10歳のとき骨髄異形成症候群を発症。約1年に及んだ入院中につづった記録は本になった。つらい闘病生活を母子で乗り越えてきた今、15歳の坂田裕奈さんと母親の佳子さんが、病気で苦しむ子どもたちと家族に笑顔を届けようとする活動を語る。
2008年東京都生まれ。2019年、小学5年生の夏に、造血幹細胞に異常が生じ正常な血液細胞が減少する血液のがん、骨髄異形成症候群を発症。中学3年生の現在は春からの高校進学を楽しみにしている。趣味はアニメ、映画、音楽。入院中に血液細胞と免疫学についての知識が深まり「推しアニメと血液細胞についてなら最低2時間は語れる!」
初めは風邪を引いているような状態が続き、原因は不明。大量に鼻血が出て止まらず、救急車で運ばれたこともありました。3軒目の病院で急性骨髄性白血病ではないかという診断が出るまで2カ月かかり、その後、進行性の骨髄異形成症候群と診断されました。同じ血液のがんですが、そこから白血病になる場合もあるし、逆もあると。
検査のため入院していた病院から東京医科歯科大学病院に転院して抗がん剤治療、骨髄移植。その造血幹細胞が定着しなかったため、さい帯血移植と続き、治療は1年近くに及びました。
抗がん剤による副作用は吐き気や頭痛が本当にひどくて、5分ごとに吐いてしまったり、喉に炎症ができて何も食べられなかったりして、そのことにイライラして気持ちが沈んでしまったりしていました。ただ、脱毛に関してはあまり気にならず、むしろ髪がない方が生活しやすいと思っていました。
骨髄移植とさい帯血移植による副作用もきつく、発熱、吐き気、鼻血、倦怠感、骨の痛みがありました。初めの骨髄移植の時は、このくらいの痛みは我慢できると思いましたが、生着不全と分かったときはショックで、さい帯血移植でまた同じことを繰り返したくないって初めて弱音を吐きました。
病名が分かった時に病気がどういう状況になっていくのか分からなかったので、自分から希望して、説明を直接先生から受けたいと思ったのが始まりです。もともと漫画を通して細胞のことが好きだったので、白血球や赤血球など血液のことをもっと知りたいと思いました。そして薬のこと、治療のこと、副作用のこと、自分の体がどうなっていくのかを研究してみようということになりました。記録することで客観的に見ることができ、自分の症状から副作用が出るなら、例えば「その鎮痛剤は使わなくていいのでは」とか言えるようにもなりました。学ぶことは楽しく、体調がきつい時にそれをまぎらわすという意味もあり、前向きになれました。
リポートは小学校の自由研究代わりにもなり、退院してから清書しコンクールに出したりしましが、結果的に書籍化に協力してくれるところがあり、退院後に「がんと闘う戦士の物語~私の血液と病気についての研究と観察」という本にすることができました。ノートにまとめていた血球たちをキャラクター化したイラストも、書籍に使うことができました。入院中に、苦しんでいるこどもがたくさんいると学んだことも動機になりました。
ブログなどを始めたのは入院中、さい帯血移植の後からで、体調は辛い頃でしたが、がんと向き合っているこどもがいることをどうしても知ってほしい、たくさんの人に病気のことを理解してほしいと思ったからです。同時に献血や骨髄ドナー登録の啓発になればと思ったのです。その後、本も出て、送らせていただいた方から感想のメールや手紙を頂いたりして、応援や共感してくださるのが本当に良かったなと思います。
「もんなとりえ」はフランス語で「mon atelier」。「わたしの工房」という意味です。工作が好きだったので、リハビリを兼ねてプラスチック板にアニメのキャラクターを書いてキーホルダーを制作し、お店を開くという形にしました。注文を受けて先生方や同じ病気の友達にプレゼントしたら、すごく喜んでくれて、笑顔になってくれるのが自分もうれしいと分かり、ちょっと体調が悪くても「あの人に作ってあげるって約束したから」って一生懸命続けました。その笑顔が励みになりました。
*ウェブサイト もんなとりえ~小児がん・難病のこどもと家族の笑顔をつくる
https://monatorieyy.crayonsite.net/
*YouTube もんなとりえ
https://www.youtube.com/@monatorieyy33
*Instagram @monatorie33yy
https://www.instagram.com/monatorie33yy/
自分のことを振り返ると、入院中に私は一度、とてもつらい時期に、母に一緒にいてほしいと言いました。子どもって強がったり、「大丈夫だよ」と言って、親や先生方に自分の本音を言えないことがあるんですね。夜になったら寂しがって泣いちゃっている同室の小さい子もいました。勇気を出して「本当はつらいんだ」という自分の気持ちを言葉にしてみてください。その言葉を親御さんは素直に受け止めて、寄り添ってあげてほしいなと思います。私自身も、自分の経験を通して、そういう子どもたちに寄り添ってあげられるような活動をしていきたいです。
病気でない方へは、そんな子どもたちの思いを本の「あとがき」に込めました。
「あなたの『当たり前』全てのことに憧れている子供がいます。もしも、これからの人生で、死にたいと感じたとき、病気の子供たちが、『もっと生きたい』と心から望んでいることを思い出してください。誰の役にも立っていないと思ったら、骨髄ドナー登録、献血に行ってみてください(略)人の命を必ず救える人になります」
難病の子どもたちの夢を叶える活動をしている公益財団法人メイク・ア・ウィッシュ オブジャパンの協力のもと2022年2月に出版。非売品。献血ルームや各地図書館などに寄贈。
https://monatorieyy.crayonsite.net/p/13/
神奈川県 福祉子どもみらい局
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