資料3委員提供資料 「利用者目線の支援に求められる視点や取組み」大塚晃 <必要な視点> 1.「利用者目線の支援」は、「利用者の立場に立った支援」であり、どこまでも追求すべき重要な視点である。場合によれば、家族や支援者等と異なる視点ということもありうる。 2.「利用者目線の支援」を、「もし自分がその人の立場にあるならば、されたくはないことを、その人にすべきではない」支援とすれば、居室内に施錠され、集団でたくさんの人と長期間にわたって生活するような支援は、当たらないであろう。 3.従来は、そのような生活の必要性を障害が重いからという理由にしてきたが、障害の考え方の変化によって、その人に適した環境を作ってこなかった、支援者や行政の怠慢とされてきている。 4.また、強度行動障害に対する考え方も、裏面の通り、支援が適切に行われないときに示される、支援者側に原因がある利用者の「抗議活動」とされている。 5.その上に、知的障害が重く自閉症スぺクトラム障害を併存する利用者は、一般的に、感覚過敏があり、スケジュールの変化に弱く、対人関係を取り結ぶことに困難を抱えている場合が多く、彼らにとって障害者支援施設は過酷な環境である。このような環境においては、行動障害が増幅される可能性がある。支援者の利用者の行動の制限等の対応により強化され、更に行動障害が悪化する可能性が十分ある。 6.職員にとっても、このような環境における支援は、どんなに利用者目線の支援を行ないたくても、仕組みがそれを許さないのである。利用者それぞれのニーズに基づいた個別支援の提供が、システムとして困難である。支援者にとっても希望に燃えて仕事をはじめても、利用者の生活を制限せざるを得ないのは悲しいことである。 7.以上のことから、障害者支援施設における利用者目線の支援は、できるだけ早く、利用者自身の意思決定に基づく、制限のより少ない個別支援が可能となる地域生活への移行を進めることにある。もちろん、それぞれの障害者の態様に応じた地域生活支援のシステムを同時に構築しながらである。 中園康夫(1990)は、「英国において・・・使われている概念に『チャレンジング行為(challenging behaviors)というのがある。『チャレンジング』を私は、『抗議』と訳したいが『願い』という訳があてはまると私に語った人もいた。つまり障害をもつ人(とくに重度・最重度の障害をもつ人)が示すある特徴的な行動は、これまで『問題』行動と考えられてきた。サービスを行う『私』とは関係のない客観的できごととしての『問題』行動として。しかし、そうした行動は、 @障害をもつ人がコミュニケーションが十分できないために、あるいは彼らをとりまく社会的環境が障碍となっているために、自分の要求や気持ちが伝達できないことが基本にあって(かかわる側からみれば、そうした要求や気持ちを理解できないか、理解しようとしないこともあって)、 A障害をもつ人が表現する行動にたいして、サービスが十分に応えることができない、あるいは適切に行われないときに示されるものであって、 B障害をもつ人の、その障害の性質だけから、あるいはまったく個人の条件から示されるものではない、 Cしたがって、『問題』行動とみられてきたものはサービスに対する『抗議』行動と考えねばならない場合も多いのである。」としている。 障害者の権利に関する条約 第5条:平等及び無差別に関する一般的意見第6号(2018年) 仮訳・暫定版 T 自立した生活及び地域社会への包容に関する第19条 58 本条約第19条は、障害を理由として特定の生活施設に居住する義務を負わない権利について認識している。施設収容は、地域社会における障害者のための支援及びサービス創出の怠慢を示し、障害者が措置を受けるために地域社会での生活に参加することを断念することを強いられるという意味において、差別的である。公共部門において精神療養サービスを受ける条件としての障害者の施設収容は、障害に基づく差別化した扱いに該当し、それゆえに差別的である。 「佐藤彰一の話題」神奈川県障害者施策審議会 障害者支援施設における利用者目線の支援推進検討部会 第3回資料 千葉県袖ケ浦の事件の経緯 ・2013年11月26日深夜、千葉県内の総合病院で19歳のA君が死亡。 ・警察への通報、強制捜査 ・千葉県の立入り調査、多数の虐待行為が判明(特に養育園第2寮) ・翌2014年1月に第三者検証委員会を設置 ・2014年8月検証報告(千葉県のサイトに公表) ・2018年8月進捗管理委員会の最終報告(千葉県のサイト) ・2018年12月千葉県袖ケ浦福祉センター検討会議 ・2020年8月31(参考)千葉県袖ケ浦福祉センター見直しの経緯について ・2022年度末の千葉県袖ケ浦福祉センターの廃止を決定 ・参考:千葉県重度の強度行動障害のある方への支援システムの構築 不適切支援と視野狭窄 ・虐待とは、支援者の義務や権限の濫用である。 ・その中で、大きく2つに分けてみましょう。 ・●不適切支援、過剰支援、手抜き支援 ・いずれも第三者的判断優先(本人の保護だとしても) ・「思わずやっちゃった」「めざせ一日2万歩」 ・●視野狭窄型 ・障害者の人間性を無視した理解 対人理解のパラダイム転換@ ◆「この人は判断能力が不十分であるので、できる限り本人の意思は尊重するが、判断能力が不十分なため、周囲のことは勿論自分のことについても適切な判断することはできない。その結果、社会生活や日常生活で困難な状況になる。だから福祉関係者らが関わって、その人のことについて判断しなければならない」→能力不存在推定(代行決定) 対人理解のパラダイム転換A ◆「どんなに重い認知症や障害のある人であっても、その人なりの人生を生きてきた経緯があり、その人なりの思い、そして判断がありうる。適切な判断が自分ではできないと周囲から見られていた人々も、支援さえ受ければ、その人なりの決定ができる」→能力存在推定(意思決定支援) 権利擁護から考える 左から表題、自立型権利擁護、管理型権利擁護、やまゆり犯人 障害者の能力、存在推定、不存在推定、不存在推定 決定形態、自己決定支援、代行決定、他者決定 利益、ご本人の主観的利益優先、ご本人の主観的利益と客観的利益が混在、社会的利益(障害者を人間とみない視野狭窄) 価値、ケア・エンパワー(社会参加)+(語りを紡ぐ)、ケア(安全重視)+正義(功利主義)、独断的正義 個人の扱い、主体(相互依存)、客体(保護の対象)、手段(利用価値がなければ抹殺) 「利用者目線の支援に求められる視点や取組み」について 委員安藤 浩己 1.支援体制の充実 (1)スーパーバイズ体制の確立 利用者目線の支援には利用者の立場に立てる支援者の存在が欠かせない。国、県、事業者等の取り組みにより職員の資質は向上している。しかし、研修の内容は知識や技術、課題解決に関するものが多く、利用者と向き合う支援者の思いやあり様に触れる内容は少ないように思える。利用者目線を実践できる支援者を育てるために、日常的に支援者に対してスーパーバイズができる人材を育成する、事業所にスーパーバイザーを配置する又は配置加算の創設、などの取り組みが必要と考える。 (2)支援者のエンパワメント 県施設団体連合会が民間障害者支援施設を対象にしたアンケートの中に身体拘束に関する項目があった。その回答からは各施設の拘束解除に向けた努力や苦労が見えてくる。これらの取り組みを評価するとともに、支援者間で共有化することによって日々の実践に活かしていけるようにしたい。また、県立施設の支援者が取り組んできた強度行動障害児者に対する支援事例集をもっと効果的に活用する、県施設団体連合会が行っている実践報告会やあおぞらプランの活動を活性化するなど、これまでの行ってきた事業をベースに重層的な支援者を支えるためのプランを検討して欲しい。 (3)意思決定支援の普及、定着 現在県主導ですすめられている意思決定支援の仕組みをどのようにしたら一般化できるかを早急に検討すべきと考える。また、単発的に研修会を行うだけでなく、効果的な普及、定着のための方法についての研究も必要でと考える (4)支援者の確保 障害児者支援のニーズは拡大、多様化している。一方、福祉分野に就職しようとする学生は減少しつつある。そのため十分な支援者を確保できていない民間施設も多く、余裕のある支援体制がとれない状況となっている。当然ローテーション勤務の支援員の研修機会が少なくなる傾向にある。そのため県民一体となって福祉人材を発掘、確保するための取り組みを検討して頂きたい。また、民間障害者支援施設における職員配置の状況は、約6割の施設が支援者1人に対して利用者1.7人だが、県立施設及び県指定管理施設では1:1.1〜1.5程度の支援員の配置となっている。