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更新日:2020年10月2日
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次の審議会等を下記のとおり開催した。
水源環境保全・再生かながわ県民会議 第26回施策調査専門委員会
平成26年1月29日(水曜日)10時00分から12時00分
神奈川県中小企業共済会館6階 603・604会議室
木平 勇吉【委員長】、淺枝 隆【副委員長】
伊集 守直、田中 充、中村 道也
オブザーバー委員 井伊 秀博、倉橋 満知子、坂井 マスミ
平成26年2月17日
水源環境保全課調整グループ、担当者名 高乘
電話番号 045-210-4352
(木平委員長)
ありがとうございました。報告書の文章を修正する機会はこれからもありますが、皆さんで顔を合わせてやる機会としては、本日が中心的な場となるかと思いますので、どうぞ意見をお願いいたします。
(浅枝委員)
県の他の部署の事業との兼ね合いについてどこかに記載出来ないでしょうか。先日、県の県土整備局が山・川・海の連続性を考えるシンポジウムを行いましたが、その時に出てきた意見で、ここでやられている事業がどうして県でやられていないのか、つまり県土整備局の事業でやられないのかとの意見が出てきたり、その逆の話もありました。他の部署でやられていることも含めた全体像が示されることによって、異なる部署で行われているものも、実は全体としては整合性が取れていて、しっかりとやられているということを示すことができ、県民の方には県全体でやられていることが分かりやすくなると思います。
(水源環境保全課)
今のご意見に関して、県の組織的な部分については触れていないのですが、0-13ページをご覧いただくと全体の総括案の部分の中ほどに、水と土砂の一体管理について記載しています。これは8月の県民会議で委員からお話のあった点ですが、さらに組織的な部分についても触れた方が良いとの趣旨でしょうか。
(浅枝委員)
もう一つ必要だと思うのは、図の中でここの部分とここの部分とにはこうしたつながりがある、連携があるといったことを示すと一般の方にはさらに分かりやすいと思います。
(木平委員長)
2番目の議題で水の評価に関してやりますが、若干今のご意見に考え方が似ていまして、流域一貫というか、山、川、海ということ、そういうものの関連の評価をやるべきではないかということで、第2議題として提案されています。
県の他の関係事業との総合性も考える必要があるとの意見を、どこかに記載してはどうかと思います。ただし、言葉で入れただけでは抽象的なので、その実行については、次の事業の中でどうするかといった方向などを検討するということかと思います。
(水源環境保全課)
施策大綱の中で、12の特別事業以外にも、例えばダム湖の水質浄化など60事業ほど位置付けられていますが、それを上手く点検結果報告書の中に入れてはどうかと思います。個々の事業の進捗がありますので上手く反映させる形で、そうしたものと関連性があって全体として進んでいるとのイメージのものを作りたいと思います。
(木平委員長)
浅枝委員の指摘は、0-13ページの全体の総括案の中ほどの段落のところで、この辺りの文章を水源税の事業だけでなくて、もう少し広いものも含める必要があるとの文章を加えることが必要ではないかということかと思います。
(中村委員)
今の浅枝委員のご意見はもっともで、私共も自然保護運動をずっとやっていますが、行政の同じ部局内でも横断的な協議がほとんどないのです。今はやっと少しずつそうした形になってきたと思いますが、超過課税の事業はこれまでの既存の事業にないところから生まれている事業ですので、部局を横断した事業の調整についても是非記載してもらいたいと思います。
それからもう一つは、総括の中に、今後こういうことを捉えていった方が良いのではないかとの一文も入れていただきたいと思います。例えば今進めている様々な事業の中で、これを進めていけばもっと水源事業として効果が出て来るような事業がいくつかあります。そういったものが、この水源環境の制度が出来た時に、議会で様々な制約が課されたところから始まっています。もうそろそろ、それは見直す時期ではないか。一つは、5年間やったらこれだけ成果が出たのであれば、今ある制約を外したらもっと効果が出るかも知れないというものもあります。ですから、この事業をさらに進めていき、県民の理解を得るための一つとしては、例えばダムより上は県有林と国有林ですが、既存の事業には使えないというのが未だにあります。一番効果を生むだろうと思うところに事業予算を投入出来ないのは、どう考えてもおかしいと思います。具体的な表現が無理であっても、より積極的な事業の拡大ということについて是非記載してもらいたいと思います。
(田中委員)
