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更新日:2024年7月26日

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平成28年度「黒岩知事との“対話の広場”地域版(県西会場)」実施結果

平成28年度「黒岩知事との“対話の広場”地域版(県西会場)」の実施結果です

“対話の広場”地域版とは

“対話の広場”地域版は、知事が県内各地域に赴き、県民の皆さんと直接意見交換をする場です。

今年は「人生100歳時代の設計図」をテーマに、7月から11月にかけて県内5会場で開催しています。「人生100歳時代」のあり方について、会場ごとに設けた地域テーマに沿って、参加者の皆様と話し合いました。

知事写真

概要

黒岩知事との“対話の広場”地域版(県西会場)

テーマ 人生100歳時代の設計図・「ちょこっと田舎」生活-未病の戦略的エリアへの移住-
日時 平成28年7月12日(火曜日) 18時30分から20時00分
会場 県小田原合同庁舎 3階会議室
内容 1 知事のあいさつ

2 事例発表

  • 安田豊久さん(南足柄市在住)
  • 西川美佳さん(湯河原町在住)
3 会場の皆さんとのディスカッション(知事が進行役を務めました)
参加者数 142名

知事あいさつ

ようこそ、対話の広場にお越しいただきましてありがとうございます。神奈川県知事の黒岩祐治です。今年も対話の広場の季節が始まりました。毎年やっているのですが、今年は今日がスタートであります。

超高齢社会の到来人口ピラミッド図

今年の共通のテーマを「人生100歳時代の設計図」ということにいたしました。そしてこの県西地域は「未病の戦略的エリア」ということにしておりますので、そういったことを含めながら、今日のこの地域での個別テーマは「ちょこっと田舎」の生活スタイルということであります。「未病」という話と「ちょこっと田舎」というのが、どのようにつながっているのかということをご説明したいなと思っているところです。

ちょっとこのグラフを見ていただきましょうか。神奈川県はですね、圧倒的な勢いで超高齢化が進んでいきます。1970年はこんなにきれいな人口ピラミッドの形でしたね。85歳以上の人はほとんどいなかったんですね。ところが2050年になりますと、まったく逆の形になります。一番多いところが85歳以上。すごいでしょう。特に女性が多いですね。これだけ大きく変化する中で、今までのままでいたら絶対に医療が崩壊しますね。高齢者になったらみんな病院に行くとなったら、病院が崩壊しますね。

 

未病とは未病のグラデーション図

だから医療を守るためにも、社会保障のシステムを守るためにも今から変えなければいけないということです。そのためのキーワードが「未病」ということですね。健康ですか、病気ですかといって、病気になってから治すというのが普通のモデルですけれども、このモデルを続けていたら崩壊します。だから未病から改善していく。未病とは何ですか、と言ったら、健康と病気の間はこのようにグラデーションで変化する。むしろこの方が皆さんの実感ですよね。健康ですか、病気ですか、どっちですか、というよりも、何となく具合が悪いなと、この間を行ったり来たりしているというのが人間ですよね。これを少しでも白い方へ白い方へ持って行こうとすること、これが未病を改善するということですね。これをやっていくことによって、病気にならなくするという。これが一番大事だということです。健康な時代を長くしていこう、健康寿命を伸ばしていこうということでありますね。

 

未病とは未病のグラデーション図3段階

未病を改善するためには「食」というのがすごく大事な要素です。「運動習慣」、こういったものもすごく大事。「食」、「運動習慣」、「社会参加」、これらが未病を改善するには非常に大事だということであります。

こういったアプローチと最先端の医療技術を追求していく。例えば、再生・細胞医療とかですね、ロボット技術、それから医療の高度な情報化。こういった2つのアプローチを融合させながら健康な寿命を長くしていこうというモデルに変えていかないと、超高齢社会を乗り越えていけない。

これをヘルスケア・ニューフロンティアというふうに呼んで、このモデルを神奈川で作っていこう、超高齢社会を乗り越える神奈川モデルを作っていこうと、県西地域で進めているところです。

 

という中で、未病を改善して元気なご老人を増やしていこうとしているわけですね。2050年にはどういう状態になるかというと、実は100歳以上の人が、142人に1人いるんですよ。2050年になって私自身が生きていれば、まだ100歳に行っていないですね。96歳ですよ。私が96歳の時に100歳以上が142人に1人。すごいでしょう。ここに今日は百数十人いらっしゃいますけどね、このくらいの規模の人の中に100歳以上の方が必ずいるという時代がやってまいります。

そんな中、例えば、みんな元気なら良いですよね。みんな寝たきりだったり、みんな認知症だったりしたら、大変なことですよね。だからこれをグラデーション・モデルの中で改善していこうということであります。こうして未病を改善していくという中で、この問題をさらに突き詰めていくとですね、医療とかヘルスケアの話だけでは済まないだろうという感じがしてきたんですね。つまり今の普通の社会の生活モデルというのは、若い時に勉強して、会社や役所に入って、大体60歳で定年ですよね。後は老後というのが今までのモデルでした。でも100歳まで生きるということを考えてみてください。60歳で定年退職してまだ40年あるんですよ。40年間老後だとなったときに、これをどうしますかね。これまではこの部分の設計図がなかったんじゃないのかな。だからこの設計図をこれから描いていきましょう、ということですね。

これには2つ大事なアプローチがあります。1つは、皆さんお一人お一人で、自分が100歳まで生きるということを想定しながら、100歳のライフプランというものを描いていかなければならないということですね。今よくあるのは、一生懸命に会社で仕事をして、会社人間で頑張って、はい60歳で定年です、とやることがなくなって。突然地域に帰って、さあ明日から何をしようかな、という人がけっこう多いんですよね。私は今61歳です。ちょうど私の同級生くらいでそうなっている人がたくさんいますからね。これから後40年どうするのかが大変だから、自分自身で個人の設計図を描いていきましょう、ということがあります。

もう1つは、社会としての設計図も必要なんじゃないでしょうか。県はそういうときにどんなことができるのかな。どういうことに気配り、目配りしながらやっていかなければいけないのかな。今年は、そういうことを考える元年にしたいと思っているんですね。こういった議論を積み重ねながら、皆さんに考えていただくきっかけにするとともに、県として何をすべきだろうか、ということを探していこうと思っているところであります。

ですから、今日の皆さんの議論がものすごく大事なんですね。今日ここで皆さんから、こんなふうにした方が良いよ、という提案があったら、これはできると思ったらすぐに実現しますから。私が直接ここにいるわけですから。これが“対話の広場”の一番良いところでありましてね。

あまりこういう所で宣伝してはいけないんですけれど、私の本が出ましたので。ちょうど先週くらいから本屋に並び始めたホヤホヤの本で、「百歳時代-“未病”のすすめ-」。まさに今日のテーマそのままなんですけれども。100歳時代をどう考えるべきであるか、未病という流れの中、我々はどうやって生きていけばいいのか、ということを書いておりますので、こんなこともご参考にしていただきたいと思います。

今日の“対話の広場”はシナリオはありません。いつもそうなんですけれど、ゲストのお二人に「ちょこっと田舎」ということで、生活スタイルをお話ししていただきます。それを元に、皆さんとの“対話の広場”。対話があってこそ進んでいきます。どんどんご発言いただきたいと思います。

それでは最後までお付き合いよろしくお願いいたします。ありがとうございました。

事例発表

司会

はじめに、南足柄市在住の安田豊久さんをご紹介します。安田さんは5年前に都内から南足柄市へ移住されました。現在は新幹線で片道1時間45分をかけ、新宿の会社まで通勤されています。週末はご家族と観光を楽しんだり、市民農園で野菜を育てているとのことです。また、「南足柄みらい創りプロジェクト」という地域の活性化を目的とした地域活動にも積極的に参加されています。それでは安田さん、よろしくお願いいたします。

安田 豊久 氏(南足柄市在住・会社員)

南足柄の安田と申します。会社員をしておりますと、これだけしゃべりの立つ人の次にしゃべるという機会はほとんどないものですから、若干緊張しておりますけれども、10分間お付き合いください。

それでは、私の事例発表を始めたいと思います。

今日、お話ししたいのは、なんでこの地域に移住しようと思ったのか、移住してみてどうなのか、そして、今後私の人生100歳の設計図とはどのようなものか。まだ若いのでこれからなんですね。こんなことをします、というのをお話ししたいと思っています。

私は府中生まれなんですね。イギリスのダーラムという所でちょっと暮らした後、日本に戻ってきたという人間です。妻と小学生の子ども2人と仲良く暮らしています。

県西地域に移住しようと思ったポイントは、大きく3つあります。まずは、イギリスの生活に影響されたということがあります。イギリスでは、きれいな空気、水や食料の安全・安心は、生存権の一部として非常に明確に市民に認識されていて、結果として、非常に良い環境が守られています。さらに、多くの市民が、日常的に家族での散歩や語らいを楽しみながらですね、環境を享受していると。ということで、お金はかからないんですけれども、豊かな生活を送っています。

