最近、テレビや雑誌などで、野菜や果物など様々な食品について「温州ミカンには、β-クリプトキサンチンという物質が入っていて、ガンを抑える効果がある」などというように、「○○は××に効果があって体によい機能性食品である」というような情報をよく目にします。
現在、この食品の機能は3つに分類されています。第一次機能として「栄養」に係わる機能、第二次機能として「嗜好」いわゆる美味しさに関する機能、そして第三次機能として「生体調節機能」です。この第三次機能が最近多く取り上げられている食品の機能性です。
第一次機能の栄養的機能は、食品の栄養素(炭水化物、脂質、タンパク質、ビタミン、ミネラルなど)において、ヒトの健康の維持・増進、成長発育に係わるものです。
第二次機能の嗜好的機能は、食品の味や匂い、見た目、歯ごたえといった、ヒトの感覚に対する機能です。食品は薬とは異なり、いくら有効な栄養があっても、味や匂いなどが悪ければ(まずい)受け入れにくいものです。また、「変な味がする」とか「色が変わっている」というように、食品の腐敗や異物の有無などを見分ける上でも、この機能が重要な役割を果たしています。
第三次機能の生体調節機能は、体のいろいろな機能を調節する機能で、大きく6つに整理されています。それは、循環系調節(血圧をコントロールする)、神経系調節(ストレスをやわらげる)、細胞分化調節(成長を促進させる)、免疫・生体防御(免疫細胞を増やしたり、ガン細胞の発現を抑える)、内分泌調節(ホルモンの分泌を助ける)、外分泌調節(消化酵素の分泌調節)というものです。これらは、生活習慣病の予防や回復など、幅広く作用します。例を挙げると、最初に述べた温州ミカン、リンゴやお茶に含まれるポリフェノール類の抗酸化作用(生体防御)などがあります。しかし、あくまでも食品ですので、食べてすぐ効くとか、食べたから必ず治るというものではありません。
「○○は××に効果がある」と紹介されると、スーパーマーケットでは店頭の品揃えや配置を変え、その食品はたちまち売り切れるという話を聞きます。しかし、1回食べただけで効果の上がる食品などはありませんし、それだけを食べ続けると栄養が偏ります。現代は多くの食材、食品が簡単に手に入り、様々な情報が自然に耳に入ります。これらに振り回されることなく、バランスのよい食生活を心がけることが大切です。
「医食同源」という言葉があります。人間は、80年の人生として8万回以上の食事を採ります。ただ単に食べ物を食べるのではなく、食品の機能を、バランスを考え、美味しく健康な食事を採りたいものです。 農業総合研究所では、これらの機能を含めた農産物の品質評価技術の開発を行っています。
※参考図書:「理想の健康食」鈴木建夫((独)食品総合研究所)、保健同人者、1998.