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更新日:2019年2月1日
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研究員コラム
1 採卵作業(内水面試験場 山田敦)
2 神出鬼没!・・・クチボソの謎(内水面試験場 勝呂尚之)
前回、雌雄判別のお話をしましたが、今回はその後の採卵作業についてです。
毎年秋になると、試験場で育てた親アユから卵をとる作業(採卵)を行い、アユの種苗生産用の受精卵を供給します。
まず、雌を収容している飼育池からアユをすべて取り上げ、1尾ずつ手にとり、お腹の感触から、今日卵を産むアユ、今日は産まないアユと選別します。この判断ですが、柔らかい感触と少し押しただけで卵が出るというのが採卵するのに一番いい状態です。そして、今日産むと判断されたアユだけを集めます。
これを2~3日ごとに繰り返し、卵成熟のピークにうまく当たるようにしますが、タイミングを逸すると、雌の体内で卵が過熟となり採卵に適さない卵となってしまうのが難しいところです。
雄も同様に、お腹の感触で精子が出るアユを選別しますが、雄の場合は長期間精子を出すことが可能なので、事前に状態を把握し、別水槽に集めておきます。
次に、採卵作業に入ります。採卵に適した雌のお腹をそっと搾って採卵を行い、同様に搾った雄の精子を卵にかけます。ただし、この時、受精はまだ行われていません。精子は水に接することで運動性能を獲得し、卵と受精することができるので、水を張った小さな水槽内に入れます。
今シーズンは、夏の異常な猛暑とそれに伴う飼育水温の上昇で、成熟時期の遅れと併せて受精卵の成熟そのものがうまくいかず苦労しました。これは、親魚に相模湾産の短期継代親魚(※)を使用していることから、自然の影響を受けやすい天然に近い性質=人為的なコントロールを受けにくいということかもしれません。
いかにコントロールするかが親魚養成技術ですが、短期継代親魚は一筋縄ではいきませんね。
熟度鑑別 採卵
採精 受精
私の故郷・川崎市北部は、昔は農村地帯で、現在の小田急線・新百合ヶ丘駅付近も水田と雑木林が広がっていました。今の駅前・南側となっているあたりには、「魔女の池」と呼ばれる不思議な池がありました。季節によって色が変わるので、魔女がいたずらをして色を塗りかえるとか、魔女が姿を変えた謎の生きものが住んでいるなどと言われ、子供たちからは恐れられていました。私は魚が好きだったので、魔女の噂は少し気になりましたが、この池によく友達とザリガニ採りや魚釣りに通いました。
しかし、小さい魚が多く、なかなか針にかかりません。池のほとんどの魚は「クチボソ」で、正式な和名は「モツゴ」と言います(写真1)。名前のとおり、口が小さくエサ取りの名人で、フナ釣りの皆さんからは嫌われています。私もフナ釣りの仕掛けでがんばりましたが、ウヨウヨ集まってくるのが見えるのに、全く釣れません。悔しかったので釣り具屋のおじさんに相談し、針を袖型の1号!に落として、やっと5cmサイズのクチボソを2尾釣ることができました。よく見ると繁殖期の♂で、いつもは地味な体色が紫がかってとても美しく、他の友人たちはザリガニしか釣れないので、「すごい、すごい!ちょうだい、ちょうだい!」とせがまれましたが、魚は是が非でも自分で飼いたかったので困った記憶があります。
この「クチボソ」ことモツゴですが、実は神奈川県を含め関東地方では、非在来種とされており、何らかの原因により西日本から広まったと考えられています。関東地方では、本来はシナイモツゴが生息していましたが、ほとんどの地域でモツゴに置き換わってしまい、シナイモツゴは、絶滅した可能性が高いそうです。モツゴはとても強い魚で、環境の変化によく適応し、都市部のコンクリート水路や水が汚れたため池、公園の池などにも生息しています。不思議なことに、川と繋がっていない噴水池や防火用水の小さな池にも、どこからともなく湧いて?出現します。人気の釣り魚でもなく、食用とする地域もごく一部なので(写真2)、放流する人がいるとは考えにくく、詳細はまったく謎です。モツゴの卵は「付着卵」と言って石や木にくっつくので、鳥の足や造園の池の水草などに付着して、運ばれてくるのかも知れませんね。
このモツゴとシナイモツゴはとてもよく似ており、外見上の大きな違いは側線で、尾部までちゃんとあるのがモツゴ、体側の途中で途切れるのがシナイモツゴですが、交雑個体などもいてなかなか判断が難しいようです。実はシナイモツゴは、きちんとした過去の生息記録や標本がないため、神奈川県のRDBでは「情報不足」のカテゴリーにせざるを得ませんでした。県内での生息地や標本の情報があれば、是非、試験場までお知らせ下さい。
写真1 一般に「クチボソ」と呼ばれるモツゴ 写真2 モツゴの佃煮(霞ヶ浦産)
企画研究部企画指導課
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