イギリスのダーラムの風景

こうした生活がしたいな、と思って日本に帰ってきたのですが、勤務地が新宿なものですから、どこか住める所はないかな、と20ヶ所くらい急いで探して、一番良いのが南足柄だったということになります。意外ですかね。意外なことはないと思うんですが。

これがダーラム、私が住んでいた所でありまして、歴史と自然、高い市民意識を併せ持つ、イングランド北東部でも有数のポッシュな(=きわめて優雅な)町です。本当にきれいな空気、水、自然が当たり前です。歴史もこのように残っていまして、サイズも適度で、本当に美しい町並みでゆったり過ごせる所になっています。

 

景観の維持には非常に厳しい市民の姿勢がありまして、この風景も、9世紀のデーン人の侵入から変わっていないという所ですね。当然、ゆったり散歩ができる所ですので、実際多くの市民が、家族で毎日散歩を楽しんでいます。車はほとんどないので、子どもが道を走っても大丈夫です。この美しい環境は強い市民意識が守っているんですね。当然、多くのボランティアや篤志家によって、維持されているということです。

実は、ダーラムと南足柄は非常に似ていまして、人口のサイズが似ています。それから人口密度も似ています。歴史的な宗教施設が中心なわけですね。健康や、食の安全・安心についての取組みも高い地域です。都市が近いからですね。気候はどちらも海洋性で温暖、湿潤。そして大きな山地を背後に持ちまして、良質な水と良質な水産物を享受できると。本当に素晴らしい所ですね。ダーラムと南足柄は、非常に似ていまして、一発で気に入って移住してきたという形です。

仕事は新宿に通っています。管理職です。何かあったらいの一番に駆けつけなければいけないんですね。通勤は至便なんです。ご存知のとおり、富士山が噴火して、伊豆半島が寄ってきて、丹沢が大きく盛り上がった関係で、県西部2市8町の地域は、呼んでいるわけではないかもしれませんけれど、東西の大動脈が全部ここを通っています。なので新宿に通うのに5つの経路から選択できるんです。なおかつ最短は1時間45分で通えると。非常に良い所です。

南足柄市の風景

実際に住んでみて、まずは想像のとおり本当に快適だと。新幹線は楽ちんで、たまにぜいたくして寿司などを食べながら乗っています。毎日ではないですよ。昔、中央線で1時間かけて通っていたんですが、その時からすると想像できないですね。

週末は散歩をしてこの環境を享受しています。百聞は一見に如かず、風景をお見せしますので、良い所だなと思っていただけたら幸甚です。

ここが住んでいる町ですね。富士山がきれいです。外輪山とビール工場の組み合わせは最高ですね。こんなふうに子どもとしゃべりながら、たらたら歩いていると。本当にきれいな街並み、花、木漏れ日、海、紅葉、伝統文化、陽だまり、落ち葉の香り。これらが普通にあるじゃないですか。当たり前だけれど、珍しいんですよ。こういった形で、子どもたちとたらたら歩いていると。特に水は本当に良いですね。皆さんも自慢だと思います。山あり、海あり。

 

子供と一緒に散歩

こうして散歩を通じて、こういった環境を味わえるということで、本当に家族と質の高い時間を過ごせていると自負しています。子どもは小学校2年生と4年生なんですけれど、30キロくらい普通に歩きます。大雄山からどのくらいの距離かというと本厚木くらいです。本厚木くらいまでとことこ歩けます。みんなにビックリされて「それは散歩じゃない」と言われるんですけれど、そういう散歩を楽しみます。 

 

畑の風景

あとは農業もやっています。こうした畑を子どもと一緒に耕しながらやっています。今年はジャガイモが非常によくとれましたね。7ケースくらいとれて、どうしようかと思っているんですけれども。500平米くらいの畑を借りています。何が良かったかというと、まずは食育ですね。アレルギーやアトピーといったものもないんですけれども、本当に野菜が大好きという子どもに育ってくれました。あとは、食べるもの、飲み物、健康に配慮して育てるようになったというのが、こちらに来てからの大きな変化です。このように家族で協力しながら、家族に貢献しようと思って、一生懸命親の背中を見せられるかどうか分かりませんけれど、作り育てる苦労と収穫の喜びを学習しているという日々です。

いろんな過ごし方ができるんですが、もう1つ、この地域は非常に歴史がありまして、いろいろと伝承芸能などがあるんですね。こういったものを子どもに伝えていただけるような機会もたくさんありまして、子どもはそれに参加することで、社会に貢献しているようないっぱしの自負があったりするんですね。そういうのは本当に素晴らしいことだと思います。市民意識というのはそういうところから始まるんだろうなと思います。

 

これまでが、どういうふうにこの地域で暮らしてきたか、良いところはこういうところだよというメッセージなんですが、これからは、私の「人生100歳の設計図」ということで、まずは当たり前なんですが、今は本当に良い生活を送っていますので、未病を改善して健全な時間を過ごしていきたいなと思っています。続いて、この素晴らしい時間を過ごさせてくれる地域にどうやって貢献できるか、ということで、そういった時間をちゃんと持っていきたいなと思っています。

先ほど知事からお話がありましたけれども、川崎ほどではないんですけれど、南足柄でもどうしても高齢者の比率が上がって、若い人は減少していくというのは事実で、これはもう決まったことなんですね。なのでシニア世代が若者の世話にならないということが最低限必要なことになってくるんじゃないかと思います。

南足柄市は富士ゼロックスと共同で地域住民参加型の地域活性化プロジェクトを実行しておりまして、多くの活性化策が生まれてきています。私もこの活動にがっつり入っていまして、産官学金労言の皆さんと地域の方、いろいろな方と協働させていただいています。「南足柄みらい創りプロジェクト」についてはですね、興味がある方は追ってお声がけいただければと思います。

ポイントは、この中核にいらっしゃる方がほとんどシニアの方なんです。これは狙った形ではなく、結果的にこうなっているんです。多くの方が、定年後も地元への愛情を強く持って、地域をより良くしたいということで、自腹を切って試行錯誤していらっしゃるんです。実際に、多くの活動テーマで、リーダーとして学者や若者を束ねて、牽引していらっしゃいます。長くこの地域に住んでいたり、長く問題意識を持ち続けていらっしゃるので、内発的な動機付けが尋常ではないんですね。じゃあ、頑固かというと、そうではないんです。何とかしてやりたいことを実現したいと思うので、若い人やよそ者の声に耳を傾けてくれるんです。こういった柔軟さというものが、達成意欲、蓄積された知見、地に足がついた経験と統合された形で、若者である我々に向かってきますので、若者は自然と敬意を抱いて慕うようになります。で、結果としてリーダーになるということなんです。時には、舌鋒鋭く指摘されるようなこともけっこうあって、私も気おされてしまうんですが、だからこそ我々も負けられないぞと頑張るような構図が成立しているということです。

そんな代表的な熱いシニアに、矢倉沢の植田さんという方がいらっしゃいます。この方は静岡からの移住者なんですけれども、この地域で本当に良い時間が過ごせるので、何とか恩返ししたいということで、地域の役割を買って出ていらっしゃいます。定年後に、例えば、障害者施設で働かれたり、いろいろなボランティアをやられたりしています。

私も移住者です。この地域で本当に良い6年間を過ごさせていただいています。何とかこの地域で、みらい創りなどの活動を通じて地域に貢献しながら、100歳まで生きていきたいなと思っているわけです。

とは言えですね、まずは健康ありき。未病を改善して良好な健康状態を維持しながら、一市民として、長く地域に貢献できるシニアになりたいと、私は42歳なんですけれども、そういうふうに思います。

この素晴らしい地域が、より素晴らしく、小生が100歳になる2073年まで維持・管理され、小生の孫、ひ孫が、地域の皆様と質の高い人生を送れるよう頑張りたいと思っています。小生の発表は、以上になります。ご清聴ありがとうございました。

司会

続いて、湯河原町在住の西川美佳さんをご紹介します。陶芸作家である西川さんは、同じく著名な陶芸作家のご主人、西川聡さんの夢である、海の近くでの生活を実現するため、2004年に湯河原町にご家族で移住され、お住まいと工房を構えられました。また、陶芸作家としてご活躍される一方、中学生と高校生の2人のお子様のお母様でもあり、仕事に子育てに多忙な日々を送られています。それでは西川さん、よろしくお願いいたします。

