組織のトップは「組織の価値を生み出す主役は現場であり、その下支えする存在である」ことを認識した組織マネジメントをすることが重要である 〇実行力のある組織は「能動的に問題発見し、解決する現場」を持っている ・コンサルテーションを通して見えてきたこと 〇障害特性の理解、アセスメントが不十分 〇支援者が長期的見通しの中で支援を考えることのサポートが必要 〇コアメンバーの育成 ・コンサルテーションをする時の組織アセスメントの5つのポイント @マネジメント・ガバナンス及び財務について A人材の質の向上について Bサービスの質の向上について C設備・環境の質の向上について Dパートナーシップの質の向上について 5つのチェックポイントの内、2番目の「人材の質の向上について」を例示すると 〇職員の成果や能力に対して適切な評価が行われ、モラル向上システムが整備されているか? 〇職員のやる気を引き出し、マンネリを打破する仕組みがあるか? 〇不適切な支援を行う職員に対して厳しく、かつ適切な処置が講じられているか? 〇プロとしての厳しさを問うルールが存在するか? 〇職員育成、研修システムが明文化され、整備されているか? 〇職員を育てる環境やシステムがあるか? 〇失敗を隠さず、失敗に学ぶ取り組みがなされているか? 〇失敗が隠蔽され、同じ失敗が繰り返されていないか? ・強度行動障害への支援の基本方針 @構造化された環境の中で A医療と連携しながら Bリラックスできる、強い刺激を避けた環境で C一貫した対応ができるチームを作り D自尊心を持ち一人でできる活動を増やし E地域で継続的に生活できる体制づくりを進める ・行動障害者支援に組織的に取り組む阻害要因とは @組織としての理念・ミッション・ビジョンが組織内に浸透せず、利用者支援に落とし込まれていない A理念・ミッション・ビジョン・中長期計画に基づいた人材確保と育成が組織的に行われていない B特に、自閉スペクトラム症、権利擁護・虐待防止などについての組織のトップを含めた管理職研修が不十分である C強度行動障害支援者養成研修を受講しても、どのように実践したらよいかわからない D組織としての人的な余裕がない E実践についての組織的理解が得られないなどの組織としての在り方に多くの課題を抱えている F社会の変化、制度の変化、ニーズの変化に組織として対応できていない