認定NPO法人横浜こどもホスピスプロジェクトは、病気とともにある子どもと家族が一緒に安心して過ごせる場として、2021年に「横浜こどもホスピス~うみとそらのおうち(横浜市金沢区六浦東)」を開きました。海、空、緑、光に包まれた開放的な空間で子どもの「やってみたい」をかなえるスタッフの支えを受け、家族が思い思いのひとときを過ごしています。2022年度からは、神奈川県の委託事業として、子どもと家族の悩みに寄り添う相談窓口「ピアサポート」を開設しました。運営スタッフの津村明美さん(がん看護専門看護師)と杉山真紀さん(ピアサポーター)に話を伺いました。
津村 明美 さん(がん看護専門看護師)
杉山 真紀 さん(ピアサポーター)
(左から)
津村さん:ピアサポートは、同じような悩みや苦しみを持つ人同士が支え合うための活動です。小児慢性特定疾病などの病気を抱えるお子さんと家族の話を聴き、日常生活や学校生活の中での悩みや不安に寄り添う相談窓口を設置しています。ピアサポートを必要とする方々は、いろいろな意味で孤立をしています。「うみとそらのおうち」では命に関わる病気のお子さんと家族が、地域ともつながりながらそれぞれ家族らしい過ごし方ができるよう支えていく活動をしていますが、ピアサポート事業と私たちの活動は「孤立させない」という点でとても共通していると思います。
2023年度には86件の相談が寄せられました。病気を抱えながら自分の将来を考えたいという10代後半のお子さん本人や、さまざまな小児慢性特定疾病のお子さんの家族、また当所で普段利用される小さなお子さんの家族からの相談もあり、年齢層も病気の性質も、ピアサポートの対象は幅広くなっています。
杉山さん:相談の内容はさまざまで、答えがあるというより悩みをそのまま受け止めながら一緒に整理していくということをしています。中には思春期ならではの悩みもありますから、病気の有無に関わらずみんなが悩んでいることに共感したり、病気によって人とは違うと感じていることへの悩みには、それが魅力になると気づいてもらったり、という対応になります。
津村さん:家族の場合は、病気のお子さんの子育ての悩みや、将来への期待や不安で気持ちの振り幅が大きくなってしまうつらさがあります。そんな中で子どもとどう向き合っていけばいいのか、どう自立をさせられるのか、あるいは子どもを失ってしまうかもしれない、とするとその時間をどう過ごしていけばいいのかなど、不安や悩みはさまざまです。家族によって状況も考え方も異なり、やはり答えはありません。
当所のスタッフには子どもを亡くした経験のある者がおり、ピアサポートにとって大きな存在です。病院で余命を宣告されて来られるような家族に、より寄り添うことができていると思います。今何を大事にして子どもと過ごせばいいのか、亡くした後どう生きているのかなど、その経験や姿を一つのモデルとして見せることができるのは大きな力になると思います。子どもの病気による障がいを受け入れることができずに葛藤を抱えている家族には、サービスにつなげることができるように情報提供をして他の専門性の高い関連機関を紹介するというケースもあります。
津村さん:2024年度は8月に当所で「小さな交流会」を開きました。病気や障がいを抱えているお子さんや家族同士がつながることができる機会として設けたものです。病院以外では出会わないような同じような境遇の仲間がいることに気づき、遊びながらコミュニケーションを取ることで不安や気持ちの負担を軽くしていただくのが目的です。子どもたちの特性に合わせた遊びやゲーム、音楽などを提供し、思い切り遊ぶことの楽しさを味わってもらいました。リラックスした雰囲気の中で家族同士の距離感も縮まり、情報交換などをしていただく場にすることができました。
この交流会には午前と午後で計6家族が参加しました。多くの方に参加いただけるように周知の方法等は今後の課題ではあります。
津村さん:きょうだい児支援も県委託事業として2024年度は9月に行い、1日目5人、2日目11人が参加しました。目的は、病気を抱えた子どものきょうだいに思い切り楽しみ遊んでもらうことです。
きょうだい児は家庭の中で、病気や障がいのある子どもを中心とした生活を送っており、親を気遣い、きょうだい自身もケアに協力したり自身の遊びを制限したりと自制し、ストレスを抱えています。
そんな子どもたちが、まずオンラインで自己紹介や準備などをし、翌週に金沢自然公園・金沢動物園に出掛けました。子どもたちは寂しい思いをしているのは自分だけではないという仲間意識が自然に芽生え、つながりをつくっていました。それぞれが自分らしくいられる経験ができ、意味のあるイベントになったと思います。
杉山さん:私自身が子どもを亡くしているので、この事業を通じて一人ではないと思える場があることで自分自身にも力になっています。利用者の方にとっても同じだと思います。そういう場の存在を知ることで、お子さんにとっても家族にとっても人生の糧になるような体験となり、支援につながっていければいいと思います。
「横浜こどもホスピス~うみとそらのおうち」は、病気の子どもと家族の「別荘みたいなおうち」です。
入り江の静かな場所に建ち、近くに公園もあり、海と広い空が見えます。
自然あふれる環境で、家族との時間を安心して過ごせるように友人のように寄り添えるスタッフが、子どもと家族がやりたいことを全力でサポートします。
神奈川県 福祉子どもみらい局
子どもみらい部 子ども家庭課 家庭福祉グループ
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