子育てママの事情に合わせた勤務制度の工夫
- 曽我病院は、職場の女性たちが妊娠、出産、子育てを安心して迎えられる支援をされているそうですが、具体的にはどのような支援をされていますか?
(渡辺部長)「産休、育休はもちろん、子どもが病気のときの介護休暇・看護休暇も法律で定められた制度ですので、取得しやすい工夫を行い運用しています。具体的には介護休暇・看護休暇も半日単位で取れます。その上で、有給休暇について、取得しやすくする工夫として、1時間単位で取れるようにしています。子どもを病院へ連れて行くときや、学校の用事があるとき、今までは半日か1日単位の申請をし、休む必要がありました。でも1時間単位なら用事がある時間だけ休めばいいので、有給休暇を有効に使うことができます。勤務シフトがあることから病院によっては、有給休暇を自由に取りにくい場合もありますが、当看護部は管理職も含めて有給取得率はほぼ100%です。」
- 有給休暇を取得する人がいると、シフト勤務では他の職員の負担が増えると思いますが、人間関係など難しくなりませんか?
「子どもを育てている看護師はたくさんいて、子育てしながら仕事をしている姿を、みんな見てきていますので、そういうものだという思いが職場に浸透していると思います。時短勤務も同様で、子育ての時期は、有給休暇を取得するものだという環境が職場内に既にでき上がっていると思います。」
「子ども優先(ファースト)」の職場のあり方
- 時短勤務や子育て中の人が多いと、シフトを組むのが大変ではないでしょうか。
「当病院は、積善会グループに看護学校を運営している関係から奨学金制度を利用した卒業生が入職しているので、職場の人員数が確保できているという状況があります。基本的にシフトには『子ども優先』の考え方を取り入れて、3交代制を導入しています。通常の病院の多くが導入している2交代制だと、人員総数は少なくてすみますが、子育て中のママは、夜勤のとき朝食も夕食も子どもと一緒に食べられないという状況になってしまいます。それは子どもの成長に良くないという考えから、3交代制を導入しています。3交代制なら、朝食か夕食のどちらかを子どもと一緒に食べられます。また、小さな子どもがいる人、特にシングルマザーは、夜間に家が子どもだけになってしまうので“夜勤に入れないのは当たり前だよね”という考えも持っています。そういう考え方で、シフトを組んでいます。」
- 子育ての相談やサポートが充実しているとのことですが、具体的にはどのような取り組みをされていますか?
「少なくとも、小学校卒業までは、『仕事よりも、子どもを優先してください』と職員へ話しています。例えば、子どもを育てながら、看護学校に通い、入職してくる新人ママのなかには、新人研修の時期が子どもの入学式と重なるという人がいます。そういうときは、『入学式を優先して下さい。研修はいつでも受けられます』とお話しします。また、当病院の研修は、全て勤務時間内に病棟を離れて受けることができるようにしていますし、残業は基本的にありません。そういう、環境も働きやすさに繋がっていると思います。」
- そのような環境のなかで、看護師としての技術が高い人も出てきて、そういう人をお手本に自分も頑張ろうと思える、そういう環境があるのですね
「そうですね。精神科の高い水準の技術を有すると認められた認定看護師も8人いますし、管理職も年功序列はありません。子育てしながらでも、挑戦していく働きがいのある職場環境になっていると思います。」
認定看護師
一定の実務経験を経た後に認定看護師教育機関にて、分野に応じた教育を受け試験に合格した者が認定される
精神科の看護師に求められること
- 精神科の看護師には、どんな人が求められるのでしょうか。
「心が優しくて、人が好きな人、そして人の世話をするのが好きな人ですね。人が好きだというのは絶対条件ですね。」
- 前回、ご紹介したみきさんの働きぶりはどうですか?
「彼女は、社会人を経験して看護学校に入学してから看護師になった方で、当病院に入職して2年目になります。シングルマザーで看護師経験は長くありませんが、しっかりしている方ですし、また、職場での新人教育の体制も整えているので、何の問題もないと思っています。」
国家資格取得で経済基盤の安定を
- 最後に、看護師を目指しているひとり親の方へのメッセージをお願いします。
「国家資格を持つことは、経済基盤を作ることにつながります。経済基盤を作ることは、子育てにとって、とても大事なことです。ですので、ぜひ、国家資格を取って頑張って欲しいです。この病院には、介護福祉士さんもたくさんいます。国家資格を持つことで、給料も増えます。シングルマザーにとって経済の安定は大切です。曽我病院では、看護補助者で入職した方は介護福祉士の国家資格を取ることを奨励しています。また、看護補助者から看護師を目指す人もいます。そのためには、本人の努力や家族の協力が必要です。皆さんステップアップに向けて、ぜひ頑張って欲しいですね。」
神奈川県では、従業員のための子ども・子育て支援を制度化している事業者を「かながわ子育て応援団」として認証しています。公益財団法人積善会曽我病院は、県西地域の病院では、唯一認証を取得しています。
認証制度について
この病院は、小田原市の精神科病院であり、患者一人ひとりのニーズに応じた医療サービスを提供するほか、看護師の教育・人材育成にも力を入れて取り組んでいます。