県の立場を忖度すると、なかなかそれは難しく微妙なところがあると思います。この水源環境保全税はある意味では目的税的に、議会との関係で修正に修正を重ねて成立した経緯がありました。大綱のもとで20か年計画を立てて、こういう施策をやるのでこれだけお金が必要だということで年間40億円程度の費用を見込んで事業をつけています。そうした意味で、制約があってなかなか難しいところがあります。
ただ、今後の展開を考えれば、もっと連携することでこういう点が良くなるとか、改善効果が生まれるとか、総合的には水源環境保全の成果があがっていくということを分析して述べておくことは、今後の展開としては必要だと思います。ご指摘の点は直ちには難しいけれども、中間年では見直す、あるいはさらに十数年後のタイミングでは十分有力だと思います。
(中村委員)
10年経ってからの見直しでは遅いわけです。制約というのは、県民が了解したことを前提にして議会がいろいろと議論をした上で生まれた制約ですね。ですから本来は県民が良いと言えば制約も外れるわけです。私はあまりこだわる必要がないと思うのは、一つは具体的な事業としてシカ管理がありますよね。シカ管理は水源の事業ではないと言われていましたが、それが入ってきた。森林生態系効果把握も今回入ってきました。そうしますと、それまでの制約は何だったのということになります。
新しい取組として、具体的な例では、県有林の山腹崩壊の防止工事が行われていますが、これまでコンクリートだけを使っていたような事業も、間伐材を利用するとか、保護籠を使うなど手法が変わってきています。もちろん、コンクリートを使うのも崩壊防止ですから一概に否定できませんが、生態系に配慮した事業が進められているわけです。単に森林の生態系だけでなくて、事業の結果として伴うものが水源の効果に大きな影響を与えるものであれば、積極的な事業展開を進めていく必要があると思います。
七沢とか伊勢原の住宅地の裏山のスギ林を整備して水源効果というよりは、はるかにその方が県民に納得していただけるのではないかと思います。今見直しをしても、数年後から事業をしていって、効果が出てくるのには早くても15年経つわけです。そうすると残り5年しかないわけです。見直しをするのであれば、事業一つずつでも良いので毎年毎年見直しをしていく必要があると思います。そのためには総括の中に意見として、県民会議あるいは施策委員会からこうした意見が出ていることを盛り込んでも良いと思います。
(田中委員)
ご指摘の点は誠にもっともだと思います。5か年計画の範囲内で見直せるものは毎年見直しをしていく。それから新しいもの、例えばシカ管理や県外上流域などは、5か年が経って個人県民税の課税条例の再提案がされる、そこで一度リセットできるという前提で新規の事業が加わることもあり、次のタイミングとしては3年後となります。
それまでは、やはりある意味の枠がはまっている。ただし、それまでは毎年出来るものがあるということで、二本立てということでしょうね。
(中村委員)
シカ管理と同じように、山腹工事に関しては、これまで行政の事業の枠組みの中で行われているものであっても、そこの事業に関しては水源環境税を投入しようということは出来るのではないでしょうか。
(浅枝委員)
相模湖のアオコを考えますと、上流対策も下水道対策も水源環境税ですが、それだけでは100%効果を発揮することはできません。そのため、アオコの湖内対策は実は別の予算で行われているわけですね。また、相模川に関しては支流の対策は水源環境税ですが、本流については別予算となっています。例えば栄養塩の問題に関していえば、川もダムも全て連続しています。
しかし、一方では、個別に別れていると統一的な対策になりにくいこともあります。
また、実際には整合性がとれていても、それが分かりにくい部分も出てきます。予算に関係なく、総合的に考えていくことが必要です。
(田中委員)
先程お話のありました部局間の横断的な調整と相通じるわけですが、組み立て方が、従来一般会計で行われている森林保全や水源環境保全の事業に加えて、超過課税により対策事業を行っているので継ぎはぎのようなことになります。
県民会議としては、上乗せした部分がしっかり使えているのかを管理していくことが必要です。ただし、全体的な水源環境保全の効果としては、ご指摘のとおり、上乗せ分だけでなくトータルで評価を考えないといけないというのが、新しい評価指標の話になってくるわけですね。連携して、かつ、全体効果が生まれるようなやり方をしないといけないのは全くその通りなので、そのような視点は常に入れていかなければいけないというのがありますが、この事業の生まれ方もあって、そこには壁があるということだと思います。
(伊集委員)
