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更新日:2025年2月14日

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二ホンナシの開花不良に関する気候変動影響予測

神奈川県における二ホンナシの開花不良に関する気候変動影響予測についてご紹介します。

背景

 気候変動影響として、ニホンナシにおける開花期・収穫期の早期化や発芽不良が報告されており、神奈川県においても、2022年現在、ニホンナシの不発芽が発生しております。また、環境省の地域適応コンソーシアム事業では、中国地方及び四国地方におけるニホンナシの栽培適地の変化について予測されており、産地の一部が今後、栽培が不適となる可能性が示唆されています。

 本県において、ニホンナシは主要な農作物の一つ(参考:「わたしたちのくらしと神奈川の農林水産業」)であることから、ニホンナシに関する気候変動影響の検討は、今後の農業において重要であると考えられます。
 そこで、神奈川県気候変動適応センターでは、ニホンナシを対象とした、本県全域における気候変動による開花期への影響を予測しました。

二ホンナシに関する気候変動影響

 二ホンナシは、自発休眠(気温などの環境条件が整っていても発芽又は開花しない状態)から、一定量の低温に遭遇すると覚醒し、他発休眠(環境条件が整えば発芽又は開花するが、その条件が整わないため発芽又は開花しない状態)へと移行して、開花を迎えます。

 そのため、気候変動がもたらす冬春期の温暖化は、二ホンナシにおける自発休眠の覚醒の遅延や、他発休眠の短縮を引き起こし、発芽・開花期の早晩に影響します。

気候変動影響予測

 神奈川県では、二ホンナシ2品種(幸水、豊水)を対象とし、本県に適合した開花予測モデルに気候シナリオデータを適用することで、本県全域における気候変動による開花期への影響を予測しました。

【留意事項】

 本県に適合した開花予測モデルとして、神奈川県農業技術センター本所が作成した自発休眠期と他発休眠期の生育モデルを統合したモデルを用いました。詳細については、下の研究報告(神奈川県農業技術センター研究報告第166号)をご参照ください。

 「神奈川県におけるニホンナシ生育予測システムの開発と気温上昇がナシ開花日に及ぼす影響」(PDF:1,006KB)

 また、今回の予測では、一定程度の高温の遭遇に起因する自発休眠期に蓄積した低温の効果が打消される効果や、花芽の生育前進に伴う耐凍性低下に起因する遅霜被害の影響は考慮していません。

 なお、気候シナリオデータの詳細については、下のページをご参照ください。

 将来気候の予測方法(気候変動適応情報プラットフォーム、環境省ホームページ)

開花予測日の経年変化

幸水

 21世紀後半に脱炭素社会が実現した場合(SSP1-2.6)では、開花予測日はで概ね一定であり、開花不良はほとんど発生しないことが予測されました。

 一方、温暖化が進んだ場合(SSP2-4.5)では、21世紀後半から開花が遅延していくとともに開花不良がまれに発生し、化石燃料に依存し気候変動対策を導入しない場合(SSP5-8.5)では、さらに開花不良の割合が増加、21世紀末頃には開花不良が常態化することが予測されました。

豊水

 SSP1-2.6では、開花予測日はで概ね一定であり、開花不良はほとんど発生しないことが予測され、SSP2-4.5でも同様の傾向を示しました。

 一方、SSP5-8.5では、21世紀後半から開花が遅延し開花不良が発生するようになり、21世紀末頃には開花不良が常態化することが予測されました。

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神奈川県農業技術センター本所における、幸水及び豊水の20年ごとの平均開花予測日と

20年間の開花不良年数(開花日が以降又は開花に至らない年数)の経年変化

開花予測日の地域的な変化

 幸水・豊水ともに、比較的温暖な沿岸部から、温暖化の進行とともに開花遅延・開花不良の発生範囲が拡大化する傾向を示しました。また、幸水と豊水を比較すると、幸水の方が開花遅延・開花不良の発生範囲が早期に拡大することが予測されました。

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幸水の開花予測日の地域的変化

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豊水の開花予測日の地域的変化

本研究成果の報告

 本研究については、下の研究報告(令和6年版神奈川県環境科学センター研究報告第47号)で報告しております。

 神奈川県におけるニホンナシの開花不良に関する気候変動影響予測(PDF:1,201KB)

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