更新日:2025年4月1日
ここから本文です。
神奈川県労働委員会は、標記の事件について、申立人の不当労働行為救済申立てを棄却する命令を交付しました。
申立人 X(組合)
被申立人 Y(会社)
本件は、組合が、会社及び申立外派遣会社A社に対し、A社の派遣労働者である組合員3名(以下「組合員ら」という。)の雇用問題及びA社の派遣労働者Bによる金銭要求問題等を交渉事項とする団体交渉を申し入れたところ、A社が、組合に対する文書回答及び団体交渉において、虚偽の回答を行ったこと及び会社が団体交渉に応じなかったことが労働組合法(以下「労組法」という。)第7条第2号に該当する不当労働行為であるとして、救済申立て(以下「本件申立て」という。)があった事件である。
その後、組合とA社の間で和解が成立し、組合は、本件申立てのうちA社に対する申立てを取り下げた。
⑴ 主文
本件申立てを棄却する。
⑵ 争点及び判断の要旨
(争点1)
組合が団体交渉申入書において交渉事項として要求した組合員らの雇用終了問題及びBによる組合員らに対する金銭要求問題との関係において、会社は労組法上の「使用者」に当たるか否か。
(判断の要旨)
ア 組合員らの雇用終了問題
組合員らの雇用終了問題について、派遣労働者の採用、雇用期間の設定、更新あるいは期間満了による労働契約の終了はA社の判断もしくはA社の派遣社員就業規則の基準に基づいて行われるのであり、そこに派遣先である会社が関与していたとは認められない。
また、組合員らのA社による雇用及び会社への派遣に関し、会社が人選についてA社と相談したという事実や、会社が、A社から組合員らの雇用終了に係る連絡を受けていたという事実は認められない。
以上のことからすれば、会社は組合員らの雇用終了について、雇用主と同視できる程度に現実的かつ具体的に支配、決定することができる地位にあったとはいえず、組合員らの雇用終了問題との関係で、会社は労組法第7条の「使用者」には当たらない。
イ Bによる組合員らに対する金銭要求問題
組合は、会社が本件金銭要求問題を起こしたことを認識した上で、Bを会社に派遣するようA社に指示するなど、会社におけるBの就労継続を決定することができる地位にあることを理由として、会社が労組法第7条の「使用者」に当たると主張する。
しかしながら、会社がBの就労継続を決定することができる地位にあったことを示す証拠は提出されておらず、これを事実であると認めることはできない。
また、会社がBの金銭要求問題に関与していた事実も認められない。
したがって、Bの就労継続及び金銭要求問題について、会社は雇用主と同視できる程度に現実的かつ具体的に支配、決定することができる地位にあったとはいえず、Bによる組合員らに対する金銭要求問題との関係で、会社は労組法第7条の「使用者」には当たらない。
ウ 結論
ア、イのいずれにおいても会社は、本件において労組法上の「使用者」に当たるとはいえないから、その余について論ずるまでもなく、本件申立ては、理由のないものとして棄却を免れない。
このページの所管所属は労働委員会事務局 です。