今後、さらに重度障害者の支援を民間施設で行うのであれば職員配置割合を高めていく必要がある。以前神奈川県が単独で行っていた民間施設運営費補助のように人に対して補助する仕組みを復活して欲しい。 2.県立施設及び指定管理施設の取り組み 神奈川県は平成26年に県立障害者福祉施設等のあり方検討会を立ち上げ、県立施設の運営のあり方や役割について報告をまとめた。そこで示された方向性にもとづき指定管理に移行した施設や完全民営化された施設もある。新たな課題が生じている今日、再度この報告書に立ち戻り、提言された内容がどのように実施されているのかを検証すべきと考える。特に、県立施設の役割、機能とされた、民間施設では対応が困難な利用者の受け入れや支援方法の研究、普及が実践されているのか検証して頂きたい。前述の民間障害者支援施設アンケートでは、対応困難になった時に県立施設等に助けてもらったとの声もあるが、いざという時に支援して欲しいという期待も多かった。その要望にどれだけ応えているかは支援当事者を家族、市町村関係者を交えて継続的な議論が必要と考える。 利用者目線の支援に求められる視点や取り組みについて 中島博幸 1利用者目線の支援を考える前提として 利用者(人)は、そもそもどこで生きるべき存在なのかを考えた場合、利用者は地域の中で社会的存在として生きることを望んでいるはずである。それを実現するために我々支援者の存在があることを明確にする。 こうした考え方を法人(組織)内の隅々にまで浸透させ、いかに重度の障害のある方も、地域の中で生き生きと生活できるように支援体制を整え、その実現のために組織的に対応することが重要であるとの認識に立つ。 2 利用者目線の支援のために求められること 利用者は、一人の存在として社会的に認められ、自分の願いや特性・ペース等に合わせて支援の提供を受けることを望んでいるはずである。 〇利用者一人ひとりがどのような方なのかを丁寧に評価・分析(アセスメント)し、その結果に基づいて個別の支援プログラムを提供することが重要である。その内容については不断に見直すとともに、チーム内での情報の共有化を図り、統一的対応につなげることが重要である。例えば、これまでどのような経験をされてきたか、得意な活動や不得意な活動、余暇活動、対人関係、食事の好み、特定の過敏さの有無等々ご家族ご本人から得た情報と、フォーマル&インフォーマルなアセスメントに基づき仮説を立ててプログラムを作成し支援にあたる。プログラムの目的は「生活(人生)への関与を高めること」である。 〇支援を提供した結果、利用者のQOLがどのくらい向上したのか、またはしなかったのか、定期的に振り返り支援内容をチェックする必要がある。 〇本人や家族が不安にならないよう、何度でも地域生活にチャレンジできる体制づくりが必要(いったん施設に戻り再調整してから再チャレンジするなど)である。 〇利用者支援に係るコンサルテーションを実施する部門を設置し、法人内及び県内各地の事業所でコンサルテーションを実施して支援スキルの向上につなげる。 〇行動障害の軽減等を目的とした有期限(1〜2年)の施設入所支援の設置運営も必要と考える。利用者ご本人の活動領域が広がると可能性も広がる。 「利用者目線の支援に求められる視点や取組み」について 伊部智隆 前提 ・この部会で視野に入れる「利用者」は部会が障害者施策審議会に位置付けられることから見て、知的障害のみならず精神、身体、視覚、聴覚等をも含んだ総合的な視点が必要ではないか ・「利用者目線(を踏まえる)」ことと「支援を行うこと」を分けて考える必要がある ・障害福祉は範囲が広く、利用者目線の施策において総合的な視点が必要 1.利用者目線において、意思決定支援以上に重要な意思形成支援 ・願い、願望を具体化(現実化)する支援 ・社会参加の場を開拓する支援 ・情報支援(情報収集、活用、意思表出) ・支援者の役割 本人主体の原則を踏まえる これらの過程を通じて、アイデンティティの確立や、自己肯定感、更には自己有用感を築くことが必要。このことは「かながわ憲章」の理念を生かした神奈川県としての施策展開につながる。全国レベルで言えば、地域共生社会の実現が現在求められている施策と合致。どんなに障害の重い人でも社会参加できる支援が必要。 2.