西川 美佳 氏(湯河原町在住・陶芸作家)

みなさん、こんばんは。湯河原町から来ました西川美佳です。今日は、この会のテーマが「ちょこっと田舎」生活ということで、お話しさせていただくことになりました。

半地下の倉庫を改造した工房

私と主人は陶芸作家をしており、主人は4年前から大学の教員もしています。4人家族で暮らしており、今、長男は17歳、次男が13歳になります。私たち家族が、東京の羽村市という所から、この神奈川県の湯河原町に移住しまして、今年で12年目になります。

私たちが引っ越しを決断した一番大きな理由は、陶芸の工房を作るためでした。その頃の東京の工房は、借家の畳を取り払いコンパネを敷いた即席作りのもので、手狭でした。冬は寒いし、何かと不便でしたので、どこか少し広い場所に自分たちの工房を持ちたいということで探し始めました。

主人も私も釣りが好きで、海沿いの街に住みたいという夢がありました。主人はその頃から、東京の美大の非常勤講師をしておりましたので、東京に通えて、海の近くという条件で熱海あたりまでで探しました。海と言っても、どうしてこちらの相模湾方面にしたかというと、主人は愛知県出身で、学生時代の帰省の折、東海道線の鈍行でよく帰っていたそうです。その時、根府川あたりで景色がパアーッと開けて海が見えるのに、とても感動して印象的だったそうです。

 

主人は、釣りを兼ねながら何度もこちらに通い、家を探しました。最後にたまたま入った真鶴の駅前の不動産屋で、ちょうど条件の合う家を見つけることができました。私たちが家を探していた頃には、市町村の役場に移住に関する窓口があまりなく、自力で探さなければいけなかったんですね。移住者に不動産など斡旋する窓口があれば良いなということはとても強く思いました。

ともあれ、私たちの家探しの条件は、まず予算。それから工房のために、ある程度の広い土地が必要でした。子どもたちの通う学校の場所、保育園、そしてその頃長男は喘息がありましたので、入院もできる病院というのも条件の1つでした。小児科が近くにあるかどうかも調べました。それらの条件がすべて揃う家を、湯河原町で見つけることができました。

陶芸の窯小屋

購入した中古の家は半地下の倉庫があり、そこを工房にすることができました。家も主人が、壁紙を剥がし、珪藻土を塗りセルフリノベーションしました。陶芸の窯を入れる小屋も友人の手を借り自分たちで建てました。

工房は、私と主人が二人で作業するのには十分な広さがあり、窯も3台備え、仕事がとても効率よくできるようになりました。何より、大きな木に囲まれている工房は、常に鳥の声が聞こえ、涼しい風が吹き、森の中にいるようでまったくストレスを感じません。私も主人もこの工房で、思い切り作品を作ることができ、この10年間で新たなキャリアを築くことができたと思っています。

次に、湯河原町での子育てについてお話しします。主人は今、美大で教えていますが、最近は、子どもの頃に手を動かす大切さを痛感しているようです。今の子どもたちは、生まれた時からゲームや携帯、ネットがあり、遊び方が激変しています。私たちが小さな時に経験したようなことになかなか触れる機会がありません。自然の中で身体や手を動かし、いろいろなことを工夫しながら遊ぶこと。そして、美しいものを見て、感じて、五感を育てること。それはこれから子どもたちが生きていくうえで、とても大切な、大きな力になるのではないかと思っています。

 

つくしの写真

 

湯河原町は山も海もあり、山にはきれいな川が流れています。釣りは一年を通して楽しめます。夏には、海でボディボード、シュノーケリング。川では、ヤマメや鮎を釣ったり、きれいな美しい虫を見つけたり。我が家には、取った魚は自分でさばくというルールがあり、息子たちは小さな頃から、包丁を持ち自ら魚を料理してきました。今では、私よりも魚をさばくのが上手なくらいです。

息子たちは現在、高校2年生と中学2年生になり、学校と部活で忙しくしていますが、夏休みなどに時間ができれば、友人を誘って海に行ったり釣りに行ったりしています。息子たちは本当に湯河原の自然を愛しており、そこから環境問題に興味を持ち、そこにつながる社会問題などにも目を向けるようになってきたと思っています。これはつくしですね。私の大好物なんですけれども、つくしもよく採れます。

次は私たちの仕事についてお話しします。私たちは、普段の活動は、主に都内や地方のギャラリーで個展を行い、注文していただく 作品を作っています。私は作品に絵付けをしています。緑が多く、様々な草木が生えそろう湯河原に来てからは、植物のモチーフを描くことが多くなりました。主人も花器に生ける花はその辺から摘んできます。自然に見られる造形の美しさや多様性は、いつも私たちにものづくりのヒントをくれます。私たちにとってこの環境で作品を作れることは、本当に恵まれていることだと思っています。

 

 

小学校の壁に描いたイラスト

 

最後に、地域との関わりについてお話しします。移住者にとって、移住したその地域社会にコミットできるかということは、難題の一つと思われます。私たちは、子どもたちが保育園、小学校に通う中で、PTAや子ども会を通して、だんだんと地域に溶け込めた気がします。子どもたちが通った、湯河原町立東台福浦小学校は、全校生徒が140人ほどの小さな学校で、保護者同士も仲が良く、PTA活動も盛んなとてもアットホームな雰囲気の学校でした。そんな中で、私たちも自然に友人が増え、地域に受け入れられていったように思います。

子どもたちに陶芸を教えるボランティアも長く続けています。その1つが、保育園でご飯茶碗に絵付けをするというものです。これは卒園プレゼントとして行われました。「うちの子は、食が細かったのだけれど、あのご飯茶碗ではよく食べた」なんて言われると、とても嬉しいです。それから、小学校では、土鈴作りもしています。今年は、東台福浦小学校の3年生25人に土鈴作りを教えました。子どもたちは、自由な発想でとても楽しんで作ってくれました。とてもかわいい作品でした。子どもたちが様々な経験をすることで、その人生が豊かなものになってくれればいいなと思っています。こちらは、小学校の壁にボランティアで絵を描きました。

また、3年前からは「湯河原真鶴アート散歩」というアートイベントの実行委員もしています。コンセプトは「町の文化祭」ということで、展示できる作品が5点あれば、どなたでも参加できるというイベントです。湯河原町、真鶴町の人たちがアートを通して交流の輪を広げてほしいという思いから始めました。今年も11月に開催し、63会場が参加予定です。会場は、個人宅もあれば、店舗やカフェ、レストラン、公民館、図書館、ギャラリーなどもあり、多種多様なアート作品が展示されます。ぜひ、今日おいでのお客様も見に来ていただければと思います。

湯河原町、県西地域は、横浜、東京からは十分に通勤圏です。ストレスの多い都会を少し離れて、豊かな自然に囲まれて暮らすことは、私たち家族にとっては最良の選択だったと今でも思っています。今日はどうもありがとうございました。

意見交換

知事

ここからはキャスターに戻って進行いたします。

今のお二人の話を聞いていると、なんだか住みたくなりますね。今日あらためて思いましたが、小田原で発表するだけではなくて、東京でやりたいですね。

冒頭では言わなかったですけれど、実は移住というのは大きなテーマになっているんです。安倍政権の大きな柱の1つに「地方創生」というのがあるんですね。地方がどんどん崩壊して、人がいなくなって、高齢化が進んで、もうぼろぼろだと。だから東京圏から人をどんどん移住させようという話が進んでいるんです。さっき言った超高齢社会、これもですね、高齢者の皆さんにどんどん地方に移住してもらおうじゃないか、東京圏は介護の状況がなかなか厳しいけれども、地方に行ったらまだ余裕があるから、地方に移住しましょうということを一生懸命進めているんですよね。

その中で、「ちょっと待ってくれ」と言っているんですよ、私は。生まれ育った故郷に戻るんだったらまだ分かりますけどね、そんな縁もゆかりもない所に突然高齢になってから行けと言っても、それは無理な話じゃないですか。それだったら神奈川で。神奈川は、さっきの話にまさに出てきましたよね。東京の生活ではなくて、この神奈川のちょっと西の方に来ただけで、こんなに豊かな自然の中で生活できるんだという。今、政府はめちゃくちゃ田舎に行けと言っているんですよね。神奈川は「ちょこっと田舎」だ。「ちょこっと田舎」だけれど、通勤もできるし、何かあったらすぐに都心にも行けると。こういう所にあって、しかも豊かな自然の中でいわゆる地方のような生活もできますよ。だからこの神奈川の、特に県西部とか三浦半島とかいった地域を、「ちょこっと田舎」というのは神奈川の大きな特色なんだ、しかも東京の近くなんだということで、これを立てることによって、移住はこちらにという流れを作ろうと訴えているということでもあるんですね。

