初期公開日:2024年10月23日更新日:2024年10月23日
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10月21日付けで「湘南国際村 めぐりの森」(80.6ha)が環境大臣により自然共生サイトとして認定されました。認定区域は、保護区域との重複を除き、OECMとして国際データベースに登録されます。
30by30目標達成のため環境省が令和5年度から開始した取組で、「民間の取組等によって生物多様性の保全が図られている区域」を国が認定する区域のことです。認定区域は、保護地域との重複を除き、「OECM」として国際データベースに登録されます。
生物多様性条約第15回締約国会議で採択された目標で、2030年までに陸域と海域の30%以上の保全を目指すものです。
神奈川県南東部の三浦半島の中央、横須賀市と葉山町にまたがり「緑陰滞在型の国際交流拠点」として整備された湘南国際村の東側に位置します。市街化調整区域であり、衣笠・大楠山近郊緑地保全区域、衣笠・大楠山風致地区にも指定されている県有地です。住宅や滞在型研修施設などが存在する湘南国際村の西側部分から、三浦半島の最高峰(241m)である大楠山への登山道につながる歩行者用の舗装道(市道)が森の中に整備されており、散策に訪れる方々に親しまれています。民間団体と行政が協働して、植樹活動や自然体験学習会などが継続的に行われており、豊かな生態系が再生・保全されています。
湘南国際村は、かつてゴルフ場として開発・利用され、1972年以降閉鎖・放置された地域を整備の上1994年に「開村」した地域です。申請部分も、当初は開発を検討していましたが、社会経済環境の変化から「緑の再生と保全を図る地区」に計画変更し、2010年に開発事業者から無償譲渡を受けました。譲受後は神奈川県が管理し、県の定める「湘南国際村基本計画(平成31年3月改訂)」において、「大楠山に連なる緑を活用した地区」と位置づけ、民間団体と協働した自然環境の再生・保全と活用を進めています。
官民連携活動により、土地本来の潜在自然植生種を用いた環境保全林の再生を実施し、累計76,382本を植樹、2.19haの植生を復元しています(2023年11月末時点)。伝統的な茅場をはじめとする里山的植生の維持管理も継続して行われています。大半を占める二次林は、川の源流域であり集水域の樹林帯が広く残されています。生息する昆虫の種・個体数が増加し、ニホンキジ、ノウサギ等の生息も安定して観測されています。
古くは牛の飼料としての茅(ススキ)を得る場所として管理されていたが場所でしたが、開発の時代を経て現在は多くが二次林となっています。それでも一部では茅場の環境が復元し、ヤマハギやヤマユリが生育し、ノウサギやキジが利用する草地が3haほど存在しています。
ススキを主体とする乾生高茎草本群落、一部にクロマツ、オオシマザクラ、ハコネウツギ、ヤマハギ、ヤマユリ、サイハイラン等が生育
キュウシュウノウサギ、ニホンイタチ、ヒミズ、ニホンキジ、ジョウビタキ、ショウリョウバッタモドキ、ツノトンボ、クロコノマチョウ、オオシマザクラ、マテバシイ、タブノキ
ニホンキジ(撮影:2023年9月、「自然ふれあい楽校」グループ)
県有地に多くの活動団体が関わり、緑の保全や回復のための様々な活動が協働参加型で行われています。混植・密植方式による植樹が定期的に行われており、崩壊地植生が徐々に潜在自然植生へと回復しています。水源林やかつての薪炭林、茅場など伝統的な里山環境も残っており、多くの市民に親しまれています。
イノデータブノキ群集、ヤブコウジースダジイ群集などの潜在自然植生の復元樹林、オオシマザクラ、コナラ、マテバシイ主体の旧薪炭林、ススキ主体の茅場、ケヤキ、イロハモミジ主体の河畔林など多様な植生が分布
ニホンイタチ、ヒミズ、ニホンキジ、シュレーゲルアオガエル、ニホンマムシ、ショウリョウバッタモドキ、ツノトンボ、クロコノマチョウ、オオシマザクラ、マテバシイ、タブノキ
土壌手当・植樹前の崩壊地植生(撮影:2016年12月、Silva)
土壌手当・植樹から5年後の潜在自然植生(撮影:2022年5月、Silva)
三浦半島地域の多くの農村集落家屋は、付属屋も含め本来は寄棟式の茅葺平屋建がほとんどでした。当時は各集落の結いによって茅(ススキ)の葺き替えが行われてきましたが、結いの破綻によってすべて外部発注方式となり、その委託費が高額に上ることから現在残るのは80棟ほどに激減しました。めぐりの森に存在する乾生高茎草地3haの中でも、特に状態の良いススキ草地約0.8haをススキ採草地として復元し、地域の茅葺き屋根材の資源として提供しています。
茅の草地(撮影:2024年2月、「自然ふれあい楽校」グループ)
茅葺屋根(撮影:2023年7月、「自然ふれあい楽校」グループ)