元々この事業の仕組みは、水源環境税を特別会計において特定財源化するかたちでスタートしています。今の議論にあるように、事業を予算として分けてやってしまうと、政策の面で効果がなかなか見込めないことがあります。この事業は、順応的管理の考え方をとって、結果が分かった上で事業をやっていくのではなく、やっていく中で政策を変えながらやっていきましょうとの元々の視点があります。それに従って当初考えていた政策は変更できるし、政策が変わればそのための財源をどうするかということも考えなければいけません。それを最初に特別会計として決めたのだから、そこを前提に議論しなければならないとの前提を置くのは、やはり問題があると思います。政策の面から一体的にやった方が効果が見込めるのであれば、そのためにどう財源を使えるかということは、もう一度立ち返って議論すべき論点で、そこは県民会議の中での意見としても入れるべきだと思います。財源面も含めて、県民会議が行う議論の範疇として、意見すべきところはしていくということだと思います。
(田中委員)
ご指摘のとおりで、総体的には施策を動かして効果を見ながら、より良い方向に修正をしていくということかと思います。この事業は全体で20年の計画で、5年毎に見直しを行っていますので、次の節目が3~4年後に迫っていて、その時に大きな見直しがかかってくるので、そこに向けていろいろと指摘を積み重ねていければと思います。
(木平委員長)
私からの意見ですが、森林に関しては総体的な評価として、生態系評価という全体評価をやろうとの方向で進んでいます。また、川の方はそれに見合う流域全体の評価をこれからやろうとしています。
私としては、それをやる前にこの事業固有の森林整備として、間伐やシカ対策をやっていますが、その効果に対する資料が不足していると思います。それは、調査をする方法が元々欠けているのではないかと思うのです。整備したものの部分の効果がどのくらいあったのかということの評価を、几帳面に見て対策をとるべきではないかと思います。順応的管理というのは、やったことを見て良いか悪いかを判断するものですが、全体として整備面積がどうだったかという抽象化した評価の面が強いわけです。ずい分とお金をかけて間伐をしているわけですが、その林分がどうなっているかが報告書からは見えないのです。その点は、第3期に向けて検討していただきたいと思います。
(田中委員)
総体的にはこの報告書は豊富な内容になっていて、新しく追加された部分として、例えば0-8ページ以降に神奈川の水源環境の現状を分かりやすく載せたり、総括の0-15ページのところで予算の執行状況も単位当たりの金額を出しています。また、1-1ページから始まる事業毎の説明に関しても、見出しの置き方や内容が、分かりやすく県民の疑問に答えるように整理されていて良いと思います。
また、13-1ページ以降に、関連資料としてフォーラム意見や事業モニター意見なども載せてあり、内容が充実してきていると思います。その分ボリュームが増しますので、全体像がその分だけ見えにくくなるので、なかなか一般の県民の方にとっては大変で、何とかコンパクトにまとめるものがないのかなと思います。このように良い方向で情報量が多くなっているプラスの面と、その分だけ情報量が多くなって大部なものになってきたというデメリットもあるので、県民向けの普及版のようなものを考えるのが良いのかどうか。例えば、0ページの部分を概要版として配れるような形にするなどの工夫もあるかも知れません。
(中村委員)
ヤビツ峠で土日中心に店番をしている際、登山者向けに私共の丹沢だよりと併せて、県の水源環境や丹沢自然再生の冊子などを並べていると、質問してくる方が結構います。そういう方の評価としては、神奈川県はまじめですねとの評価が多いです。その時に、森が再生している基準はあるのかや、どういった植物が回復しているかといった簡単な質問が多いのです。
報告書の中にモニタリングについても載っていますが、森との関連が少ないですね。例えば、間伐材の搬出が目的ではなくて、間伐後の整備の跡地がどうなっているのかが、水源環境にとって一番大事です。間伐した後に、どういう植生や樹木が戻ってきて下層植生を豊かにしているのか、あるいは土が本当に湿潤になったのか、あるいは間伐後、逆に崩れてしまったのかなど、そうしたものを出した方が県民には分かりやすいという気がします。
例えば、モニタリングに関して専門の職員を臨時任用でも良いので雇っていただき、積極的に調査結果を開示してもらいたいです。予算執行状況が7億円も黒字になっている中で、積極的に県民理解促進のための情報収集に使っていくことが必要ではないかと思います。
(浅枝委員)
森林関係では、元々は水質などについて議論していましたが、生態系の視点が重要だという話に変わってきました。川の関係も視点を変えるべきです。川の環境基準は基本的にBODでしたので、これまでその対策が主でした。しかし、水質という一つの側面で考えた時にも、本当にBODかといえば、必ずしもそうではないのです。例えば、川にいろいろな生き物がいるとどのような良いことがあるかというと、例えば、毒物が流入した時にそれに耐性のない生き物が死んでしまうので、危険がすぐ分かります。これは、いろいろな生物が住んでいることが、川の水質管理にとって非常にいいということを示しています。これは富栄養化対策とは異なる視点ですが、安心・安全対策のために非常に重要です。なぜ今多自然川づくりということが言われているのかというと、背景には安心・安全対策ということもあります。