それから今、超高齢社会の高齢者の話がありましたけれども、ゲストのお二人ともまだまだお若い。子育て世代が移住してくると、こんなにも楽しい豊かな生活があるんだということを、まさにお話しいただいたということでありまして、私もイメージは描いていましたけれども、実際に直接話を聞いて、本当に素晴らしいなって思いましたね。この話をどんどん広めていったら、どんどんこちらに移住してくるんじゃないかなと思った次第です。

皆さんとの対話に行きたいんですけれど、まず私の方から安田さんにお伺いしたいと思います。農業という話が出てきましたね。500平米ですか。そこでどんなものを作っていらっしゃるんですか。

安田 豊久 氏(南足柄市在住・会社員)

もちろんキュウリとかナスとか一般的な野菜もありますし、あとはイタリア野菜、最近流行ですよね。あとはカボチャだとか本当に面積がないとできないくらいのもの。手がかかって幅も取りますよね。そういうのをどんどんできるという本当に素晴らしい土地だと思います。

知事

それでその農業というのは、誰かから教わったんですか。

安田 豊久 氏(南足柄市在住・会社員)

これはですね、私はまったくの素人から始めまして、たまたま近くを通った軽トラに乗っている方などがですね、「いやいや、兄ちゃん、ちょっとそれは違うよ」と仕立て方を教えてくれたりとか、もっと株間を広げろとか、ここはマルチしないとなかなか畑では厳しいよとか、そういうことをいちいち教わりながら覚えていったものでして、何かしら専門的な研修を受けているとかですね、実は府中で百姓をやっていましたとか、そういうことではございません。

知事

素人でも始められるんですね。これが面白いですね。軽トラのおじさんが突然教えてくれるという。こんな雰囲気があるというのも面白いところだなと思いますけれども。

西川さん、陶芸というものをやろうと思って、探してこっちに来られたと。最近湯河原は有名になっていますけどね、この有名な湯河原の中で、確か細川護熙元首相も陶芸をやっていらっしゃいますよね。

西川 美佳 氏(湯河原町在住・陶芸作家)

そうですね、私はお会いしたことがないんですけれども、軽トラに乗った細川さんをよくお見かけするという話を知り合いからは聞いております。

知事

陶芸をやっていらっしゃるような方が集まって住んでいる所があるんですよね。相模原の藤野という所。そういう方がいっぱい住んでいらして、ある種の芸術村みたいになっている所があるんですけれど、今の話を聞いていると、湯河原でも、そうやって陶芸をやってらっしゃる方がどんどん集まってくると、同じような感じになってきますかね。もうなっているんですか。

西川 美佳 氏(湯河原町在住・陶芸作家)

湯河原も、小川待子さんというすごく高名な陶芸家の方もいらっしゃいますし、アーチストの方もいっぱい住んでいらっしゃいますね。陶芸家も多いです。

知事

そうですか。ここが第二の藤野みたいになってくると、また面白いですよね。

西川 美佳 氏(湯河原町在住・陶芸作家)

そうですね。藤野はそういうものではすごく先駆的で、もう何十年も昔からアーチストを受け入れて、町興しではないですけれども、そういう形ですごく盛んになってきた所なので、ぜひ湯河原もそういうふうになったら良いと思います。

知事

そうですね。藤野の場合には、外国からもいろんな方が来て住んでいらして、そこが一つの芸術村みたいになっていて面白い。これから湯河原もそんな形になってくると面白いなと思いましたね。はい、ありがとうございました。

さあ、それでは皆さんと“対話の広場”を進めて行きたいと思いますけれども、質問でも良いですし、100歳時代ということで、私はこんな生き方をしているんだということもあるし、県はこんなことをやったらどうだというような提案でも良いし、何でもけっこうです。それでは参ります。

参加者1(鎌倉市・男性)

今、大学生で、鎌倉から新宿の大学まで1時間ちょっとかけて毎日通っています。

本当に、県西部とか三浦半島の方とかもそうなんですけれども、すごく良い生活ができるというか、特に高齢者の方々がお住まいになるには素晴らしい土地だと思います。それはもう知事さんやお二方からお話があった通りだと思うんですけれども、特に未病の対策ということで考えますと、シニア世代の方がですね、自発的に対人交流だったり、知的好奇心だったり、運動というものをやっていくのが良いんじゃないかなと思っていて、その自発的というのがポイントかなって思うんですけど、いやいややらされるんじゃなくて、自分からやりたいなと思ってやっていくと、健康で長生きできるかなと思うんですね。そのために、特にこの県西部とかに、生涯教育の場と快適な住環境、ここは自然が豊かなので大丈夫だと思うんですけど、あとはいざという時の医療体制、この3点がそろったサービス付き高齢者用住宅のようなものがいっぱい建つと、より県西部の方に住んでみようかなと思う高齢者の方が増えるのではないかなと思うんですけれども、いかがでしょうか。

知事

そうですね、今、医療の話もちょっと出てきましたけれども、田園暮らしをしているのはいいけれども、いざとなったときに病院がそばにないとなったら、これはちょっと不安だな。安田さん、このあたりはどうですか。

安田 豊久 氏(南足柄市在住・会社員)

医療ということについては、県西地域はですね、中核病院となる大きな病院である足柄上病院、小田原市立病院というのがあります。あとはヘリコプターで先進的な所へ運んで行く、いわゆるドクターヘリなどもありますので、子どもを2人育てていますけれども、医療のことで困ったと思ったことは一度もないです。

知事

西川さんは、先ほどお子様が喘息だったと言っておられましたけれども、医療の関係ではそんなに不安はないですか。

 

西川 美佳 氏(湯河原町在住・陶芸作家)

そうですね、湯河原町は隣の熱海市に国際医療福祉大学熱海病院という大きな病院がありまして、うちの子はそちらの方に入院したことがあります。そういうふうにボーダーを越えて隣の県とかにも大きな病院があって、そちらは大丈夫でした。

知事

熱海も近いんですよね。熱海がむしろ近いんですよね。

西川 美佳 氏(湯河原町在住・陶芸作家)

熱海の方がむしろ小田原よりも近いんです。

知事

そうですか。では静岡県の病院も使ってしまえるという特権もあるようですね。

確かにそういう視点は大事ですよね。ただ単に田舎の生活をしていれば良いというものではないですからね。そのへんの安全・安心は大事だなと思いますね。

参加者2(小田原市・男性)

ちょっと変な質問をしてしまうんですけれども、移住っていうキーワードだと思うんですけど、それは例えば、小田原とか県西部に住んでいる人が別の所に移住しようと考えている場合もあると思うんですね。そういう人たちにとってですね、私みたいにですね、最初から住んでいる、生まれた時から住んでいる人間が、きれいな空気とか安全な食物とか良い水とか美しい町並みとか言われてもですね、はっきり言ってピンと来ない。どこかに移住した方が良いんじゃないかって思ってしまう感じがするんですね。そういった方たちもそうですし、移住したいと考えている方たちに対してですね、きれいな空気や安全な食物や良い水や美しい町並みをアピールするには、どういった方法があるのかということをお聞きしたいんですけれども。よろしいでしょうか。

安田 豊久 氏(南足柄市在住・会社員)

本当にですね、あちこちに行っていますけども、地域の人って何でも当たり前で何もないとおっしゃるんですよね。だけど、そんなことはないんです。それを我々みたいなよそ者が敢えて言葉で発して、ここが良いところですよと。そして共感していくとみんなピンと来るという感じで、実は私、みらい創りという活動の中で、地域住民の方とこういう話をよくします。「うちは何もないでしょ、だから買い物に行くのも大変で。」とか皆さんおっしゃるんで、多分そんな感じですよね。

でも若い学生が最近来るようになって、彼らと話をすると、1回やっぱり東京に出るんですよね、大学で。18歳から22歳くらいまで出るんです。みんなやっぱりあの空気、人ごみ、それから水の嫌な感じに慣れないもので、帰って来たいと思うんです。帰って来れるかどうかは、都会の魔力に取りつかれてしまう人も中にはいるんでしょうけど、そういうふうに他を知ることで、経験することでやっぱり分かっていただけますし、戻ってくるのかなと、私は思います。自己了解するというよりは、そういう他者を通して、そういう経験を通して知っていく形になるかなと思います。

西川 美佳 氏(湯河原町在住・陶芸作家)

主人も私も地方出身者で、東京にあこがれて最初は東京に行きました。やっぱり子どもを産み育てる中で、選択肢として自然が多い場所ということで移りましたので、若いうちに、一度都会に行って住んでみると良いと思います。それはそれでやっぱりいろんな刺激がありますので、そこは吸収して、それから自分が住んでいる所の素晴らしさというのを絶対に再認識できると思います。