県の施策として支援を展開するためには、 ・県としての役割、市町村域(各社会資源含む)の役割を描くことが必要 ・圏域ごとの推進施策(体制、民間施設間の人事交流等)が必要 ・神奈川県内の各関係者からの意見聴取、県行政としての調査・分析を従来以上に大切に ・研修の更なる充実を(特に課題解決型のソーシャルワーク機能) ・なお、この新しい施策を実施するにあたり、受益者負担の原則、応益負担は障害者世帯の状況からみてなじみにくい  「利用者目線の支援に求められる視点や取組み」について 委員氏名 堀越由紀子 前提として 「利用者目線の支援」と言うことばを使うのは、利用者目線を持っているのはその利用者本人だけだから。 ==> ということは、利用者さんの生活や人生にかかわることを「他者が決める」のではなく、各人が「自分で決める」ことを保証していこうとしている。 ==> ということは、「利用者目線」になるべき(近づくべき)主体は、周囲の人。家族、施設職員、相談支援員、ヘルパー等々でありましょう。 ==> しかし、自身からの能動的な意思表示が乏しかったり、周囲からはわかりにくかったりする人の「目線」というものを、周囲の人は本当に理解できるのか!? (利用者さんを意思のない人とみなしているような人だけではなく、利用者さんをわかっていると思い過ぎている人だって、本当のところはどうか・・) ==> とどのつまり、「自分で決める」(自己決定)と「他者が決める」(他者決定)の間にある「一緒に決める」(共同意思決定)はグラデーション。 ==> そうなると「周囲の人」の「質」がとても重要。鍵になる。とくに「支援者=支援を業としている者」の質をどう創るか、どう高めるか、どう維持するか。このことを、ミクロ=個人、メゾ=組織、マクロ=政策 の次元で考えていかないと! もう一つの前提 「支援者=支援を業としている者」の質とは何か?  ==> 個人レベルでは・・・障がいを持つ人々への好意? 愛情? 支援というしごとへの思い? やる気? 熱意? かかわりを作る力? 経験? 勘? 知識? 資格?・・・  ==> 組織レベルでは・・・よい支援も、そうでない支援も、「システム」のなかで生まれている。個人レベルだけに帰結できない。(いい支援はみなで頑張っているからで、そうでない支援はやった者のせいだというのではダメ) ==> 政策レベルでは・・・これを考えて提言するのが部会のしごと。 意見(求められること&実現に向けて) * ミクロレベル(個人レベル)において * 障がい、とりわけ知的な障がいを持つ人々の支援を業とする「支援者」の質をどう考えるのか?(この辺りについては造詣の深い委員さんのお話をぜひ聞きたい) * なお、「支援者」というとき、最前線で直接的に利用者さんとかかわる人だけではなく、それなりに大きな法人なら、中間管理職(ミドルマネジメント担当者)や管理者(トップマネジメント担当者)も間接支援者になる。その力量は、メゾレベルで考えるときにとても重要。 * 一方、小規模事業所ではたらく支援スタッフは、一人で多くの役割を担わなければならず、後述するようなメゾレベルの体制が不十分にみえることも、とても気になる。(大規模施設はノーマリゼーションの観点からも時代錯誤だが、小規模ならいいかというと、そうとも言えない実態がありはしないか) * 一つの方法として、よい実践をしている人に備わっている諸要素から学ぶこともできる。「コンピテンシー」(=そのしごとをするために特化された優れた資質・力量)をとらえていくことはできるだろう。 * メゾレベル(組織レベル)において 事業所の規模にかかわらず・・・ * 支援スタッフの募集や選考はどのように行われているのか? 人手が足りないから誰でもいいと採用している? 「経験不問」「初めての人歓迎」という募集広告をよく目にするけれど・・などなど。 * 支援スタッフが就任する時にどんな対応がされているのか? そもそも支援というしごとがどう説明されているのか? しごとのために必要な最初の力量が明示されているか? 利用者に対する責任、同僚や組織に対する責任、社会に対する責任を説明しているのか? 倫理基準を含む職務を明示しているか?・・などなど。 * 必要となる業務の計画と配分、調整作業、あるいは委託がどのように行われているのか? この「必要な業務」が利用者目線で考えられた「必要」となっているか? 科学的視点が取り入れられているか?  * 支援スタッフの部署配属・担当決めはどのように行われているのか? * 支援スタッフが力量を身につけていくための指導や教育、支えがどのように提供されているのか? 組織内のスーパービジョン体制、On JTとOff JTの内容、頻度、効果などなど * 業務のモニタリング、振り返りと評価の作業がどのように行われているのか? * 組織内のコミュニケーション機能はどうか? ヘルシーか? 建設的か? オープンか? 同調圧力は低減されているか? 外に開かれているか? 抑圧的ではないか? などなど * 職員に、利用者さんの擁護者としての自覚があるか? * 地域に開かれた施設となっているか? 関連領域との連携、地域住民との交流、行政との関係、第三者の目がいつも入っているか などなど 利用者目線の支援に求められる視点と現状打破の道筋 小川喜道 1.利用者目線の支援に求められる視点 (1)支援目標の前提 ・全ての障害のある人たちは、自らが望む生活を保障される権利を持っている。 (障害者は、法的に守られるべき権利を有している。次ページ参照)。 ・支援の目標は、福祉サービスを提供することにより、その障害ある人が望む生活を獲得することである。(自己決定・自己選択の機会も作らずに、望まない生活に追い込むことをしない支援) ・本人の望む生活とは、支援者が利用者と人として対等で、相互作用をもつコミュニケーションを図ることから見出すことができる。(支援員は、利用者の強み、好み、快適などを感じられるポジティブな要素を人間関係や環境との関係から見出すスキルと支援姿勢を身に着ける) (2) 意思決定支援の前提 ・利用者を中心にした、家族を含む支援に関わる人たちとの相互作用の中で行われる。 ・支援は、情報(経験、見聞、理解しやすい伝達など)、比較(単一の乏しい体験ではなく、可能な限り幅広い経験をもつことによって可能となる)、選択・決定の判断(情報を得て、それらを振り返りながら自分の好みなどを選択する)、表現(自分の望むこと、好むことをなんらかの手段で示す)、これらのことを支援員は、答えの誘導ではなく障害ある本人自身の立場に立って理解すること、あるいは本人自身が表出することを援助する。 (3) 地域とのつながり ・施設入所支援を受けている居住者は、本人の望む日中活動ができるよう地域の社会資源との連携の下で、実現することができるようにする。そのためには、単に施設隣接の生活介護等に限定されることなく、広く地域の福祉サービス制度の事業あるいはそれ以外の諸活動などの利用を含めて、障害者総合支援法の給付項目に縛られることなく、本人の望む生活に沿った生活の組み立てを可能とする新たな神奈川のシステムをつくる。 ・原則として、意思決定支援に基づく生活は個々人で異なり、その多様な生活スタイルを地域とのつながりを持って実現する。 (4) 障害ある人の家族への支援 ・家族は、とりわけ重度の障害をもつといわれる人を家庭内で支え続けている。そして、結果的に施設入所に向かってしまう場合がある。地域で家族と共に、あるいは本人の望む場所で暮らす上で、負担感や精神的に追い込まれず、本人の権利を尊重できるよう、家族支援の体制を整える必要がある。例えば、親御さんに、介護の状況・頻度・困難なこと・受けているサービス等をアセスメントし、・うつ的状態、落ち込み・パワーレス状態・絶望感・孤独・孤立・外出困難・社会活動への参加困難などを把握し、家族サポートとしてのサービスを導入することが必要となっている。それらの課題解決をすることで、障害ある本人への関わりに少しでもゆとりを持つことで、将来の生活も施設入所に限定されずに本人を尊重した生活形態を検討することができるよう支援することが求められる。 ※1ページの1(1)について ●2014年に批准した国連・障害者権利条約(2006) 第19条では、「条約の締約国は、全ての障害者が他の者と平等の選択の機会をもって地域社会で生活する平等の権利を有することを認めるものとし、障害者が、この権利を完全に享受し、並びに地域社会に完全に包容され、及び参加することを容易にするための効果的かつ適当な措置をとる。」 この障害者権利条約は、憲法の下にあって日本の法律はそれに従わなければならない。 ●障害者基本法改正(2013) 「全ての障害者が、障害者でない者と等しく、基本的人権を享有する個人としてその尊厳が重んぜられ、その尊厳にふさわしい生活を保障される権利を有する」ことを前提に、制度政策が作られることの必要性を示している。 ●障害者総合支援法の基本理念 第1条の2では、「・・・全ての国民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会を実現するため、全ての障害者及び障害児が可能な限りその身近な場所において必要な日常生活又は社会生活を営むための支援を受けられることにより社会参加の機会が確保されること・・・、地域社会において他の人々と共生することを妨げられないこと・・・を旨として、総合的かつ計画的に行わなければならない。」とされている。 ●障害者総合支援法に基づく指定計画相談支援の事業の人員及び運営に関する基準(H.24.3.13.厚生労働省令第28号) 第二章第一節第二条 「指定計画相談支援の事業は、利用者又は障害児の保護者の意思及び人格を尊重し、常に当該利用者等の立場に立って行われるものでなければならない。 2指定計画相談支援の事業は、利用者が自立した日常生活又は社会生活を営むことができるように配慮して行われるものでなければならない。 ●知的障害者福祉法 (支援体制の整備等) 第十五条の三 市町村は、知的障害者の意思決定の支援に配慮しつつ、この章に規定する更生援護、障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律の規定による自立支援給付及び地域生活支援事業その他地域の実情に応じたきめ細かな福祉サービスが積極的に提供され、知的障害者が、心身の状況、その置かれている環境に応じて、自立した日常生活及び社会生活を営むために最も適切な支援が総合的に受けられるように、福祉サービスを提供する者又はこれらに参画する者の活動の連携及び調整を図る等地域の実情に応じた体制の整備に努めなければならない。 2. 利用者目線の支援の実現、現状打破の道筋 〜障害者の自立生活に向けて、誰一人取り残さない神奈川福祉モデルの実現へ〜 (1)方策@大型施設における連携型意思決定支援プロジェクトの設置 (2021年度より実施) ・現在、津久井やまゆり園で行われている意思決定支援プロセスをさらに改善・発展させて、他施設においても、アドバイザーの派遣、障害者相談支援専門員を含め、本人・家族参加による意思決定支援に基づく「本人中心の個別支援計画」の策定を推進する。 ・このことは、サービス等利用計画を本人のニーズ(問題を身体拘束などネガティブな手段を使うことなく、望む暮らしに寄り添う)に基づく策定に徹底することでもある。 ・なお、大型施設における身体拘束・虐待が絶えない問題に対して、県は特段の指導強化を図ると共に、指定管理者の選定に当たってはとりわけ利用者の人権擁護、意思決定のプロセスに関する事項について厳格に評価しなければならない。 (2)方策A(本人の意志に反してサービスが決まるのではなく、)本人の望む暮らしを実現する神奈川方式の給付・実現プロジェクトの設置 (2021年度にプロジェクトメンバーを配置し、その後に試行、予算化) ・上記を実現するためには、障害支援区分により福祉サービス給付を限定する現行制度を改め、神奈川方式として本人ニーズに基づき、区分を超えて提供できるように変更する。 たとえば、重度訪問介護・行動援護・自立生活援助・自立生活アシスタント(横浜市)・共同生活援助など、多くの給付をニーズに応じて受けられること、また、支援の程度や特定の認定調査項目が一部介助以上であることなどの制限、ランクによりその人の生活スタイルを制限している現行の障害者福祉制度から脱却し、「本人の意思決定、望む暮らし」に寄り添う神奈川式ニーズ中心の福祉サービス体制を作り上げる。 利用者目線の支援・神奈川モデルの検討要点 (上記と重複表現あり) ・施設入所の利用者の生活の質向上に向け、本人の望む生活を実現するため、他の介護給付事業や地域生活支援事業の受給が受けられるようにする。 ・現在、県内に偏在している施設は、地域での暮らしから切り離されている。ショートステイ(レスパイトケア)に貢献し、地域に暮らすことを支える施設としてのサービス受給が積極的に受けられるよう、県レベルで調整を行う。施設が開かれたもととするためには、より在宅の障害者、また、地域社会との積極的なつながりをさらに強めていく。 ・指定管理を受けている施設はグループホームも数多く運営しているが、本体の定員規模も大きいので、今後は地域生活へのステップとしてグループホームを設置し、施設入所からの移行を積極的に行う。また、他の形態での生活を選択した人に対して、在宅サービス事業所との連携に基づき、地域貢献を行う。 ・施設入所は、段階的に地域での生活を実現するために地域とのネットワークを強化していく。 ・障害者相談支援専門員の早急な充足を行い、質的向上を伴う人材育成を行う。 ・意思決定支援アドバイザーの派遣についての組織化を図る。 ・施設入所支援での意思決定支援体制を全ての施設に設置、アドバイザーが不足している段階では地域連携の基、他機関スタッフを入れて、多面的な検討ができる体制を整える。 <補足> 1.地域生活実現には ・必要な資源の確保 @相談支援事業者、行政の役割も重要であるが、なによりも具体的な社会資源が必要となり、そのためには県の財政的支援が必要であり、神奈川モデルを実現するには、県単事業として予算を付ける必要がある。 ・人材の確保、育成の必要性 @障害を本人の問題とせず、周りの人的環境・物理的環境との関係で表出されるもので、それを見極め、援助方法を見出す研修を行うことが必要である。 A信頼できる管理運営者の下で、支援員の自尊心が持てる働きやすい職場を形成し、有能な人材が確保されることが、利用者の日々の生活を豊かにし、さらに自立する力を形成する。 ・市町村の積極的な取組み @市町村には財政規模や人口なども異なるので、市町村の取り組みを求めると共に、県(けん)としての調整、支援が求められる。 ・グループホームの担い手と地域連携 @現状では、一部、アルバイトに頼ったり、大学生に時間給で埋めている実態もあるが、グループホームに居住する障害ある方々の生活経験などを考えると支援員として持つべき知識、技術、そして権利に関わる教育が前提となるべきである。 Aグループホームが細切れの業務ではなく、また、日中活動の事業との連携を行う必要がある。 2.施設居住と地域居住の差異 @施設入所ケアとは ・ケアする側の都合がよい空間・レイアウト ・集団生活: ケアの流れがよい、監視がしやすい、支援者数の合理化  ・居住者の個性が出せない B居住ケアとは ・居住者側の好む空間づくり ・個別生活:居住者が作り出す空間、プライバシーが守れている空間、支援は居住者の必要な時間帯・必要なケア内容が満たされる ・居住者の個性が出せる 上記を実現する上で、最も大切なことは、本人の意思決定である。これまで家族、専門職中心に行われる傾向にあったが、今日では本人中心に意思決定を支援し、それに基づく福祉サービスを構築する考え方は日本にとどまらず先進諸国のスタンダードとなっている。 「利用者目線の支援に求められる視点や取組み」について 委員氏名 野口富美子 1利用者目線の支援のために求められること ○ 一人一人についていわゆる問題行動がなぜおこるか原因を考える。 ・嫌なこと  ・気になること ・やりたいのにやれないこと ・不安なこと  ・家族との関係や成育歴 等 を探る中で、親や支援者が納得したり共感したりすることができたら。 〇利用者に様々な体験をしてもらうよう工夫する。 ・子どもの時からの家族との体験や経験との関連をマイナスプラス両面で考える。 ・本人を決めつけずに対等な立場で客観的に見る視点を。 ・支援者を一人任せにせず、複数の視点で、検討をする。 ○利用者本人と地域とのつながり(社会参加) ・幼児期から障害者だからと隔離せずに、地域の保育園・小中学校などへ通えるよう、行政が諸施策を進める。それにより、様々な体験を通して、本人の世界が広がる。何より周囲の人々の理解が深まる。 ・上記のことを、家族が積極的に取り組めるためには、地域社会の理解が必要。 特に幼児期には、親や兄弟への精神的な支援が何より重要。 ○意思決定支援 ・まず、本人の人間としての尊厳を認める。親の従属物でもない。そして家族と支援者の連携が必要だと思う。家族は、事業者に任せがちだが、本人の支援者としての関わりは重要だと思う。   2利用者目線の支援の実現に向けて 〇組織的なアプローチ ・インクルーシブ教育の啓発と積極的推進。 ・出生前診断など障害児をめぐる人権問題に関しての啓発と支援。 ・家族が孤立せず、勇気をもって障害者を育てられるように、様々な社会的支援を。