そのために、神奈川県の中小河川でも、治水対策から言えば護岸がしっかりした川の方が良いのですが、治水機能ばかりではなく、生き物が多様な方が良いのではないかとの意見もあるわけです。
また、相模川本川で一番重要な問題は土砂の問題です。土砂が不足すると自浄能力も低下します。しかし、中小河川に土砂がなければ、相模川本川にも入ってこないわけです。こうした総合的な視点で河川・水路対策を考えていくことの必要性を、もう少し前面に出す必要があります。神奈川の中小河川は、土砂供給のポテンシャルは高いのですが、それが失われているのが現状です。中小河川の土砂問題は、大河川の相模川と酒匂川に影響しています。
今後は、ある意味では言い方を少し変えて、本来の水質浄化ではないかも知れませんが、そうした面が重要であるという説明も必要かと思います。
(伊集委員)
対応案に個別意見として出されているものでも、本報告書に反映させた方が良いのではないかとの意見がある場合、その意見の検討は一任することになるのでしょうか。
(木平委員長)
2月の上旬にもう一度意見照会を行いますが、その修正については形式的には委員長に一任ということで、より実質的には事務局との調整により行うことになります。その際に個別にやり取りをさせていただくことはあるかも知れません。
(伊集委員)
その案について、最終的には3月の県民会議で決定することになるのでしょうか。
(水源環境保全課)
3月の会議では、その場で提出をしていただくようなことを想定していますので、その前に2月上旬の意見照会を勘案して委員長に修正していただいたものを、出来れば3月の会議の前に委員の皆様にお送りいたします。
(木平委員長)
ありがとうございます。このような調査が出来ますと、この報告書の内容も倍加して非常に良くなりますね。その分の労力もかかるわけですが、良い方向だと思います。
(浅枝委員)
神奈川県の河川は千葉県や埼玉県と異なり、急流で、本来、礫があるべき河川です。神奈川県の河川は元々礫が多く、礫が水質浄化にも寄与しているし、いろいろな生物が棲むのにも寄与している。ただし、礫が多いのは管理が少し難しいので、どうしてもそれをなくすような改修が行われてきていました。礫が重要との話を市町村の方にすると、礫の周りを全部コンクリートで固めて、礫だけを置いている。そうした解釈では駄目で、礫の下側が重要だと分かってもらうことがまず重要です。
もう一つは、急流の河川には、本来、湧水が多いのですが、ほとんど活用されていません。そうした基本的なところを、いきなり担当になった方でも間違いなく良い方向でやっていけるシステムが必要です。
何故このような考え方に変えなければいけないのか。一つは、神奈川県の中小河川は、環境基準でみればそれほど悪くありません。しかし、もう少し地形が活かせる形で改修することで、コストを掛けずに、さらにそれを高められるということです。
水質に関しては先程言いました毒物のことがありますが、それと共に気を付けなければならないのは環境ホルモンです。これはすぐには分かりませんが何年か経って重大な問題になるという性質のものです。これも、多様な生物がいることで分かることで、可能な限り多様な生物が棲む河川にしておかないと、安全・安心上の問題が浮上してくることがあります。
もう一つは、先ほどの土砂不足の問題です。酒匂川もそうですし、特に相模川は悲惨な状況です。私が見てきた河川の中でワースト1ぐらい、土砂が不足しています。酒匂川、中津川がアユの名産の川ですが、土砂がなくなれば漁獲量が減ってきますが、その状況が次第に進行しつつあります。土砂の供給源は中小河川ですが、中小河川に礫がなければ当然、大きな川に入って来なくなります。ですから中小河川から土砂が入るような仕組みにしないといけない。それは下流に土砂を少しでも供給しないといけない状況があるからです。
さらに、河川管理という面では、歴史、文化を残すという視点があります。神奈川県は古文書に載っているような場所がたくさんありまして、そういうものが忘れ去られて改修されてしまいがちです。こうした場所は、重要な文化財になり得るし、また、将来的には観光客を呼べるものです。そのことに早く気付いて、そうした視点ももって改修も進めていただきたいと思います。
(田中委員)
資料2-1については、中間評価に向けてどういう位置付けで提案されているのでしょうか。
(水源環境保全課)
