「医療的ケア児(1)と家族のつどい」が9月10日、秦野市保健福祉センターで開催されました。テーマは「発達を促す姿勢とあそび」。障害児の通所サービスなどを運営している、NPO法人ラウレア「遊びリパークリノア茅ヶ崎」の理学療法士 今川祐子さんを講師に迎え、親子や子ども同士で遊びながら、ゆったりとしたひとときを過ごしました。
交流会に参加したのは、さまざまな疾病のある1~2歳の子どもたちとその保護者の方々の8組です。まずは円になって向き合い自己紹介をしたあと、講師の今川祐子さんと遊びリパークリノア茅ヶ崎のスタッフ(理学療法士、保育士、看護師)により、遊びが始まりました。
まず、歌いながらそれぞれ仰向けになった子どもの全身を触る親子で触れ合い遊びを行いました。子どもたちはくすぐったいのか声を上げて笑い、うれしそうにしています。絵本読みでは、手作り絵本からキャラクターの絵が飛び出したり、「みんなでぽん!」と声をかけながら手をたたく運動では、一緒に手拍子をする子もいました。また、畳半分ほどのシーツの上に子どもを乗せ、両端を大人が持って歌いながら左右に揺らすシーツブランコでは、興味津々で自分からシーツに乗る子も。シーツにゆらゆらと揺られ、子どもたちはリラックスした様子で身を任せていました。
子どもたちが徐々に会場の雰囲気になじんできたところで、メインの自由遊びが始まりました。音の鳴るおもちゃや自由に組み立てて遊ぶおもちゃ、不思議な形をしたおもちゃなど、部屋中に配置された創作おもちゃの数々に、子どもたちは興味津々です。思い思いに触ってみたり、目移りして動き回ったり、おもちゃを通じて自然と一緒に遊びだす子どもたちの姿も見られました。
参加した子どもたちの疾病はさまざまです。未熟児で生まれ、まだ歩けずハイハイしている子、小児がんに罹患している子、心臓に疾患がある子、酸素吸入器が手放せない子…。それでもどの子も障害があることを感じさせない活発な動きと楽しそうな笑顔を見せ、大人たちの表情を和ませていました。
夢中で遊ぶ子どもの様子を見つめていたお母さんは「家では小さいベッドの中にいて遊ぶということ自体がそもそもなかったので、広い場所で動けるのがうれしい。成長がゆっくりで毎日見ていて気づかないことでも、こういう場に来ると、子どもの成長を感じる」と話してくださいました。また、他のお母さんからも「どんな時も目が離せず心配は尽きないが、初めて参加してニコニコしている姿を見て気持ちが少し楽になった」と話し、他にも「おもちゃに関心を持った姿を初めて見た。自己主張するようになったかも」と成長を喜ぶお母さんもいました。
本交流会では子どもたちだけではなく、保護者同士での交流の機会をつくることを目的としています。休憩時間や自由遊びの時間では、子どもと遊びながらお互いの悩みを話し合ったり、励まし合ったりするお母さんたちの姿も見られ、とても和やかな時間が流れていました。「他の保護者の方と知り合える貴重な時間だった」「みんな頑張っている。明日からまた頑張ろうと思えた」という感想もありました。
主催の平塚保健福祉事務所秦野センターの担当者も「子どもの成長を見ることができて楽しかったなどの反応を聞くことができ、この交流会に何かしら得るものがあったのではと思う。ニーズがある限り続けていく必要性がある」と手応えを語ってくださいました。
本交流会を主催した平塚保健福祉事務所秦野センターの保健師 菅原まりなさんと、講師の遊びリパークリノア茅ヶ崎 今川祐子さんに、本交流会についてのお話を伺いました。
平塚保健福祉事務所秦野センター
保健師 菅原まりなさん
秦野センターの管轄(秦野市、伊勢原市)内に、小児慢性特定疾病の子どもは208名います(2024年5月現在)。そのうち未就学児は42名です。管内には、障害を持って生まれた子どもを育てる親が立ち上げたOHANAの会という家族会がありますが、現在の会員のお子さんの多くはすでに就学されており、未就学児の親同士は交流の場が少ないため、似た境遇の人たちと話したいという要望が以前から上がっていました。育児の楽しさや悩みを共有することで、孤独感の解消や、少しでも前向きな気持ちで育児ができるようにという思いを込めて、医療的ケアや長期療養が必要な子どもと保護者を対象に、交流会を開催しています。
