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更新日:2021年1月8日
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1 アユの漁場が露わに!(内水面試験場 石黒雄一)
2 20年の時を超えて!? かながわのハマグリ普及の原点(企画指導部 荻野隆太)
依然として収まらないコロナ禍の中、多くの皆様が大変なご苦労をされていることと思います。このような状況の中、3密を避けるレジャーとして魚釣りを体験した人も多いのではないかと思います。
12月4日号のコラムでアユ釣りのことが掲載されていてアユ釣り続きになりますが、私はアユ釣り漁場についてお話しさせていただきます。
河川での釣りの代表格はアユ釣りかと思います。アユの主な釣り方は「友釣り」という独特な漁法で、アユが餌となるコケの生えた石の周りに「なわばり」をもつ習性を利用した釣り方です。そのため友釣りは良い餌場となる石の存在が重要で、良い石を見定めることが釣果につながると言われています。
石!?川ならどこにでもあるように思えますが、アユの生息には25センチ以上の巨石が重要であるという研究報告があり、単に石があればいいというものでもないのです。
そんなアユ釣り漁場ですが、その漁場の様子を一目で見る機会がありました。私の勤務する内水面試験場は相模川沿いに位置していますが、先日、突然川を流れる水が減り始め数日間で水が無くなり川底が露わになったのです。これは護岸などの工事の関係で、川筋(川の水が流れる道筋)を変えたためでした。試験場の前の川はアユ釣りシーズンになると多くの人がアユ釣りを楽しんでいるまさにアユ釣り漁場になります。そこで露わになった川底を観察してみると、頭大の石がゴロゴロしており、良いアユ釣り漁場であることがうなずけます。ただ、よく見てみると、川底や石の上に乗っているだけの石と、川底などにはまり込み埋まっている石とが見受けられます。アユの生息にとって良い石とは、大きさだけでなく石の下側に隙間がある石=浮き石の状態が重要であることも報告されています。餌場にもなるし、流れが緩くなり休息もとれる、隙間もできるので隠れ場にもなり、このような石がアユの生息にも、そしてアユ釣りにも絶好な場所になるようです。
近年、アユ釣り人口の減少しているため、漁業協同組合が釣り人から徴収する遊漁料が少なくなり、水産資源の維持・増大に支障が出る恐れがあります。釣り人を増やすにはやはり魚が釣れることが大事な要素になります。今回川底を露わに見た感じから、例えば浮き石を人の手で造成し、アユが生息する場所を作って「好漁場区」なんていうのを設定しても面白いのかなと思う次第です。。
アユ釣りシーズンの通常の川
水が無くなり川底が露わになった川
様々な状態の石
近年、海水温上昇や磯焼け等により漁獲量の減少が顕著ですが、今年は、新型コロナウィルスが追い打ちをかけ、高級魚の魚価安により水産業は更に厳しい状況です。そんな中、鎌倉地区の漁業者と共に、ハマグリ(チョウセンハマグリ)を増やし、新たな漁獲対象~名産品とする企画に取組んでおります。詳しい取組内容については、水技センター情報第158号に記載したので、ご覧下さい。
今日は、私が「はまぐり通?」になって、各浜でハマグリを普及する今に至ったきっかけについて綴ります。
ハマグリの普及は、2015-18年に担当した藤沢市漁協の葉山組合長との出会いから始まりました。葉山組合長は何事に対してもアグレッシブで豪快な組合長で、当時、藤沢市漁協は、県下で唯一ハマグリ貝桁曳漁が営まれている組合でした。
藤沢のハマグリは8~13センチもある巨大なハマグリで、お吸物にすれば極上な出汁が出て五臓六腑に染み渡る格別な味わい!年間5トン以上の漁がありました。藤沢市漁協の要望を受けて、「湘南はまぐり」を、かながわブランド、PRIDEFISH(全漁連)の取得のお手伝いをさせて頂きました。
これまで、松輪サバ、鎌倉あかもく、湘南しらす…等、様々なブランド化を手掛けてきましたが、ブランドの魚には、生産者のこだわりと並んで、なぜその魚がその浜で多く獲れ旨いのか?、その海域の特性を踏まえたストーリーも重要!そこで、なぜ藤沢の浜で、旨味豊かな立派なハマグリが多く獲れるのか?そのストーリーを見出すことから始めました。
ハマグリの調査や種苗放流等に立会い、その都度、葉山組合長に話を聴くと共に、神奈川県立 生命の星・地球博物館の専門学芸員 佐藤武宏博士からもハマグリの生態についてご教授いただき、次のような仮説(図1)に至りました。
江の島につづく浅瀬の堰止め効果により、藤沢の地先に❶ハマグリの生息に適した細かい良質な砂が溜まり、❷産まれたばかりの浮遊形態の稚貝も上記堰止め効果による反流により岸際の適地に留まりやすく、❸2つの河川から栄養塩が供給され餌となるプランクトンが豊富である。
この仮説に辿り着いてから、空から見た海岸線の地形や、砂質を見れば…ハマグリに好適か否か、概ねわかるようになりました!ハマグリ漁が営まれていなかった、平塚、茅ヶ崎、腰越、鎌倉、小坪等、各浜の漁業者とハマグリ特別採捕許可調査を実施し、茅ヶ崎や鎌倉では新たな漁獲対象に繋がってきております。葉山組合長には他地区の漁協の調査の折に貝桁漁具を快く貸して頂き、今でも大変お世話になっております。これが、私のハマグリ普及の出発点!ですが・・、
実は、かながわのハマグリ普及の原点は20年程前に遡ります。
藤沢では、昭和30年代までハマグリ漁が盛んでしたが、昭和39年の東京オリンピック以降の高度成長期に底質環境の悪化に伴いハマグリが激減し、昭和40年代以降ハマグリ漁は衰退しました。
平成に入って底質環境が改善され、当時盛んに行われていたナガラミ漁でもハマグリが混じるようになったため、2000年、当時の担当普及員(現水産技術センター利波所長)がハマグリの資源復活に向けた種苗放流と資源管理を企画しました。その後、藤沢市漁協の皆さんがハマグリ増殖に向けて尽力され、歴代普及員が資源増殖・管理指導に携わり、20年間のみなの努力が今に繋がっております。
20年の時を超えて!藤沢のはまぐりは漁も安定し、「湘南はまぐり」としてかながわの新名産となりました。ハマグリの普及は、更にエリアを拡張して、湘南地区全体の新たな名産を目指しております!
最後に1つ。チョウセンハマグリの名前の由来についてですが、単純にチョウセン・・と云うと、「朝鮮半島からの外来種?」のように聞こえますが、チョウセンは漢字で書くと汀線。波打ち際の汀に、小型の貝が多く生息することから「チョウセンハマグリ(汀線蛤)」と呼称され、歴然とした日本の在来種でございます。内湾性の本蛤と比べて、外洋性の本種は大きく成長するのが特徴!
藤沢市漁協 湘南はまぐり直売所で通信販売も対応しているので、機会があれば是非ご賞味ください。
その大きさと、旨さに、ビックり!なハマグリです。
湘南はまぐり直売情報 http://jfxfujisawa.blog.fc2.com/
図2 鎌倉地区の若手漁業者による鋤簾調査
図3 鎌倉地区の若手漁業者による貝桁調査
図4 貝桁曳で漁獲された立派なハマグリ
企画研究部企画指導課
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