27年度に予定されている県民参加による総合的な評価のワークショップに題材を出していく必要があって、やった時とやらない時の比較を示すのが県民には分かりやすいのかなということがありますが、森林の方はビジュアルなもので出てくるのですけれども、川の方は上手く表現出来ないということで、自然浄化機能を代替するような方法で点数化したもので県民に表していくという方法を考えています。
(田中委員)
この事業が始まって10年目の節目に大掛かりな評価をしようということですね。そのため、森林環境については別途枠組みを作って検討を始めた、それと対になるような形で水環境についてもこのような評価体系を考えているということですね。
そうすると考えていただきたいのが、冊子の0-7ページを見ていただくと、将来にわたる良質な水の安定的確保の上のところですが、水源かん養機能と森林生生態系の健全化、これを森林環境として、森林の状態であるとか機能であるとか、経済評価をすると。ここにある意味で出口を出しているわけです。水の方では、ダム湖の水質改善と地下水の水質改善ということで整理されているので、この部分と水環境評価はベクトルが合っていないといけません。一般的な水環境評価としては、ご説明があったように原風景とか歴史環境などは水環境の重要な役割ですし、水産資源の向上も重要な役割です。
ただし、ここの場合の水源環境保全というのは、県民の飲み水の確保ということで、そのために毎年40億円のお金を使っていて、効果があがっているのかとの観点から評価しないといけない。そこの評価の出口が評価指標に合っていないといけないので、少し伺った限りではやや総論的になっているのではないかとの印象を持ちました。全体として水環境評価体系を組みたいとの意図は分かりますが、状態評価、機能評価、経済評価というのは、あくまでも特別対策事業に照らした時にどうなのかということでやらないと、評価の対象が何を評価しているのかということが見えなくなってしまう懸念があります。
二つ目は、従来から行っている河川モニタリング調査の継続性や整合性といったところと、アユの調査であるとか水路の整備などが整合されているのかどうかをチェックしていただきたいと思います。むしろ、今までやっている調査データを活かしつつ、足りない点を別途調査するとの意図を明確にしないと、新たに調査する位置付けが分かりにくくなります。とても良いことなのですが、この事業との関係で予算を使うとなると、その点が問われるのではないでしょうか。
(浅枝委員)
そうしたご意見はあるかと思います。実はダム湖ということで相模原市などのみを対象にしていますが、実際の取水はもっと下流で行っています。ダム湖のアオコを減らすことも一つの大きな目的ですが、実際には、水はそこからでなくもっと下流で採っていて、そこまでにいくつもの支川が入ってきています。飲み水の観点から、たしかに富栄養化した水は良い水ではありませんが、それを飲んでも命にかかわることはありません。もっと大変なものは、例えば工場排水から有毒物質が流れて、それを飲んでしまった場合です。万が一にしか起きないかも知れませんが、起きた時にはもっと重大な問題になります。
また、環境ホルモンは何年もかかってはじめて分かるものです。そこにずっと棲み続けている生き物でなければ、そうしたもののモニターはしていないことになります。急性のものはもっとこわいです。そうすると単に富栄養化対策だけでなく、モニタリングしてもらう機能がもっと重要になります。環境省もPETというプロジェクトを行っていて、工場排水が安全かどうかを生き物を使って調査しようとしています。なぜそうするかというと、現在でも、いろいろな危険物質をチェックしていますが、実際には、多くのものは測られていないので、全て基準を満たしたところでそれが安全かどうかも分かりません。最近は常に新しい物質が出て来ています。それら全てのチェックは無理です。生物を用いて、そういったものをチェックしていく機能が、飲み水の安全性を保つ意味で非常に重要な動きです。
さまざまな生き物が棲んでいることが、それを発見する助けになります。二つ目に重要なのが、分解しにくい物質が川に入った時にでも、それを少しでも除去してくれる、また、可能な限り希釈してくれることが必要ですが、そうしたシステムは実は日本の川には昔からあったのです。生物の生息に適した河川というのは、その除去を促進してくれます。
なぜ風景か、歴史かというと、礫があった方が良いとか、苔があった方が良いといった説明の仕方では、市町村の担当者がピンと来ないので、折角礫があっても、石の周りをコンクリートで全部固めてしまうようなことになります。昔の原風景をといった書き方をするのは、昔の川には浄化機能があったという意味合いですが、そうした形で書いた方がむしろ市町村の担当者も分かりやすいです。直接的ではないのですが、そのように理解していただければと思います。
(中村委員)
水環境の目的とか取組は理想の高い目標ですが、事業としては部局横断で、どちらかというと水源環境よりは、県土整備や農政が主体となってやる事業ではないかと思います。それから、ものすごくお金がかかると思います。