知事

経験者の発言は重みがありますね。説得力がありますね。自分たちが元々住んでいる町の魅力って意外に自分では知らない。これはよくあることです。だから、地域再生の物語で3つの要素が必要だとよく言うんですね。それは、「よそ者、若者、ばか者」と言うんですけどね。

よそ者の目ってすごく大事で、そこにずっと住んでいる人は地元の良さが分かっていないんですよね。よそから来た人が「そこがすごいじゃないですか」と言っても、「何がすごいんですか。こんなものがすごいんですか」みたいな感じで。「きれいな空気なんて当たり前じゃないですか」という反応。よそ者に「これはすごいんですよ」と言われて、そこで発見するとか。そして若い人がそういう原動力になるとか。ばか者というのは、とにかくこだわりまくって、がーっと進めていくようなそういう人が合わさると、地域がぐんぐん元気になってくるということでありますけどね。はい、ありがとうございました。

参加者3(小田原市・男性)

若い人が続きましたので、ちょっと年寄りになりますけれども。私もこの小田原に移住をしてまいりました。北海道に住んでいて、冬の雪が嫌で、雪のない所を選んで移住したんですけれども。そこでですね、北海道の良さとこちらの良さ、両方掛け持ってですね、感じたことなんですけれども。実は北海道は土地が広いこともあって、知事はパークゴルフってご存知ですか、こちらの方に来てですね、神奈川県全体に於いて6ヶ所しかないんですね、遊べる所が。で、北海道ではちょっとした町には6ヶ所くらいあるんです。

そこに誰がどんなふうに集まっているかというと、家族連れの方もいますが、50パーセント以上はシニアです。今日はどこに行こうかと考えて、人とお話がしたくて病院に行く人たちもいるんですね。そこで話題が豊富になるから。だけれども、そうじゃなくて太陽の下でパークゴルフを楽しんでいる人たちが圧倒的に多い。そしてどこかの町長さんが言っておられましたけれども、医療費を節約するにはパークゴルフ場を作ればいいんだと。足がちょっと痛くても病院に行っている暇がないくらいに、パークゴルフに専念する。一日中やっている人もいる。太陽の下でパークゴルフをやって、理屈抜きに楽しくてしょうがない。そういったことで、未病というか、難しい言葉をいう前に、病院に行く暇もないほどパークゴルフが好きな人がいると。そんな行政をですね。ちょっと肩を叩いてあげれば、そのくらいの感覚で、病院に通うよりは外で楽しんでみてはというそれが、ここの地域には非常に少なすぎると思っています。

知事

いやあ、ありがとうございます。これは外からいらっしゃった方の目から見ての、ここにはこれが足りないぞという指摘。こういうのがすごく大事ですよね。確かにパークゴルフなんて誰でもできますもんね。これからどんどん高齢化してくる中、そういったところはもっと整備していく必要がありそうですね。具体的な提案をありがとうございました。

参加者4(小田原市・男性)

先ほど知事も通っていただいたと思うんですけれども、入り口の所に展示してあった「田んぼアート」というのをやっていまして、もう4年目になるんですけど、1年目は皆さんに笑顔になっていただきたいということでニコちゃんマークの絵を描きまして、2年目は、小田原は昔ブリがいっぱい捕れた所で、ブリが捕れた頃のように活気が出てほしいということでブリの絵をやりまして、3年目が猪鹿蝶、今は森林がけっこう荒れていまして猪とか鹿がけっこう大量に発生していて、けっこう森が荒れちゃっているということで、それをいろんな方に知っていただきたいということで、猪鹿蝶の絵をやりました。

今年は山北町の方にちょっと移動しまして、私たちの水源ということで、Our Water Source という英語の文字を描きました。秋に字が出てくると思うんですけど、もし皆さん、機会がありましたら、秋の9月頃ですね、山北町の谷峨駅を降りてすぐですので、見に行ってください。

私も大学時代に東京に出たりして、小田原以外の所を見てきて、また小田原に戻って来たんですけど、皆さんやっぱり自然が良いということで小田原やこちらの地域に来られたと思うんですけど、自然がだいぶ汚くなっちゃったなというのが正直なところで、やっぱりどうにかしなきゃなというのを感じています。こっちに移住してくる目的の1つに自然環境があるということで、皆さんが移住してくる要素の1つかなと思いまして、その環境をずっと次の世代にも続けていきたいと思うんですけど。

こっちの方に移住するときに、空き家がいっぱいあるんですよね。うちは小田原市街地の本当に古い地域に住んでいるんですけど、空き家がいっぱいあって、それが売りに出されていないとか、貸しに出されていないとかで、住みたいという方もけっこういるんですけど、実際借りられないとか住めないという方がいっぱいいるんですよ。農地を壊しちゃって、そこに家を新しく建てるというのはどうかなと思うんですよね。皆さん、ここの魅力というのは自然環境なんで、農地があることもその1つなので、それを壊しちゃうとどんどん魅力が落ちて行っちゃって、もしかして、自然環境がなくなっちゃうと、引っ越して来られても結局また引っ越して行ってしまう可能性もありますよね。だから家とかはなるべく農地を壊さず自然を壊さず、移住をしてきていただきたいなというのがあります。以上です。

知事

はい、ありがとうございます。この空き家問題というのは、超高齢社会の中でも非常に大きな問題でありましてね。どう活用するかということは、それぞれ皆さんで工夫してやっていただきたいなと思います。移住を希望する方がいらっしゃるわけですからね。うまくリフォームされたりして住みやすくなるような形になれば、そこで新たな生活を始められる。西川さんは、中古の住宅を改装してお住まいになったということですよね。だから空き家の対策というのは非常に大事な大きな問題だと思いますね。ありがとうございました。

参加者5(南足柄市・男性)

知事が日夜ですね、我々の健康のために精一杯頑張ってもらっているという点では、感謝申し上げたいというふうに思います。それから、安田さんと西川さんには、県西部に来ていただいて大変ありがたい。大いにですね、PR、活躍をですね、広く皆さんに知っていただいて、やっぱり地域の良さというものを活用してもらいたいというふうに思っております。

ただ、知事がですね、我々の健康のためにこれだけ熱意をもってやっていただいているということはありがたいことなんだけれど、問題は、私は健康というのは1つには「食」、2つには「運動」、3つには「気持ち」ということだとね。ゲストのお二人の報告で何が良かったかと言ったら、どこの部類に属するかと言ったら、「気持ち」なんです。要はどこに住んでいても、自分の気持ちを自分がどうコントロールするか。そして回りがその人たちの気持ちをどうコントロールするか。ここがポイントではないかというふうに思います。

具体的に医療問題でもですね、必ずしも国民一人ひとりのための医療行政がなされているか。否です。いかに経済的追求が医薬業界に横行しているかということは、これは大変過激なスクープとして、今問題になっている週刊現代ですか、2週か3週か、とにかくやってはいけない手術、飲んではいけない薬と、大々的にやっていますね。まあ私は医療業界にこういうセンセーショナルな問題を投げかけるというのは非常に良いことだと。一番大事なのは、私は自身の、いわゆる社会からいろんな影響を与えるそのものをどう受け止めて、どうこなしていくか、そこがポイントだと。

極端に言うと、気持ちの問題では自分との戦いで、先ほど100歳というふうに設計をおっしゃいましたけれども、100歳まで生きるというプロセスを自分が描いたら、ならば設計をどうしていくか、日常生活をどうしていくかということで、まず、自分の気持ちを「俺は100歳まで生きるんだ」ということであれば、まず気持ちは勝ちなんですよね。

私はよく病院に友人、知人の見舞いに行きます。そこで発する言葉によって、ああこの人は帰れるな、この人は帰れないな、というのが分かります。それは何かというと、「もう俺は年だからよ」と言う人に帰って来た人はいません。「まだまだ負けるか」というふうに自分の気持ちで戦っているという人は、必ず帰って来ます。こういうメンタルなものをですね、いかにみんなに訴えていくかということが、大事だと思うんですよね。

私は、県も財政的に大変厳しいと思うので、未病ということでざっくばらんに言います。地域の行政がどういうふうに受け止めているかというとですね、未病を題材に予算をもらうんです。観光行政に位置づけたりという感覚でいるということは、私は耳にしています。やっぱり本当に効果的な金を使うという点ではですね、そういったメンタルなもの、今の医療業界を継いで、そして本当に正しく自分を自分が導いていくという方向を示唆しなければいけないんじゃないか。今日はその辺、皆さんは「良い子、悪い子、普通の子」で言うと、みんな「良い子」です。関心があるから来てるんです。問題は「普通の子」を「良い子」にするにはどうしたらいいか。ここを考えなきゃいかんと思うんですね。その辺で、僕は積極的な議論をしていただきたい。知事が未病を訴えてから今日まで、どこにどういう効果が表れたか。例えば健診が増えた、自然にそういう健康診断が増えてきたというような意識の向上だとか、そういうのがどこに表れているか。そういうところを検証しながらですね、効果的な対策をしなければいかんではないかというふうに思います。特に今日、重ねて言いますけど、自分の気持ちをどう評価し、自分の気持ちとどう戦い、付近の人たちとどういうふうに上手く上げていくかというところが大事だと思います。以上です。