交流会は年に2~3回開催しており今年の1回目(5月)は、OHANAの会と共催し、先輩のママさんたちとの交流や情報交換を目的に開催しました。2回目の今回は、遊びによる発達への理解を深めると同時に、保護者同士の親睦を図ることを目的としています。遊びについては、子どもたちの発達の具合には個人差があるため、講師として遊びリパークリノア茅ヶ崎の今川さんに協力をお願いしました。3回目は11月に平塚保健福祉事務所と共催で行う予定となっています。
本交流会 講師
NPO法人ラウレア
遊びリパークリノア茅ヶ崎 理学療法士 今川祐子さん
医療ケアがあるお子さんだと、自分で自由に移動ができないことがあるので、お子さんが手を出しやすいようなおもちゃの置き方を考えたり、絵本を読む時もお子さん一人一人の場所に回りながら、お子さんの反応を待つなどの配慮をしています。
また、お母さんたちは、発達というと、寝返り、立つ、歩く、といった目に見える運動に着目しがちです。でも、その運動の背景には、自分で触ってみる、口に入れてみるなどの感覚の経験や、これは何だろうとじっと見るなど運動以外の発達が絡んでいます。お子さんと遊びながらお子さんの変化を丁寧に説明し、小さな一歩を一緒に見守るようにしています。
NPO法人ラウレアが運営する「遊びリパークリノア」は医療的ケア児や肢体不自由児が育つ場が地域に欲しいとの声を受け、9年前に設立しました。現在は藤沢市を拠点に4事業所があります。遊びリパークリノアは障害の有無に関わらず子どもたちが一緒に遊べるインクルーシブ広場です。
児童発達支援は0歳~6歳までの未就学児の通所サービスですが、以前はその支援につながる前の、家にいる子どもたちへの支援はありませんでした。2018年に居宅訪問型児童発達支援の制度ができ、それまでカバーしきれなかった、未就学で家にいる子どもたちへの支援ができるようになりました。遊びリパークリノアでは、放課後等デイサービス、児童発達支援などを行うとともに、家の中にいる子どもたちへの支援(居宅訪問型児童発達支援)にも力を入れて活動を行っています。
発達がゆっくりなお子さんでも、この交流会で遊ぶ様子を見て、お母さんがお子さんの成長を実感し、育児を前向きにとらえて下さっていました。また、「他のお母さんたちの頑張っている姿に勇気づけられ、私は1人じゃないと思った。」という感想があり、保護者同士の交流にも意味があったと感じています。今回の交流会を通して、子どもたちや保護者の方たちをつなぐ支援の場を今後も作っていければ良いと思っています。
お子さんに医療ケアがあると外出の機会も少なく、また子どもを外に連れて行こうという気持ちになれないご家族が多いのですが、今回「最初の勇気が出なかったが、来てみて楽しさを知った。」というお母さんがいらっしゃいました。家で深く悩んでいる保護者の皆さんの助けになりたい、少しでも外に出るきっかけをつくってあげたい、という思いから、リノアでも親子や兄弟も参加できる遊び体験会を定期的に開催しています。通所のデイサービスとは異なり、お母さんたちと話す時間がじっくり取れるので、普段の心配事や悩み事を一緒に解決できる場ともなります。そういうサービスがあるということも知ってもらい、外とのつながりができるきっかけになればうれしいです。
遊びリパークリノア茅ヶ崎では、月に1回「リノアの親子サロン」を開催しています。
親子で自由に遊びながら、保育士やセラピストに遊びや発達のことなども相談できます。
日時は遊びリパークリノア茅ヶ崎のインスタグラムでお知らせしていますので、興味のある方は是非のぞいてみてください。
✻Instagram @linoa_chigasaki
日時 | 2024年9月10日(火曜日) 10:00~12:00 |
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主催 | 平塚保健福祉事務所秦野センター |
共催 | 平塚保健福祉事務所 |
神奈川県 福祉子どもみらい局
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