もう一つは、3年ほど前まで公共事業の評価委員をやっていましたが、農政の排水路整備はひどいもので、ここが了解しないと何も出来ません。また、事業の中で絞っていただきたいのですが、大きなダムにすると3つありますが、相模湖は山梨県から入ってきますので里山の排水が入ってきますが、宮ヶ瀬、丹沢湖の場合は森林保全です。ダム上流域の支流から入ってくるものですので、水温の上昇や森林整備の良し悪しで土砂が入ってくるとかによって、今までの藻類や昆虫が、この20年でものすごく変わってきています。水質関係で調べていただくのであれば、ダム上流域の河川の状況について調査指標を作ってモニタリングしていただけると有り難いと思います。
(浅枝委員)
この評価は、河川・水路整備事業で整備されたところを評価しようという趣旨です。
ダム上流の森林から出てきている栄養塩量は全体の5%です。その意味では、ダム上流の山林整備は、相模湖のアオコ対策ではなく、相模川の対策として上流が整備されているという意味合いが重要なことです。
相模湖のアオコの発生をもたらす栄養塩源は、山梨県のいくつかの川の流域の生活排水です。相模湖の富栄養化対策としてはそれが重要になります。また、実際に取水しているのは相模湖でなくもっと下流で、その間にはいくつも支川が入ってきていますので、その支川がどうかという話です。
相模川では問題ないのですが、よくあるのがカビ臭対策で、カビ臭はダムでも起こりますが、もっと下流の小さなため池や、場合によっては川でも発生することがあります。ダムではなく、むしろ川とかため池で、そこから相模川に入ってきて取水されるので、中小河川でどのぐらい浄化されるかが重要になります。
神奈川県の中小河川というのは、急流なのでまだ良いのですが、徐々に悪くなっています。この先はどうかというと千葉県や埼玉県の河川の状況でして、昨年もカビ臭のことで大騒ぎになりましたが、そうしたことが起きるようになります。
(田中委員)
11-6,11-7ページにありますように、河川モニタリングの報告を定期的にやっていますね、これとアユの調査は違うのかどうか、つながるのかどうか、環境ホルモンの調査がこれから必要なのであればその中に入れるし、場合によっては魚類を使ったモニタリングを加えても良いわけです。
しかしひとまずは、定点的に行うのは河川モニタリング調査なので、そこでやっていくのが組立てだと思います。水環境評価体系というのは、水源施策の効果がどれぐらい上がってきているのかを出来るだけ定量的に、総合的に評価するということになります。
中村委員からも話がありましたように、河川環境の改修や整備は、水源環境事業も一部関わりますが、河川行政や治水対策、あるいは農政であったり、土地利用のあり方であったりと非常に総合的、横断的にやられています。それを一括して河川の水環境評価をしようとすると、全部の事業を総括したものを評価することになるのでなかなか難しい。ここの事業をどう捉えるかの工夫をしないといけませんし、その点がこの評価体系の難しいところだと思います。
平成27年の総合評価に向けて、水環境の面からこの事業がどういう改善効果を持ったのか、将来にわたる良質な水の安定的確保にどのぐらい寄与しているのか、その評価体系を考えてもらいたいと思います。
(淺枝委員)
どこを対象にしているのかと言えば、中小河川全体を対象にしているのではありません。これまで、例えば浄化ブロックを置きましたということで、何を評価基準にしていたかというとBODだったのです。
(田中委員)
中間評価のために調査をするのでなく、これまでの河川モニタリング調査のデータをどのように活用するか、データがないから新たな調査をするのなら分かります。そこを整理していただきたいということです。
(淺枝委員)
今までやっていたBODでなく、今回提案のあった調査にした方が良いのではないでしょうかということです。
(田中委員)
それは河川モニタリング調査に加えるということで良いのではないでしょうか。
(水源環境保全課)
元々2つの意味合いがありまして、事業の評価として使えるだろうと考えています。環境科学センターで5年に一度やっている河川モニタリングがありますが、その中に定点調査のまとめ方の一つとして、川の形態に関して瀬や淵があるとか、伏流水があるとか、水際線があるといったことを再評価するのにも使っていきます。そうした意味では、追加するというところがあります。
(田中委員)
それで良いかと思います。河川モニタリングの追加というか、充実ということで提案していただければ良いと思います。
(木平委員長)
委員の意見が必ずしも一致していないのですが、一つは、将来にわたる良質な水の安定的確保という大きな目標と相反するものではいけないし、従来の調査を充実させる立場で案を考えないといけないということで、私の印象としては今日の提案は十分練る必要があるので、関係課の中で実行可能なものを考えていただきたい。ただし、考え方としては非常に良いということでは、皆さんが合意されていたと思います。