知事

ありがとうございます。非常に的確な鋭いご指摘だと思いましたね。先ほどご紹介した中で、未病を改善する3つのアプローチ、「食」、「運動習慣」、もう1つ書いてあったのは「社会参加」だったんですね。「社会参加」と入っているとちょっと不思議な感じがすると思いますけれども。千葉県の柏市で超高齢社会の問題をずっとリサーチしてこられた東京大学の辻哲夫先生は、元厚生労働省の事務次官ですけれども、この人が中心となってあの3つの要素を書いてくれた。その時に彼が「『社会参加』と入れるべきです」と言ったんですね。つまりどういうことかというと、まさに気持ちなんですね。良い食事をして運動もやっている。でも誰ともコミュニケーションができなくて孤立化してくると、未病を改善するにはマイナスだということなんですね。だからやっぱりコミュニティってすごく大事なんですよ、という話でありました。

それとともに未病という発想の中、あのグラデーションで少しでも白い方へ持って行こうというときには、まさに「気」というのがすごく大事ですね。今、「気持ち」とおっしゃいましたけど、「気」というのが。「気」が高まってくると、良くなってくる。実感として分かりますよね。先ほどのお話の中にもあった、パークゴルフをやっている。パークゴルフをやっていると、要するにすごく発散して、自然の中で気持ちがいい。それが元気につながってくるということだと思うんですね。例えば、美味しい空気を吸って、美味しい水を飲んで、魚を釣って楽しんでいくと「気」が高まってくる。これがやっぱり大事なんです。病気になってから病院に行って薬をもらって治すというモデルではなくて、それを放棄するわけではないけれども、そういう普段の日常生活の中で「気」を高めていくということ、これが未病を改善するために非常に大事なことだと思うわけですね。こういうことをずっとやってまいりまして、まずはこういった考え方を広めていくというところから始まりました。具体的にどんな成果が出てくるかは、これからいろいろな所でデータを積み重ねていって検証していきたい。そして、神奈川ではそういう取組みをしたからこんな効果が出たでしょう、ということを世界に発信したい。そんなふうに思っているところですね。

ありがとうございました。

参加者6(大井町・女性)

実は私も東京の武蔵野市に住んでおりまして、6年前に大井町に越してきました。何が良くて来たのかというと、富士山です。富士山は静岡と山梨ばかりのものではないんですね。神奈川から見た横側はとても美しい富士山なので、それが気に入って越してきたということがあるんです。

さっきもどなたかがおっしゃっていましたが、ずっと大井町に住んでいらっしゃる方は、ご自分の町の良さに案外気がついていない。私は6年前に来て、6年間住んでみて、すごく住みやすくて良い町だなというふうに感じています。地元で長く住んでいらっしゃる方がこの良さが分からないのだったら、私が、よそから来たよそ者だとさっき言われましたけれども、よそから来た者がよりPRをして、どうぞ皆さん来てくださいという宣伝もしなければいけないのかなと思いました。

特に武蔵野市はセカンドスクールというのをやっていまして、第2の学校ですけれど、東北とか長野とかけっこう遠い所に行っているんですが、神奈川県があるじゃないか、大井町があるじゃないかと。すぐ近くにこんなに良い所があるんだから、農業体験をするんだったら大井町へおいでというふうに言ってあげたいし、大井町は今、耕作放棄地がけっこうありまして、そういう所で子どもたちも含めて体験しながら作物を作るっていう経験をすることは、非常に子育てや教育にとって良いことだと思うので、そういう経験をさせてあげたいなと思って、今度東京に行った時には必ず大井町の宣伝をしようかというふうに思っています。

それと、先ほど空き家のことが出てきましたが、大井町も空き家がけっこうあるんですよね。使い道についてはこの間議会の方でも提言をされたようなんですが、わざわざ高知の梼原(ゆすはら)まで見学に行っているんです。山北とか松田とかすぐ近くで空き家のいろんなアイデアなんかを出してやっているのに、遠くまで行って、結局結論として何を持って帰って来たかといったら、高知県はリノベーションをするための補助金を付けてくれるけれど、神奈川県はないって言われたんですよね。それはないんじゃないのと。ないんだったら知事に頼んでみるとかね。ちょっと予算を付けてくださいとか、そういうふうにする手法もあるんじゃないかなっていうふうに思ったのがひとつあります。

それと先ほどの高齢者の方の社会参加ということに関してなんですが、私はときどき高齢者の施設、デイサービスとかグループホームとかいろいろ行ったりするんですが、そこで本当に100歳に近い人、98歳とか96歳とかいう方たちから、傾聴ボランティアでお話を聞くんですが、頭の中がすごくすっきりと冴えているんですね。昔のことを非常に事細かに、大井町では昔はお蚕さんを飼っていて桑を育てていたんだよとか、たばこを育てて1枚ずつ数えていたんだよとか、そういう話を聞いてくるんですよ。逆に私の方が勉強になるんですね。だから高齢者の方の社会参加のうちの1つに入るかもしれないんですが、過去のご経験だとかいうものの話をしてもらう。若い人たちはそれにすごく興味があると思うんですね。だからそういう話をしていただく機会を作るっていうことも社会参加の1つではないかなというふうに思いまして、私も町の方にはいろいろ働きかけもしていきたいと思うんですが、県の未病対策の一環になるのかもしれませんけれども、そんなことも1つのアイデアとして入れていただけたらよろしいのではないかと思います。以上です。

知事

はい、ありがとうございます。非常に具体的な提案がありました。空き家リノベーションのための予算ということもありましたけれども、何かいろいろ工夫をしながらやれることがあるんじゃないかなと思いました。県の財政はなかなか厳しいので、「はい、これをやりましょうよ」となかなか言えないんですけれども、知恵を絞れば何か出てくるんじゃないかなという感じがしましたね。

社会参加には実はいろいろな形があるんですよね。「自分は役に立っている」という感覚がすごく大事だなという話。実は去年の“対話の広場”で話をしている時に、この「百歳時代」の本の中にもまさにそのことが書いてあるんですけれども、ある介護施設を経営していらっしゃる方の話によると、認知症の患者さんは、彼のやり方によると要介護度が改善してくると言うんですね。僕は勘違いをしていて、認知症の人はもう良くはならなくて、せいぜい悪くなるのを止めることくらいかなと思ったら、改善すると言うんです。どうして改善するのかと言えば、助けてはいけないと言うんですね。お世話しちゃいけないと言うんですよ。「え、お世話しないんですか。どうするんですか」と聞いたら、自立支援ということなんですって。

面白いことを聞きましたよ。「散歩に行きましょう」と言うと、「冗談じゃない、散歩なんて行っていられない」とみんな嫌がるんですって。ところが「街に出て通りに行って、掃除をしましょう」と言うと、みんな行くんですって。あとは例えば、「料理を作ってください」と言って、施設のスタッフが料理を作って食べさせてあげるということだったら、みんなまったく受け身になってしまうんですが、認知症の人に「お母さん、料理を作ってよ」と頼むと、「分かったよ」と言って料理を作ってくれる。それで施設のスタッフが台所に入ってこようとすると、「男が台所なんか入るもんじゃないよ」と言いながら、そのお母さんが作ってくれる。

そういうことをやって、自分がやったことが役に立っているという感覚をみんなが持つと、要介護度が改善してくるという話になって、その中で問題点を指摘されたんです。そういう介護施設で要介護度が改善されたときに、今の介護保険制度では、その施設に入ってくるお金は減らされると言うんです。そんな馬鹿なことはないでしょう、何とかしなければいけないなと思って、ついこの間、神奈川県はすぐにその対応をしました。頑張った介護施設が報われるという新しい制度を、その“対話の広場”で出てきたことを受けてやったということもありました。

先ほども傾聴ボランティアという話もありましたが、こういうことも一つとして、いろいろな形でメニューとして提示できると思いますね。ありがとうございました。

参加者7(小田原高校生徒・女性)

