土壌還元消毒に用いる資材の作物収量等への影響を評価する試験をしています。
土壌還元消毒とは
土壌還元消毒は、土壌病害を防除する効果がある太陽熱消毒と湛水処理を組み合わせた方法です。
消毒の手順は、
(1)夏期に分解の速いフスマやショ糖等の有機物を圃場1平方メートル当たり1kg程度混合し、
(2)透明なビニール等で被覆して、
(3)設置していたかん水チューブ等で1平方メートル当たり100L程度水を施用します。
土壌の還元化(湛水と微生物が有機物をエサに増える時に酸素を消費するために起こります)や有機酸(有機物が微生物に分解されることで出てきます)等の効果により、稲わらや石灰窒素を用いた太陽熱消毒より低い地温でも土壌消毒が行えます。
土壌還元消毒の施肥上の問題点
土壌還元消毒にフスマを用いたとしましょう。フスマは単に土壌還元消毒の資材として考えてしまいがちですが、実はかなりの窒素を土壌に施用したことになります。フスマを土壌に1平方メートル当たり1kg施用しますと窒素で1平方メートル当たり25g程度となり、単純に化学肥料として換算するとキャベツやハクサイ1作分の施肥することになってします。こうしたことが本当に起こるのかどうか、土壌還元消毒に用いている資材が土壌や作物収量等にどのような影響をあたえるのかを調べる試験を始めました。
土壌還元消毒後の土壌中の無機態窒素
2003年の夏は、冷夏で雨の日も多く、試験開始が9月8日となってしまいました。太陽熱消毒後と比べ土壌還元消毒後は、被覆をはがした直後の土壌の無機態窒素は非常に高くなり、地力窒素も増加することがわかりました(図)。
土壌還元消毒後の作物の生育
また、太陽熱消毒後と土壌還元消毒後の圃場でコマツナとホウレンソウを栽培してみました。すると、コマツナとホウレンソウはほぼ同じ傾向で、葉長と葉色は土壌消毒処理の差がほとんどありませんでしたが、総収量と窒素吸収量は土壌還元消毒後の方が高くなりました(図)。
今回の試験結果から、太陽熱消毒と土壌還元消毒の間に見られる作物の窒素吸収量の差は土壌の無機態窒素の差ほど大きくないため、フスマからの窒素がかなり無駄になっていることがわかりました。
今後は土壌還元消毒直後の無機態窒素を効率よく利用する方法やフスマの地力増進効果等を調査していく予定です。