私の印象としては、森林の評価については、今までやってきたことをまとめる時に、県の他の事業との関わりを考えていかないといけないとの指摘がありました。また、水のことについても、部局を超えた事業ということですが、一方では何でも一緒にやるのは無理があるので、この事業の枠組みを逸脱しない範囲で他の事業との整合性を図っていきたい。この施策は期間が限られていますので、その期間で現場を見て順応的にやっていったらどうかとのご意見が出たと思います。その辺の委員の意向を考慮していただいて、改定報告書案を作っていきたいと思います。
(伊集委員)
点検結果報告書のまとめ方として、今回の意見照会の中で整理番号31番ですが、木平委員長から、間伐の搬出促進については対象事業からの除外を検討してはどうかとのご意見があり、中村委員からもあったと思いますので検討し直す必要があるのではないかと考えますが、県民会議としてこの問題に対してどのような意見を持つのか、この事業が水源施策に適しているのかどうかの県民会議としての意見を作れるのであれば、報告書本文に入れて良いと思いますが、そのような手続をする時間がない。元々は水源環境保全・再生施策として意味があるからやっているとの位置付けだと思いますし、これを実施すべきかどうかも含めて考えてみる必要があるのではないかとの意見が割と多いように思いますが、県民会議としてどういう立場を取るのかは重要なポイントですので、もし我々がそうした意見集約をするのであれば、個別意見ではなくて本文に書く必要があると思います。事務局で整理して本文に入れるものと入れないものを分けていますが、県民会議の報告書として出すのであれば、県民会議としてどのような立場をとるのかを検討する場があるべきではないかと思います。
(田中委員)
今ここでやっているのは、24年度の1年間のPDCAになります。間伐材搬出事業のあり方そのものを問うというのは大事な意見で、たしかに本来それを外す可能性がないわけではないのですが、計画を立てて進めていますので、現実的には1年のサイクルの中では難しいところです。
そうすると5年間のPDCAがあり、さらには10年間、20年間ということで、少しずつPDCAが大きく回っていくわけです。平成29年の次の5か年のタイミングで見直すことはあり得ると思います。しかし、12の特別対策事業というのは設定の段階でセットされている。12の対策事業そのものを見直さないといけないところまで立ち返るとした時に、中間年の見直しでそこまで踏み込めるかどうかというのはあるかも知れません。
しかし、タイミングとしては、間伐材事業はこうしたらどうかというのは、おそらくそのタイミングで活かされますので、毎年の意見をまとめる中でテークノートし、痕跡を残しておきます。県民会議が計画満了時の2年ぐらい前から総括評価を始めていきますので、前回はシカの問題ですとか、上流域にお金を出しても良いのではないかなど、新しい領域に踏み込んでいく際にこの意見が活かされることになります。
(中村委員)
間伐材の数値目標は、後から出て来たのではないかと思います。数値目標を外すとか、搬出後の整備状況もモニタリングする必要があるといった意見を、私は入れられるのではないかと思います。
(田中委員)
モニタリングのあり方については、事業の運営の中で可能かと思いますが、目標を外すというのは5年間の事業量を計画で定めているのでいかがでしょうか。
(中村委員)
数値目標と数量というのは、5年間の中で出てきた話だと思うのですが。
(田中委員)
資料の4-1ページにありますように、5年間の目標は立てているのです。
(水源環境保全課)
5か年計画を立てる段階で数値目標も位置付けをしています。
(田中委員)
ですから次の5か年のタイミングで見直すことは可能かも知れません。それから、跡地のモニタリングなどをやった方が良いのではといった意見は、モニタリングの運用の中で追加も可能かと思います。
(木平委員長)
今出された意見を採用するかどうかは、なかなか全員の意見は合わないと思います。一般的には、皆さんが大体良いと思うものを本文に載せていくということですが、毎年こういう意見がありましたということは個別意見に記載されているので、そうした意見も無視されているわけではないと思います。
(伊集委員)
個別意見に残すことは良いのですが、県民会議としてどう認識しているかについて、意見書には記載出来ないとしても、県民会議としてどういうスタンスを取るのかを検討する機会はあっても良いと思います。
(浅枝委員)
具体的に何は何に効いてという目的のところが漠然としていて、そこの仕組みがはっきりしていないのですが、それが出来てしまえば、この施策はこの部分に効いているというのが分かると思います。
(中村委員)