高校生からの視点ということで、今日は小田原高校から4人来ているので、一緒に話をさせていただきたいと思います。

今回参加するきっかけというのは、私自身は小田原に住んでいるんですけど、高校生になってちょっと遠い地域から来る友だちが増えて、小田原が田舎か都会かという議論になったりしたので、「ちょこっと田舎」という話題に興味を持ったというのと、昨年も“対話の広場”に来させていただいて、未病について学ばせていただいたので、その話を少し発展させることもできるのかなと思い、今回この“対話の広場”に参加させていただきました。

参加者8(小田原高校生徒・女性)

今回のテーマについて小田原高校の生徒に県西の良いところを聞いてみるのも面白いと考えており、できれば小田原高校生から寄せられた意見をまとめて、ホームページなどで紹介できればいいなと思っています。

参加者9(小田原高校生徒・男性)

現在小田原高校では、地域の小学校、中学校と連携して、地域の交流プロジェクトをしているんですけど、地域の方々にも参加してほしくて、それが社会参加につながると思うんですけど、それを県の方でも少し後援していただけるとうれしいなと思っています。

参加者10(小田原高校生徒・男性)

先日小田原高校で文化祭がありました。その時に、生徒会の主催で地元のいろいろなものを紹介するということで、2年前からそういうプロジェクトをやっていまして、2年前が寄木細工で、去年がちょうちん、今年が小田原おでんを販売したんですね。それが今までと比べ物にならないくらい売れて、好評だったんです。小田原高校のみんなに採ったアンケートとかでもすごく好評で、それを発展させると、小田原にはいろいろなものがあるのと、県西地域に広げても良いのですけど、いろいろなものを紹介していきたいなと思っています。

文化祭では、小田原高校の玄関はけっこう広く取ってあるんですけど、その中で去年小田原市の保健センターの人に来ていただきまして、たばこの害とかそういうことに関するブースを開いてもらいました。来年は、「未病」とか「ちょこっと田舎」についてのブースを取ることを神奈川県の方で考えていただきたいなと思っています。以上です。

知事

いやあ、うれしいですね。小田原高校はなかなかやりますね。県庁の中でも小田原高校は幅を利かせてますよ。そういうアグレッシブな感じがすごくうれしいですね。

1つ約束しますよ。県のホームページを開けてください。そこに「かなチャンTV」というのがあるんですよ。県がインターネット放送局を作ってしまいました。そこで、県の中のいろんな情報を発信したいなということで、毎日日替わりで番組を作っていますから。小田原高校にその時間を差し上げますから、皆さんが言いたいことについて3分以内の動画を作って出してください。「かなチャンTV」で小田原高校が提案することはこれだ、というようなことをやってください。これは約束します。

小田原おでんというのは美味しいんですか。

参加者10(小田原高校生徒・男性)

美味しいですよ。

知事

小田原にはかまぼことかいろいろありますからね。練り物があるから美味しいんですかね。皆さんにも新しい小田原名物を作っていっていただいてね。我々もぜひ応援したいと思います。はい、ありがとうございました。

参加者11(小田原市・男性)

私は小田原在住で、南足柄に住んだり、御殿場に住んだり、都内に勤務したり、厚木などで勤務したり、いろんな所を見てきました。都内に行くとやっぱり空気が違うので苦しかったです。

そういったことをやりながらいろんな所を見ていて、35歳になりますけど、今まで会社員をやっていました。今後、会社員を辞めて農業や土木をやっていくことを考えています。実家が元々自営でして、父の技術もちゃんと継承したりというのもありまして。

で、ひとつ提案という形で考えているのが、地域に貢献できる、みんなで楽しめる自然とのふれ合いの場というのを考えています。どの世代でも楽しめるような、例えば、動物たちとたわむれられたり、自然や植物とたわむれたり、スポーツも楽しめる場、そのような全体的な総合施設がどうかと考えています。

参加者12(湯河原町・男性)

小田原生まれで湯河原在住です。彼(※参加者11)は私の甥っ子なんです。

松沢知事の時にですね、「ふれあいミーティング」にはもう何度も、大和まで行って再三お願いしたことがあったんですけど、知事の任期は3期ということで、禁煙条例、分煙、健康には一番の害だと言われる副流煙、すべて日本で一番トップに立ってやってもらって、都知事選に出ないのかなとか楽しみにしているんですけど。舛添さんもある意味お友だちなんですけど、湯河原をたいへん有名にしてくれて、湯河原の別荘はピザが焼けて、ソファが置けて、「クレヨンしんちゃん」の書籍が並び、有名なアーティストの絵画がヤフー・オークションで7,000円から買い揃えてあると。

私のことを言いますとですね、私はものづくりの町ということで浜松にすごく興味を持ちまして、私の姉が私の誕生日に「太平洋ひとりぼっち」という堀江謙一さんのヨットの冒険の本を買ってくれたんです。それを見てこれしかないと思いましてね、ヤマハ発動機ボート事業部という所でヨットを学ぼうということで、それは製造から学ぼうということで、とにかくヨットを作りたい、自分で作って太平洋を、地球を一周してくるぞというような夢を描いていたんですが、しょせん“浜名湖のかわず”であって、乗る場所は毎週末、当時週休2日制が珍しい時代に、日曜、月曜日の2日間、ヨットを浜名湖の少し塩辛い所で。いつまでも私は“浜名湖のかわず”をやっていないでいつか太平洋を攻めてやると思いました。その当時、有名な戸塚ヨットスクールの戸塚先生と知り合いまして、ロサンゼルスから沖縄海洋博にかけて、ヤマハ製のウィング・オブ・ヤマハというオレンジ色の平べったいでっかいヨットに乗船。

まあいろいろと言いましたけれども、私はJターンですから、Jターンというのは移住とは違うんですよ、実家に入りたいけれど敷居をまたげないような事情もありましてですね、湯河原に移住したと。湯河原は別天地じゃないですか。ハイビスカスが咲き誇っちゃって、ブーゲンビリアだっていっぱいある。

まあそんなわけでね、長い話をすると怒られちゃいますんで、とにかく湯河原は最高であるということで、私は移住コンサルタントということで、新しい展望を描いてですね、なかなか進まない広域農道の海の見える丘をですね、パラダイスにすると。まあそういうことを考えております。県庁には1週間に3回くらい電話してます。

知事

本当に面白い話をありがとうございます。

参加者13(住所不詳・男性)

知事のご活躍には常々感心しております。私も介護関係者として補助金が出るというのは非常にありがたいなと思っています。ありがとうございます。

今日のテーマといいますか、未病というテーマで何度かやられているんですが、今回は「ちょこっと田舎」への移住ということで、空き家の話とかいろいろな問題があると思うんですが、根本はこの土地にいる人が出ていくから空き家ができるんです。人口がいなくなるんです。ですから、私も地元でやっていまして、私の子どもの世代は地元にいられないんです。仕事がないと。だから東京に。学校も含めてそうだと思います。小田原で言うと、関学ももう外れるとか、そういう話も出ていますんで。外からいろんな形での移住とか、そういう活性化も良いですが、要は今この地で一番活躍しなきゃいけない世代の方たちが生活しづらい。子ども会がどんどん解散している。PTAも崩壊している。これが現実というもののはずなんです。

ですから、そういう方たちが活躍できるような環境をどういうふうに作っていくか。どういうふうに行政としてサポートしていくかということを、ご検討いただければと。

知事

ありがとうございます。非常に重要な視点ですね。仕事がないから、ここにいようと思ってもいられないんだという話ですね。

ここで皆さんがいろんな新しいビジネスを起こされることをサポートするということもあるでしょうし、その他に我々が今やっているのは企業誘致策ですね。ですから南足柄市にも富士フイルムがやって来た。あれは誘致策があったから来ているわけですね。それで、今我々は「セレクト神奈川100」という新たな誘致策を作りました。今我々は未病コンセプトというものを立てているわけです。新しいヘルスケアの分野というのは、新しいマーケット、ビジネスのチャンスだということで、この旗を立てていることによって、今、世界的にもアピールしているところですね。これによっていろんな企業がどんどん入ってくるということを、我々は目指してやっているわけです。

具体的なことで言いますと、例えば横浜にアップル社がやって来ました。アップルが横浜に来たというのは衝撃的な出来事です。何で来たかというと、アップルはウェアラブルという、手にはめているだけで身体の中のいろんな情報が出てくるというウォッチを開発している。あれはまさに未病コンセプトですから。やはりコンセプトをしっかり立ててやっていると、ちゃんと企業は来るんだということは実感しているんですね。この未病コンセプトによってどんどん引きつけていこう。特にこの県西部というものを未病の戦略的エリアというふうに位置づけておりますので、これをどんどん特化することによって、新たな企業を誘致し、ここに新たな雇用の場を生んでいきたい。そういうふうに考えています。ありがとうございました。

