Para Sports
特集 Para Sports vol.3
海はいつでもバリアフリー
楽しもうよ、ダイビング
江之浦ダイビングサービス「アクアランド」
有限会社グランパス
海はいつでもバリアフリー
楽しもうよ、ダイビング
生命が誕生したといわれる〝海〟を全身で楽しむ「ダイビング」。城下町として知られる小田原の最西端・江之浦では、障がい者が参加できるイベント「バリアフリーダイビング」が開催されています。
ダイビングの地「江之浦」
小田原の城下町を過ぎて伊豆方向へと続く国道135号線の海沿いは、県西地域のダイビングスポット。そのひとつとなる「江之浦」は、定置網・刺網・ワカメ養殖などで知られる漁港であり、釣り好きも多く集まる地です。江之浦の海は、高低差が少なく、波が穏やかであることから〝初心者向け〟のダイビングスポットとされており、四季折々に様々な魚が見ることができるほか、ウミガメやマンボウ、クジラも訪れる場所となっています。
障がい者もダイビングを楽しめる地に整備
江之浦のダイビングサービスを提供する施設「アクアランド」では、障がい者がダイビングを楽しめるよう環境を整備。海に限りなく近い駐車場があることを利用して、海に入るまでの道をフラットにし、入水用の車イスが用意されているほか、ダイビングを安全に楽しむため、海中にも案内ロープが張られていたり、海からすぐの場所に更衣室やバリアフリートイレを設置するなど、障がい者が利用しやすい工夫を行っています。アクアランド代表の野瀬勝利さんは「父の代から受け継ぎ25年以上にわたり、障がい者ダイビングの受け入れを行っています。江之浦ならではの出来ることがあり、今後も力を入れて出来ることを行っていきたい」と話していました。
障がい者参加イベント「バリアフリーダイビング」
障がい者ダイバーとともに海を楽しむイベントを主催するのは、藤沢市片瀬海岸にあるダイビングショップ「グランパス」。国内のみならず海外へのダイビングツアーの企画やライセンス取得のスクール講習、イルカに精通するスタッフが在籍することから教育現場での指導も行っています。事業のひとつとなる「バリアフリーダイビング」は、グランパスが障がい者を引率し、小田原江之浦の海を楽しみます。
イベントは毎年9、10月に開催され、20~30人の方が参加しています(今年は新型コロナウイルス感染症の影響と、台風14号接近により両月とも中止)。バリアフリーダイビングに参加する障がい者ダイバーのために、東海大学内にある大型プールを利用した練習機会を設け、ダイビング初心者には、マスクに水が入った時の対処法や基本的な道具の操作方法について指導を行っています。
水中は地球上最大のバリアフリー
参加される障がい者ダイバーは、下半身マヒの身体障がいや視覚障がい、知的障がいなど、障がいの度合いは様々です。練習やイベント本番には、ボランティアダイバーも参加し、障がい者の補助を行います。補助といっても専用車イス(時にはリアカー)の移動など陸上でのものが主で、水中に潜った障がい者ダイバーは、まさに水を得た魚のように『自由』に泳ぎます。水の中では健常者も障がい者もないそうです。
引率にあたるグランパススタッフの久保祐一郎さんは「水中に入れば、みんな本当に上手に泳いでいて、補助の必要は全くといって良いほどありません。手助けをすることは『楽しみをを奪うもの』であるとも考えているほど、水の中は自由なのです。時には下半身に障がいがあり、足が動かないはずの方が、水中では足をバタバタ動かしていたりして、『あれ!?』と思うような出来事もあります。そうしたことから私たちは〝水中は地球上最大のバリアフリー〟と呼んでいます」と、その醍醐味を教えてくれました。
- 取材先:江之浦ダイビングサービス「アクアランド」
- 江之浦漁港を訪れるダイバーに、ウェットスーツやタンクなどダイビング用品の貸し出しなどを行っており、障がい者がダイビングを楽しめる環境を長年にわたり提供しています。
- 取材先:有限会社グランパス
- ダイビングの魅力を伝えようと、28年前に設立された藤沢市片瀬海岸にあるダイビングショップ「有限会社グランパス」。同社ではファンダイビングやツアー企画などを行っています。〝水中は地球上最大のバリアフリー〟という考えのもと、健常者だけでなく、障がい者のためのダイビング事業にも力を入れています。