この報告書は県民会議が出すものですよね。間伐材搬出の数量は行政が出したもので、行政が出した以上は目標数値ですから、水源環境整備をするのであれば目標数値をおくのはおかしいと思います。これは整備をした結果搬出される木材ですから、結果としてこれだけ出ましたということで良いわけで、数値目標を出すのはおかしいのではないでしょうか。ところが、数値目標を出すという判断がおそらくどこかであったのでしょうが、何故数値を出したのかということを書いてもらいたいのです。そうすると、私もそれであれば仕方ないなと納得もすると思います。
(田中委員)
手続としてはご指摘のとおりで、中村委員の間伐材のご意見については個別意見として整理しているわけですが、皆さんに送った段階で全体意見にしてほしい、総括意見にしてもらいたいとの意見が県民会議委員から出てくれば、その扱いについて検討するということで委員長に相談があるかも知れません。そうした形で意見をキャッチボールしながら、最終的に文案を作ることになります。
(中村委員)
全体会議の始まる前に、そういうことも可能なので意見があったら出してくださいと言えば、各委員が出すのではないかと思いますが、何もないところでこれでお願いしますと言われれば、ここに出て来たものを検討して終わってしまうと思います。
(木平委員長)
報告書の作り方にしても確たるものではないことは承知していますが、それでも内容を改善していくために、事務局としては案を出して意見をもらう手順を何度か踏んでいまして、それも大きな努力だと思っておりまして、その程度でお許しをいただきたいと思います。残りの時間も限られていますが、オブザーバー参加の方がお見えですので、一言お願いします。
(坂井オブザーバー委員)
これまでの目標と執行状況のみの報告と比べると、大分現地の姿が見えるような資料になってきたと思います。
川の原風景なのか、水の浄化なのかとの話がありましたが、他の地域でどのようにして川が守られているかを見ますと、ずっと川を見続けてくれている人がいることが分かります。この川は昔はこうだったとか、ここで泳いでいたなど、そうした人達が中心となって川の復活をやっています。
県民から余分にいただいた税金で事業を進めている以上は、県民の心に響くとの意味では前進ですし、環境科学センターの調査は持続性の向上に関して貢献度が高いものであると思います。お金がなくなった時点で終わってしまうのでなく、その後に何が残るのか、人の心に何が残るのかの視点で、後世に財産を残す仕事をしていくことが必要だと思います。
(井伊オブザーバー委員)
今回の報告書案は、非常に県民会議から出た意見がきれいにまとめられていて、特に私は事業モニターのリーダーをやってきましたが、事業モニターのことが事業毎に差し込んであって良いなと思いました。
実際に県民会議としてこういう活動をしているのだということが、前の報告書よりもより分かるようになり、分厚くはなりましたがそれで文句を言う人はあまりいないと思いますので良かったと思います。
また、今日の話の出ました順応的に変えていくとの考え方には非常に賛成で、最終的には水源環境保全・再生に資することであれば、良い方向に持っていってほしいということに誰も反対する人はいないと思いますので、そのようにやっていくべきだろうなと思います。
(倉橋オブザーバー委員)
水環境の評価体系のところが気になりましたので、今回傍聴させていただきました。川を中心に活動していて川を1年間見ていますので、誰よりも川が変わっていく様子がはっきりと分かっていると思います。体系について、ダムから取水堰の間、相模川に関しては長い、その長い間に、人口密度の高いところですので、水質に関しては悪いと思っています。田畑や工場排水の問題など、決して安心して見ていられるものではありません。本当にひどい状況は汚水関係でも多々ありまして、実際に私も体験していますのでとても心配です。
私もひどい川の状況を見てからこうした活動をしていますけれども、水質に関しては生活排水が一番ですし、ある程度大量の水があれば希釈されて多少は良いのですが、相模川は大河と言える所はほんの一部です。そうした中で水質を考えた時に、川の両側にある生活が水環境に配慮されたものでなければ、森林対策をいくらやっても良くはならないと思います。
(木平委員長)
ありがとうございました。次回も熱心な議論をお願いしたいと思います。
【会議終了】
資料1-1 点検結果報告書(第2期・平成24年度実績版)(案)に関する意見について
資料1-2 特別対策事業の点検結果報告書(第2期・平成24年度実績版)(案)(その1)
資料1-2 特別対策事業の点検結果報告書(第2期・平成24年度実績版)(案)(その2)
資料1-3 点検結果報告書の「総括」作成の流れについて(案)
資料2-1 水源環境保全・再生施策における水環境の評価体系について
このページの所管所属は環境農政局 緑政部水源環境保全課です。