生活協同組合ユーコープ 生活協同組合ユーコープ

生活協同組合ユーコープ

2026年 10月 15日

組織の特性を生かした活動で目指す「誰も孤立しない地域社会」

2026年 10月 15日
ユーコープかながわ県本部執行役員本部長の宮崎泰成さん

ユーコープかながわ県本部執行役員本部長の宮崎泰成さん

 神奈川県内で約121万人の組合員が加入する「ユーコープ」。組合員が出資し、商品やサービスを利用するとともに、意見を出したり、運営に参加したりする生活協同組合です。食品や日用品の宅配「おうちCO・OP」や店舗事業で暮らしを支える一方、地域の人たちの困りごとに寄り添い、人と人をつなぐ活動にも力を入れています。ユーコープかながわ県本部執行役員本部長の宮崎泰成さんは、「地域の人たちが必要としていることに、できることから取り組んでいきたいと考えています」と話します。

買い物ついでに立ち寄れる親子の居場所

和やかな雰囲気で交流する子育てひろば

和やかな雰囲気で交流する子育てひろば

 そうした思いから始まった活動の一つが、未就学児とその親などを対象に県内5店舗で実施している「子育てひろば」です。10年以上続いている取り組みで、現在は1店舗あたり年間50~100組ほどが参加しています。運営するのは、地域のボランティアや有志の組合員。月1回程度、各店舗にあるコミュニティールームの一角に子どもの遊び場を設け、遊びの様子を見守りながら、居合わせた人同士が交流しています。組合員に限らず誰でも無料で参加でき、事前の申し込みも必要ありません。開催時間内であれば出入りも自由。買い物のついでに気軽に立ち寄れる、地域に開かれた場です。

 同じような悩みを持つ親同士で話をしたり、子育ての不安や疑問を運営者に相談したりする人の姿もあります。「今は情報があふれているので、自分で調べてみたものの、どの情報を信じればよいのか分からなくなってしまったという相談も少なくありません」と宮崎さん。参加者からは子育てひろばに来て話を聞いてもらえたことで、「安心した」「元気が出た」という声が寄せられているそうです。

“いつもの宅配”だから気づける、ちいさな変化

 一方で、高齢者の支えになることが多いのが、宅配のインフラを活用した「地域見守り活動」です。ユーコープには週5日か3日、玄関先まで夕食を届ける「Maici(マイシィ)」というサービスがあります。定期的に同じ家を訪れるからこそ、「いつも出てくる人が出てこない」「昨日届けた弁当がそのまま残っている」など、配送担当者が普段とのちょっとした違いに気づくことができるのだそうです。

 実際に、訪問したタイミングで緊急の事態が起きていたケースもあります。「玄関に人は出てこないものの、家の中から声が聞こえたということがありました。配達員が窓越しに状況を確認して事態を把握し、救急車を呼んで一命をとりとめました」と宮崎さんは話します。異変を感じた際には、宅配センターへ連絡し、組合員が事前に登録している緊急連絡先や地域包括支援センター、急を要する場合には救急、警察へつなぐ対応のながれがつくられています。こうした見守り活動によって、1年間に対応した件数は神奈川県内だけでも160件に上ります。中には、亡くなられていたケースも30件弱あったそうです。

身近なものを通じて広げるつながり

スタディードライブで集められた文房具

スタディードライブで集められた文房具

 また現在、特に力を入れている取り組みが食品ロスの削減や生活困窮者などの食支援につながる「フードバンク」です。ユーコープは、公益社団法人フードバンクかながわの会員に名を連ね、食品や物流インフラの提供などを行っています。組合員に呼びかけて店舗に設置した回収箱などで集められた食品は、社会福祉協議会などを通じて子ども食堂などへ届けられています。

 食品だけでなく、家庭で使われずに眠っている文房具を、購入することが難しい子どもたちに届ける「スタディードライブ」にも取り組んでいます。自分は使わないものを必要とする人へ届ける、こうした小さな循環も地域の支え合いにつながっています。

 さらに最近では、「みんなのよみきかせ絵本大賞」をスタートし、保育園や幼稚園とのつながりも広げています。この取り組みでは、日本生活協同組合連合会が選定した20冊の絵本を、希望する保育園や幼稚園に無料で届け、子どもたちや先生に読んでもらいます。その上で「一番良いと思った本」に投票してもらい、全国の生協から集まった票をもとに受賞作品を決定します。昨年は、給食などでユーコープを利用している園を中心に、神奈川県内では約70施設が参加。今年は行政や教育委員会などからの紹介もあり、当初の想定よりも多い120~130施設に広がる見込みだと言います。

大切なのは「小さく始めて、続けていくこと」

食育田植え体験なども開催

食育田植え体験なども開催

 ユーコープのさまざまな活動に共通しているのは、「孤立をなくしたい」という思いです。宮崎さんは「孤立は高齢者だけではありません。家族と一緒に暮らしていても、日中は幼い子どもと母親だけで過ごし、相談できる相手がいないといった孤立もあります。子育て、病気、介護、生活上の困りごとは、いつ自分の身に起こるか分かりません。そういう時に、少し手を差し伸べられる組織でありたいと思っています」と話します。

 そのために大切にしているのは、活動を一度きりで終わらせずに続けていくこと。「最初から大きなことをするのではなく、まずは小さく始めてみる。少し物足りないくらいでも構わないので、やってみることが大切です」と宮崎さんは言います。小さな活動をきっかけに関係をつくり、うまくいけば少しずつ広げて、無理のない形で続けていく――。その積み重ねが、地域のつながりを育てると考えています。

 一方で今後の課題として挙げるのが、地域の中にある困りごとをまだ十分に把握できていないという点です。ユーコープ単独ですべての課題を把握し、解決することは難しいため、行政や地域の団体、専門機関などとの連携は不可欠です。ユーコープは現在、県内のさまざまな団体や法人、企業などがつながり、孤独・孤立への対策に取り組む「かながわつながりネットワーク」の構成員にも名を連ねています。積極的につながりを増やし、それぞれが持つ強みを生かしながら、必要なところへつないでいく役割を担っていきたい考えです。

 もう一つの課題は、活動を必要としている人や関心を持っている人にまだ十分に届いていない状況があることだと言います。神奈川県の組合員約121万人のうち、地域活動を利用している人は延べ5、6万人ほど。関心はあっても「参加しづらい」、あるいは「そもそも活動を知らない」という人もいます。働いている人も参加しやすいよう、開催場所や日時を工夫したり、スマホに慣れない高齢者向けには電話での申し込みを取り入れたりするなど、対象とする世代のライフスタイルを考えながら、もっと気軽に参加できる工夫を進めたいとしています。

 買い物や宅配といった、日々の暮らしに身近なところから生まれるつながり。その一つひとつを大切に育てながら、地域の中で安心して暮らせる人を増やしていく。ユーコープは、こうした「支え合い」の輪を少しずつ広げながら、誰も孤立しない地域社会を目指しています。

プロフィール

生活協同組合ユーコープ
団体名

生活協同組合ユーコープ

活動内容

神奈川県、静岡県、山梨県で暮らす人たちを対象にした生活協同組合。宅配、店舗、共済、福祉の4つをメイン事業としている。組合員が出資し、商品やサービスを利用するだけでなく、運営にも参加する組合員主体の組織で、地域や人との結びつきを大切にする活動も積極的に行っている。