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更新日:2024年1月25日

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神奈川県水産技術センターコラムno.35

神奈川県水産技術センターコラムno.35

2020年1月10日号

1 川の魚釣り(内水面試験場 石黒雄一)

2 当たり前の魚がない!!(企画指導部 荻野隆太)

1 川の魚釣り(内水面試験場 石黒雄一)

 川での釣りについて、国の研究員の方が実態を調べていて、その結果を聞く機会がありました。川での釣りというと、毎年6月1日に「アユ釣り解禁」というニュースが多く報道されるなど、川の釣りといえばアユ釣りをする人が多いのだろうな?!と思っていました。しかし、調査結果では釣り人数の1位はヤマメ・アマゴ、2位はイワナ、3位はニジマスと上位を渓流魚が独占し、アユは4位、結構意外でした。しかもアユ釣り人口は年々減っているようなのです。確かにアユ釣りは敷居が高い!とよく耳にします。竿は高価、友釣りという特殊な漁法、それに伴い様々道具がいるなどなど、というのがその要因のようです。そのため、新たに始める人が少ないのがアユ釣り人口の減少に拍車をかけているようです。一方で、どんな魚を釣りたいかというアンケートでは、アユは堂々の1位!。皆さんやっぱり川の釣りというとアユなんでしょうね、食べてもおいしいですし。だから始めるきっかけがあればもう少しアユ釣り人口を増やせるのではと考えられています。
 そこで、各地でアユ釣り人口を増やす取組が行われています。敷居の高さを何とか低くするために、アユの友釣り体験、子供たちを対象とした釣り教室、釣り具のレンタルなどなど。また、友釣りは初心者には難しいので、毛鉤を使った比較的簡単なアユ釣りを広める取組も行われています。そんなこともあり、私も、今年アユ釣りデビューを果たしました。やはり敷居が高いのでまずは毛鉤釣りから、そして友釣り名人から手ほどきを受け友釣りにも挑戦!。釣果は・・・、まだまだ初心者だから仕方ないと自分に言い聞かせ、6月の解禁を待ちわびているところです。
 川釣りを始めると、川の様子がすごく気になり、さらによく見るようになりました。台風による激変もそうですが、川の濁り、水量、浅瀬や深場などの場所、河川の改修、ごみの散乱、いろいろ気になります。川で釣りをする人が増えることで川の環境に少しでも多くの人が気にかけ、魅力的な川がいつまでも持続することが大事だなと仕事柄はもちろん、一釣り人として思っています。


 アユ釣りを楽しむ人々 子供アユ釣り体験教室

 アユ釣りを楽しむ人々子供アユ釣り体験教室

2 当たり前の魚がない!!(企画指導部 荻野隆太)

 私は2001 年から18 年間に亘り、普及指導員として、三浦地区、長井~鎌倉地区、湘南地区の3地区を担当し、漁業者と共に様々なことに取り組んできましたが、最近浜を廻って感じることは「その季節で当たり前に獲れるはずの魚が減少している!」ことです。


 私の廻ってきた各地区から一つずつ、例を挙げます。
 1 つ目は、三浦地区のサバです。2005 年に「松輪サバ」のブランド化~PRに取り組みました。全国的にもブランドとして有名になり、漁も安定していたのですが、2015 年以降、漁場に行ってもサバの魚群がないことが多く、低調な漁模様が続いています。松輪サバは別格ですが、本来、大衆魚と言われるほどたくさん獲れるサバの10 年経過後の資源量の変わりようには驚きです。
 2つ目は、長井~鎌倉地区のアカモクです。2009 年以降、邪魔者扱いだった海藻、アカモクの製品化・有効活用の普及に取り組みました。アカモクは、「鎌倉あかもく」のブランド化等を通じて当県の新名産となりましたが、地先に根ざす海藻であるアカモクも10 年後の2019 年には相模湾側で激減しています。
 3 つ目は、湘南地区のしらすです。湘南と云えばしらす丼!2009 年以降、「湘南しらす」ブランドPRに取り組みましたが、最近3 年間は漁模様が低調な状態が続いています。
 他にも、松輪や長井地区で盛んなイカ釣漁で夏場に釣れるはずの漁場で釣れなかったり、定置網でその季節に獲れるはずの魚も軒並み減少していたりしています。
 そして、こういった状況は神奈川に限ったものではありません。北海道のサケを対象とした定置網にサケが入らずブリが大漁!!とか、秋の食卓の主役、大衆魚のサンマが不漁、全国的に「当たり前に獲れるはずの魚が獲れない!」傾向があります。


 この原因として筆頭に挙げられるのは、海水温の上昇です。
 海水温の上昇は、魚の回遊・分布エリアに変化をもたらし、漁場形成に影響を及ぼします。また、アカモクや養殖ワカメといった冬場に成長する海藻類は水温が高いと成長が悪く、アラメやカジメも暖海性のアイゴやウニ類による食害により減少して磯焼けが起きています。海水温の上昇は、海藻類を餌とするアワビやサザエといった貝類の漁模様にも悪影響を及ぼしています。
 加えて、大型魚の餌となる「海の米」カタクチイワシ資源の減少も原因の一つだと思われます。カタクチイワシを餌として集群するサバやイカ釣漁では漁場形成がなく、餌を求めて沿岸に来遊する大型魚を漁獲する定置網漁でも漁獲量が減少しています。
 

 当たり前の魚が少ない一方で、増えているものもあります。より水温が高い西方から回遊するサワラやキハダ、トラフグ、カマス(年変動が大きい)、貝類では、海藻ではなくプランクトンや懸濁物を捕食するハマグリ、その他、定置網に時折入網が見られるサクラエビ等です。海の環境や魚のトレンドは10 年間の短い期間でも大きく変化するので、それに合わせた新魚種の開拓やブランド化、増養殖の推進等は、当センターの重要な課題だと思います。
 私の担当地域では、減少しているアカモクの増殖や、生産量が伸び悩んでいる養殖ワカメ用としてより高水温に適応する暖海性ワカメ種苗の導入~品種改良、新たな漁獲対象となるハマグリ増殖に重点的に取り組んでいます。
 特にハマグリは、安定して漁獲できるようになれば、先行の藤沢市漁協の「湘南はまぐり」同様、地域の料理店や観光ホテル等の目玉となる可能性も秘めています。ハマグリ増殖に向けて、鎌倉、腰越、両地区の若手漁業者と一丸となって取り組んでいます。3 年後のコラムで、「新名産!鎌倉の地はまぐり」の記事を、ぜひ書けるようにしたいですね(^^)/

 松輪サバ鎌倉あかもく
全国的に有名となった 2012年にかながわブランドに登録された

「松輪サバ」 「鎌倉あかもく」 
 

はまぐり特採調査はまぐり 
 若手漁業者によるハマグリ特別採捕調査の様子

地元で生れ育った稚貝も確認され、新たな対象として漁業者も期待を寄せています! 

 

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●湘南はまぐりについて
/documents/57264/column19.pdf


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