参加者14(南足柄市・男性)

この地域は自然が豊かで元気な人たちが多いし、元気なお年寄りもけっこう多いんですけれども、そういった元気なお年寄りたちは車に乗って、軽トラとかでどんどん活躍しているんですけれども。年になってきますと、車の運転ができなくなってしまうと、社会参加もなかなかできなくなってしまうというのが、急な壁として立ちふさがっております。

それはお年寄りだけじゃなくて、例えばそのお年寄りに、お子様として障害を持った方がいる場合、自分で送迎とかをしていた場合に、お父さんお母さんがつぶれてしまったときに、急にお子さんも社会参加ができなくなってしまって、一家そのものが困ってしまうということがあります。

特に県西地域の方ですと、中心部の方は大丈夫なんですけれども、端の方ですよね、車もちょっと難しくなってきたりとかしますと、バスもあまり通っていなかったりとか、電車もあまり通っていなかったりとかしています。そういった環境というのを整備していかなければいけないかと思っております。福祉って言いますと、高齢あるいは子育て世代というふうになりますけれども、障害を持った方々の支援というのはなかなか謳われていないというのが現状だと思っております。未病とか健康とかいうところでもそうですよね。障害を持った方々というのは、ずっと永続的に病気を持ち続けております。なのでそういった方々の支援というのも必要かと思っております。

私は社会福祉法人南足柄さつき会という所で働いておるんですけれども、ちょっと宣伝になってしまうんですけれども、平成28年9月の24日の土曜日に南足柄市の女性センターの方でですね、シンポジウムを行います。暮らしやすい地域づくりについて、ということで、精神障害の方が3名と病院のケースワーカーさん、精神保健福祉センターの方、南足柄市の商工会会長の方にも参加していただきまして、どうやったら暮らしやすい地域をつくれるか、どうやったら障害を持っている方々がのびのび生活できるのかというのを話し合っていこうと思っておりますので、ぜひ参加していただきたいと思っております。また、先ほどお伝えした通り、障害を持った方々にも視点を置いていただきたいと思っておりますのでよろしくお願いいたします。

知事

はい、ありがとうございます。

確かに、歩けなくなるとか、車を運転できなくなるとかなってくると、動ける範囲がずっと狭くなってくるという現実がありますよね。そういった問題は地域で何とかみんなで支え合うということがまず基本だと思いますけれども、こういったアプローチとまったく違ったアプローチでやっていることもあるんです。先ほど冒頭でご説明した最先端の医療とか、最先端のロボット技術ということでアプローチをしようという。2つのアプローチを言いましたね。未病を改善するアプローチと最先端の医療技術のアプローチ。最先端の中にはそういうことも入っているんです。

実は藤沢でですね、ロボットタクシーの実証実験というのをやったんですね。これは県央部です。県の真ん中の相模原、厚木、藤沢、このあたりは「さがみロボット産業特区」になっているんです。このロボット産業特区を活用して、ロボットタクシーとは何かと言ったら、無人のタクシーです。超高齢社会になってきたときに、こういったことによって歩けなくなった方の活動の範囲を確保しようと。ドライバーが迎えに行かなければダメだということではなくて、電話で呼べば無人のタクシーが迎えに来て、それに乗って買い物に行けるという。その実証実験をこの間やりました。まったく事故がなくできたんですね。これは実用化に向けてどんどん進んでいますから、実現はそんなに長い先ではないです。これは全国で初めてですよ。実際に、公道を使ってロボットタクシーの実験をやったというのもあります。

それとともにロボットスーツHALというのもありまして、これは足が動かなくなった人がHALという介護スーツを装着して、脳から「歩け」という信号が出るとその信号によって皮膚を流れる電流をHALがキャッチして、そしてモーターを回す。そのロボットが歩いてくれるというようなスーツは、元々は筑波大学で開発したものなんですけれども、ロボット産業特区だからということで藤沢の辻堂にやって来て、ここで湘南ロボケアセンターという拠点を作ってくれまして、それだけではなくて今度は川崎にサイバーダインという大きな会社を持ってきてくれるということになっています。こういったものが普及してくると、機能を失われた方のサポートいう形が最先端のテクノロジーでできるようになる。こういうふうな両方のアプローチを今進めているところであります。

参加者15(松田町・女性)

初めて参加させていただきます。皆さまのいろいろな意見を聞かせていただきまして、たいへん参考になりました。

移住というテーマですが、私どもは会社を座間市から県西部の山北町に移転したばかりの株式会社トヤマでございます。いつもお世話になります。

私たちは一人で生きて営業しているのではなく、地域の皆さまと一緒に生かされているという思いで、地産地消をモットーに営業しております。

子会社のファームでは有機野菜の生産をしておりまして、社員食堂も経営しております。

現在は地域の皆さまのために、社会参加の一環で、現在は予約制ではありますが、工場見学をしていただいたり、山北の有機野菜を使いました社員食堂も利用していただいたり、イベントなどもしていただいております。

まだまだいろんな可能性があると思うんです。当社は300人収容できる講堂を持っております。トヤマの強みは山北町という県西の端っこですので、富士山がすごくきれいに見えます。私も松田町に住んでおりますが、また違った景色を見ることができてとても感動いたします。その景観と山北の野菜などいろいろなコラボレーションを考えておりますので、このような会もぜひ当社で開催していただけたらと思っております。

また天体望遠鏡と自然学習室、社長の趣味で図書がたくさんありますので、今後は開放いたしますので、子どもたちの感性を磨くお手伝いもさせていただきたいと思っております。どうか皆さま、地域参加でトヤマを利用してください。よろしくお願いいたします。

知事

はい、ありがとうございました。愛社精神にあふれる方ですね。

民間がしっかりと乗り出して来ようとするのは非常に大事なことですからね。これは続けていただきたいと思います。

参加者16(小田原市・男性)

こんばんは。5年前に小田原に引っ越してきました。

自分は里山保全とか森にすごく興味を持っていまして、知事は山登りとかされたことはありますか、丹沢とか。

知事

ちょこっとだけあります。

参加者16(小田原市・男性)

で、保全をするにあたって、林業家であったり、山の保養とかガイドの育成なんかも必要じゃないかなと思っているんですけれども、何かお考えがありましたらお聞かせいただきたいです。

知事

ガイドですか。

参加者16(小田原市・男性)

ガイドというのはレンジャーみたいな、この植物はこういうものでとか。

中島副知事

今、丹沢の山の森林を再生していこうという取組みを、皆さまから個人県民税の超過課税をいただいて、計画的にやっているんですね。また、下草刈りのボランティアの人を集めたりですとか、まさに山の中でレンジャー、専門家を雇って、いろいろと巡回などしています。例えば山が荒れている様子などを皆さまに伝えたりとか、かなり幅広く水源環境保全というコンセプトでやらせていただいているんですけれども、それには私たちだけでは無理で、皆さまに参加をしていただくような取組みというのもどんどんやっていきますので、ぜひご参加をいただきたいというふうに思います。貴重なご意見、どうもありがとうございます。

知事

はい、ありがとうございました。なんだかあっという間に時間が過ぎてしまいましたね。今日はやっていて、皆さん、前向きな話がほとんど全部で非常に有意義でありました。

この県西部というのはすごく魅力があふれている所だなということをあらためて実感した次第です。今日ここにはすごく問題意識が高い方がいらっしゃっていますが、そういう問題意識を持っていない方をどうやって巻き込むかが実は一番大きな課題なんですよね。しかし、どこからか始めていかなければいけないですから、今日はひとつのスタートになったのかなと思いました。

今日の皆さんの話の中から、ひとつあらためて発見したのが、富士山というキーワードがあったことです。県西部から見える富士山というのも、実は素晴らしい景観なんだ。これも神奈川県西部の大きな魅力のひとつなんだ。このようなことも、人を引きつけてくる、移住をどんどん促進してくるための大きな力になるのかなと思いました。

何と言っても、県西部をなぜ私が未病の戦略的エリアにしたかというと、山もあれば、海もあれば、豊かな農作物もとれるし、温泉もあるし、豊かな人情もあるし。そういう生活ができる素晴らしい要素が全部、未病を改善するための大きな力なんだ。それをもっている所ですよ。だから未病の戦略的エリアとしたわけでありまして、これは間違いではなかったなと思いますけれども、今日ここで話した議論を、冒頭でも言いましたけれども、やはり県西部の中だけで話すのではなくて、外に向かって発信していく、外で議論するようなことが非常に大事だなということをあらためて実感した次第でありました。

安田さん、西川さん、すばらしいプレゼンテーションをありがとうございました。最後までお付き合いいただきまして、皆さん、誠にありがとうございました。


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電話 0465-32-8903

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